
【中古】かみなり坊やピッカリ・ビー Vol.2 [DVD]
【原作】:ムロタニツネ象
【アニメの放送期間】:1967年4月1日~1968年3月30日
【放送話数】:全88話
【放送局】:NETテレビ系列
【関連会社】:放送動画制作、チルドレンズ・コーナー
■ 概要
1967年の春から1968年の春にかけて、NETテレビ系列(現在のテレビ朝日)にて土曜日のゴールデンタイム枠で放送されたアニメ『かみなり坊やピッカリ・ビー』は、当時の子どもたちの心を大きくとらえた作品です。1年間で全53回の放送が行われ、合計88話というエピソード数を誇るこの作品は、30分枠内で複数のショートストーリーを組み合わせた構成をとっていました。
このアニメは、毎日放送・放送動画・チルドレンズ・コーナーという複数の制作プロダクションによる共同制作で誕生し、乳製品大手「雪印乳業」(現在の雪印メグミルク)の提供によって全国ネットで展開されました。モノクロ映像ながら、独特のキャラクター造形とテンポの良いストーリーで、放送当時は大きな話題となりました。
原作となるのは、漫画家・ムロタニツネ象によって『週刊少年サンデー』(小学館)で連載されていた『ビリビリ・ビート』。そのアニメ化に合わせて、同氏が講談社の雑誌『ぼくら』にてスピンオフ的なマンガ『ピッカリ・ビー』を連載しており、テレビと出版の両方で展開されていたのが特徴的です。
このアニメの中心となるのは、雷の国からやって来た子ども「ピッカリ・ビー」。人間界に興味を持って地上に降りてきた彼が、町で暮らす子どもたちとの交流や、愉快な騒動を巻き起こす様子を描いています。物語の主な舞台は、町の中心にある「雲井家」と「ワンパク6(シックス)」と呼ばれる子どもたちのグループ。彼らの日常に巻き起こる出来事を軸に、友情、ユーモア、ちょっぴり社会風刺を交えた軽妙なストーリーが展開されます。
本作は2005年には、全話を網羅したDVD-BOXが発売され、レトロアニメファンから再び注目を浴びることになりました。当時の雰囲気をそのままに収録されたこのボックスは、現在でも中古市場で高値がつくこともあります。
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■ あらすじ・ストーリー
空の上の世界「カミナリの国」から、ある日ふとした好奇心に突き動かされて地上へと舞い降りた少年――それが本作の主人公「ピッカリ・ビー」です。彼は人間界に興味を持ち、自らの意思で雲から飛び降り、見知らぬ町にたどり着きます。その町で彼が出会うのは、雲井家の少年・ポン太郎と、彼の家族、そしてポン太郎が所属する仲良しグループ「ワンパク6」の面々です。
雷の力を自在に操るビーは、空に雲を呼び、雨を降らせたり、電撃を放ったりといった特異な能力を持ちながらも、性格はどこかとぼけた愛らしさを備えており、町の人々を巻き込みながらも次第に溶け込んでいきます。
ビーが暮らすことになる雲井家では、最初は戸惑いながらも、ポン太郎をはじめ家族全員が彼を温かく迎え入れます。特に、しっかり者の妹チーコや、家のことにうるさいけれど頼れるおばあちゃん・さくらとの掛け合いが、視聴者にとっては心地よい笑いと癒しの時間を提供していました。
ビーとポン太郎たちは、日常のなかで様々な出来事に遭遇します。例えば、ビーの力を利用しようとする科学忍者(自称)「00五ェ門」や、その子分のネズミ・次郎吉、さらには野良猫の親分「ガポネコ」といったクセ者たちとのバトルや追いかけっこが、シリーズを通じて繰り返されていきます。
物語の中では、一話完結型で小さなトラブルを解決するタイプの話が多く、ビーがその超能力で解決するシーンは本作の魅力のひとつでした。とくに、指先から放たれる「ピッカリ光線」によって、相手のおへそに花を咲かせてしまうというユニークな技が、敵味方問わず緊張感を一気に笑いに変えるポイントとして機能していました。
ビーは当初、人間の言葉を話すことができませんでしたが、ポン太郎やその家族と接するうちに言語を覚え、人間社会のルールや感情についても理解を深めていきます。ときに失敗しながらも、彼が少しずつ「地上の一員」として受け入れられていく成長の過程は、多くの子どもたちにとって感情移入しやすいものでした。
また、物語にはしばしば風刺や教訓的なメッセージも織り込まれていました。たとえば、大人たちが子どもに勉強ばかりを押し付けることの是非や、欲望にかられて他者をだます大人の滑稽さなどが、ビーたちの視点から描かれることによって、子どもにも理解しやすい形で提示されていたのです。
シリーズ終盤では、ビーの正体や雷の国との関係性が明らかになっていき、単なる日常ギャグ作品から少し踏み込んだファンタジー的な広がりも見せていきます。最終話では、彼が雷の国の高貴な出自を持つ存在であることを自ら語るという感動的なシーンがあり、それまでの彼の姿に新たな意味が付け加えられる形で物語は幕を下ろしました。
このように『かみなり坊やピッカリ・ビー』は、日常の小さな冒険を通じて、友情や家族、そして社会への理解を子どもたちに楽しく伝える、優しさに満ちたアニメ作品だったのです。
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■ 登場キャラクターについて
『かみなり坊やピッカリ・ビー』は、そのユニークな登場人物たちが作品の大きな魅力となっています。主人公のビーを中心に、家族・友だち・ライバル・動物まで、個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、視聴者にとってまさに飽きのこない「キャラクター劇場」でした。
● ピッカリ・ビー(声:千秋ちあき)
雷の国から地上に降り立った少年。シルクハットのような「ピッカリ・ハット」を常にかぶっており、この帽子が彼の超能力の源でもあります。いたずら好きで、どこかマイペースなビーですが、根は優しく、困っている人を見過ごせない正義感も持ち合わせています。
彼の持つ超能力は多岐にわたっており、雷雲を自在に作って空を飛び、雨を降らせたり、指先から「ピッカリ光線」を発射して笑わせたりと、困った状況も一瞬でひっくり返してしまうほど。特にこの光線は、相手のおへそに花を咲かせてしまうという奇抜な演出で、子どもたちに強い印象を残しました。
一方で、乾燥した砂漠のような場所では雷雲が作れなかったり、「ピッカリ・ハット」を失うと力が使えなくなるなど、彼にも弱点があるというのが物語に緊張感を加えていました。
● ポン太郎(声:加藤みどり)
ビーが地上で最初に出会い、最も信頼を寄せる少年。雲井家の長男で、「ワンパク6」の一員です。勉強が苦手でやや気弱な性格ではあるものの、ビーに対しては一貫して友だちとして接し、時には保護者のように寄り添うことも。
その純粋さがビーを人間社会へと導く橋渡し役となり、言葉やルールを学ばせる上で重要な存在でした。
● 雲井家の人々
カンタロー(声:大宮悌二)
ポン太郎の父親で、玩具メーカーに勤めるサラリーマン。家ではあまり威厳がなく、お母さんやおばあちゃんには頭が上がりませんが、時折子どもたちに対しては父親らしい一面を見せることも。
あやめ(声:佐山智子)
ポン太郎の母で、現代的な考え方の持ち主。息子の教育には厳しい態度をとることもありつつ、家庭をきちんと切り盛りする肝っ玉母さんです。
さくら(声:北川千枝子)
雲井家のおばあちゃん。伝統と知恵に長けた存在で、ビーにとっては最も早く心を開いてくれた大人でもあります。彼女の柔らかな対応が、ビーを家族として迎えるきっかけとなりました。
チーコ(声:栗葉子)
ポン太郎の妹で、しっかり者。兄とは対照的に頭の回転が早く、ビーともすぐに打ち解けます。しばしばビーの無茶をフォローする役割も担っています。
ハギシリ(声:大竹宏)
雲井家で飼われている犬ですが、番犬としては役に立たず、どこか情けない存在。しかし、その気弱な性格もどこか愛嬌があり、子どもたちには人気がありました。
● ワンパク6(シックス)
ビーが地上で親しくなる子どもたちのグループ。個性のぶつかり合いが魅力で、まさに“昭和の子ども集団”を象徴するメンバー構成です。
ゴン太(声:高橋和枝)
グループのまとめ役で、ガキ大将的な見た目に反して面倒見が良い優しい少年。しばしばリーダー的役割を担います。
ガミ子(声:伊藤牧子)
紅一点でありながら、交渉事に長けたサブリーダー格。しっかり者で、口調は厳しいものの、皆から頼られています。
ゲンショク(声:小宮山清)
食べることが大好きなぽっちゃり体型の少年。医者から減食指導を受けており、すぐに息切れしてしまうのがお決まりのギャグとして描かれています。
カルダン(声:貴家堂子)
服装と髪型に敏感な「お坊ちゃん」キャラ。泥やホコリを嫌い、外遊びで汚れることに強い抵抗を示します。
レジ(声:白石冬美)
いつもそろばんを持ち歩く計算名人。無口で目元が帽子で隠れたミステリアスな存在ですが、計算力はピカイチです。
● 敵役・ライバルたち
00五ェ門(声:近石真介)
作品全体のトラブルメーカー。押し売り、泥棒、発明など、あらゆる分野に首を突っ込む自称「科学忍者」で、語尾に「〜でござるよ」がつくのが口癖。どこか抜けた憎めない存在です。
次郎吉(声:東美江)
五ェ門の相棒であるネズミ。ツッコミ役としての立場が強く、主の行動に振り回されることが多いが、実は計算高い一面も。
ガポネコ(声:雨森雅司)
野良猫のボスで、ビーたちの前にたびたび立ちはだかる存在。敵対しながらも、時には共闘するなど、どこか義理堅い部分も持っています。
これらの登場人物たちは、決して一面的ではなく、それぞれに弱さや得意分野を持っています。だからこそ、視聴者は彼らのやり取りに笑ったり、共感したりできたのです。
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■ 主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
『かみなり坊やピッカリ・ビー』の魅力の一つとして、多くのファンに記憶されているのがその音楽群です。1960年代後半というアニメ音楽が独自の発展を遂げ始めた時代において、本作は主題歌・挿入歌ともに、アニメの世界観に寄り添いながら、印象的なメロディと歌詞で物語の一端を担っていました。
● オープニングテーマ:「ピッカリ・ビーのうた」
番組の冒頭を飾るこの楽曲は、子どもたちの期待感を一気に高めてくれる明るく楽しい一曲です。作詞は番組制作陣によるグループ名義(ピッカリ・ビー・グループ)、作曲は当時アニメ音楽やCMソングで活躍していた萩原哲晶が担当。歌唱を担当したのは、人気歌手でありながらもナレーションや語りを得意とした天地総子と、軽快なコーラスを響かせる「ボン・くーる」でした。
イントロでは「パリッ! ピッカリ!」と弾けるようなフレーズが繰り返され、視聴者の耳に自然と残る中毒性を持っています。歌詞はビーの紹介に始まり、雲に乗って空からやってきた彼の不思議な力や、騒動を巻き起こす日常がリズミカルに語られます。中盤に差し込まれる00五ェ門のセリフパート(近石真介)もユニークで、単なるテーマソングの域を超えた「小さなドラマ」的構造をとっています。
当時のアニメにおける主題歌は、番組の顔ともいえる存在でしたが、『ピッカリ・ビーのうた』はまさにその役割を全うした名曲と言えるでしょう。
● 挿入歌:「ピッカリ・ビーはいいな」
この曲は番組の途中や、心温まる場面に挿入される形で使用されていました。優しいメロディラインと、ピッカリ・ビーというキャラクターの持つ「不思議でかわいらしい」存在感をそのまま表現した内容となっており、真理ヨシコによる柔らかくも芯のあるボーカルが光ります。
ビーが人間界で少しずつ成長していく姿や、町の人々との関係が深まる様子を思わせる歌詞は、視聴者の感情を優しく包み込む効果を持っており、「歌が流れるたびに泣きそうになった」という当時の視聴者の声も多く残されています。
なお、この楽曲はエンディングのBGMとしてインストゥルメンタル版でも使用されており、主題歌とはまた違ったしっとりした余韻を作品に残していました。
● イメージソング:「雲のドライブ」
本作には、放送中には頻繁に流れなかったものの、視聴者の間で根強い人気を持った隠れた名曲も存在します。そのひとつが「雲のドライブ」。こちらは完全な挿入歌というよりは、作品のテーマ性を補強するイメージソングとして制作された楽曲です。
ビーが雷雲にまたがって空を飛び、街の上空を悠々と進んでいくシーンを彷彿とさせるこの曲は、まさに“空と冒険”の象徴とも言える一曲。美保くるりの伸びやかな歌声と、萩原哲晶による浮遊感あるアレンジが見事にマッチしており、作品の持つファンタジー性を音楽として表現することに成功しています。
● 視聴者の反応とその影響
当時、アニメの主題歌をレコードで購入するという文化が徐々に広がりつつあった時代。本作の主題歌と挿入歌も、EPレコード(ドーナツ盤)として発売され、一部の地域では売り切れが続出したという記録も残っています。
特に小学生の間では「ピッカリ・ビーのうた」をクラスで合唱する光景が見られ、当時の音楽教育に影響を与えたとの指摘もあります。また、家庭用のカセットテープレコーダーで録音し、何度も再生する子どもたちも多かったことから、本作の楽曲がいかに親しまれていたかが分かります。
現在でも、YouTubeなどで当時の音源がアップロードされるとコメント欄には「懐かしすぎる」「この歌を聴くとあの時代が蘇る」といった声が多く寄せられており、本作がいかに心に残る音楽を持っていたかが窺えます。
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■ 声優について
『かみなり坊やピッカリ・ビー』は、そのキャラクターたちの個性が際立っていたこともさることながら、それを支える声優陣の存在も非常に大きな役割を果たしていました。1960年代後半という、アニメ声優という職業がまだ一般的な認知を得ていなかった時代において、この作品は数多くの名優たちによる見事な演技によって彩られていました。
● 千秋ちあき(ピッカリ・ビー役)
主人公・ピッカリ・ビーの声を担当したのは、当時子ども番組やラジオでも活躍していた声優・千秋ちあきさん。高めの声と、やや鼻にかかったような独特の語り口で、ビーという不思議な存在にリアルな息吹を与えてくれました。
とくに、物語の序盤では言葉をうまく話せないビーが、回を追うごとに感情表現豊かになっていく様子を、繊細に演じ分けているのが印象的。好奇心いっぱいの声、いたずらっぽい笑い、ちょっと涙ぐむような台詞まで、ビーの感情の振れ幅を見事に表現していました。
また、ピッカリ光線を放つ際の掛け声など、テンポ感が求められるギャグ要素のあるシーンでも、抜群のリズム感で視聴者を楽しませてくれました。
● 加藤みどり(ポン太郎役)
ポン太郎の声を担当した加藤みどりさんは、その後『サザエさん』のサザエ役で国民的声優となる人物です。本作では、やや気弱で素直な少年・ポン太郎を飾らない演技で自然体に演じており、当時の少年像を象徴するようなキャラクターとして多くの子どもたちから共感を集めました。
加藤さんの演技には「親しみやすさ」があり、ビーとのやりとりでは、お兄さん的でもあり、時には年下のようにも感じさせる絶妙な距離感を表現していたのが印象的です。
● 大宮悌二、佐山智子、北川千枝子(雲井家の大人たち)
雲井家の父・母・祖母をそれぞれ演じた大宮悌二さん、佐山智子さん、北川千枝子さんは、舞台俳優出身やラジオ劇経験のある実力派。とくに北川さん演じるさくらおばあちゃんは、その包容力ある声質と語り口で、ビーにとっての「安心できる存在」として、視聴者の間でも人気の高いキャラクターでした。
大宮さんの父親像は、どこか頼りなくも優しさを感じさせ、佐山さんの母役は、現代的で芯の強い母親を演じながらも、時折見せる愛情深い台詞が心に残る演技でした。
● 子どもたちと動物たち
チーコ役の栗葉子さんは、後に多数の児童向け作品でも活躍する名声優。女の子キャラに特有の「きびきびした元気さ」と、兄に対する皮肉混じりのセリフまわしが印象的でした。
また、犬のハギシリを演じた大竹宏さんは、コミカルな動物キャラを得意とする声優として知られており、その“ヘタレ犬”っぷりが視聴者から愛されました。
● ワンパク6の声優陣
ゴン太(高橋和枝):芯の強い少年声を得意とする高橋さんの演技は、リーダーらしい安心感を持ちながらも、どこか母性的な包容力も感じさせる巧みな表現が際立っていました。
ガミ子(伊藤牧子):キリッとしたトーンと、早口の掛け合いが得意な伊藤さんの演技で、ワンパク6の中でも存在感のあるキャラクターに仕上がっていました。
ゲンショク(小宮山清):常に息切れするキャラを演じるには体力も必要で、小宮山さんはその荒い呼吸までしっかり演じ分けており、技術の高さを感じさせました。
カルダン(貴家堂子):『サザエさん』のタラちゃんでおなじみの貴家さん。お坊ちゃんキャラを上品に演じながらも、ユーモアも忘れない名演が光っていました。
レジ(白石冬美):無口で知的なキャラを静かに、でも強く印象づける演技は、まさに白石さんの真骨頂といえるものでした。
● ライバル役の名演
00五ェ門(近石真介):ナレーターや声優として多彩な活躍を見せる近石さんが、本作では自称「科学忍者」というコミカルな敵役を熱演。語尾の「〜でござるよ」や、大げさな発明の説明をテンポよくこなす技術は、もはや職人芸の域。
次郎吉(東美江):ツッコミ役でありながら、時にシニカルな台詞で笑わせる絶妙なバランス。東さんのボイスはそのユーモアと冷静さを同時に伝えることに成功していました。
ガポネコ(雨森雅司):猫ながらも極道風の話し方、威圧感のある声を巧みに使い分け、敵ながら魅力的な“悪役”として強い印象を残しました。
これらの声優たちの演技があったからこそ、『かみなり坊やピッカリ・ビー』は子どもたちにとってただのアニメではなく、まるで日常に存在する「となりの世界」のようなリアルさを持つ作品になっていたのです。
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■ 視聴者の感想
『かみなり坊やピッカリ・ビー』が放送されていた1967年から1968年という時代は、まだ家庭にテレビが普及し始めたばかりで、子ども向けアニメ番組も限られていた中、この作品は多くの子どもたちの楽しみの中心として存在していました。リアルタイムで視聴していた当時の子どもたち、そしてその後DVD化を通して改めて本作に触れた世代からは、さまざまな感想が寄せられています。
● 「身近に感じられた“ヒーロー”」
多くの視聴者が口を揃えて語るのは、「ピッカリ・ビーは完璧じゃないところが好きだった」という声です。当時のヒーロー像といえば、正義感にあふれ、強くてかっこいい存在が一般的でしたが、ビーはどちらかといえば「親しみやすく、どこか抜けている」存在でした。彼は確かに空を飛べるし、雷を操る不思議な力も持っているのですが、その一方で言葉が話せず戸惑ったり、帽子をなくして泣いたり、人間の生活に右往左往する様子が描かれていたのです。
そうした姿に、当時の子どもたちは強く共感し、「こんな友だちがほしい」と願ったというエピソードも多く残されています。ある視聴者は「ビーはヒーローというより、心の中のもう一人の自分みたいな存在だった」と回顧しており、スーパーパワーを持ちながらも不完全であるビーの存在は、かえってリアルだったのかもしれません。
● 「家族みんなで観ていたアニメ」
この作品は、子どもたちだけでなく大人にも愛されたアニメでした。物語の中には、社会風刺や家庭問題、子育てや教育への問いかけといったテーマも織り込まれており、親世代も「考えさせられる内容が多かった」と振り返る人もいます。
実際、放送時間が土曜19時30分という家族団らんの時間帯だったこともあり、「夕ご飯の後、家族でちゃぶ台を囲みながら見ていた」「親が一緒に笑ってくれていたのが嬉しかった」という記憶を持つ人が非常に多いのです。
また、家庭内での会話にも作品が取り上げられることがあり、「あんたもピッカリ・ハットあったら勉強できるんじゃない?」などという冗談が飛び交っていたという微笑ましいエピソードも残されています。
● 「00五ェ門のキャラがクセになる」
敵キャラである00五ェ門の人気も、視聴者の間で非常に高いものでした。彼の妙な発明や変な喋り方、憎めない性格は、「悪役だけど愛される存在」として、主役のビーに次ぐ人気を誇っていたといわれています。
とくに、彼の決め台詞である「〜でござるよ」が子どもたちの間で流行し、学校で真似する子が続出したほど。ある当時の視聴者は「ビーも好きだったけど、五ェ門のほうが面白くて好きだった」と語っており、本作が単なる勧善懲悪ではなく、キャラクターの多面性によって愛されていたことがうかがえます。
● 「音楽とともに記憶に残る」
また、多くの人が「今でも主題歌が頭の中に流れる」と話すように、オープニングや挿入歌のインパクトも忘れがたいものだったようです。中でも「ピッカリ・ビーのうた」は、軽快で耳に残るメロディとユーモラスな歌詞が特徴で、当時の視聴者にとっては“土曜の夜が始まる合図”のような存在でした。
テレビをつけてあの歌が流れると「明日が休み」という喜びと重なって、さらに記憶に刻まれたという意見もあります。
● 「もう一度観たい」と思わせる温もり
本作はその後長らく再放送されず、幻の作品とされていた時期もありました。しかし2005年のDVD-BOX発売をきっかけに、往年のファンがSNSやブログで再評価の声を上げ、「これこそ日本の昭和アニメの原点だ」とのコメントも見られました。
とくに「ビーの成長を見守る家族や友だちとの関係性が、本当に温かくて泣ける」「今の時代の子にも見せたい」という声が多く、単なる懐かしさではなく、現代にも通じる普遍的な価値を持った作品だと改めて評価されています。
このように、『かみなり坊やピッカリ・ビー』は、視聴者にとって単なる“子ども向けアニメ”ではなく、それぞれの人生の中にしっかりと根を下ろす“思い出の一部”として、深く愛された作品であることがわかります。
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■ 好きな場面
『かみなり坊やピッカリ・ビー』は全88話にわたって数多くのエピソードが放送されましたが、その中でもとくに視聴者の心に残った“お気に入りのシーン”というのがいくつも存在します。本項では、リアルタイムで観ていた世代、再視聴したファン、そして家族で楽しんだ人々の声をもとに、印象的で愛された「好きな場面」をいくつかピックアップしてご紹介していきます。
● 第1話:ビー、地上に舞い降りる瞬間
多くの視聴者がまず挙げるのが、記念すべき第1話で描かれた「ビーの地上初登場シーン」。雷雲の切れ間から落ちてくるように降臨する姿は、子どもたちにとって非日常の幕開けを感じさせる神秘的な場面でした。
雲からふわふわと降り立ったビーが、最初に出会ったのがポン太郎であり、その驚いた顔とビーの「……ポッ」という無言の表情のやりとりに、言葉がなくても通じ合う不思議な空気が流れていました。この静かな導入は、まるで童話のような感触を持ち、多くの視聴者の心に残ったようです。
● 第5話:ピッカリ光線の初披露
「ピッカリ光線」といえば、ビーの最も有名な必殺技の一つ。相手のおへそに花を咲かせて笑わせるという、ユニークかつ非暴力的な技として、子どもたちの間でも「真似して遊んだ」「紙で花を作っておへそに貼った」といった遊びが流行しました。
この技が初めて使われた第5話では、ワンパク6のケンカがエスカレートして収拾がつかなくなった時、ビーが間に入り「ピッカリ〜!」と光線を放ち、全員を爆笑させて和解に導くという構成でした。視聴者からは「ただのギャグではなく、ケンカを笑いで解決する姿勢が好きだった」という声が多く、今でも名場面として語られます。
● 第15話:チーコとの姉弟ごっこ
ビーとポン太郎の妹・チーコが、まるで本当の姉弟のようにやり取りをする第15話。ビーが人間界の生活を学ぶなかで、チーコに家事を教わったり、お人形遊びをしたりするエピソードで、ふだんはしっかり者のチーコがビーの前では甘えたり、笑ったりする表情が描かれたのが印象的です。
とくに、チーコが「ビー、おやつよ」と呼びかけるシーンでは、ビーが満面の笑みで飛びつく姿に「癒された」という感想が多く寄せられています。ほっこりした日常を描いた、心温まる回として記憶されているようです。
● 第22話:ビー、勉強ロボットに挑む!
お母さんが押し売りから買ってしまった「勉強ロボット」によって、ポン太郎が強制的に勉強漬けにされてしまうという珍エピソード。その異常さに気づいたビーがロボットに立ち向かい、自分なりのやり方で勉強の楽しさを教えようとする姿に「子どもの味方」ビーの魅力が光りました。
この回では、勉強嫌いな子どもたちが共感するポン太郎の姿、そして勉強というものを「やらされるものではなく、面白がるもの」として提示するビーの態度に、多くの親子視聴者が共鳴したと言います。
● 第38話:ガポネコと一時的な共闘
ビーのピッカリ・ハットが何者かに盗まれ、大ピンチに陥るという緊迫した回。その犯人がまさかの敵役であるガポネコだったという展開に視聴者は驚かされました。
しかし物語が進むにつれ、別の悪党によってガポネコも騙されていたことが判明。最終的にはビーを助けるために、ガポネコがワンパク6と共闘するという胸熱な展開に。「敵だけどかっこよかった」「あのときのガポネコには泣かされた」という声もあり、視聴者の中で彼の評価が一気に上がった名場面でした。
● 最終回:ビーの正体が明かされる
そして感動的なのが、シリーズ最終回。長らく謎に包まれていたビーの出自が、彼自身の口から語られる場面です。雷の国の“高貴な家系”に生まれ、地上での修行を終えて帰ることを告げるビー。雲井家との別れ、ワンパク6との涙のハグ、そして雲に乗って空へ帰っていくシーンは、「今でも思い出すと泣ける」という意見が後を絶ちません。
特に、ビーが最後に振り返って「みんなありがとう、またどこかで!」と叫ぶセリフは、視聴者に向けられた“直接の別れの挨拶”のように響き、心に深く刻まれました。
このように、『かみなり坊やピッカリ・ビー』には、視聴者の記憶に鮮烈に残る名シーンが数多く存在します。そのどれもが、単なるギャグでは終わらず、笑いと感動、時にはメッセージ性まで含んだ深みあるドラマだったことが、この作品の“時代を超えた魅力”の一因なのです。
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■ 好きなキャラクター
『かみなり坊やピッカリ・ビー』の最大の魅力の一つは、何といっても個性的で魅力あふれるキャラクターたちです。本作を語るうえで、視聴者が「誰が一番好きだったか」という話題は、当時の友人同士の間でもしばしば語られ、人気投票のようなやりとりがあちこちで繰り広げられていました。ここでは、特に人気が高かったキャラクターと、その人気の理由、印象的なエピソードなどを振り返ってみましょう。
● ピッカリ・ビー —— 誰もが一度は憧れた雷の少年
当然ながら、一番人気はやはり主人公のピッカリ・ビー。彼の愛らしい外見と、天真爛漫でどこか天然な性格、そして超能力を持ちながらも人間らしい弱さを併せ持つその姿に、男女問わず多くの視聴者が夢中になりました。
「いたずらをしても憎めない」「困っている人を見捨てない」「泣きながらも頑張るビーが好き」など、応援する気持ちを抱かせる主人公像は、当時としてはとても新鮮で、親しみやすさに満ちていました。特に、帽子を取られてしまって無力になる場面で「助けて」とポン太郎にすがるビーの姿に、「守ってあげたくなった」という視聴者も少なくありませんでした。
● ポン太郎 —— 自分を投影できる等身大の少年
ビーの親友であるポン太郎は、どこか頼りなくて勉強も苦手、でもビーのことを真剣に思っている心優しい少年として、特に当時の男子小学生から強い共感を集めていました。
「ビーと一緒に冒険してるポン太郎を見て、まるで自分がその場にいるような気がした」「ビーに憧れる気持ちはあるけど、実際に近いのはポン太郎だった」という声が多数。自分ではヒーローになれないけれど、ヒーローをそばで支えられる。そんな“等身大のパートナー”として、実は非常に重要なポジションを担っていたのが彼でした。
● 00五ェ門 —— 憎めないおバカなライバル
敵キャラクターでありながら、子どもたちの人気が非常に高かったのが、00五ェ門。自称・科学忍者というトンデモ設定、変な発明品、語尾の「ござるよ」、そしてどこかお人好しな性格と、あらゆる要素が子どもたちにとって“ツッコミどころ満載”で、ある種のアイドル的な存在でもありました。
「悪いことをしても許しちゃう」「ビーと五ェ門のやり取りは毎週楽しみだった」「大人になって見直したら、むしろ五ェ門が一番好きになっていた」という意見も見られ、ただの敵役にとどまらない魅力を持っていたことがうかがえます。
● チーコ —— 理想の“しっかり者妹”
ポン太郎の妹・チーコも、女性視聴者から根強い支持を受けていたキャラクターです。年上の兄よりも冷静で、ビーにも分け隔てなく接するその姿勢は、「私もこんな妹(あるいはお姉さん)になりたかった」という憧れの対象となっていました。
とくに、ビーに家事やマナーを教える回では、「小さなお母さん」的なポジションとして描かれ、その知恵と優しさが光っていました。「ビーとの距離感がちょうどよくて、見ていて微笑ましかった」との声も多数。
● ガミ子 —— 口うるさいけど、頼れる姉御肌
ワンパク6の紅一点・ガミ子は、「現実にいたらちょっと怖いけど、グループには欠かせない存在だった」と語られる存在。彼女のはっきりした物言いや、トラブルを収める判断力は、ガキ大将的なゴン太とはまた違ったリーダーシップを見せていました。
「女の子が活躍するアニメって当時少なかったけど、ガミ子は対等にやり合ってた」「言いたいことをビシッと言えるのがかっこよかった」との感想が、特に女性ファンから多く寄せられています。
● ガポネコ —— 突然人気急上昇した“ワルカワ系”
敵役ながら一部のファンから熱狂的な支持を受けていたのが、野良猫の親分・ガポネコ。最初は敵として登場し、ビーたちを罠にかけたり、食べ物を横取りしたりと悪さばかりしていたものの、話が進むにつれて「実は義理堅い」「仲間思い」「敵の敵には協力する」といった漢気のある一面が明らかに。
「ガポネコが出てくる回は面白いって決まってた」「悪役だけど人間味がある」「最後のほうでビーを助けてくれたときに号泣した」など、予想外の人気を獲得していきました。
● あなたの“推し”は誰?
こうしてみると、『かみなり坊やピッカリ・ビー』のキャラクターたちは、主役・脇役問わず、誰もが自分なりの魅力を持ち、視聴者の中にしっかりと記憶を残していることがわかります。
作品を振り返る際、「あのキャラのあのシーンが好きだったなぁ」「声優さんの声が耳から離れなかった」といった思い出とともに、ふと“自分だけの推しキャラ”がよみがえってくる――それがこの作品の素晴らしさの一つなのかもしれません。
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■ 関連商品のまとめ
『かみなり坊やピッカリ・ビー』は1967年から1968年にかけて放送された白黒アニメ作品でありながら、その人気ぶりから多くの関連グッズが展開されました。アニメの世界観を日常でも楽しめるような商品が次々と登場し、昭和の子どもたちにとってはまさに「テレビの外にもあるビーの世界」として親しまれていたのです。
ここでは、映像・書籍・音楽・ホビー・ゲーム・文房具・食品など、様々なカテゴリーにわたる関連商品を一挙にご紹介します。
■ 映像関連商品
テレビ放送からおよそ40年後、2005年に日本コロムビアより完全収録のDVD-BOXが発売されました。全88話を網羅したこのセットは、当時のファンにとってはまさに“待ち望んだ決定版”であり、特典ブックレットやオープニング・エンディングのノンクレジット映像なども収録され、コレクター心をくすぐる内容となっていました。
それ以前にも、1980年代後半にはVHS形式で一部のエピソードがビデオ化され、主にレンタルビデオ店や家庭用として流通。VHS特有のあたたかな映像とともに、当時の空気をそのまま残している点が魅力で、今でもオークションサイトなどで出回ることがあります。
■ 書籍関連
原作はムロタニツネ象による漫画『ビリビリ・ビート』ですが、テレビアニメ放送と並行して、講談社の雑誌『ぼくら』では『ピッカリ・ビー』のタイトルで新たに連載もされていました。アニメと漫画でそれぞれ別の視点が描かれたため、読者は“両方のビー”を楽しめる贅沢な展開となっていたのです。
アニメ化に伴い発行された「ぬりえ」や「まんが絵本」も当時の子どもたちに大人気で、現在では古書店やネットオークションでしか手に入らない貴重なアイテムとなっています。また、テレビ絵本型の「アニメストーリーブック」も一部出版され、簡略化されたストーリーとカラーイラストでビーの世界を再現していました。
■ 音楽関連
音楽面では、オープニングテーマ「ピッカリ・ビーのうた」や挿入歌「ピッカリ・ビーはいいな」などがEP盤(ドーナツ盤)でリリースされました。当時はテレビ番組の主題歌を家庭で聴ける手段が限られていたため、このレコードは子どもたちにとって宝物のような存在でした。
2000年代に入ってからは、昭和アニメの音源を復刻するCDシリーズに収録され、現在でも一部の通販サイトや配信サービスで楽曲を楽しむことが可能です。また、キャラクターソングとして扱われた「雲のドライブ」もマニア層から高く評価されています。
■ ホビー・おもちゃ
ビーをはじめ、ワンパク6や00五ェ門といった人気キャラたちは、当時の子ども向けソフビ人形やブリキ製のフィギュアとして商品化されました。とくにビーの「ピッカリ・ハット」部分が可動するフィギュアは、ギミック玩具として注目を集め、クリスマスや誕生日のプレゼントとしても選ばれることが多かったようです。
また、ミニカー型の「雲カー」や、ビーが乗る雷雲を模した浮遊型おもちゃなども一部で販売されており、遊び心満載のラインナップが展開されていました。
■ ゲーム・ボードゲーム
昭和40年代のアニメとしては定番の「すごろく」や「カードゲーム」も複数制作されました。ビーやワンパク6がマス目の中で珍事件を巻き起こす仕組みになっており、子どもたちの間で非常に盛り上がるアイテムでした。
さらに、テレビアニメを題材とした立体パズルや迷路ゲームも登場し、知育玩具として親御さんからも高評価を受けていたようです。中には玩具メーカー・バンダイが企画した「ビーのひらめきゲーム」と呼ばれる記憶力勝負のカード遊びもあり、当時の家庭遊びを彩っていました。
■ 食玩・文房具・日用品
アニメ人気に乗じて、ビーたちのイラストがプリントされた文具シリーズも展開されました。鉛筆、消しゴム、下敷き、自由帳、ペンケースといった学用品は、学校生活に欠かせない“推しグッズ”として、多くの小学生の筆箱に忍ばせられていました。
また、食玩系としては「ピッカリ・ビーのチューインガム」「雷キャラメル」などが短期間ながら販売され、中にはシール付きのものもありました。スーパーや駄菓子屋で「どれが当たりか」を楽しみながら集めるのが一つのブームになっていたのです。
■ プレミアムグッズ・記念商品
2000年代に入ってからは、昭和アニメの復刻ブームに乗って、「ピッカリ・ビー」関連の記念グッズも少数ながら登場しました。たとえばDVD-BOXの初回限定版には、ビーのピッカリ・ハットを模したミニフィギュアや、台詞入りのピンバッジセットなどが特典として付属。これらは今でもオークションやフリマアプリで高額取引されることがあります。
このように、『かみなり坊やピッカリ・ビー』は、当時の“メディアミックス戦略”が今ほど確立されていない中で、アニメ、漫画、玩具、音楽などさまざまなジャンルで幅広い展開を見せていた作品でした。懐かしさとともに、その商品群を今も大切に保管しているファンの存在が、本作の人気と愛着の深さを物語っています。
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■ オークション・フリマなどの中古市場
『かみなり坊やピッカリ・ビー』は1960年代に放送された白黒アニメということもあり、放送当時のグッズや関連アイテムは数が限られており、今日では非常に希少なコレクターズアイテムとなっています。現在、ヤフオク・メルカリ・ラクマといったフリマアプリやオークションサイトでは、そうした当時物や復刻グッズが少量ながらも出品され、マニアや昭和アニメファンの間で静かに取引が続けられています。
■ 映像ソフトの相場と動向
もっとも高額で取引される傾向にあるのが、2005年に発売された「DVD-BOX 全話収録セット」です。状態の良い完品であれば、現在でも15,000円から25,000円前後で落札されるケースが珍しくありません。特に、特典ブックレット付きの初回生産版はプレミア化しており、開封済みでも20,000円を超える落札実績が複数確認されています。
一方、1980年代に流通していたVHS版は流通量が非常に少なく、1巻あたり2,000~4,000円程度で取引されることが多いですが、状態やラベルの保存状態により、5,000円以上の値段がつくこともあります。VHSはセル版よりもレンタル版の方が比較的多く出回っており、「帯付き」「ラベル美品」などの条件がそろっていると価格が上がる傾向があります。
■ 書籍や雑誌の価格帯
漫画原作の初版本や、当時の『ぼくら』に掲載されたピッカリ・ビー関連の号、付録付きの児童雑誌などは、コレクターにとっては非常に貴重な存在です。状態の良いもの、特に表紙や綴じ込みポスターが残っている場合には、1冊あたり3,000円〜6,000円で出品されている例もあります。
また、アニメの放送中に販売された「ぬりえ」「まんが絵本」などは、表紙がカラーで状態が良いものに限れば、5,000円以上の値がつくことも。特に未使用・落書きなしの状態だと「幻」として扱われ、価格も跳ね上がります。
■ レコード・音楽商品
主題歌「ピッカリ・ビーのうた」を収録したEPレコード(ドーナツ盤)は、ジャケットが美品であれば2,000円~4,000円程度で落札されることが一般的です。ただし、帯付きや販促ステッカー付きのレア品は5,000円以上になることも。盤の状態よりもジャケットの保存状態が価格を大きく左右します。
また、近年発売された昭和アニメ楽曲をまとめたコンピレーションCDに収録されている音源は1,000円台で流通していますが、こちらも初回限定盤やブックレット付きとなるとプレミアがつくこともあります。
■ ホビー・おもちゃ系アイテム
60年代末期に製造されたビーのソフビ人形やフィギュアは、保存されているものが非常に少ないため、オークションでも出品されると一気に入札が集まります。高さ10cm前後のビーの立体フィギュアが、塗装剥げや欠損があっても5,000円以上で取引されるケースもあります。
さらに、ピッカリ・ハットが着脱できるタイプや、手を動かすと雷光ギミックが現れる仕組みのついたフィギュアは10,000円を超えるプレミア価格で落札されることも。化粧箱付きの完品は「博物館級」と評され、コレクター間で激しい競争が起こることもあります。
■ ボードゲーム・すごろくなど
テレビアニメキャラを使ったボードゲームや紙すごろくは、雑誌の付録や別売品として出回っていました。状態が良いもの(書き込みなし、駒付き、サイコロ完備)であれば、3,000円〜8,000円ほどの価値がつくこともあります。
とくに、「ピッカリ・ビーすごろく」には、ビーの能力がゲームの進行に関わる独自のルールがあり、遊びやすさとキャラ性の両立が評価されていたようです。付属の「おへそに花が咲く」イラスト付きカードがあると、さらに価値が高まります。
■ 文房具・食玩・生活雑貨
当時子どもたちに人気だった「キャラクター下敷き」や「消しゴム」「鉛筆」などの文具類も、現在では「昭和レトログッズ」として再評価されつつあります。とくに未使用・袋入り状態のものは1,000~2,000円の相場で売買されており、コレクターだけでなく昭和ブームに乗ったインテリア雑貨としての需要も見込まれています。
チューインガムやシール入りお菓子のパッケージ(※中身なし)も、キャラクターイラストが美麗であれば単体で出品されることがあり、こちらも500〜1,500円のレンジで取引されることがあります。
■ プレミア価値の今後
昭和アニメ全体が再評価されている近年、特に“モノクロ作品”や“白黒時代の国産TVアニメ”は独自の価値を持つようになってきています。『かみなり坊やピッカリ・ビー』もその例に漏れず、今後さらなるプレミア化が進む可能性が高いと見られています。
今では手に入らない当時物を探しているファンや、親子二世代・三世代で作品を楽しんでいる人たちも増えており、「昭和レトロ×ファミリー」ジャンルの代表的アニメとして中古市場における注目度も年々上昇中です。
コレクションの世界では、「モノが語る記憶」こそが最高の価値とされます。『かみなり坊やピッカリ・ビー』もまた、その商品ひとつひとつが視聴者の記憶と結びついた“宝物”であり、それを求める人の熱意が、今も中古市場を支えているのです。
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