『エキサイティング・アワー』(パソコンゲーム)

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【発売】:電波新聞社
【対応パソコン】:X68000 など
【発売日】:1994年
【ジャンル】:スポーツゲーム

■ 概要・詳しい説明

1980年代のアーケードプロレスを象徴する『エキサイティング・アワー』

『エキサイティング・アワー』は、1985年にテクノスジャパンからアーケードゲームとして登場したプロレスゲームである。のちに『くにおくん』シリーズや『ダブルドラゴン』などでアクションゲームメーカーとして強い存在感を示していくテクノスジャパンが、まだアーケード市場を中心に独自の作風を築いていた時代の代表的な一本であり、単純にレスラー同士を戦わせるだけではなく、テレビ中継されるプロレス興行をゲーム画面の中に作り上げようとした演出面にも大きな特徴があった。プレイヤーは一人のレスラーとなり、リング上で待ち受ける個性的な対戦相手を順番に倒しながらチャンピオンの座を目指していく。現在のプロレスゲームと比べれば操作体系や試合形式は非常に簡潔だが、パンチやキックといった基本攻撃から、投げ技、ロープワーク、空中殺法、場外への攻撃まで多数の行動が盛り込まれており、1985年という登場時期を考えると非常に表現力の高い作品だった。試合は基本的に3分間のシングルマッチで進行し、相手から3カウントを奪うピンフォールやリングアウトなどによって勝敗が決まる。制限時間が短いため、ただ相手から逃げ回っているだけでは勝つことができず、限られた時間の中で打撃を当て、相手を弱らせ、より威力の高い技へとつなげていかなければならない。この「3分間に攻防を凝縮する」という設計によって、アーケードゲームらしいテンポの良さと、プロレスらしい一進一退の試合展開が両立されている。

打撃から投げ技、ロープワークまで楽しめる実戦的なゲーム内容

ゲームの基本は、リング内を自由に移動しながら対戦レスラーへ接近し、パンチやキックなどの攻撃を仕掛けることにある。しかし、『エキサイティング・アワー』の面白さは単純な連打ゲームではない点にある。対戦相手が十分に元気な状態では大技を簡単に決めることができず、まずは打撃を積み重ねて相手をひるませ、その瞬間を狙って組み付きや投げ技へ移行することが重要になる。この攻撃の組み立てによって、実際のプロレスで見られる「細かい攻撃で相手を削り、勝負どころで大技を狙う」という流れがゲームとして自然に再現されている。さらにロープへ相手を振り、戻ってくるところへ攻撃を合わせるといったプロレス独特の攻防も可能で、ローリングソバット、ラリアット系の攻撃、ショルダースルーなど、見た目にも派手な技が次々に繰り出される。相手をダウンさせた後には追撃を行うことができ、状況次第ではコーナーポストから飛び込む空中技も狙える。リング外へ出た相手に対して攻撃する場外戦も用意されており、リング内だけに戦いを限定しなかったことも当時としては大きな魅力だった。画面上には現代の格闘ゲームのような明確な体力ゲージが表示されないため、プレイヤーは相手が倒れている時間や起き上がり方などから消耗状態を判断しなければならない。つまり数字を見て機械的に戦うのではなく、レスラーの動きそのものを観察することが攻略につながる。この仕組みが試合に独特の緊張感を与えており、同じ相手でも攻撃の入り方によって試合展開が大きく変化する。

5人の対戦レスラーによって段階的に高まっていく難易度

プレイヤーの前に立ちはだかるレスラーたちは、それぞれ外見だけでなく戦い方にも明確な個性が与えられている。序盤に登場するINSANE WORRIERは、最初の相手という位置づけもあって本作の基本操作や間合いを覚えるための存在となっている。続くKARATE FIGHTERは名前の通り格闘技を思わせる攻撃を得意としており、素早い打撃によってプレイヤーのペースを崩してくる。さらにワイルドな風貌を持つCOCO SAVAGE、反則的で荒々しい戦い方を見せるTHE PIRANIAと進むにつれて、単純に正面から攻撃しているだけでは勝ちにくくなっていく。そして最終的に待ち構えるのが王者BLUES BLOODYである。タイトルマッチという形で強敵に挑戦する構成になっており、ここまでに学んだ打撃、間合い、投げ、ロープワーク、ダウン後の追撃などを総合的に使うことが求められる。対戦相手が固定されている点だけを見るとボリュームは小さく感じられるものの、アーケードゲームとしては「敵の特徴を覚え、少しずつ攻略法を作り上げて先へ進む」という反復プレイを前提にした設計であり、短時間で何度も挑戦したくなる構成になっている。試合前後の演出にも力が入れられており、実況中継を思わせる雰囲気や対戦相手の紹介、ゴング、レフェリーによるカウントなどがゲームセンターの騒がしい環境でも分かりやすい形で表現されていた。レスラーの残り体力が危険な状態になると音楽が変化する仕組みもあり、画面上に体力ゲージを設置する代わりにサウンドによって危機を知らせるという演出が採用されている。こうした細部の積み重ねによって、プレイヤーは単なるアクションゲームではなく「自分がプロレス興行の主役としてリングに上がっている」という感覚を味わえるのである。

1994年に復活したX68000版とビデオゲームアンソロジー第8弾

アーケード版の登場からおよそ9年後となる1994年2月25日、電波新聞社からX68000向けとして『エキサイティング・アワー』が発売された。ただし単独商品ではなく、テクノスジャパンのアーケード作品『出世大相撲』と組み合わせた『ビデオゲームアンソロジー Vol.8 エキサイティングアワー/出世大相撲』という形での商品化である。電波新聞社およびマイコンソフト系のX68000ソフトでは、往年のアーケードゲームを家庭のパソコン環境で再現する「ビデオゲームアンソロジー」シリーズが展開されており、本作はその第8弾に位置していた。X68000版は5.25インチ2HDフロッピーディスク1枚に2作品を収録するという興味深い構成で、起動するドライブなどによって『エキサイティング・アワー』と『出世大相撲』を選択できる仕組みが採用されている。発売時の価格は5,300円で、当時すでに最新ゲームとは呼べなくなっていた1980年代中盤のアーケード作品を、歴史的な名作として保存・再現する色合いの強い商品だった。X68000というパソコン自体が、アーケードゲームに近い映像表現やサウンドを得意としたマシンだったことも、このシリーズの成立に大きく関係している。単に題材やルールだけを移した簡易移植ではなく、業務用ゲームの画面構成や動作感覚を家庭で再現することが重要視されており、当時のゲームセンターで遊んだユーザーが懐かしさを感じられることが商品の大きな価値だった。『エキサイティング・アワー』の場合も、派手なプロレスアクションだけでなく、リング、観客席、レスラーの動作、試合を盛り上げるサウンドなどを含めたアーケード版の雰囲気そのものをX68000へ持ち込むことが魅力となっていた。

『出世大相撲』との組み合わせから見える企画としての面白さ

Vol.8が特に興味深いのは、同じ格闘スポーツを扱いながら方向性の異なる二つの作品を一本にまとめた点である。『エキサイティング・アワー』がロープ、コーナーポスト、場外戦、大技などを駆使する華やかなプロレスを題材にしているのに対し、『出世大相撲』は日本の国技である相撲を題材にしている。つまり一枚のディスクで「アメリカンプロレスを思わせる派手なショー性」と「相撲という日本的な格闘競技」という異なるスポーツゲーム文化を味わえる構成になっていた。単純に二本の古いゲームを詰め合わせた商品というより、1980年代前半から中盤にテクノスジャパンが制作していたスポーツアクションゲームを振り返るアンソロジーとして見ることもできる。当時のX68000ユーザーにはゲームセンター黎明期からアーケードゲームに親しんできた層も多く、最新技術だけではなく過去の名作を高い再現度で所有したいという需要が存在していた。そのため『ビデオゲームアンソロジー』シリーズは、後年の復刻ゲームコレクションやアーケードアーカイブスに通じる思想を1990年代前半の段階で実践していたシリーズとも考えられる。現在ではダウンロード販売による復刻が一般的になっているが、当時は過去の業務用ゲームを家庭で忠実に遊ぶためには専用移植版そのものに大きな価値があったのである。

単純なルールの奥にプロレスらしい駆け引きを盛り込んだ完成度

『エキサイティング・アワー』を現在の視点から見ると、登場レスラー数や試合形式などは決して多くない。しかし本作が長く語られている理由は、1985年という早い時期に「プロレスをゲームとしてどう表現すれば面白くなるのか」という基本的な答えをかなり完成された形で提示していた点にある。打撃を当てて相手を弱らせ、大技を狙い、倒れたところでフォールへ移行するという基本的な流れに加え、ロープへ振る、コーナーから飛ぶ、リング外へ出るといった要素があるため、同時代の単純な対戦アクションとは異なるプロレス特有の試合運びを楽しめる。体力ゲージをあえて見せず、動作や音楽から状況を判断させる仕組みも、本作ならではの個性となった。また対戦相手ごとに戦い方が変化するため、プレイヤー自身が技の出し方や相手の行動パターンを覚えるにつれて上達を実感できる。短い3分間の中で、一方的に攻めていたはずが大技一発で形勢を崩されたり、時間切れ寸前にフォールへ持ち込んだりする場面が生まれることも、プロレスゲームとしてのドラマ性につながっている。1994年のX68000版は、こうした原作のゲーム性を約9年後のパソコン環境へ再提示した作品であり、単なる新作ゲームというより「アーケード文化を家庭へ保存するソフト」という意味合いを持っていた。後年にはPlayStation 4やNintendo Switchでもアーケードアーカイブスとして復刻され、『エキサイティング・アワー』そのものを遊べる環境は再び広がっているが、X68000版はそれよりはるか以前に行われた本格的な復刻企画として重要である。なお、X68000版について信頼できる公開資料から具体的な累計販売本数を確認することは難しく、大ヒット作として販売数を誇るタイプの商品だったと断定することはできない。その一方で、現在までソフトの情報や実機プレイが語り継がれていること、さらに原作が複数世代のハードへ復刻され続けていることを考えれば、本作は一時的な人気だけではなく、1980年代アーケードプロレスゲームを代表する作品として長期的な評価を獲得したタイトルと位置づけることができる。X68000版『エキサイティング・アワー』は、アーケードゲームの熱気を自宅のパソコンへ持ち込むことを目指した電波新聞社の復刻路線と、テクノスジャパンが作り上げたプロレスアクションの魅力が結び付いた、1990年代ならではの価値を持つ一本なのである。

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■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター

わずか2ボタンから多彩なプロレス技を引き出す操作性が最大の魅力

『エキサイティング・アワー』を実際に遊んで最初に感じる魅力は、操作そのものは非常に簡単でありながら、リング上で繰り出せる行動には驚くほど多くの種類が用意されていることである。基本操作は8方向レバーとパンチ、キックに相当する2ボタンを中心とした構成で、現代のプロレスゲームのように複数のボタンを複雑に組み合わせる必要はない。それにもかかわらず、立った状態からのパンチやキック、ショルダー攻撃、相手と組み合ってからのボディスラム、パイルドライバー、ブレーンバスター系の投げ、ロープへ振って戻ってきた相手への攻撃、倒れているレスラーへの追撃、さらにコーナーポストからの空中攻撃まで、1985年のアーケードゲームとは思えないほど豊富なプロレスらしい行動が詰め込まれている。この「操作方法は分かりやすいのに、状況によって技が変化する」という設計こそ、本作が現在でも遊びやすい理由の一つである。プレイヤーは技のコマンドを大量に暗記するのではなく、相手との位置関係、相手が立っているのか倒れているのか、自分が走っているのか組み付いているのかといった状況を判断しながらボタンを押す。その結果として技が変化するため、初心者でも偶然派手な大技を決められる一方、慣れてくると意図的に狙った展開を作れるようになる。単純なボタン連打だけでも序盤は戦えるが、強敵になるにつれて「今は打撃を当てるべきか」「組み付くべきか」「ロープへ振るべきか」「フォールへ移行するべきか」という判断が重要になる。このゲームは格闘ゲームのように相手の体力をゼロにすることを直接の目的としているわけではなく、最後にはフォールなどによって試合を決着させる必要がある。そのため、相手を痛めつけることと勝利条件を成立させることが別々になっている。ここにプロレスゲームならではの面白さがあり、どれだけ優勢に戦っていてもフォールへ移行するタイミングを間違えれば時間切れになってしまう。逆に押され続けていても、相手の隙を突いて大技を決め、そこから一気に試合をひっくり返せる場合がある。わずか3分という短い試合時間の中に、攻撃、反撃、大技、フォールというプロレスの基本的なドラマが凝縮されているのである。

見えない体力を相手の動きとBGMから読み取る独特の駆け引き

攻略を考えるうえで特に重要なのが、本作には現代の格闘ゲームでは当たり前となっている分かりやすい体力ゲージが存在しないことである。画面だけを見ても、相手があと一発で倒れるのか、まだ十分に余力が残っているのかを数字として確認することはできない。その代わりにヒントとなるのが、レスラーの動きや攻撃を受けた後の状態、そして試合中のBGMである。大きなダメージを受けて危険な状態になると音楽の雰囲気が変化するため、それが「そろそろフォールを狙える」という重要な目安になる。これは現在のゲームではあまり見られない仕組みであり、体力ゲージを視覚的に確認しながら計算して戦うのではなく、試合そのものを観察して相手の消耗を感じ取ることになる。攻略の基本は、いきなり投げ技を狙うのではなく、まずパンチやキックなどの安全な打撃を何度か当てて相手を弱らせることである。元気な相手に正面から組み付こうとすると反撃される危険が高いが、打撃を続けて相手が前のめりになるような状態を作ってから接近すると、組み技へ持ち込みやすくなる。そのため本作では「打撃→相手がひるむ→組み付く→大技→ダウン追撃」という一連の流れを覚えることが上達への第一歩となる。さらに重要なのが、同じような攻撃を無理に連続させないことである。CPUには反撃へ転じるタイミングが設定されているため、一度有利になったからといって延々と同じ攻撃を続けられるわけではない。数回の攻撃を成功させた後は距離を取り直したり、別の攻撃へ切り替えたりするほうが安全である。特に大技を連続して狙っていると、突然CPUに組み返され、そこから一気に形勢が逆転する場合がある。したがって、欲張って一方的に攻め続けるよりも「数発当てたら一度仕切り直す」という意識が重要になる。

INSANE WORRIERからBLUES BLOODYまで個性豊かな強敵が待ち受ける

序盤のINSANE WORRIERは、本作の基本操作と間合いを覚えるための相手として位置づけられる。真正面から無計画に突っ込むと反撃されるため、上下へ少し軸をずらしながら接近して打撃を入れ、ひるませてから投げ技を狙うことが重要になる。続くKARATE FIGHTERは素早い蹴りや格闘技風の攻撃を得意としており、単純な正面からの連打ではこちらが先に攻撃されやすい。攻撃軸をずらし、空振りを誘って反撃する考え方が必要になる。COCO SAVAGEまで進むとCPUの反撃が一段と強くなり、それまで通用していた攻撃パターンを繰り返すだけでは一気に逆転されることがある。ここでは一度攻撃を成功させても欲張らず、間合いを取り直す判断が重要となる。THE PIRANIAは覆面姿と荒々しい攻撃が特徴的なヒール系レスラーで、反則的に見える嫌らしい技でプレイヤーを苦しめる。リング中央を意識して戦い、ロープ際へ追い込まれないことが攻略のポイントとなる。そして最後に待つBLUES BLOODYは、王者らしく攻撃力、耐久力、反撃能力のいずれも高い。ここでは序盤から大技を欲張らず、打撃で確実に崩してから投げへつなぎ、十分に弱らせたところでフォールを狙う必要がある。5人という少ない人数ながら、それぞれがプレイヤーへ異なる戦い方を要求するため、対戦順そのものが攻略の練習コースになっている。

クリア後も続くタイトル防衛戦とアーケードゲームらしい周回構造

本作は、長い物語が進み最後にスタッフロールを見れば完全終了というタイプのゲームではない。大きな目標は5人のレスラーを順番に倒し、最終王者BLUES BLOODYからチャンピオンベルトを奪うことである。しかし王者になったところでプレイが完全に終了するわけではなく、その後はチャンピオンとしてタイトルを守り続ける戦いへと移行していく。この構造によって「挑戦者として頂点を目指す前半」と「王者として勝ち続ける後半」という二段階の楽しみ方が生まれている。初めて遊ぶ場合はBLUES BLOODYを倒すことを実質的なクリア目標と考えればよいが、本当にやり込む場合はその後の防衛戦でどこまで勝ち続けられるかが重要になる。アーケードゲームらしく、一度エンディングを見て終了するより、ハイスコアや連勝を伸ばすことに価値を置いた構造である。

必勝の基本は「打撃で崩す・欲張らない・音を聞く」

安定攻略の基本をまとめるなら、第一に相手が元気な状態で無理に組みに行かず、パンチやキックでひるませること、第二に一度攻撃が成功したからといって同じ攻撃を延々と続けないこと、第三にBGMや相手の動きを観察することが重要になる。フォールも早すぎると簡単に返されるため、相手が長くダウンするようになってから狙うほうが確実である。またリング中央付近を確保すると逃げ道を作りやすく、ロープ際へ追い込まれたときよりCPUの攻撃をかわしやすい。ロープワークや起き上がり攻撃を覚えると勝率はさらに上昇する。相手をロープへ送り、戻ってきたところへ攻撃を合わせる方法や、ダウンから起き上がる瞬間へショルダー系の技を重ねる方法などは非常に有効である。ただし同じ行動を過度に繰り返せば反撃される可能性があるため、あくまで状況に応じて使い分けることが大切である。

場外戦とコーナーポストは派手だがリスク管理も重要

場外へ飛び出して戦えることも本作の魅力だが、リングアウトカウントがあるため攻撃に夢中になると自分まで戻れなくなる危険がある。相手だけを場外へ残し、自分は早めにリングへ復帰してリングアウト勝ちを狙う戦術も立派な攻略法である。コーナーポストからの空中殺法も非常に爽快だが、相手が起き上がる前に確実に命中させられる状況で使わなければならない。失敗すれば大きな隙を作り、CPUから反撃を受ける原因となる。派手な技ほどリスクも高く、確実な場面を選ぶ必要があるところに、本作らしいプロレス的な駆け引きが存在している。

印象的なキャラクターとして際立つTHE PIRANIA

登場レスラーの中で特に印象を残す存在として挙げたいのがTHE PIRANIAである。覆面姿という視覚的な特徴だけでなく、戦い方まで悪役レスラーらしく、首や顔面を狙った嫌らしい攻撃を多用する。このためプレイヤーは自然と「こいつだけは倒したい」という感情を抱きやすい。現実のプロレスでヒールレスラーが観客の感情を引き出す役割を担うのと同じように、THE PIRANIAもゲーム内で明確な敵役として機能している。攻略上のライバルとしては素早いKARATE FIGHTERも強烈であり、最終目標としてはBLUES BLOODYが王者らしい存在感を放つ。登場人数が少ないからこそ、一人ひとりのシルエットや技、戦い方が強く印象に残るのである。

勝つだけでなく「プロレスらしい試合」を作ることもできる

王者まで安定して進めるようになると、単純な勝利とは違う楽しみ方が見えてくる。安全な打撃だけで攻略するのではなく、ロープワーク、場外戦、コーナーポスト、大技などを積極的に使って「見栄えのする試合」を自分から演出するのである。序盤は相手にも少し攻めさせ、反撃から大技を決め、最後は空中殺法からフォールへ持ち込む。こうしたプレイは最短攻略とは無関係だが、プロレスゲームとしては非常に面白い。プロレスという競技が単なる勝敗だけでなく試合展開そのものを楽しむ文化を持っているため、本作でも効率を超えた遊び方が成立するのである。

難しいからこそ上達を実感できる作品

難易度は現在の基準では高い。しかし最初は勝てなかった相手に、CPUの癖や間合いを覚えることで次第に勝てるようになる。この過程こそ本作の醍醐味である。INSANE WORRIERで打撃と組み技を覚え、KARATE FIGHTERで間合いを学び、COCO SAVAGEで欲張らないことを理解し、THE PIRANIAでリング位置とカウント管理を覚え、最後にBLUES BLOODYへ挑戦する。プレイヤー自身が段階的に成長する構造となっているため、レベルや経験値が表示されなくても自分が上手くなったことを明確に実感できる。複雑な裏技へ頼るより、CPUの性質とゲームの癖を理解することこそ最大の必勝法なのである。

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■ 感想・評判・口コミ

「昔のゲームなのに意外なほどプロレスらしい」という驚き

『エキサイティング・アワー』を現在あらためて遊ぶと、1985年の作品でありながら驚くほど「プロレスをしている感覚」が強いことに気付く。リング、ロープ、レフェリー、観客という必要最低限の構成しかないにもかかわらず、打撃、投げ技、ロープワーク、空中殺法、場外戦、フォールといったプロレスを象徴する動作がしっかり組み込まれている。最新ゲームのような精密なグラフィックや実況がなくても、プレイヤーがリングへ上がって戦っているという感覚が十分に成立していることが評価されやすいポイントである。初めて触れたプレイヤーでも偶然派手な投げ技が出たり、ロープへ走って攻撃できたりすると「こんな時代のゲームでここまでできたのか」と驚かされる。

少ないレスラー数を補う圧倒的なキャラクター性

登場レスラーの人数は現在の基準では明らかに少ない。しかし、一人ひとりが視覚的にも戦術的にも区別されているため、意外なほど記憶へ残りやすい。INSANE WORRIER、KARATE FIGHTER、COCO SAVAGE、THE PIRANIA、BLUES BLOODYという名前や姿は、何十年経ってからプレイ映像を見ても「あのレスラーだ」と思い出せるほど個性的である。特に覆面のTHE PIRANIAや野性的なCOCO SAVAGEなどは、名前を忘れていても姿だけ記憶しているという人が出るほど強い印象を持つ。一方で、現在のプロレスゲームと比較すれば「もっとキャラクターを増やしてほしかった」「使用レスラーを自由に選べれば良かった」という不満も生まれる。それでも、数を増やす代わりに一人ずつを覚えやすくした設計は、結果として本作の個性を強めている。

観客席まで含めて画面全体が賑やかなグラフィック

グラフィック面では、リング上のレスラーだけでなく観客席までしっかり描き込まれている点が評価される。背景の観客がプロレス会場らしい熱気を作り、レフェリーも試合へ参加するため、画面全体が常に動いている。現在の高解像度ゲームと比べれば当然粗いドット絵だが、1980年代中盤のゲームセンターで見れば非常に目立つ画面だったことが想像できる。レスラーの動きも大げさで、投げ技やダウン状態が視覚的に分かりやすく、少ないアニメーションの中で迫力を演出している。この古いドット絵ならではの力強さを魅力として評価する人も多い。

簡単なのに思い通りにはならない独特の操作感

操作評価は大きく分かれる。レバーと2ボタンという構成は簡単で、初めてでもすぐ攻撃できる。しかし、狙った技を正確に出そうとすると相手との距離や状態を理解しなければならず、急に難しく感じられる。技の多くが状況によって変化するため、初心者には「違う技が出た」「フォールしたかったのにできなかった」と感じられることがある。これを操作性の悪さとして捉える人もいる一方、慣れれば少ないボタンから多彩な技を引き出せる優れた設計と見ることもできる。最初は偶然出していた技を自分の意思で狙えるようになった瞬間に、本作の操作の面白さが分かってくる。

CPUの強さを熱さと見るか理不尽さと見るか

難易度は高く、特に後半ではCPUの強烈な反撃に苦しめられる。一度有利になったからといって安心して攻め続けると、突然組み返されて大技を連続で受け、そのまま敗北することもある。この急激な逆転を「プロレスらしい」と楽しむ人がいる反面、「CPUだけ反撃が強すぎる」と感じるプレイヤーもいる。しかし何度も挑戦して相手の癖を理解すると、最初は理不尽に思えた戦いにも一定の攻略法があることが分かる。自分の実力が上がることで難易度への印象が変化するタイプのゲームであり、この点がアーケード作品らしい中毒性にもつながっている。

体力ゲージがないことに対する評価も大きく分かれる

明確な体力ゲージがない点も、本作の特徴である。初心者には「いつフォールすればよいか分からない」という不親切さにつながる一方、慣れたプレイヤーはダウン時間や動き、BGMから相手の状態を判断するようになる。数字を確認して機械的に戦うのではなく、レスラーの様子を見て消耗を判断するという設計は、実際のプロレス観戦にもどこか通じるものがある。この手探り感を面白いと感じるか、情報不足だと感じるかで評価は分かれる。

3分という短さが何度も遊びたくなる中毒性を作る

一試合が短いため、敗北してもすぐ再挑戦したくなる。残り時間が減るほど焦りが生まれ、フォールを狙うべきか、さらに攻撃すべきか、リングアウトを狙うべきかという判断が重要になる。長時間じっくりプロレスを楽しみたい人には短すぎるが、短時間で集中して遊ぶアーケードゲームとしては非常に優れたテンポになっている。同じ相手でもプレイヤーの上達によって試合内容が大きく変わり、昨日勝てなかった敵を今日は簡単に倒せるという成長実感が中毒性を生み出している。

何十年経っても「あのレスラーが強かった」と思い出せる作品

本作は強敵の印象が非常に残りやすい。ゲーム全体の細かな内容を忘れていても「モヒカンの敵」「覆面の敵」「野性的なレスラー」などを覚えている人がいる。アーケードゲームでは長い物語よりも、一回ごとのプレイ体験が記憶へ残るため、強烈なCPUや個性的な敵ほど作品の象徴となる。苦戦した記憶そのものが後年の懐かしさへつながっていることは、本作のキャラクター作りが成功していた証拠でもある。

プロレスファンほど元ネタを想像する楽しみが広がる

登場レスラーは実在選手ではないが、1980年代のプロレス文化を思わせる要素が随所にある。格闘技風レスラー、野性的な怪奇派、覆面ヒール、堂々とした王者など、当時のプロレスで親しまれたさまざまなタイプをゲームらしく誇張している。そのためプロレスに詳しい人ほど「このレスラーは誰を意識したのだろう」と想像する余地があり、ゲーム外のプロレス文化と結び付けて楽しめる。

ゲームセンター世代には懐かしく、現代のプレイヤーには歴史的に興味深い

当時ゲームセンターで遊んだ人にとって、本作は画面や音を見ただけで当時の記憶を呼び戻す作品になりやすい。一方、現在初めて触れる人には「1985年にすでにプロレスゲームの基本がここまで完成していた」という歴史的な驚きがある。前者は思い出や懐かしさを重視し、後者は古さや不便さも含めてゲーム史的な価値を評価する。この二つの視点が共存していることが、現在の本作に対する評判を興味深いものにしている。

現在の基準ならボリューム不足という弱点も明確

現代作品と比較すれば、レスラー数、試合形式、ゲームモードなどの少なさは明らかな弱点である。タッグマッチ、大会、選手育成、自由なキャラクター選択などはなく、基本的に固定された相手を順番に倒していく。しかし1985年のアーケードゲームという前提に立てば、一回数分のプレイを何度も繰り返させる設計こそ当時の主流だった。巨大なボリュームではなく、一試合の面白さと反復性に重点が置かれている。その時代背景まで含めれば、単純な「内容不足」だけでは説明できない魅力が見えてくる。

勝つことから「良い試合を作ること」へ遊び方が変化する

攻略を覚えると、本作の楽しみ方は変化する。最初はCPUを倒すことだけを考えるが、安定して勝てるようになるとロープワーク、場外戦、コーナー攻撃などを積極的に使って試合を演出したくなる。一方的に倒すより、相手にも攻撃させてから逆転したほうがプロレスらしい。最後を派手な空中技からフォールで締めることもできる。このように「勝利以外の価値」を自分で作れることが、単純なシステムの中に意外な奥深さを与えている。

粗削りでもプロレスゲームの原点として強い存在感を持つ

総合的な評判としては、操作の癖、CPUの強さ、キャラクター数の少なさなど明確な欠点がある一方、それを補って余りあるほど「プロレスゲームらしさ」が強い作品と言える。技を決めた爽快感、逆転された悔しさ、残り時間への焦り、フォールカウントの緊張感、そして3カウントを奪った瞬間の達成感が短い試合の中に凝縮されている。当時から遊んでいた人には懐かしい名作として、現在初めて触れる人にはプロレスゲーム史の原点を体験できる作品として価値がある。誰でも簡単にクリアできるゲームではないが、理解するほど自分なりの試合を作りたくなる。この性格こそ『エキサイティング・アワー』が長い年月を経ても語り継がれている大きな理由なのである。

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■ 当時の宣伝・現在の中古市場など

「新作」ではなく往年の業務用ゲームを復刻すること自体が商品価値だった

1994年2月25日に電波新聞社から発売されたX68000用『ビデオゲームアンソロジー Vol.8 エキサイティングアワー/出世大相撲』は、同時代の最新ゲームと同じ方法で大々的なテレビCMを展開して一般家庭へ売り込むタイプの商品ではなかった。最大の特徴は、1985年にゲームセンターで稼働していたテクノスジャパンの『エキサイティング・アワー』と『出世大相撲』という二つのアーケード作品を、およそ9年後のX68000上で高い再現度を目指して復活させたことである。つまり商品そのものが「昔ゲームセンターで遊んだ作品を家庭で再び遊べる」という明確な宣伝材料を持っていた。1994年当時にはスーパーファミコン、メガドライブ、PCエンジンなどの家庭用ゲーム機が普及し、さらに次世代機の登場も近づいていたため、1985年作品を単純に新作として見せても強い訴求力は得にくい。一方、X68000のユーザーにはアーケードゲームの移植精度を重視する愛好家が多く、古典的な作品でも「業務用に近い姿で保存できる」ということ自体に価値があった。電波新聞社の「ビデオゲームアンソロジー」は、まさにこの需要を狙ったシリーズだったと言える。

パソコン雑誌文化と非常に相性の良かった復刻ソフト

当時のパソコンゲーム販売では専門雑誌の役割が非常に大きかった。発売予定、新作紹介、広告、攻略記事、読者投稿などを通して作品を知り、それからパソコンショップや専門店で購入するという流れが一般的だった。電波新聞社はパソコン関連出版にも強く、コンピュータやゲームへ関心の高い読者と接点を持っていた。この出版文化と「往年の業務用ゲームをX68000へ復刻する」という企画は相性が良く、X68000専門誌や総合パソコン誌、ゲーム雑誌の商品紹介、販売店の発売予定表、店頭告知などが主な情報経路となったと考えられる。インターネットやSNSがない時代だけに、雑誌や口コミ、パソコン通信、ショップ店頭の情報が作品認知に大きな影響を与えていた。

シリーズ名そのものが販促材料となったビデオゲームアンソロジー

本作は単体の『エキサイティング・アワー』ではなく、『ビデオゲームアンソロジー Vol.8』として販売された。シリーズでは過去の有名アーケードゲームが順次復刻されており、すでにシリーズを集めていたX68000ユーザーにとっては「次はどの作品が登場するのか」という期待そのものが購買動機になった。Vol.8では『エキサイティング・アワー』と『出世大相撲』という二作品を一枚のディスクに収録し、異なる格闘スポーツゲームを一本の商品で楽しめる構成が特徴だった。価格は5,300円で、最新ゲームというよりも「往年のアーケード作品を保存し所有する」という商品価値が前面に出たパッケージだった。

具体的な販売本数は確認できず大ヒット作と断定することはできない

X68000版については、生産本数、初週販売数、累計販売数などの具体的な公式数字は現在確認しにくい。そのため「数万本売れた」「シリーズ最大のヒットだった」といった数字を根拠なく断定することはできない。1994年という発売時期を考えると、X68000自体が一般家庭向けゲーム機のような巨大市場ではなく、専門性の高いパソコンユーザーを中心とした市場だった。また原作稼働から約9年が経過していたため、最新作として爆発的に売るより、往年のゲームセンター作品を愛するユーザーへ向けた商品だったと考えるのが自然である。一方、ビデオゲームアンソロジーがその後も続いたことから、アーケードゲームの忠実な復刻には一定の需要が存在したと見ることができる。

現在の中古市場では数千円台が一つの中心価格帯

2026年現在の中古市場を見ると、X68000版『エキサイティング・アワー/出世大相撲』は、極端な超高額プレミアソフトというより、状態に応じて数千円程度で流通することが多い。箱や説明書の有無、ディスクの動作確認、その他付属品によって価格差が生じる。確認できる中古取引では2,000円台後半から5,000円前後に収まる例があり、通常中古品の一つの目安として3,000円から5,000円程度を考えることができる。ただし流通量は多くないため、いつでも同じ価格で買えるとは限らない。欲しい時期に在庫がなければ高値の品しか残らないこともあり、逆にコレクション整理で安価な個体が出る場合もある。

完品・動作確認済みほど評価されやすい

中古市場で重要なのは単純な販売価格だけではない。箱、説明書、はがき、サポート関連書類などが揃っている完品かどうか、フロッピーディスクが正常に読み込めるかどうかが価値を大きく左右する。X68000ソフトを実際に遊ぶ目的なら動作確認済みであることが重要だが、コレクターの場合は箱や説明書の保存状態を重視することもある。そのため同じタイトルでも、ディスクのみ、箱説明書付き、付属品完備、未開封などによって評価が大きく変化する。

5.25インチフロッピーディスクの劣化が最大の注意点

発売から30年以上が経過しているため、5.25インチ2HDフロッピーディスクという記録媒体そのものの劣化も無視できない。中古出品では「実機がないため未確認」「初期画面まで確認」「読み込み保証なし」といった説明が付くことが珍しくない。外箱がきれいでもディスクが正常に読めなければゲームソフトとしての実用価値は下がる。一方、資料やコレクションとして所有する場合には箱、説明書、ラベルなどの状態が優先されることもある。購入時には価格だけを見るのではなく、何を目的として入手するかを明確にして状態を確認する必要がある。

「過去最高価格」は簡単には断定できない

オークションやフリマ市場については、過去30年間の全取引を網羅した公的な記録が存在するわけではない。そのため「歴代最高価格は○万円」と断定することは難しい。高額な出品価格が表示されていたとしても、その金額で実際に売れたとは限らない。中古市場を正確に見る場合は、希望価格と実際の落札・購入価格を分ける必要がある。通常のX68000版ソフトについては数千円台の成立例が中心となっている一方、アーケード版の純正資料や基板関連品などはまったく別のコレクター市場を形成することがあるため、両者を混同しないことも重要である。

現在ではビデオゲームアンソロジー全巻を集めるための一巻でもある

発売当時は『エキサイティング・アワー』や『出世大相撲』を遊ぶことが購入目的だったが、現在では「ビデオゲームアンソロジー」というシリーズそのものを収集する需要も存在する。さまざまなメーカーのアーケード作品がX68000へ移植されたシリーズであり、1990年代前半に行われた復刻文化の記録としても興味深い。そのため本作の価値は『エキサイティング・アワー』単体の人気だけでなく、X68000、電波新聞社、テクノスジャパン、ビデオゲームアンソロジーといった複数の収集テーマによって支えられている。

発売当時5,300円だったソフトが現在も数千円の価値を持つ意味

発売価格5,300円に対し、現在の中古市場でも状態の良いものが数千円程度で扱われる点は興味深い。物価変動や中古品の経年劣化を考えれば単純比較はできないが、古いパソコンゲームの中には一度ほとんど価値を失った後、レトロPCブームによって再び評価されるものも多い。本作も単なる古いフロッピーではなく、X68000とアーケード移植文化を象徴する商品としての意味が加わり、一定の中古価値を保っている。

当時の復刻ゲームから現在の歴史資料的コレクションへ

発売時には「ゲームセンターの名作をX68000で遊ぶ」ことが最大の魅力だったが、現在ではソフトそのものが1990年代パソコン文化を伝える物理的資料となっている。大規模な販売本数を誇った作品ではなくても、電波新聞社が往年のアーケードゲームを復刻し続けた流れの中で重要な一本であり、現在ではゲーム内容だけでなくパッケージやフロッピーディスクそのものにも価値が生まれている。状態の良い個体は年々減少する可能性が高いため、今後は価格以上に「完品を見つけられるか」「正常に動作する個体を入手できるか」という点が重要になっていくだろう。

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■ 総合的なまとめ

プロレスゲームの基本形を1985年の段階で作り上げていた作品

『エキサイティング・アワー』を総合的に評価すると、1980年代中盤という早い時期に「プロレスをテレビゲームとして遊ぶ面白さ」を非常に分かりやすい形へまとめた作品と言える。現在のプロレスゲームのように大量のレスラー、細かな能力値、育成要素、ストーリーモード、オンライン対戦などを備えているわけではない。しかし、リングの中を自由に移動し、パンチやキックで相手を弱らせ、組み付いて投げ技を決め、ロープワークを利用し、コーナーポストから飛び、最後にはフォールで3カウントを奪うという一連の流れは、プロレスという題材をゲームへ置き換えるうえで重要な要素をほぼ押さえている。特に優れているのは、操作に使用するボタン数を抑えながら、状況によって異なる技を出せる仕組みを作ったことである。初心者はパンチやキックだけでも試合へ参加できる一方、慣れてくるとロープ、投げ、追撃、空中攻撃などを意図的に組み立てられるようになる。複雑な説明を読まなくてもプロレスらしい行動が自然に出せるという設計は、アーケードゲームとして非常に完成度が高い。

短い3分間に凝縮されたプロレスならではのドラマ

一試合が基本的に3分という短さで終わる点も、本作の大きな個性である。長時間かけて体力を削り合うのではなく、試合開始直後から積極的に攻撃しなければ時間が足りなくなる。そのため、打撃で主導権を取る、大技を決める、相手が弱ったと判断したらフォールへ移るという判断を短時間で繰り返す必要がある。残り時間が少なくなると、それまで優勢だったプレイヤーでも焦りが生まれ、強引にフォールを狙うか、リングアウト勝ちを狙うかといった判断を迫られる。逆にCPUから一方的に攻撃されていても、一度大技を決めれば流れが変わることがあり、最後まで結果が分からない。この短い時間の中に逆転、危機、反撃、決着というプロレス的なドラマが生まれることが、本作を単純な殴り合いゲームに終わらせなかった理由である。

少ない登場人物だからこそ際立つレスラーたちの個性

対戦相手の人数そのものは多くないが、INSANE WORRIER、KARATE FIGHTER、COCO SAVAGE、THE PIRANIA、BLUES BLOODYというレスラーたちは、それぞれ異なる外見と戦闘スタイルを持っている。最初の相手から最終王者までを順番に戦うことで、プレイヤーは自然にゲームの基本を学んでいく。INSANE WORRIERを相手に打撃と組み技を覚え、KARATE FIGHTERでは素早い攻撃への対応を求められ、COCO SAVAGE以降になると攻撃を欲張らないことが重要になる。THE PIRANIAではヒールレスラーらしい嫌らしい戦い方に苦しめられ、最後のBLUES BLOODYではこれまで覚えた技術を総合的に使わなければならない。このように対戦順そのものが難易度曲線として機能しているため、人数が少なくても一人ひとりの存在感が強い。

ゲームとしての弱点はCPUの厳しさと情報の少なさ

現在の視点から見ると不親切な部分も多い。最大の特徴であり同時に弱点にもなるのが、明確な体力ゲージが存在しないことである。初心者は相手へどれくらい攻撃を与えれば3カウントを奪えるのか分からず、早過ぎるフォールを何度も返されることになる。CPUも後半になるほど強く、こちらが優勢だったにもかかわらず、一度組み付かれたところから連続して大技を受けて敗北することもある。状況によって技が変化するシステムも、慣れれば少ないボタンから多彩な攻撃を扱える長所になるが、初心者には「狙った技が出ない」という不満につながる。しかし、こうした癖を理解して相手との距離、攻撃する回数、組み付くタイミングを覚えていくこと自体が、本作における攻略の中心でもある。

X68000版はアーケード文化を保存する復刻作品として重要

1994年2月25日に電波新聞社から発売されたX68000版は、『ビデオゲームアンソロジー Vol.8』として『出世大相撲』とともに収録された。原作の稼働から約9年が経過していたため、1994年当時の最新ゲームとして発売されたというより、かつてゲームセンターで人気を集めたアーケードゲームをX68000上で再現する復刻企画としての性格が強い。現在なら昔のアーケードゲームをダウンロード販売で簡単に復刻できるが、1990年代前半には業務用作品を家庭で忠実に遊ぶこと自体が特別な価値を持っていた。特にX68000はアーケードゲームの移植先として高い性能を発揮したパソコンであり、電波新聞社による移植作品には「できる限り元の業務用ゲームへ近づける」という方向性があった。そのためX68000版『エキサイティング・アワー』は、単なる昔のゲームの再発売ではなく、1980年代のゲームセンター文化を1990年代のパソコン環境へ残す役割を担った作品と評価できる。

『出世大相撲』との二本立てによって生まれたX68000版独自の魅力

X68000版では『エキサイティング・アワー』だけを単独収録するのではなく、同じテクノスジャパンによる『出世大相撲』とセットになっている。片方はアメリカンプロレス風の派手なリングアクション、もう片方は日本の相撲を題材にしたスポーツゲームであり、一枚のディスクから異なる格闘スポーツ作品を楽しめる。現在では一作品ごとに復刻されるケースが多いため、この二本立てという商品構成そのものが1990年代のパッケージソフトらしい魅力となっている。また『ビデオゲームアンソロジー』というシリーズを通して過去のアーケード作品を収集していたユーザーにとっては、Vol.8というシリーズ番号にも価値があった。

Atari 7800系統は家庭用向けに再構成された別方向の存在

海外家庭用ゲーム機への展開では、Atari 7800向けの関連作品も存在する。ただし日本版アーケード作品をそのまま完全移植したものとして考えるより、海外版や続編系統との関係を持った家庭用向け再構成として見るほうが分かりやすい。ハード性能や容量の制約からキャラクターや演出が整理され、業務用版そのものを保存するより家庭用環境でプロレスアクションを成立させる方向へ重点が置かれている。これに対してX68000版は家庭用向けの再解釈より、原作アーケード版をできる限り再現する方向を目指している。この思想の違いが各版の印象を大きく変えている。

PlayStation 4版では現代的なアーケード保存へ進化

2014年にはPlayStation 4向けのアーケードアーカイブスとして復刻され、原作を現代環境で遊べるようになった。ここでは最新ゲーム風に作り直すリメイクではなく、当時のゲームシステムや難易度を含めて再現・保存する方向へ重点が置かれている。ハイスコアを競うためのモードなども用意され、単に昔の作品を一度遊ぶだけではなく、アーケードゲーム本来のスコアアタックとして再び楽しめる環境が整えられた。1994年のX68000版が物理メディア時代の復刻だったとすれば、PS4版はデジタル配信時代の保存方法を象徴する存在と言える。

Nintendo Switch版は携帯性によって遊び方を大きく変えた

2019年にはNintendo Switchでもアーケードアーカイブス版が登場し、テレビだけでなく携帯モードでも遊べるようになった。かつてゲームセンターの大型筐体で遊ばれていた作品を手のひらサイズの機器へ入れて持ち歩けるという、1985年当時には考えられなかった遊び方が実現している。短時間で一試合を終えられる本作と携帯機との相性は良く、外出先や短い空き時間に数試合だけ遊ぶというスタイルにも向いている。

現代版が存在してもX68000版の歴史的価値は消えない

現在『エキサイティング・アワー』を純粋に遊びたいだけなら、古いX68000実機とフロッピーディスクを用意するより、現代の復刻版を利用するほうが手軽である。それでもX68000版の価値がなくなることはない。1994年という時代に、すでに約9年前のアーケード作品を保存する価値のあるゲームとして選び、高い再現性を目指して家庭へ移植したこと自体に意味があるからである。現在のアーケードアーカイブスへつながる「昔の業務用ゲームをオリジナルに近い形で残す」という思想を、物理メディア中心の時代に実践していた作品の一つである。

遊ぶなら現代復刻、物として楽しむならX68000版という違い

1985年当時のアーケードゲームを手軽に体験したいなら後年の復刻版が適している。スコアを競いたい場合にも追加モードが便利である。一方、1990年代パソコン文化、X68000、電波新聞社のアーケード移植そのものを味わいたいならX68000版にしかない価値がある。5インチフロッピーディスクを実機へ入れて起動する体験、『出世大相撲』との二本組という構成、ビデオゲームアンソロジーVol.8というパッケージそのものは現代版では代替できない。各版は単純な完成度の上下だけでなく、それぞれの時代に求められた役割が違うのである。

現在遊んでも理解しやすい普遍性が最大の強み

発売から何十年経っても比較的すぐ遊び方を理解できるのは、本作のルールが非常に普遍的だからである。相手を攻撃して弱らせ、倒したらフォールする。ロープへ振り、走って攻撃し、必要なら場外でも戦う。プロレスを少しでも知っていれば目的は説明なしでも理解できる。複雑な育成システムや長い会話がないため、ゲームを起動してすぐ本題へ入れる。操作やCPUには時代を感じる部分があるものの、大技を決めて相手を倒し、レフェリーのカウントが進んで3カウントを奪う瞬間の快感は現在でも分かりやすい。

総合評価――古さではなくプロレスゲームの原点を楽しむ一本

総合的に見ると、『エキサイティング・アワー』は現在の基準でボリュームや快適性を競うゲームではない。登場レスラーは少なく、CPUは手強く、体力表示もなく、技の出し方にも独特の癖がある。しかし、その限られた条件の中でプロレスという題材を最大限ゲーム化しようとした発想と完成度には、現在でも見るべきものがある。打撃で相手を崩し、大技を狙い、ロープを利用し、場外へ飛び出し、最後は3カウントを奪う。ゲーム開始から決着までの数分間に、プロレスの分かりやすい魅力が凝縮されている。

また本作の歴史を追うと、一つのゲームが時代によって異なる意味を持ってきたことも分かる。1985年のアーケード版ではゲームセンターで最新のプロレスアクションを体験する作品だった。1994年のX68000版では、過去のアーケード名作を高い再現度で保存する『ビデオゲームアンソロジー』の一作となった。そしてPlayStation 4やNintendo Switchの時代には、アーケードアーカイブスによってデジタル環境で原作を保存し、新しい世代へ伝える作品へ変化した。つまり『エキサイティング・アワー』は、その時代ごとに異なる形で「昔のプロレスゲームの面白さ」を受け継いできたタイトルなのである。

とりわけX68000版は、この長い歴史の中間地点にある重要な存在と言える。アーケード版がまだ完全な歴史的作品になる前の1994年に、すでに復刻対象として選ばれていたことは、それだけ原作の個性が強かったことを示している。最新作としてではなく、残す価値のあるアーケードゲームとして再商品化されたからである。現在ではさらに年月が経過し、X68000版自体までレトロゲームとなった。その結果、一つの作品の中に「1985年のアーケード文化」と「1994年のX68000移植文化」という二つの時代が重なっている。

派手な最新ゲームと比べれば小規模である。しかし数分間の試合の中で、殴る、蹴る、投げる、走る、飛ぶ、フォールするというプロレスゲームの楽しさをこれほど明快に味わえる作品は、ゲーム史を振り返るうえでも価値が高い。攻略を覚えるまでは厳しく、思うように技が出ないこともある。それでも何度も挑戦してCPUの癖を理解し、苦手だったレスラーを倒し、最後にBLUES BLOODYからベルトを奪ったときには、単純なゲームだからこその大きな達成感が生まれる。そして上達後には勝つことだけでなく、ロープワークや空中技を積極的に使い、自分なりに派手な試合を演出する遊びへ発展していく。

『エキサイティング・アワー』は、1980年代のプロレスゲームを懐かしむためだけの作品ではない。「複雑なシステムがなくても、プロレスという題材だけでここまで熱いゲームを作れる」ということを現在でも示してくれる一本である。そして1994年のX68000版は、その面白さを一度過去から救い上げ、家庭のパソコンへ残した重要な復刻版として、電波新聞社の『ビデオゲームアンソロジー』シリーズを代表する存在の一つとして位置づけることができるのである。

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