
おれは直角 DVD-BOX 坂本千夏 新品 マルチレンズクリーナー付き
【原作】:小山ゆう
【アニメの放送期間】:1991年1月5日~1991年10月12日
【放送話数】:全36話
【放送局】:フジテレビ系列
【関連会社】:読売広告社、スタジオぴえろ
■ 概要
1991年1月5日から1991年10月12日までフジテレビ系列で放送されたテレビアニメ『おれは直角』は、週刊少年サンデーに連載されていた小山ゆうの同名漫画を原作とした痛快時代劇コメディである。本作は、幕末の長州藩を舞台に、名門校「萩明倫館」に入学した下級武士の少年・石垣直角と彼を取り巻く仲間たちの騒動や友情を描く学園活劇であり、硬派な時代背景と、時にギャグに振り切った明るい演出が絶妙に交錯する点で特徴的だ。アニメーション制作は当時人気のスタジオぴえろが担当し、全36話が放送された。
このアニメの大きな魅力は、「幕末」という激動の時代を背景にしながらも、シリアスに偏りすぎず、コメディ要素を全面に押し出した点である。江戸末期といえば尊王攘夷や開国論が交錯し、多くの志士が命を賭して行動していた時代だが、『おれは直角』ではそうした時代の緊張感を踏まえつつ、主人公・直角が繰り出す直角切りや、学園での人間模様をユーモラスに描くことで、子供から大人まで楽しめる娯楽作品へと昇華させている。史実を下敷きにしつつも、あくまでキャラクター主体で展開するため、歴史を知らない視聴者でも抵抗なく物語に入り込める作りになっていた。
放送枠は毎週土曜日18:30~19:00という、当時の子供たちにとっては夕食前の“ゴールデンタイム”にあたり、ファミリー層が揃って観やすい時間帯に設定されていた。前番組は同じくぴえろ制作の『平成天才バカボン』であり、ギャグを中心としたコミカルな作品が続く形での編成だったことから、視聴者にとっても自然な流れで受け入れられたといえる。
制作スタッフ陣には、スタジオぴえろの精鋭が多数参加しており、独自のデフォルメ表現やユーモラスな作画演出が作品の雰囲気を形づくった。キャラクターデザインは原作の勢いを保ちながらもアニメ的に親しみやすい形にアレンジされ、直角の顔芸やアクロバティックな動きが毎回の見どころとなった。さらに、坂本千夏や田中真弓といった実力派声優陣の参加によって、キャラクターの個性が強烈に際立ち、視聴者の印象に強く残る仕上がりとなっている。
また、本作は小山ゆうのデビュー作をアニメ化したという点でも注目を集めた。漫画版『おれは直角』は1973年から1976年にかけて『週刊少年サンデー』で連載されていた作品で、連載当時から斬新な切り口とギャグセンスで一定の人気を誇っていた。その作品が約15年の時を経てアニメ化された背景には、1980年代後半から1990年代初頭にかけての“レトロ作品再評価”の流れも影響していると考えられる。当時は少年漫画の名作を掘り起こして再び子供たちに届けようとする試みが盛んで、『おれは直角』のアニメ化もその一環であった。
放送終了後も作品は忘れ去られたわけではなく、2005年には全36話を収録したDVD-BOXが発売された。このDVD-BOXは当時としては初の商品化であり、往年のファンにとっては待望のアイテムとなった。ブックレットや特典映像も収録されており、アニメ史や小山ゆう作品の研究にとっても貴重な資料となっている。さらに近年では動画配信サービスで一部配信されるなど、現代の視聴者にも触れやすい環境が整いつつある。
総じて『おれは直角』は、幕末の武士道を背景に据えながらも、ギャグや友情を中心に据えた独自の路線を歩んだ作品だ。歴史や剣術といった硬派な題材と、直角の真っ直ぐすぎる生き方をコミカルに描く手法が絶妙にかみ合い、時代を超えて語り継がれる魅力を持っているといえるだろう。
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■ あらすじ・ストーリー
『おれは直角』の物語は、幕末という時代背景を舞台に、下級武士の家に生まれた少年・石垣直角の成長と騒動を描いている。直角は幼い頃から「武士は曲がらず、常に直角であるべし」という父の教えを胸に刻み、何事にも真っ直ぐで妥協を許さない性格に育った。そのため周囲からは頑固すぎると呆れられることも多いが、彼の真摯さは人々の心を動かしていく。
物語の冒頭では、直角が名門校「萩明倫館」に入学するところから始まる。明倫館は長州藩でも選ばれし武家の子弟しか入学を許されない学び舎であり、直角のように身分が低い家柄の少年が入ることは極めて異例であった。この前代未聞の出来事はすぐさま館内で話題となり、名門出の生徒たちは直角を好奇の目で見たり、露骨に見下したりする。だが、直角はその空気に怯むことなく、自分の信じる武士道を貫いて堂々と振る舞う。
入学早々、直角は剣術の腕前を披露する機会を得る。彼の得意技である「直角切り」は、通常の剣筋を直角に折り曲げるかのような奇妙な軌道を描く必殺技で、相手を翻弄する。これによって直角は周囲の注目を集め、一部の生徒から恐れられる存在となる。しかし、その奇抜な技や融通の利かない性格はトラブルを呼び込み、次々と波乱を巻き起こしていく。
特に、上級武家の子である北条照正や、学内で幅を利かせていた不良グループの月形との衝突は、物語の大きな山場となる。照正は西洋かぶれで傲慢な性格をしており、直角を見下しては度々嫌がらせを仕掛ける。しかし、直角が一貫して「友」として接し続ける姿に触れ、やがて心を開いていく過程が描かれる。一方、月形との関係も当初は敵対的であったが、直角の実力と真っ直ぐな心意気に打たれ、後に協力者となっていく。このように、敵として登場した人物が直角の人柄によって次第に変化し、友情を築いていく展開は、本作の大きなテーマの一つといえる。
さらに物語は、明倫館という学び舎を舞台にした学園ドラマとしての側面も強い。授業や剣道部の活動、文化的行事や武芸大会などを通じて、直角と仲間たちが成長していく姿が描かれる。その中で、直角の頑固すぎる性格が周囲を巻き込んだ大騒動を引き起こしながらも、最終的には笑いと感動に結びつく展開が繰り返される。例えば、剣道部の仲間と力を合わせて挑む武芸大会では、直角の真っ直ぐな戦い方が仲間たちに勇気を与え、団結心を深める契機となる。
また、女性キャラクターとの関わりも物語を彩る要素の一つだ。貴杉じゅんは当初こそ直角を見下していたが、その実力と人柄に触れることで協力者となり、やがて彼の成長を支える存在となっていく。直角の周囲には他にも町人の幼馴染・綾乃などが登場し、学園の外での交流や日常生活の描写によって、作品世界がより豊かに広がっていく。
物語のクライマックスに向けては、直角と仲間たちが直面する試練が次第に大きくなっていく。明倫館の中での立場を巡る争いや、他藩の学園との競い合いなど、スケール感が広がりを見せる中でも、直角はあくまで「武士は曲がらず、直角であるべし」という信念を貫く。彼の真っ直ぐすぎる行動は時に失敗や誤解を生むが、最終的にはその純粋さが人々の心を打ち、状況を好転させる。
最終話にかけて、直角の成長が鮮やかに描かれる。最初は浮いた存在だった彼が、仲間や敵対していた者からも信頼を得て、明倫館の中で欠かせない存在へと変わっていく姿は、視聴者に爽快感と感動をもたらした。物語は、直角の信念が周囲を変え、時代の荒波をも乗り越える原動力となることを示して幕を閉じる。
こうして『おれは直角』は、幕末という激動の時代を背景にしながらも、学園青春劇・コメディ・友情物語といった多彩な要素を融合させた独自のストーリーを展開している。直角の「真っ直ぐさ」が織りなす物語は、視聴者に笑いと感動を与えるだけでなく、自分の信念を貫くことの大切さを伝える普遍的なテーマを持っていた。
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■ 登場キャラクターについて
『おれは直角』の最大の魅力のひとつは、個性的で強烈なキャラクターたちの存在にある。主人公・石垣直角を中心に、仲間やライバル、家族、さらには明倫館の教師陣まで、誰もが濃い個性を放ち、物語に彩りを添えている。以下では、代表的な登場人物を取り上げ、その特徴や視聴者の印象を交えて詳しく紹介する。
石垣直角(声:坂本千夏)
物語の主人公。小柄な体格ながら抜群の敏捷性を持ち、剣の軌道を直角に折り曲げる必殺技「直角切り」を得意とする少年である。幼少期から父の「武士道とは曲がらず、常に直角であるべし」という教えを守り続け、その信念を生き様にまで昇華している。
直角の特徴は、何事にも融通が利かず「真っ直ぐすぎる」点に尽きる。周囲の空気を読まずに自分の正義を押し通すため、トラブルメーカーと見られることもあるが、その頑固さは時として人々の心を動かす力になる。視聴者の中には「不器用だが憎めない」「直角の真っ直ぐさに救われた」という声も多く、彼の存在感はまさに作品の核となっていた。
貴杉じゅん(声:折笠愛)
長州藩内でも高い家柄の出自を持つ少女。初登場時は明倫館の剣道部や直角を見下すような態度をとっていたが、直角との対決で敗れたことをきっかけに考えを改める。その後は彼の実力を認め、協力者として行動するようになる。
視聴者の間では「ツンからデレへと変化していく過程が面白い」と語られ、直角との関係性を楽しみにしていたファンも多い。また、照正が彼女を「自分の許嫁」と呼んでいることも、物語に人間関係の複雑さを加えていた。
北条照正(声:田中真弓)
代々城代家老を務める名門の出で、非常にわがままかつ西洋かぶれの少年。洋服を着こなし、蘭学を学んだと豪語するが、その知識はかなり怪しい。直角を敵視して嫌がらせを繰り返すが、彼があくまで友として接する姿勢に触れるうちに次第に打ち解けていく。
照正は「嫌なやつだがどこか憎めない」というキャラクターとして人気があり、田中真弓の快活な演技がその個性を際立たせていた。西洋文化に憧れる一方で、直角の不器用なほどの武士道精神に惹かれていく様子は、時代の変化を象徴する存在としても描かれている。
月形(声:二又一成)
直角の二年先輩で、入学当初に明倫館を牛耳っていた不良グループのリーダー。傍若無人な態度と高いプライドで知られていたが、直角に敗北したことを機に努力を重ねる一面を見せる。二度目の敗北の後は直角の実力を認め、剣道部の設立にも尽力するなど、大きな変化を遂げるキャラクターである。
この「敵から味方へ」という変化は、視聴者に強い印象を与えた。かつての敵が信頼できる仲間へと変わる過程は、直角の真っ直ぐさが周囲を動かす力を象徴していた。
郷慎太郎(声:子安武人)
直角の一年先輩で、当初は月形の配下として行動していたが、直角に敗れた後に友情を結ぶ。以降は直角のよき理解者として活躍し、作品における“兄貴分”的な存在となる。まだ若手だった子安武人の初期代表作の一つでもあり、後に大物声優として知られる彼の原点を感じさせるキャラクターとしても注目された。
石垣子太夫(声:青野武)
直角の父。下級武士としての誇りを持ちながらも、息子が起こす騒動に頭を抱える日々を送っている。困難に直面すると「切腹するしかない」と嘆く癖があり、コメディリリーフ的な役割を担っていた。彼の存在は、直角が「直角道」を歩むに至った家庭環境を示すと同時に、作品に温かみを与えていた。
石垣香苗(声:滝沢久美子)
直角の母であり、父とは対照的に穏やかで柔和な性格。直角を肯定的に支え続け、家庭の安らぎを象徴する存在である。作品全体がコミカルに進行する中で、香苗の落ち着いた態度は視聴者に安心感を与えた。
綾乃(声:大谷育江)
アニメオリジナルのキャラクターで、直角の幼馴染として登場。町人の娘であり、直角の素朴な一面を知る存在でもある。原作には登場しなかった彼女の存在は、直角の日常を描くエピソードを膨らませ、物語に幅を持たせた。大谷育江の可憐な声も相まって、ファンの間では密かな人気キャラとなっていた。
細刈(声:緒方賢一)
直角の担任教師。厳格な一面を見せつつもどこか抜けたところがあり、直角たちの騒動に振り回される立場にある。緒方賢一のコミカルな演技によって、教師としての権威とお人好しな性格が絶妙に表現されていた。
立花薫(声:大平透)
城代家老として北条家を支える人物。普段は真面目だが、実は笑い上戸であり、直角の顔芸を唯一再現できるという特技を持つ。重厚な立場でありながらもユーモアを秘めており、シリアスとギャグのバランスを支えるキャラクターだった。
その他のキャラクター
直角の祖父にあたる北条や、友人のニコチン(アニメ版ではニコピン)など、脇役たちもそれぞれ強烈な個性を持ち、作品の世界を盛り上げた。彼らは単なる背景ではなく、直角や仲間たちの人間関係を映し出す重要なピースとなっている。
このように『おれは直角』のキャラクターたちは、単なる善悪や強弱の対立に留まらず、互いに影響を与え合い、成長していく関係性が魅力である。視聴者からは「敵役も最終的には愛せる存在になる」「直角の真っ直ぐさに影響を受ける周囲の変化が胸を打つ」といった声が多く寄せられた。キャラクター同士の掛け合いと関係の変化こそが、この作品を時代を超えて楽しめる理由のひとつなのだ。
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■ 主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
アニメ『おれは直角』の音楽は、作品の世界観を象徴する大切な要素のひとつである。幕末の長州藩を舞台にした痛快コメディでありながら、主題歌には現代的でポップな曲調を採用しており、作品全体の軽快さと親しみやすさを高めていた。特にオープニングテーマ「学問のスズメ」とエンディングテーマ「嫌いにならずにはいられない」は、アニメファンの記憶に強く残る名曲として知られている。
オープニングテーマ:「学問のスズメ」
オープニング曲「学問のスズメ」は、森雪之丞が作詞、本間勇輔が作曲、村松邦男が編曲、そしてビジーフォー・スペシャルが歌唱を担当している。明るくリズミカルなメロディに乗せて、「勉強も人生も遊び心を忘れずに進もう」という前向きなメッセージが込められている。
タイトルの「スズメ」には、子供のように小さくとも集団で元気に飛び回る存在感、そして庶民的で愛嬌のある生き物という意味合いが重ねられている。まさに下級武士ながら堂々と学問所へ乗り込む直角の姿を象徴しており、視聴者に「この主人公は型破りだが憎めない」という印象を与える導入曲となった。
映像面でも、この曲の陽気さは最大限に活かされていた。直角が顔芸を披露するシーンや、剣を振り回すユーモラスな動きがテンポよく組み込まれ、子供たちが真似したくなるような映像に仕上げられていた。オープニングが始まると、家族の誰もが「また直角の時間だ」と笑顔になったと語る視聴者も少なくない。
エンディングテーマ:「嫌いにならずにはいられない」
一方、エンディングを彩った「嫌いにならずにはいられない」は、同じく森雪之丞と本間勇輔のコンビによる楽曲である。こちらは一転して軽やかでお洒落な雰囲気を漂わせ、ほんの少しの切なさを含んだメロディが印象的だった。歌詞には、直角のような不器用な人物に対して「呆れることも多いけれど、結局は憎めない」という温かい視点が込められている。これはまさに直角というキャラクターの人間的魅力を凝縮したような楽曲であり、作品のテーマそのものを体現していた。
エンディング映像では、夕暮れの中でキャラクターたちが日常を過ごすシーンが描かれ、学園ドラマとしての側面が強調された。視聴者にとっては物語の余韻を感じながら、直角や仲間たちの関係性を想起させるひとときであり、毎回エピソードを見終えた後の心を和ませる役割を果たしていた。
楽曲制作陣とその背景
作詞の森雪之丞は、1980年代から1990年代にかけて数多くのアニメソングやポップスを手がけた名作詞家であり、軽妙でユーモアに富んだ歌詞づくりに定評がある。本作でも、学園コメディにふさわしい遊び心あふれる言葉選びで作品世界を彩った。
作曲の本間勇輔は、舞台音楽やテレビドラマのテーマなども多く手がける作曲家であり、ダイナミックで親しみやすいメロディ作りに長けている。両者のコンビが生み出した楽曲は、『おれは直角』というユニークな作品をより親しみやすく、かつ耳に残りやすいものにした。
歌唱を担当したビジーフォー・スペシャルは、コーラスグループとしての実力を持ちながらコミカルなパフォーマンスでも人気を博していた。彼らの持ち味であるユーモラスな表現が、直角たちのドタバタコメディと自然に重なり、楽曲の魅力を倍増させていたのである。
挿入歌・キャラクターソングの存在
『おれは直角』は当時のアニメにありがちな大量のキャラクターソング展開こそ行わなかったが、一部エピソードではキャラクターの心情を反映した挿入歌が流れることもあった。特に友情や努力をテーマにした楽曲は、物語の熱量を高める役割を果たした。
また、後年にはファンディスクやイベントで出演声優による歌唱が披露され、非公式ながらキャラクターソング的な位置づけで語られることもある。坂本千夏や田中真弓といった声優陣の演技力は歌にも活かされ、ファンの間では「直角や照正が歌ったらこうなるだろう」と想像する楽しみも広がっていた。
視聴者の反応と後年の評価
当時の子供たちにとって、オープニングの「学問のスズメ」は学校生活とリンクしやすい歌詞だったため、「授業中につい口ずさんでしまった」という声も少なくない。また、エンディングの「嫌いにならずにはいられない」は大人の視聴者からも「作品を見守るような温かさがある」と評価され、親世代にも親しまれていた。
2005年にDVD-BOXが発売された際には、主題歌を収録したCDが特典として付属したことが話題となった。さらに、近年のアニメソング再評価の流れの中で、配信サイトやカラオケでも歌えるようになり、当時を知らない若い世代が興味を持つきっかけにもなっている。ネット上の感想では「意外に耳に残る名曲」「平成初期アニメの隠れた良曲」として再発見されている。
音楽が果たした役割
『おれは直角』における音楽の役割は単なるBGMや背景ではなく、作品そのものを象徴するエッセンスであった。オープニングが作品世界への入口となり、エンディングが物語を優しく締めくくる。この両輪があったからこそ、視聴者は毎週の放送を一つの儀式のように楽しみにできたのだろう。
結果として、主題歌やエンディングは単体の楽曲として以上に、「直角」というキャラクターや作品全体の雰囲気と切り離せない存在となった。音楽を通じて作品を思い出す人も多く、その意味では『おれは直角』は楽曲面でも成功したアニメであったといえる。
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■ 声優について
アニメ『おれは直角』を語る上で欠かせないのが、声を吹き込んだ実力派声優たちの存在である。1990年代初頭という声優界が次の世代へ移り変わる過渡期にあって、本作にはベテランから若手まで幅広いキャストが集結し、それぞれがキャラクターの個性を最大限に引き出した。声優陣の演技がキャラクター像を補強し、作品全体の完成度を高めた点は、多くのファンにとって強く印象に残っている。
主人公を支えた声優たち
石垣直角(声:坂本千夏)
主人公・石垣直角を演じた坂本千夏は、当時すでに『タッチ』の上杉和也や『はれときどきぶた』などで知られ、少年役に定評があった声優である。直角というキャラクターは小柄で不器用、けれども正義感が強く、何事にも全力投球する真っ直ぐな性格を持つ。坂本はその真っ直ぐさを少年らしい張りのある声で表現し、コミカルな場面ではテンポの良いギャグ演技を、シリアスな場面では熱さを前面に押し出す芝居を見せた。特に「直角切り」を繰り出すときの気合いのこもった叫びは、視聴者の耳に強烈な印象を残した。
北条照正(声:田中真弓)
わがままなお坊ちゃんキャラ・照正を演じたのは、田中真弓。『ONE PIECE』のルフィや『天空の城ラピュタ』のパズーなどで知られる彼女だが、本作でもその明るく快活な声質が存分に活かされた。照正は嫌味でありながらもどこか憎めないキャラクターで、田中の芝居はその二面性を見事に体現。西洋かぶれの奇抜さや、直角に嫉妬する子供っぽさを軽妙に表現し、視聴者から「照正が出てくると場が華やぐ」と評された。
貴杉じゅん(声:折笠愛)
藩内の名家に生まれたじゅんを担当した折笠愛は、まだキャリア初期の頃ながらも繊細で女性らしい声質を持ち、役柄に気品を与えていた。初めは直角を見下す立場にあったじゅんが、次第に彼を認め協力者へと変化していく過程は、折笠の演技によって一層説得力を増した。特に、直角に心を動かされる場面での柔らかな声のトーンは、ファンの間で高く評価された。
脇を固める実力派たち
月形(声:二又一成)
直角の先輩であり、初期のライバルとして立ちはだかる月形を演じた二又一成は、当時からコメディリリーフとシリアスの両面をこなせる声優として知られていた。直角に敗北してから友情を築いていく過程を、威圧感のある声から徐々に温かみのある響きに変化させていく演技で表現し、キャラクターの成長を際立たせた。
郷慎太郎(声:子安武人)
当時まだ若手だった子安武人にとって、本作は初期の代表作の一つである。郷は一見クールだが心根は熱いキャラクターであり、子安の低めの声質がその人物像に説得力を与えた。後に『新機動戦記ガンダムW』や『銀魂』など数々の役で大成する子安の、若々しい演技を楽しめる貴重な作品ともいえる。
家族と教師陣の声
石垣子太夫(声:青野武)
直角の父を演じた青野武は、『ドラゴンボールZ』の界王や『チョッパー』など数々の名脇役で知られるベテラン。子太夫の情けなくも威厳を保とうとする姿を、重厚感とユーモアの入り混じった声で演じ分け、コメディとドラマのバランスを見事に取った。
石垣香苗(声:滝沢久美子)
直角の母・香苗役の滝沢久美子は、穏やかで母性的な声質を活かし、家庭的な温かさを演出した。直角が奔放に振る舞う場面の中で、香苗の声は視聴者に安心感をもたらす存在であった。
細刈(声:緒方賢一)
担任教師・細刈を演じた緒方賢一は、コミカルな教師役を得意とする声優であり、本作でもその持ち味を遺憾なく発揮。直角たちに振り回される姿を軽妙なテンポで演じ、作品全体を明るいトーンで包み込んだ。
立花薫(声:大平透)
城代家老である立花を演じたのは、重厚な声で知られる大平透。普段は厳格だが笑い上戸という二面性を、声の緩急で巧みに表現した。特に直角の顔芸を再現する場面での意外性は、ファンの間でも語り草になっている。
その他のキャストとアニメ独自の役柄
アニメオリジナルのキャラクターである綾乃(声:大谷育江)や、友人ニコチン(声:松本梨香)といった配役も注目に値する。大谷はのちに『ピカチュウ』役で国民的声優となるが、当時から可愛らしい演技で作品に彩りを添えていた。松本梨香もエネルギッシュな声を響かせ、直角の仲間たちの中で存在感を発揮した。こうした若手の登用は、結果的に後のアニメ史における重要な布石となった。
視聴者の感想と後年の評価
放送当時、ファンからは「声優陣が豪華」「キャラの個性と声が完璧に一致している」といった感想が多く寄せられた。特に直角役の坂本千夏と照正役の田中真弓の掛け合いは、絶妙なテンポ感とコメディセンスで人気を博した。
また、後年のアニメファンからは「子安武人や大谷育江、松本梨香といった後の大物声優が若手時代に参加していた」という点も注目されており、声優史の観点から見ても価値のある作品と再評価されている。
総じて『おれは直角』の声優陣は、作品のコミカルで痛快な空気を支える柱であった。直角の真っ直ぐさ、照正のわがまま、月形の成長、そして家族や仲間の温かさ。これらを生き生きと表現した声の力こそが、視聴者を物語に引き込み続けた最大の要因のひとつだったといえるだろう。
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■ 視聴者の感想
アニメ『おれは直角』は1991年に放送された作品でありながら、放送当時から多くの視聴者に強い印象を残し、その後の再評価でも根強い人気を誇っている。ここでは当時のリアルタイム世代の反応と、後年DVDや配信を通じて初めて出会った世代の感想を交え、幅広い視聴者の声をまとめてみたい。
放送当時の子供たちの反応
当時小中学生だった世代にとって、『おれは直角』は土曜の夕方を楽しませてくれるエンターテインメントだった。特に主人公・石垣直角の「直角切り」や、顔芸を交えたユーモラスな動きは、子供たちの間で真似をするブームを生んだという。「学校で直角の顔真似をして笑いを取った」「剣道ごっこをするときは必ず直角切りをやった」という証言は、当時の熱狂ぶりを物語っている。
また、コメディ色の強い作風にもかかわらず、友情や武士道精神といった真面目なテーマも含まれていたことから、「笑えるのに心に残る」「ギャグアニメと思ったら胸が熱くなる場面もあった」と語る人も少なくない。時に大人っぽいテーマに触れることで、子供ながらに考えさせられたという声もあった。
親世代・家族での視聴
放送枠が18:30から19:00という時間帯だったこともあり、夕食時に家族全員で観るという家庭も多かった。親世代からは「子供と一緒に安心して楽しめるアニメだった」という評価が多い。直角の融通の利かない生き方を「今どき珍しい真面目な子」と好意的に受け止める親もいれば、「時代劇をコメディでやるのが新鮮だった」という意見もあった。特に武士道や友情といったテーマは、親世代にも響くものがあり、世代を超えて楽しめる作品として受け止められていたようだ。
印象に残るエピソードへの感想
多くの視聴者が口を揃えて挙げるのは、直角とライバルたちの関係性である。たとえば、北条照正が直角に心を開いていく過程は「憎たらしいのに最後は応援してしまう」と高評価であり、月形が直角に敗北した後に仲間として歩み始める展開も「少年漫画らしい胸のすく展開」として強く支持されていた。
また、武芸大会や学園行事のエピソードは特に人気が高く、「直角の真っ直ぐさに仲間が引っ張られて団結していく姿が好きだった」と振り返る声も多い。ギャグと熱血のバランスが絶妙で、何度見ても飽きないと語るファンも少なくない。
女の子キャラクターへの感想
貴杉じゅんや綾乃といった女性キャラクターについても、多くの感想が寄せられている。じゅんに対しては「最初は嫌な子だったのに、気づけば直角を支えるヒロインになっていた」「ツンデレの原点のようなキャラ」といった意見が目立つ。綾乃については「町人という立場で直角を支える姿が良かった」「アニメオリジナルキャラなのに印象深い」と評価されている。視聴者の中には「子供の頃、綾乃に恋をした」という思い出を語る人もいたほどだ。
声優の演技に対する感想
当時から声優陣の演技に注目していたファンもいた。「坂本千夏さんの直角の叫びが耳に残っている」「田中真弓さんの照正は本当にわがまま坊ちゃんそのものだった」「青野武さんの切腹ギャグは笑わずにいられなかった」など、具体的なセリフや演技が記憶に残っているという声が非常に多い。後年になって声優ファンが振り返ると、「今では大物となった声優が若手時代に活躍していた貴重な作品」として再評価されることも多い。
DVD化・配信で再評価した世代の声
2005年に発売されたDVD-BOXや近年の配信サービスで『おれは直角』に触れた世代からも、多くの感想が寄せられている。特に平成や令和のアニメを見慣れた世代からすると「昭和末期の作風と平成初期の空気が混ざった独特の雰囲気が新鮮」「ギャグのテンポが速く、今のアニメと比べても全然古く感じない」という声が目立つ。
また、「親が昔観ていたアニメを一緒に観たら意外と面白かった」という親子二世代での感想もあり、作品が時代を超えて楽しめることを示している。
ネット上での感想・口コミ
インターネット上では「もっと評価されるべき隠れた名作」という意見が多く見られる。SNSや動画サイトのコメント欄には「直角の真っ直ぐさに元気をもらった」「平成初期アニメの良さが詰まっている」といった感想が寄せられている。中には「ギャグアニメかと思ったら友情物語としても泣ける」という驚きの感想もあり、作品の多層的な魅力が再発見されている。
総括:視聴者の心に残り続ける理由
視聴者の感想を総合すると、『おれは直角』が愛された理由は大きく三つに集約される。
主人公・直角の真っ直ぐで不器用な生き方に共感し、笑いながらも心を打たれる点。
敵役やライバルですら最後には魅力的なキャラクターへと変化する人間関係の描写。
ギャグとシリアスのバランスが絶妙で、子供から大人まで楽しめる普遍性。
こうした特徴は視聴者の心に強烈な印象を残し、放送から30年以上が経過した今なお語り継がれている理由となっている。
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■ 好きな場面
アニメ『おれは直角』には、笑いを誘うギャグシーンから心に響く感動的な場面まで、多彩なエピソードが散りばめられている。放送当時から「このシーンが忘れられない」という声が多く寄せられており、DVD化や配信で再び観た視聴者からも「あの場面はやっぱり最高」と再評価されている。ここでは特に印象的とされる名場面をいくつか取り上げ、視聴者の心に残った理由を掘り下げてみたい。
直角切りの初披露シーン
多くの視聴者にとって、最初の大きな衝撃となったのが直角の必殺技「直角切り」の初登場である。普通の剣筋ではあり得ない直角に折れ曲がるような斬撃は、理屈では説明できないが映像的なインパクトが非常に強く、「えっ、どうやってそんな動きを!?」と子供たちを驚かせた。
この場面は直角がただの下級武士ではなく、特別な個性を持つ主人公であることを鮮烈に印象づけ、作品全体のトーンを決定づけるものとなった。視聴者からは「直角切りを真似して竹刀を振った」「友達同士で直角切りごっこをした」といった思い出話も多く、まさにアイコニックな場面だったといえる。
照正との衝突と和解
北条照正は直角にとって最初の大きなライバルであり、二人の関係性は物語を大きく動かす軸となった。特に印象的なのは、照正が直角を見下し続けた末に、彼の真っ直ぐな心意気に触れて次第に態度を変えていく場面だ。
あるエピソードでは、照正が直角に対して「身分の低い者がここにいるべきではない」と強く言い放つが、直角は真っ向から「武士に高いも低いもない、心が直角であればそれでいい」と応じる。その姿勢に照正が動揺し、やがて彼を認めていく過程は、多くの視聴者にとって胸を熱くする瞬間だった。後年、ファンの間では「直角と照正の友情はこの作品の真の見どころ」という声も多い。
月形との再戦
月形との因縁は、直角の成長を示す象徴的なエピソードのひとつだ。初めて直角に敗北した後、プライドをかけて鍛錬を積んだ月形が再び挑んでくる。二度目の対決はただの力比べではなく、互いの信念をぶつけ合う真剣勝負となり、視聴者を大いに熱狂させた。
最終的に直角が勝利を収めるが、その戦いの中で月形は直角を敵ではなく仲間として認めるようになる。このシーンは「敵がライバルを経て味方になる」という少年漫画的王道の展開を見事に描き切っており、多くのファンが「一番好きな場面」として挙げる名エピソードとなった。
剣道部結成のエピソード
直角を中心に仲間たちが集まり、萩明倫館の剣道部が結成されるエピソードも人気が高い。最初は衝突ばかりしていた生徒たちが、次第に直角の真っ直ぐさに感化され、一つの目標に向かって団結する姿は、学園ドラマとしての魅力を存分に発揮していた。
この場面について視聴者からは「直角は一人ではなく、仲間がいるから強いんだと感じた」「部活の思い出と重なって涙が出た」という声が寄せられている。特に中高生だった当時の視聴者にとって、青春の象徴のように映ったシーンだったのだろう。
父・子太夫の切腹ギャグ
シリアスな場面ばかりでなく、コメディとして語り草になったのが直角の父・子太夫の「切腹騒動」である。直角が問題を起こすたびに「もう切腹するしかない!」と騒ぎ立てる姿は、完全にギャグとして描かれ、毎回視聴者の笑いを誘った。
この繰り返しギャグは「来た来た!」と子供たちに期待されるほど定番化しており、作品のコミカルな側面を象徴する場面となっている。後年になっても「子太夫の切腹ギャグは忘れられない」という感想が多く見られるのは、そのインパクトの強さゆえだろう。
最終回の余韻
最終話で直角が仲間たちとともに困難を乗り越え、堂々と成長した姿を見せる場面は、多くの視聴者にとって感動的なクライマックスだった。「最初は浮いた存在だった直角が、最後にはみんなから信頼されるようになった」という流れは、学園青春物語の王道でありながら強い爽快感をもたらした。
放送当時は「もっと続いてほしかった」という声も多く寄せられ、後年DVDで見直したファンからも「最終回は何度見ても泣ける」という感想が多い。作品の締めくくりとして、直角の信念が最後まで貫かれたことが高く評価されている。
総括
視聴者の好きな場面を振り返ると、
コメディ的な笑いの場面(直角の顔芸、子太夫の切腹騒動)
熱血青春劇としての名シーン(直角切り初披露、月形との再戦、照正との和解)
学園友情ドラマの集大成(剣道部結成、最終回の団結)
といった多彩な魅力がバランスよく語られていることが分かる。これこそが『おれは直角』が単なるギャグアニメに留まらず、多くの視聴者の心に刻まれ続けている理由なのだろう。
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■ 好きなキャラクター
『おれは直角』は個性的なキャラクターが数多く登場し、それぞれが強烈な存在感を放った。物語の中心人物である直角はもちろん、彼を取り巻く仲間やライバル、さらには脇役に至るまでが「推しキャラ」として語られ、ファン同士の話題の種となった。本章では、視聴者が特に愛したキャラクターと、その人気の理由を整理して紹介する。
主人公・石垣直角の魅力
やはり最も人気が高いのは主人公の直角である。視聴者からは「不器用だけど真っ直ぐで憎めない」「ギャグで笑わせながらも、信念を貫く姿に感動した」といった声が多く寄せられた。彼の必殺技「直角切り」を真似する子供たちが学校に溢れたことも、人気を物語っている。
直角は完璧なヒーローではなく、失敗や空回りも多い。しかし「曲がらない」という武士道の教えを胸に、どんな困難にも突っ込んでいく姿が、多くのファンにとって「こんな友達が欲しい」と思わせる存在感を持っていた。
ライバルから人気者へ・北条照正
当初は嫌味でわがままなお坊ちゃんキャラとして登場した照正だが、彼もファン人気の高いキャラクターである。「最初は嫌いだったのに、気づけば一番応援していた」という意見が多く、ツンからデレへと変化する過程が大きな魅力となった。
彼の西洋かぶれのファッションや勘違いした知識はギャグ要素としても愛され、田中真弓の軽妙な演技がその魅力を倍増させていた。特に女性ファンからは「子供っぽいところが可愛い」「直角とのやり取りが一番楽しい」との声が多く、後年の人気投票では直角に次ぐ高い支持を集めた。
月形の成長と支持
月形は「敵から仲間へ」という変化が視聴者に強く支持されたキャラクターだ。最初は直角に立ちはだかる不良のリーダーであったが、敗北を経て努力を重ね、やがて剣道部の仲間として直角を助ける存在となる。
この王道的なライバルの成長物語は多くの少年視聴者の心を掴み、「自分も強敵と競い合って成長したい」と思わせる憧れを呼んだ。月形は直角に次ぐ男性人気を誇り、「ライバルなのにこんなにかっこよく描かれるのは珍しい」という評価も多かった。
郷慎太郎の兄貴分的魅力
郷慎太郎は直角の先輩であり、次第に彼の理解者となる人物だ。視聴者からは「落ち着いていて頼れる」「直角の良き兄貴分」として人気を集めた。特に子安武人の若々しい低音ボイスがキャラクターに厚みを与え、ファンの間では「声がかっこよすぎる」と話題になった。彼の存在は直角にとっての精神的支えでもあり、物語を安定させる役割を果たした。
貴杉じゅんと綾乃 ― 女性キャラの支持
女性キャラクターの中で人気が高かったのは、貴杉じゅんとアニメオリジナルの綾乃である。
じゅんは「最初は高飛車なのに、だんだん直角を支えるようになる」という変化が魅力とされ、ツンデレ的な要素に惹かれるファンが多かった。剣道部を支える姿勢や、直角に好意を示す描写は視聴者に強い印象を残している。
一方の綾乃は、町人の娘という立場で直角と交流し、庶民目線から彼を支える存在となった。「直角の素の部分を知る幼馴染」という設定が新鮮で、特にアニメから作品を知った視聴者には強く愛されたキャラである。
父・子太夫のコメディ人気
直角の父・石垣子太夫も意外な人気キャラクターである。真面目な武士でありながら、ことあるごとに「切腹する!」と騒ぎ出すギャグは子供たちに大ウケで、「父ちゃんが出ると笑いが止まらなかった」と語る視聴者が多い。青野武の渋い声でコミカルに演じられる姿は、大人のファンからも「味のあるキャラ」として愛された。
サブキャラ人気と隠れファン
その他にも担任教師の細刈、笑い上戸の立花薫、町人の仲間ニコチン(ニコピン)など、脇役たちにも根強いファンが存在する。「直角と同じくらいサブキャラが濃い」「どのキャラも一度見たら忘れられない」という声は、本作のキャラクターデザインと演技の力を物語っている。
視聴者層ごとの違い
子供世代には直角や父・子太夫のコミカルさが支持され、少年視聴者には月形や郷慎太郎のような「かっこいい男キャラ」が憧れの対象となった。一方で女性視聴者には照正やじゅんのように「ギャップのあるキャラ」や「変化する関係性を持つキャラ」が人気だった。この多層的な人気の広がりが、作品全体を支える強みとなっていた。
総括:誰もが推しキャラを持てるアニメ
『おれは直角』のキャラクター人気を振り返ると、「主人公だけでなく、敵役や脇役にまでファンがいる」という点が特徴的である。直角の真っ直ぐさに惹かれる人、照正の変化に心を打たれる人、月形の成長に憧れる人、じゅんや綾乃の魅力に惹かれる人。それぞれが自分なりの推しキャラを見つけられる懐の深さこそが、この作品が長年愛され続ける理由なのだろう。
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■ 関連商品のまとめ
『おれは直角』は1991年に放送されたテレビアニメであり、放送終了直後は商品展開がそれほど大規模ではなかった。しかし、独特の作風とキャラクターの人気から、映像ソフト化や書籍、音楽、各種グッズといった関連商品が少しずつ展開され、後年に至るまでファンの間で収集対象となってきた。本章では、そうした関連商品の動向を詳しく振り返っていく。
■ 映像関連商品
放送当時は家庭用ビデオが普及し始めた時代であったが、『おれは直角』はセルビデオとしての展開はほとんどなく、主に再放送や録画で楽しむのが一般的だった。そのため公式の映像商品化は長らく実現せず、ファンにとっては「幻の作品」となっていた。
転機となったのは2005年のDVD-BOX発売である。全36話を完全収録した9枚組仕様で、アイ・シー・エフからリリースされた。このDVD-BOXは初の正式商品化ということもあり、予約段階から話題となり、発売当初は限定数がすぐに完売したというエピソードも残っている。付属ブックレットにはキャラクター紹介や設定資料、制作当時のスタッフインタビューなどが掲載され、コレクターズアイテムとしての価値も高かった。
後年には一部の動画配信サービスで配信されるようになり、若い世代が気軽に視聴できる環境が整った。こうして映像商品は、長らく眠っていた作品の再評価を促す大きな役割を果たしたといえる。
■ 書籍関連
書籍としては、まず原作漫画が欠かせない。小山ゆうのデビュー作である『おれは直角』は1970年代に週刊少年サンデーで連載されたもので、単行本は小学館から刊行されている。連載終了後もしばしば復刻版が出版されており、アニメ放送時には新装版が書店に並んだ。これによりアニメから入ったファンが原作を知るきっかけとなった。
アニメ放送に合わせて、一部のアニメ誌では特集記事やピンナップが掲載され、設定資料や声優インタビューなどを収録したムック本も出版された。特に『アニメディア』や『ニュータイプ』の特集号は、直角や照正を描いた表紙やポスターが付録につき、当時のファンの宝物となっていた。
また、後年にはファンブック的な位置づけで制作資料集が発売され、未公開イラストや絵コンテの断片などが掲載された。これらの書籍は現在でもコレクターズアイテムとして扱われている。
■ 音楽関連
音楽面では、オープニングテーマ「学問のスズメ」とエンディングテーマ「嫌いにならずにはいられない」がシングルレコードとして発売された。歌唱を担当したビジーフォー・スペシャルのコミカルかつ力強い歌声は、作品の明るさを象徴しており、当時のアニメソングファンにも支持された。
また、サウンドトラック盤もCDとして発売され、劇伴音楽や主題歌のTVサイズバージョンが収録されていた。森雪之丞のユーモアに富んだ歌詞や本間勇輔の親しみやすいメロディは、単体の楽曲としても完成度が高く、アニメを知らない人からも「面白い曲」として話題になることがあった。
近年では配信サービスでも聴けるようになり、アニメソングの隠れた名曲として再発見されている。
■ ホビー・おもちゃ関連
『おれは直角』は放送当時、玩具メーカーによる大規模なタイアップ展開はなかったが、キャラクターグッズはいくつか発売されていた。代表的なものに、直角や照正をデフォルメしたソフビ人形や、ガチャガチャで登場したマスコットフィギュアがある。直角が顔芸をしているポーズの消しゴムやキーホルダーは特に人気があり、学校でのちょっとした遊び道具として子供たちの間で流行した。
また、アニメ関連のトレーディングカードや下敷き、ノートといった文房具も販売されており、特に女の子の間では貴杉じゅんのイラストが描かれた文具が人気を集めた。これらは短期間の展開であったため現存数が少なく、現在はオークションで高値がつくこともある。
■ ゲーム・ボードゲーム
テレビゲーム化はされなかったものの、当時のアニメ作品の定番として「すごろく形式のボードゲーム」が販売された記録がある。駒には直角や照正、月形などのキャラクターが描かれ、マス目にはドタバタ騒動を彷彿とさせるイベントが設定されていた。このボードゲームは家族や友人同士で楽しめる商品として重宝され、現在では「昭和レトログッズ」としてマニアの間で人気が高い。
■ 食玩・文房具・日用品
食玩としては、ガムやウエハースにキャラクターシールが付属する商品が発売されたことが確認されている。子供たちにとっては手軽に楽しめるコレクションアイテムであり、当時の駄菓子屋で人気を博した。
文房具は、アニメの絵柄を用いた下敷き、鉛筆、ノート、カンペンケースなどが展開されており、学校生活に直結するアイテムとして需要が高かった。さらに、コップやお弁当箱といった日用品にもキャラクターがデザインされ、アニメの人気を日常生活に持ち込む形で親しまれていた。
総括
『おれは直角』の関連商品は、放送当時こそ限定的であったが、後年のDVD化を契機に一気に広がりを見せた。映像商品によって作品が再評価され、書籍や音楽、グッズがコレクターズアイテムとして注目されるようになったことは、アニメ文化の中で特筆すべき事例だといえる。
関連商品の系譜を振り返ると、直角の顔芸や直角切りといったユニークな要素がグッズに反映され、ファンの笑いと愛着を支え続けてきたことが分かる。こうして『おれは直角』は、単なる放送作品にとどまらず、後世にわたって楽しみを提供するコンテンツへと発展したのである。
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■ オークション・フリマなどの中古市場
『おれは直角』は1991年に放送されたアニメであり、商品展開が当時は限定的であったことから、中古市場に流通しているアイテムは総じて希少性が高い。ヤフーオークションやメルカリ、駿河屋といった二次流通の場では、映像商品から文房具まで幅広い関連グッズが取引されており、ファンやコレクターにとっては入手困難であると同時に、掘り出し物を見つける楽しみがある分野となっている。
■ 映像関連商品の中古市場
最も取引件数が多いのはやはりDVD-BOXである。2005年に発売された全36話収録の9枚組DVD-BOXは現在でも根強い人気を誇り、中古市場では15,000円〜25,000円程度で取引されることが多い。状態が良く、付属のブックレットや外箱が揃っている完品は30,000円を超えるケースもある。
一方でレンタル落ちのバラ売りDVDや、非公式に流通した録画テープなども市場に存在するが、これらは状態によって数千円からと幅が広い。コレクション目的では正規品のDVD-BOXが圧倒的に人気であり、再販がされていないことも価格高騰の一因となっている。
■ 書籍関連の市場動向
原作漫画『おれは直角』の単行本(小学館刊)は、中古市場で比較的入手可能だが、初版帯付きや全巻揃いの美品セットは高値を呼ぶ。通常版であれば3,000円〜5,000円程度で全巻揃うこともあるが、保存状態が極めて良い初版本セットだと10,000円を超える落札例も確認されている。
また、アニメ放送時期に発売されたアニメ雑誌の特集号やポスター、付録類も人気が高い。特に『アニメディア』や『ニュータイプ』の直角表紙号は1冊2,000円〜4,000円程度で取引されることがあり、当時のファンブック類は5,000円前後になることもある。
■ 音楽関連商品の流通状況
オープニング「学問のスズメ」とエンディング「嫌いにならずにはいられない」を収録したシングルレコードやカセットは、当時の流通量が少なかったため、中古市場では希少性が高い。美品であれば3,000円〜6,000円程度、帯付きの未使用品は10,000円近くになることもある。
サウンドトラックCDは比較的見つけやすいが、それでも1,500円〜3,000円程度で安定して取引されており、ファンにとっては確実に押さえておきたいアイテムとされている。
■ ホビー・おもちゃ関連の中古動向
玩具やホビー関連商品は流通数が少なく、特にガチャガチャのミニフィギュアやソフビ人形は市場に出るたびに注目を集める。直角や照正のデフォルメ消しゴムは1体500円〜1,000円程度だが、未使用品やセット売りだと5,000円を超えることもある。
また、直角の顔芸をモチーフにしたグッズはコレクター人気が高く、状態が良ければプレミア価格での落札も珍しくない。ぬいぐるみやクッションといった布製アイテムは保存状態が良いものが極めて少ないため、1万円近い値段で取引された例もある。
■ ゲーム・ボードゲーム
ボードゲーム版『おれは直角』は当時の定番グッズのひとつで、駒やサイコロ、説明書が揃っている完品はコレクターズアイテムとなっている。価格帯は3,000円〜8,000円程度だが、状態次第では1万円近くに跳ね上がることもある。
箱の擦れや駒の欠品がある場合は安価になるが、それでも1,500円以上で取引されることが多く、需要の高さが伺える。
■ 食玩・文房具・日用品
駄菓子屋で販売されていたシール付きガムやキャラクター消しゴムは、当時の子供たちが日常的に使っていたため現存数が少なく、今ではオークションで高値が付く。特に未使用のシールは1枚1,000円以上で取引されることもある。
文房具では下敷きや鉛筆、カンペンケースなどが人気で、セット品だと5,000円近い値段がつくこともある。実用品であるがゆえに状態が良いものは少なく、今後さらに希少価値が上がると予想される。
■ 総合評価
中古市場における『おれは直角』関連商品の特徴は、
公式の商品化が限られていたため一点ごとの希少性が高い。
映像商品や音楽ソフトは安定した需要があり、価格も比較的高め。
文房具や食玩など日常雑貨系は現存数が少なく、コレクター間で高値がつきやすい。
という点に集約される。特にDVD-BOXや音楽レコード、アニメ雑誌の特集号は高額取引が定番化しており、いずれも「ファンなら手に入れたい逸品」とされている。
こうした市場動向を見ると、『おれは直角』は一時代のアニメ作品として埋もれることなく、グッズを通して現在もなお愛され続けていることが分かる。コレクターにとっては挑戦しがいのあるジャンルであり、今後も市場で一定の需要が続くことは間違いないだろう。
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