
【原作】:ニナ・ウォルマーク
【アニメの放送期間】:1988年2月6日~1988年4月23日
【放送話数】:全26話
【放送局】:テレビ朝日系列
【関連会社】:名古屋テレビ、東京ムービー新社、DIC
■ 概要
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、1988年2月6日から同年4月23日までテレビ朝日系列で放送されたアニメーション作品であり、日本とフランスの国際的な共同制作によって誕生したユニークなSFアニメです。本作は、古代ギリシアの英雄譚『オデュッセイア』を大胆に未来へと移し替え、舞台を31世紀の宇宙空間に設定した壮大な冒険物語となっています。制作には日本の東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)とフランスのDIC(ディック)が深く関わり、双方の文化的アプローチや演出思想が交錯することで、極めて個性的な映像世界が生み出されました。
この作品の最大の特徴は、単なるヒーローアクションや勧善懲悪の枠を超え、神話と科学の融合を描こうとした点にあります。日本側のスタッフが「英雄が力で敵を打ち倒す爽快さ」を推したのに対し、フランス側は「人間味あふれる科学者としての主人公像」を主張。その結果、両者の折衷案として「人間味ある知性派の主人公が神話的存在に挑み、科学と神秘の狭間を旅する」という物語構造が定着しました。主人公ユリシーズは万能の英雄ではなく、息子や仲間たちとともに悩み、決断し、困難に立ち向かう科学者としての姿が強調されています。
制作過程においては数々の試行錯誤がありました。当初、フランス側は「漫画風のキャラクターデザイン」を提案していましたが、日本側の「劇画調で重厚なキャラクターデザイン」を見て方向性を変更。結果として、荒木伸吾らの手によるシャープで力強いビジュアルスタイルが確立されました。また、物語の進行は、フランス側がシノプシスを作成し、日本側が脚本や絵コンテを担当、その後フランス側がチェックを行い、日本で作画・撮影を実施するという国際的な分業体制で進められました。完成フィルムはフランスでダビングされ、ヨーロッパ市場向けにも同時展開されたことから、当時としては非常に先駆的な国際共同プロジェクトであったといえるでしょう。
しかし、制作期間中には大きな不幸も訪れました。企画の中心人物であった長浜忠夫が1980年11月に急逝し、その後は作画監督の荒木伸吾らが中心となって作品を完成へと導きました。メカニックデザインには河森正治が関わり、特に主人公たちが搭乗する「オデュッセイ号」は、フランスのテレビ局FR3のロゴをモチーフにした独創的なデザインとなっています。そのビジュアルは『2001年宇宙の旅』などのSF映画の影響を色濃く受けており、宇宙空間を舞台とした荘厳な映像表現を際立たせています。
日本国内では、テレビ放送に先駆けてOVA版としてキングレコードからリリースされ、1986年5月から7月にかけて全3巻が発売されました。このOVAには前半12話が収録されており、後に1988年のテレビ放送時にはこのエピソード群が地上波で放映されました。各話24分で構成された全26話のシリーズのうち、日本で実際に放送されたのはOVA収録分の12話に限られますが、それでも本作が持つ独特の世界観は多くの視聴者に強い印象を残しました。
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、日本のアニメが持つ緻密な映像美と、フランスの物語性豊かな脚本構成が融合した希有な存在であり、国際共同制作アニメの成功例として今日でも語り継がれています。その背景には、文化や美学の違いを超えて新しい映像表現を生み出そうとする制作者たちの強い情熱があり、その結果として誕生した本作は、当時のアニメファンのみならず、現在でも再評価され続ける価値を持つ作品となっています。
[anime-1]■ あらすじ・ストーリー
『宇宙伝説ユリシーズ31』の物語は、古代ギリシアの叙事詩『オデュッセイア』をベースにしつつも、舞台を遥か未来の31世紀の宇宙へと移し替えた壮大なSF冒険譚です。主人公ユリシーズが指揮を執る宇宙船オデュッセイ号は、銀河を越えた移民計画を遂行し、惑星トロイへの人類移住を成功させた後、地球へ帰還する航路につこうとしていました。しかし、その帰路で偶然に遭遇した未知の惑星が、彼らの運命を大きく狂わせることになります。
その惑星を支配していたのは、巨大な一つ目の怪物「シクンロープス」でした。彼は惑星の住民たちを恐怖で縛り付ける存在であり、ユリシーズは彼を倒すことで人々を解放します。しかしこの行為は、宇宙を支配する神々の一柱、ポセイドンの怒りを買うこととなりました。ポセイドンはユリシーズを罰するため、彼とその仲間たちを「オリュンポスの宇宙」と呼ばれる異次元空間へと閉じ込めてしまいます。そこで彼らは、地球への帰還を阻む神々の妨害に苦しめられる長い旅を余儀なくされるのです。
オデュッセイ号には、ユリシーズの息子である少年テレマーク、異星の少女ユミ、そして小型ロボットのノノといった仲間たちが乗り込んでいます。彼らは旅の途上で、さまざまな異星文明や奇怪な生命体と出会い、しばしば神々の試練に立ち向かわざるを得なくなります。物語は一話完結形式を基本としつつ、全体を通して「地球への帰還」という大きな目的が貫かれており、その過程で描かれるドラマ性と哲学的要素が本作の大きな魅力となっています。
各エピソードでは、ユリシーズたちが神々の気まぐれな裁きに振り回されながらも、知恵と勇気、そして仲間との信頼関係によって困難を突破していきます。時には巨大な宇宙怪物に立ち向かい、時には古代の遺跡を思わせる惑星で謎を解き明かし、あるいは心理的な試練を乗り越える場面も描かれます。こうした展開は視聴者に冒険活劇としての爽快感を与えると同時に、「人間は困難の中でいかにして生き抜くのか」という普遍的な問いを投げかけていました。
また、物語全体に流れるテーマは「神々の意志と人間の自由意志の対立」といえます。ポセイドンをはじめとするオリュンポスの神々は、ユリシーズたちを弄ぶかのように試練を与えますが、その度に彼らは「人間としての誇り」を武器に乗り越えようとします。ここには、科学と理性を信じる未来人の姿と、古代神話の宿命的な世界観との衝突が鮮明に描かれており、異なる時代背景を巧みに融合させた本作ならではの深みが生まれています。
さらに本作のストーリー展開は、単なる冒険に留まらず、友情や家族愛を中心に据えている点も見逃せません。ユリシーズと息子テレマークの関係は物語を支える重要な柱であり、父と子の絆が数々の困難を乗り越える力となります。ユミは異星人でありながらも人間らしい優しさを見せ、ノノはロボットでありながら仲間思いでコミカルな存在感を放ちます。これらのキャラクターたちの交流が、冷たく広大な宇宙空間に温かみを与え、物語を人間味あふれるものにしていました。
最終的に、彼らが地球に辿り着けるかどうかは物語全体を通じての大きな焦点となり、視聴者は毎回のエピソードで提示される神々の妨害や新たな冒険を見届けながら、結末への期待を膨らませていきます。『宇宙伝説ユリシーズ31』は、従来の神話をただ未来風に描き直すのではなく、科学技術と神話的象徴を交錯させることで、子どもから大人まで楽しめる多層的なストーリーを展開しました。そのため、放送から数十年が経過した現在でも、国際的なアニメ史において独自の存在感を放ち続けています。
[anime-2]■ 登場キャラクターについて
『宇宙伝説ユリシーズ31』に登場するキャラクターたちは、単なる脇役や添え物に留まらず、物語のテーマや世界観を体現する重要な存在として描かれています。本作は「神話」と「未来科学」の融合を目指した作品であるため、それぞれのキャラクターは神話的な象徴性と人間的な個性を同時に背負っており、その複雑な描写が作品に奥行きを与えています。ここでは主要キャラクターを一人ずつ掘り下げ、視聴者に与えた印象や魅力についても触れていきましょう。
◆ ユリシーズ(声:小林修)
本作の主人公であり、オデュッセイ号の船長。古代ギリシア神話のオデュッセウスを未来世界に置き換えた存在です。彼は卓越した知性と勇気を兼ね備えた科学者であり、戦士としての一面も持ち合わせています。冷静沈着で判断力に優れた人物ですが、万能の英雄というよりは、葛藤を抱える人間的なキャラクターとして描かれている点が特徴的です。
彼は仲間を守るためならば神々にすら立ち向かう強い意志を持ち、しばしば理不尽な状況に置かれても、科学的な知識や論理的思考を駆使して打開策を見出します。その姿は当時の子どもたちに「ただ強いだけのヒーローではなく、頭脳で困難を切り抜ける大人」としての印象を与えました。また、父親として息子テレマークを守り育てる姿が随所に描かれ、親子の絆という普遍的なテーマを担う存在でもありました。
◆ テレマーク(声:飛田展男)
ユリシーズの息子であり、年齢的には思春期に差しかかる少年。彼は父親を尊敬しつつも、時にその影に隠れてしまう不安や、仲間としての自立を模索する心情が描かれています。テレマークの存在は、物語に「少年の成長物語」という軸を与えており、視聴者の子どもたちが感情移入しやすいキャラクターとなっていました。
彼は戦闘能力では父に劣るものの、仲間との心の交流や純粋さで数々の試練を乗り越える役割を担います。特にユミやノノとの友情関係は、物語に温かみを与え、視聴者の心を惹きつけました。また、テレマークが父と衝突したり、悩みながら成長していく姿は、親子関係のリアルな一面を描き出しており、本作を単なる冒険活劇以上の深みへと導いたといえるでしょう。
◆ ユミ(声:矢島晶子)
ユミは異星の少女であり、オデュッセイ号の重要なクルーの一人。人間とは異なる背景を持ちながらも、仲間を思いやる心優しい性格で、しばしば物語に癒やしや希望を与える存在でした。彼女は科学技術に長けているわけではないものの、未知の宇宙において直感的な判断や精神的な支えを提供する重要な役割を果たしています。
視聴者の中には「ユリシーズの息子テレマークとユミの交流」に感情移入するファンも多く、二人の関係は仲間以上、家族未満のような独特の温かさを放っていました。また、矢島晶子の瑞々しい声の演技がユミの健気さや透明感を際立たせ、彼女を作品の中で象徴的な存在へと押し上げました。
◆ ノノ(声:ならはしみき)
小型ロボットのノノは、本作のマスコット的なキャラクターであり、コミカルな役割を担いながらも重要な場面で仲間を救う存在です。愛嬌のあるデザインと、どこか抜けた行動が視聴者に安心感を与えると同時に、人工知能を備えた未来的存在として物語にSF的な彩りを加えています。
ノノはただのギャグキャラではなく、友情や忠誠心を示す場面も多く、ユリシーズやテレマークの心を支えることもありました。そのため、子どもたちにとっては親しみやすい存在、大人にとっては「人間と機械の絆」を考えさせられる存在として、多面的な魅力を放っていました。
◆ シルカ(声:横尾まり)
シルカはオデュッセイ号をサポートする重要な女性キャラクターです。科学的知識や航行技術に優れており、ユリシーズを助ける参謀的な存在として描かれています。彼女は冷静沈着で論理的、時にユリシーズの暴走を抑えるブレーキ役を担うこともあり、物語全体にバランスを与えるキャラクターといえるでしょう。
また、視聴者の中には「女性キャラクターの中で最も頼れる存在」としてシルカを推す声もありました。横尾まりの知的で落ち着いた声の演技は、シルカのキャラクター性を一層際立たせ、作品に重厚さを加えています。
◆ 神々・敵対者たち
本作においては、敵対する存在もキャラクター性が強く描かれています。代表的なのはポセイドンであり、ユリシーズに理不尽な罰を与える存在として度々登場します。神々は直接的な敵ではなく「超越的な試練」を与える存在であるため、彼らの登場は物語を神話的に彩り、人間の小ささや限界を際立たせる役割を果たしていました。シクンロープスのような怪物もまた、古典神話のモチーフを未来的にアレンジした存在であり、視聴者の印象に強く残るキャラクター群でした。
このように『宇宙伝説ユリシーズ31』のキャラクターたちは、単なる役割分担以上に、物語世界を構築する重要な要素を担っていました。それぞれが「人間らしさ」「家族愛」「友情」「知性」「勇気」といったテーマを体現しており、視聴者は彼らに共感しながら物語を追体験することができました。キャラクター同士の関係性が織りなすドラマは、SF的な冒険活劇に温かさとリアリティを与え、本作を単なる異世界神話ファンタジーではなく「人間の物語」として成立させたのです。
[anime-3]■ 主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、物語そのものが壮大な神話と未来SFの融合であり、その世界観を音楽面から支えたのが主題歌や挿入歌の数々です。楽曲は単なるオープニングやエンディングのBGMにとどまらず、視聴者に物語の雰囲気を先取りさせ、放送終了後も余韻として心に残る重要な役割を果たしました。ここでは、作品を象徴する音楽の魅力について詳しく掘り下げていきます。
◆ オープニングテーマ「銀河伝説オデッセイ」
作詞は荒木とよひさ、作曲は若草恵、歌は貴智明(ネバーランド)によって担当されたこの楽曲は、本作を代表する象徴的な音楽です。重厚でありながらも疾走感にあふれたメロディラインは、宇宙空間を突き進むオデュッセイ号の姿を想起させるもので、放送当時から強烈なインパクトを与えました。
歌詞には「銀河を越えて」「未知の宇宙へ」といった冒険を想起させる言葉が散りばめられており、単なるヒーローソングではなく、未来への挑戦や未知との邂逅をテーマに据えている点が特徴的です。視聴者はこの主題歌を聴くことで、放送開始と同時に壮大な宇宙神話の旅へと誘われる感覚を得ていました。
また、当時のアニメソングとしては珍しく、歌唱に力強さと哀愁が同居しているのも魅力でした。これは「勝利だけを描く作品」ではなく「苦難と試練を背負う物語」であることを示唆しており、子どもだけでなく大人の視聴者層にも強く響く要素となっていました。
◆ エンディングテーマ「愛・時の彼方に」
作詞は島エリナ、作曲は熊谷安廣、歌はオープニング同様に貴智明(ネバーランド)が担当。このエンディングテーマは、オープニングの勇壮さとは対照的に、しっとりとしたバラード調で構成されています。物語を締めくくるにふさわしい余韻を残し、ユリシーズや仲間たちが直面する孤独や苦悩、そしてそれを越えていく希望を象徴していました。
この曲は放送当時、視聴者から「哀愁を感じるが不思議と温かい」「神話の余韻が胸に響く」といった感想を多く集めています。エンディングの映像では、宇宙の広がりやキャラクターたちの表情が重なり、楽曲の持つ切なさと希望が視覚的にも強調されました。その結果、作品全体の印象を「単なる冒険活劇」から「哲学的で人間的なドラマ」へと昇華させる役割を果たしたのです。
◆ 挿入歌・BGMの魅力
『宇宙伝説ユリシーズ31』の挿入歌や劇伴音楽は、作品の世界観を豊かにする上で欠かせない存在でした。物語の中でキャラクターの葛藤や神々の登場が描かれる場面では、重厚なオーケストレーションが用いられ、緊張感と荘厳さを演出。一方で、ユミやノノといったキャラクターが登場する場面では軽快で柔らかなメロディが流れ、視聴者に安心感を与えていました。
特に神々との対峙シーンで流れる楽曲には、古代ギリシア的な旋律とSF的な電子音を融合させた独特のサウンドが多く、視聴者は「神話と未来の交差点」にいる感覚を覚えたと語っています。これはフランスとの共同制作という特異な背景から生まれたサウンドであり、国際的な感覚が音楽にも色濃く反映された部分といえるでしょう。
◆ キャラクターソングやイメージソング
本作は当時のアニメ作品の中では比較的シリアスなトーンが強かったため、いわゆるキャラクターソングは大量に展開されませんでした。しかし、ファン向けにリリースされたイメージソング集やドラマCDには、キャラクターの心情を掘り下げた楽曲が収録されていました。ユリシーズの孤高の心境を歌詞にした曲や、テレマークとユミの友情をテーマにしたデュエット風の楽曲などが存在し、物語本編とは異なる角度からキャラクターを楽しむことができました。
また、こうしたイメージソングは、後年のリマスターCDや復刻版でも注目され、特に大人になったファン層から「当時は聴き逃したが、今改めて聴くと作品の理解が深まる」といった感想が寄せられています。これにより、『宇宙伝説ユリシーズ31』の音楽は単なる放送当時の付属要素に留まらず、長期的に作品世界を補完する文化資産として位置付けられました。
◆ 視聴者の音楽体験とその影響
当時の子どもたちにとって、テレビの前で流れるオープニングとエンディングの主題歌は「毎週の冒険への入り口と出口」であり、それを口ずさむことは作品との一体感を確認する行為でした。一方で、大人の視聴者は歌詞の奥に潜む「運命への挑戦」「孤独と希望」といったテーマを受け取り、より深い感動を覚えたといわれています。
音楽は放送終了後もカセットやレコードとして販売され、ファンの間で長く親しまれました。後にCD化やデジタル配信が実現すると、新しい世代のアニメファンにも再び聴かれるようになり、作品の知名度維持に大きな貢献を果たしました。特にオープニング「銀河伝説オデッセイ」は、アニメソングの名曲として今なお多くのイベントやカラオケで歌われ続けています。
総じて、『宇宙伝説ユリシーズ31』の音楽は、作品の壮大さと人間的な温かさを同時に表現する重要な柱でした。オープニングの力強さ、エンディングの哀愁、挿入歌やBGMのドラマ性、そしてイメージソングによる補完。これらが一体となることで、視聴者は物語の外でも作品を思い出し、語り継いでいくことができたのです。音楽はまさに、本作の魂を形づくる大切な要素であったといえるでしょう。
[anime-4]■ 声優について
『宇宙伝説ユリシーズ31』の魅力を語るうえで欠かせないのが、登場キャラクターに生命を吹き込んだ声優陣の存在です。本作は日本とフランスの共同制作でありながら、日本語版では当時を代表する実力派声優がキャスティングされました。その結果、キャラクターの性格や物語のテーマがより豊かに表現され、作品の完成度を押し上げる大きな要因となっています。以下では、主要キャラクターを演じた声優とその演技の特徴、そして視聴者の反応について詳しく見ていきましょう。
◆ ユリシーズ役:小林修
小林修は、本作の主人公ユリシーズを演じました。深みのある低音と重厚な声質で知られる彼は、知性と威厳を兼ね備えたキャラクターを演じることに定評がありました。ユリシーズは「万能の英雄」ではなく、「悩みや葛藤を抱えながらも仲間を導く科学者」という複雑な人物像を持っており、小林の演技はその内面性を的確に表現していました。
視聴者からは「声に説得力があり、どんな苦境でもユリシーズなら切り抜けられると思わせてくれる」との声が多く寄せられました。また、彼の落ち着いた声は父親として息子テレマークを支える姿にも説得力を持たせ、作品全体を安定させる存在感を放っていました。
◆ テレマーク役:飛田展男
飛田展男は、ユリシーズの息子であるテレマークを担当しました。デビューから間もない時期であった彼は、瑞々しい演技で少年特有の未熟さと純粋さを表現。声に込められた柔らかさや素直さが、父親との関係性をよりリアルに感じさせました。
特に注目されたのは、テレマークが父に反発する場面や、仲間のために勇気を振り絞る場面での演技です。声に自然な揺らぎや感情の起伏が表現されており、「成長する少年像」が生き生きと描き出されました。当時のファンからは「ユリシーズという大人の重厚さと対照的で、親子の声のバランスが絶妙」と高く評価されました。
◆ ユミ役:矢島晶子
矢島晶子は、異星人の少女ユミを演じました。透き通るような声質が印象的で、ユミの純粋さや優しさを的確に表現しています。後年『クレヨンしんちゃん』のしんのすけ役で知られるようになる彼女ですが、本作ではその初期キャリアを感じさせるフレッシュな演技が魅力でした。
ユミはしばしば仲間の精神的な支えとなるキャラクターであり、彼女の柔らかい声は、物語に温かみを与える重要な要素となっていました。視聴者からは「ユミの声を聴くと、不安な旅の中に安心感を覚えた」との感想が多く寄せられており、作品に欠かせない存在であったことがうかがえます。
◆ ノノ役:ならはしみき
小型ロボットのノノを演じたのは、ならはしみきです。彼女のコミカルで軽やかな声は、ノノのキャラクター性を存分に引き出しており、子どもたちに強く愛されました。ノノは作品のマスコット的存在であると同時に、物語に緊張と緩和のリズムをもたらす役割を担っています。
ならはしの演技は、単にコミカルさにとどまらず、仲間を思いやる場面では優しさや勇敢さを表現しており、視聴者の心を動かしました。後年、彼女が国民的作品『クレヨンしんちゃん』でしんのすけの母・みさえ役を務めることを考えると、幅広い演技力の片鱗がすでにこの作品でも発揮されていたといえるでしょう。
◆ シルカ役:横尾まり
冷静沈着な女性キャラクター・シルカを演じたのは横尾まりです。彼女は知的で落ち着いた声質を持ち、シルカの「理性的な参謀」という役割を見事に体現していました。特にユリシーズの無謀さを諫める場面や、仲間に冷静な指示を与える場面での演技は、視聴者に「頼れる女性キャラクター」としての印象を残しました。
また、横尾の演技には冷たさだけでなく温かみも感じられ、仲間を思いやる姿勢がにじみ出ていました。そのため、「知的で厳しいが本当は優しい」という多面的なキャラクター像が成立し、作品の奥行きを増す要因となりました。
◆ 神々や敵役の声優陣
本作の見どころのひとつは、ユリシーズに立ちはだかる神々や怪物たちの声を担当した声優たちの熱演です。例えばポセイドンを演じた声優は、低く響く声で「圧倒的な威圧感」を放ち、神々が人間を見下ろす存在であることを強調しました。こうした声の演技は、視聴者に「人間と神の圧倒的な隔たり」を感じさせ、物語に緊張感をもたらしました。
また、シクンロープスのような怪物役では、声優たちが野太い叫びや不気味な声色を駆使し、視覚的表現以上の恐怖を観客に与えました。こうした「声による迫力」があるからこそ、神話的な敵対者が現実味を帯び、視聴体験が一層濃厚になったといえます。
◆ 視聴者からの評価と後年の評価
『宇宙伝説ユリシーズ31』の声優陣は、放送当時から「非常に豪華で実力派が揃っている」と評価されていました。主人公ユリシーズの重厚さ、テレマークやユミの純粋さ、ノノのコミカルさ、シルカの冷静さ。それぞれのキャラクターに適材適所の声優が配置されていたことで、作品全体の完成度は飛躍的に高まりました。
後年、アニメファンが作品を振り返った際にも「声優の演技が印象に残っている」という声は非常に多く、特に小林修のユリシーズ像は「理想的な宇宙の父親像」として語り継がれています。声優陣の演技は作品の根幹を支える柱であり、音楽や映像と並んで本作を「時代を超えて語られるアニメ」に押し上げた大きな要因でした。
声優陣の熱演によって、『宇宙伝説ユリシーズ31』は単なる神話SFアニメを超え、「人間的なドラマ」を感じさせる作品に仕上がりました。それぞれの声がキャラクターの個性と一体化し、物語に厚みを与えたことは、本作が今なお再評価され続ける理由のひとつだといえるでしょう。
[anime-5]■ 視聴者の感想
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、放送当時から視聴者の間で強い印象を残した作品であり、その評価は子どもから大人まで幅広い層にわたっていました。特に1980年代後半のアニメファンにとって、本作は「単なる娯楽アニメ」を超えた存在であり、SFのスリルと神話的荘厳さを併せ持つ異色作として記憶されています。以下では、放送当時の反応と、後年の再評価を踏まえた感想を整理して紹介します。
◆ 放送当時の子どもたちの反応
1988年当時、本作をテレビ朝日系列でリアルタイム視聴した子どもたちにとって、『ユリシーズ31』は他のロボットアニメや冒険アニメとは明らかに異なる雰囲気を持っていました。
「主人公が強いけれど悩みを抱えている」という描写は、子どもたちにとってやや難解でもありましたが、一方で「宇宙を旅するワクワク感」や「巨大な怪物との戦い」に大きな魅力を感じていました。
また、ロボットのノノや少年テレマークは、同年代の視聴者にとって親しみやすい存在であり、「父と子の関係性を自分に重ねて見ていた」という感想も多く残されています。神話的な試練の描写は恐ろしい部分もありましたが、それが逆に「怖いけど続きを見たい」と子どもたちの好奇心を刺激する要素となっていました。
◆ 親世代・大人の視聴者の感想
当時すでにアニメを「子どもの娯楽」としてではなく、芸術や文化の一つとして楽しむ大人の層からも、『ユリシーズ31』は高い評価を受けていました。特に「神話と未来科学を組み合わせる」という試みは新鮮で、従来の単純な勧善懲悪型のストーリーとは一線を画していました。
大人の視聴者は、「神々に翻弄される人間の姿」に人生の理不尽さを重ねたり、「父と子の旅」に普遍的な親子愛を感じ取ったりと、より深いテーマ性を楽しんでいたのです。実際に当時のアニメ誌の読者投稿欄には「子どもと一緒に見ていたが、気づけば自分の方が物語に引き込まれていた」という声が数多く寄せられました。
◆ 海外ファンからの反響
『ユリシーズ31』はフランスをはじめとするヨーロッパ諸国で先行して放送され、日本での放送前からすでに海外で一定の知名度を獲得していました。フランスの子どもたちにとっては「自国で関わった国際的アニメ作品」として親しみやすく、日本製アニメの緻密な作画と自国の物語性が融合したことに誇りを持つファンも多かったといわれます。
そのため、日本国内での放送が始まった際には「逆輸入的なアニメ」として紹介されることもあり、国際的な広がりを意識させる作品として注目を集めました。今日でも欧州圏では根強い人気があり、DVDやBlu-rayの復刻版が発売されると必ず一定数の購入層が現れるほどです。
◆ 音楽や映像への評価
視聴者の感想で特に多かったのが「音楽と映像の融合の素晴らしさ」でした。オープニングテーマ「銀河伝説オデッセイ」は「聴くだけで当時の記憶が蘇る」と語るファンが多く、エンディングテーマ「愛・時の彼方に」の切なさは「子どもながらに泣きそうになった」といった感想につながっていました。
また、河森正治が手がけたオデュッセイ号のデザインは「未来感と神話感が同居するデザイン」として称賛され、SFファンをもうならせました。映像表現に関しても「当時としては異質な色彩感覚」「西洋的な美意識が入り込んだ新しいアニメーション」といった感想が寄せられています。
◆ 再放送・ビデオ視聴世代の感想
テレビ放送終了後、本作はOVAやビデオソフトとしても展開され、後追いで作品に触れたファンからの感想も数多く残っています。
彼らの多くは「子どもの頃に理解できなかった部分が、大人になってから観直すと深い意味を持っている」と再評価しました。特に「神々の試練」が象徴する人生の困難や、「帰還を目指す旅路」が持つ普遍性は、大人になった視聴者に強い共感を呼び起こしています。
一方で「テンポがゆっくりで子どもの頃は退屈に感じた」という声もありますが、それすらも「今観るとむしろ味わい深い」と肯定的に捉えるファンが増えています。こうした「時間を経て理解されるアニメ」という点が、本作の持つ文化的価値を証明しているといえるでしょう。
◆ 現代における感想と評価
インターネット時代に入り、YouTubeやSNSで映像や楽曲が再び広まったことにより、『ユリシーズ31』は若い世代のアニメファンにも発見されるようになりました。彼らの感想は「80年代のアニメなのに今見ても斬新」「絵柄が劇画調で格好いい」といったものが多く、古さよりも新鮮さを感じさせていることが特徴です。
また、海外ファンが字幕付きで視聴した感想を共有することで、「日本とフランスが共同で作った珍しいアニメ」という点に注目が集まり、国際的に再評価されるきっかけともなっています。近年はレトロアニメファンの間で「大人になってから観るべき名作」として推されることが増え、アニメ史における独自の立ち位置を確立しました。
◆ 総合的な感想
総じて、視聴者の感想は「異色だが忘れられない作品」という点で一致しています。派手なロボット戦や単純な勧善懲悪を期待した子どもには難解に映る部分もありましたが、その分、大人になってから見直したときに「自分の人生と重ね合わせられる深さ」があると評価されました。
親子の絆、神々と人間の対立、未知の宇宙への挑戦。これらのテーマは時代を超えて普遍的であり、感想の多くが「心に残り続ける」という言葉に集約されています。『宇宙伝説ユリシーズ31』はまさに「一度見たら忘れられないアニメ」として、多くの人の記憶に刻まれ続けているのです。
[anime-6]■ 好きな場面
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、神話的な重厚さと未来的なSF要素を融合させた作品であり、各エピソードには強烈な印象を残す場面が数多く存在します。視聴者にとって「心に残る名シーン」はそれぞれ異なりますが、共通して言えるのは「キャラクターの葛藤と成長」「神々の威光と人間の挑戦」「仲間同士の絆」といったテーマが凝縮されている瞬間に、強い感動が集約されているという点です。ここでは特に人気の高いシーンや、ファンの間で語り継がれる「好きな場面」について掘り下げて紹介していきます。
◆ シクンロープスとの対決シーン
最も象徴的な場面のひとつが、第1話における怪物シクンロープスとの対決です。巨大な一つ目の怪物が支配する惑星で、ユリシーズは人々を救うために彼と戦い、見事に撃破します。しかしこの勝利こそが、神々の怒りを買い、以降の数奇な旅の始まりとなりました。
視聴者にとってこのシーンは「単なる勝利」ではなく「運命に巻き込まれる導入」として強く心に残りました。巨大な怪物を倒す痛快さと、その直後に訪れる神々の怒りというコントラストが、作品全体の雰囲気を決定づけるものだったのです。
◆ ポセイドンの裁きとオリュンポスの宇宙
神々に背いたユリシーズが、ポセイドンの怒りによってオリュンポスの宇宙に閉じ込められるシーンも忘れがたい名場面です。宇宙船ごと異次元に吸い込まれる描写は映像的な迫力があり、子どもたちにとっては畏怖を感じさせるものでした。
「見えない力に抗うことの難しさ」を象徴するこの場面は、視聴者に強烈な印象を残し、「人間が神と対峙する」という本作のテーマを端的に示したシーンとして語り継がれています。
◆ ユリシーズとテレマークの親子の絆
本作の感動的な場面として多くの視聴者が挙げるのは、父ユリシーズと息子テレマークの親子関係が描かれるシーンです。危険な状況の中でユリシーズが息子を励まし、命を賭して守ろうとする姿は、父親としての愛情と責任を感じさせました。
特に、テレマークが恐怖に震えながらも父に倣って勇気を振り絞る場面は、多くのファンに「成長する少年の姿」として感動を与えました。こうした描写は、単なる冒険物語に「人間ドラマ」という厚みを加えています。
◆ ユミとノノの友情シーン
異星人の少女ユミと小型ロボットのノノの交流も、視聴者にとって忘れられないシーンの数々を生みました。例えば、ユミが危険に晒される場面でノノが必死に助けようとするシーンや、逆にノノの小さな勇気をユミが優しく受け止めるシーンなどは、子ども視聴者に「友情の大切さ」を強く印象付けました。
コミカルなキャラクターであるノノが時に涙ぐましいほど仲間思いな行動を取る姿は、「人間以上に人間らしい」とファンに語られることもあり、この二人の絆は多くの人の心に残る名場面を形づくっています。
◆ 神々との対峙シーン
各話でユリシーズが遭遇する神々との対峙は、それぞれが「好きな場面」として取り上げられるほど象徴的でした。ゼウスやポセイドンといった超越的存在が登場するシーンでは、キャラクターの小ささが強調される一方で、それでも抗い続けるユリシーズの姿が感動を呼びました。
「人間は神に挑むことができるのか?」というテーマは視聴者の心に深く突き刺さり、後年になってからも「あの時の映像が忘れられない」と語られることが少なくありません。
◆ 孤独と希望を描いたエンディング映像
エンディングテーマ「愛・時の彼方に」に合わせて描かれる宇宙空間の映像も、視聴者にとって特別な「好きな場面」として記憶されています。広大な宇宙を漂うオデュッセイ号、仲間たちの表情、そして切なさを漂わせる映像美は、放送終了後も余韻として強烈に残りました。
子どもの頃には「少し寂しい」と感じ、大人になってからは「旅路の孤独と希望を象徴している」と解釈されることが多く、世代を超えて支持される名シーンとなっています。
◆ ファンが語り継ぐ場面の共通点
多くの「好きな場面」に共通するのは、単なる戦いや勝利ではなく、「試練を経て絆が深まる瞬間」や「人間の小ささと強さを同時に示す瞬間」であるという点です。これは『ユリシーズ31』という作品そのものが「神話的な運命」と「人間的な希望」の狭間を描いていることを如実に示しています。
総じて、『宇宙伝説ユリシーズ31』の好きな場面は、視聴者一人ひとりの人生経験や価値観によって異なる解釈を生み出すものでした。それは作品自体が普遍的テーマを扱っているからこそであり、「子どもの頃に好きだった場面」と「大人になってから心に響く場面」が変わるのもまた、このアニメが長く愛される理由のひとつだといえるでしょう。
[anime-7]■ 好きなキャラクター
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、壮大な神話的世界観と未来SFが融合した物語であると同時に、キャラクターの個性や人間味が視聴者の共感を呼び起こす作品でもありました。視聴者の中には「このキャラクターが好きだからこそ最後まで見続けた」という声も多く、誰に感情移入するかによって作品の楽しみ方が変わるというユニークな性質を持っています。ここでは、特に人気の高かったキャラクターや、ファンが愛着を持った理由について詳しく掘り下げていきます。
◆ 主人公ユリシーズ ― 不屈のリーダー
最も多くの支持を集めたキャラクターは、やはり主人公のユリシーズです。彼は「強靭な戦士」としてだけでなく、「悩みを抱えた人間」として描かれたことが、多くの視聴者にとって魅力的に映りました。
特に大人のファンからは「ただ勝つだけではなく、苦悩しながらも仲間を導く姿が心に残った」という感想が多く寄せられました。父親として息子を守ろうとする一方で、船長として全員を守る責任を背負う姿は、視聴者に「理想の父親像」「尊敬できる大人」として支持されました。
また、声優・小林修の重厚な演技によって生まれる説得力もユリシーズの人気を後押しし、「彼の声なくしてユリシーズは成立しない」と語るファンも多いのです。
◆ テレマーク ― 成長する少年
子ども世代の視聴者に特に人気が高かったのは、ユリシーズの息子テレマークです。年齢的に近いこともあり、同年代の子どもたちが感情移入しやすい存在でした。
「父に守られるだけではなく、自分も仲間の役に立ちたい」と葛藤する姿や、勇気を振り絞って困難に立ち向かう場面は、当時の少年視聴者にとって自分を重ね合わせる対象となりました。また、親世代にとっては「息子を持つ父親の姿」とリンクし、ユリシーズとテレマークの関係に自分自身の親子関係を重ねる人も少なくありませんでした。
そのため「テレマークが好き」という声には「成長する姿に感動した」「子どもの自分に勇気をくれた」といった背景が込められていました。
◆ ユミ ― 癒やしと希望の象徴
異星人の少女ユミは、特に女性ファンや感受性豊かな視聴者に人気の高いキャラクターでした。彼女は戦闘に長けているわけではありませんが、その純粋な心と仲間への思いやりによってチームに不可欠な存在として描かれました。
「ユミの優しさが救いだった」「絶望的な状況でも笑顔を忘れない姿に励まされた」という感想が多く、彼女の存在は作品全体の緊張感を和らげる役割を果たしていました。また、矢島晶子の澄んだ声がユミのキャラクター性をより鮮明にし、清らかさや透明感を一層際立たせています。
ユミの人気は男女問わず根強く、後年の再放送やDVD視聴の際にも「ユミが出ているだけで安心する」といったコメントが寄せられています。
◆ ノノ ― 子どもたちの人気者
小型ロボットのノノは、子ども視聴者から圧倒的な支持を受けました。コメディリリーフ的な役割を果たしつつも、仲間を守るために身を挺する姿は「小さいけれど頼りになる」というギャップを生み出し、多くのファンに愛されました。
「ノノがいるから怖いシーンも安心して見られた」「ロボットなのに心を持っているようで好きだった」といった感想が多く、視聴者にとって親しみやすいキャラクターでした。玩具展開においてもノノ関連の商品は人気が高く、ファンにとっては「持ち帰れる仲間」として支持されたことも人気の一因です。
◆ シルカ ― 知性派のヒロイン
冷静で知的なシルカは、視聴者の中でも特に大人層から高く評価されました。物語において参謀的な役割を果たす彼女は「理性と感情のバランスを取るキャラクター」として存在感を放ちました。
視聴者の感想には「ユリシーズを陰で支える姿がかっこいい」「冷静だけど優しさがにじみ出ていて好きだった」というものが多く、特に女性視聴者から「憧れる女性像」として挙げられることも少なくありません。横尾まりの落ち着いた声が、シルカの知的で頼れる印象を強めました。
◆ 敵役・神々の人気
ユリシーズに試練を課す神々や怪物もまた、ファンの間で「好きなキャラクター」として語られることがあります。特にポセイドンは「理不尽な存在でありながら圧倒的な迫力が魅力」と語られ、ある意味で「忘れられない敵」として人気があります。
また、シクンロープスのような怪物は子どもたちに恐怖を与えつつも「強烈なインパクトが残った」と評され、結果的に「怖いけれど好きだったキャラ」として記憶に残っているのです。
◆ 人気投票やファンの傾向
アニメ雑誌で行われた人気投票では、やはりユリシーズが1位を占めることが多かったものの、ノノやユミといったキャラクターも根強い支持を集めました。特に子ども層では「ノノ」「テレマーク」、大人層では「ユリシーズ」「シルカ」が好まれる傾向があり、年齢や性別によって好きなキャラクターが分かれるのも本作の特徴でした。
総じて、『宇宙伝説ユリシーズ31』における「好きなキャラクター」は、視聴者の人生経験や価値観によって大きく異なります。しかし、それぞれのキャラクターが明確な個性とテーマ性を持って描かれていたからこそ、誰か一人に必ず共感できる仕組みになっていました。この多様性こそが、本作が長く語り継がれる理由のひとつといえるでしょう。
[anime-8]■ 関連商品のまとめ
『宇宙伝説ユリシーズ31』は、日本とフランスの国際共同制作という特異な背景を持ち、さらに神話と未来SFを融合させた独創的な作品でした。そのため、映像メディアや音楽商品はもちろん、玩具・文房具・食品など、多岐にわたる関連商品が発売されました。ここでは、それらの関連商品をジャンルごとに詳しく整理し、本作がどのように商業展開されたのかを振り返っていきます。
◆ 映像関連商品
まず中心となったのは、OVAとテレビ放送の録画需要に応える形でリリースされた映像商品です。
1986年にキングレコードから発売されたOVA版『ユリシーズ31』は、全3巻で構成され、それぞれに4話ずつが収録されました。当時のOVA市場ではまだ黎明期にありましたが、本作は「テレビ放送前にOVAで先行展開」という稀有な試みを行った作品のひとつです。そのため、コレクション性が高く、発売当時はアニメファンの間で大きな話題となりました。
1990年代にはレーザーディスク版が一部リリースされ、コレクターズアイテムとして人気を集めました。さらに2000年代以降はDVD-BOXや単巻DVDとして再リリースが続き、2010年代には高画質リマスター版のBlu-rayも登場。これらには描き下ろしジャケットや解説ブックレット、ノンクレジット版OP/ED映像といった特典が付属し、コレクター心を刺激しました。
◆ 書籍関連
本作は原作コミックが存在する作品ではありませんが、アニメ放送に関連して出版された資料集やムック本がいくつか存在します。
アニメ雑誌『アニメディア』『月刊OUT』『ニュータイプ』などでは特集記事が組まれ、設定資料やキャラクター紹介、声優インタビューなどが掲載されました。また、海外展開を意識した記事も多く、「日本発・フランスとの共同制作」という切り口で紹介されることが多かったのも特徴的です。
さらに、後年には設定資料をまとめたアニメファン向けムックやファンブックが刊行され、キャラクターデザインやメカニックデザインを手がけたスタッフのインタビューも収録。現在では絶版となっていますが、アニメ史研究やデザイン研究の文脈で高く評価されています。
◆ 音楽関連
本作を象徴するオープニングテーマ「銀河伝説オデッセイ」とエンディングテーマ「愛・時の彼方に」は、シングルレコードとしてリリースされました。当時のアニメソング市場においては、アイドルやアニメ歌手が歌うシングル盤が一般的であり、本作も同様にEP盤やカセットテープが販売されました。
1990年代にはCDで再販され、2000年代以降はデジタル配信も開始。近年ではサブスクリプション音楽サービスでも聴取可能となり、往年のファンだけでなく新しい世代にも広まっています。また、サウンドトラック集も発売され、劇中音楽をまとめて楽しめるアイテムとして評価されました。特にフランス放送版の音源は日本版と異なる部分もあり、コレクターの間では「比較して聴く価値がある」と注目されています。
◆ ホビー・おもちゃ関連
玩具展開は当時のアニメ作品にとって重要な要素でしたが、『ユリシーズ31』は従来のロボットアニメと異なり、主役メカである「オデュッセイ号」のプラモデルやフィギュアが中心でした。河森正治がデザインした独創的な宇宙船は、その流線型デザインと巨大感で人気を集め、プラモデルや組み立てキットが発売されています。
また、ノノのマスコット人形やソフビフィギュアも登場し、子どもたちの人気を集めました。特にガチャガチャの景品として展開されたノノのミニフィギュアはコレクション性が高く、今なお中古市場で探し求めるファンが少なくありません。
さらに、当時のアニメグッズの定番である「消しゴム人形」や「キャラクタースタンプ」なども発売され、学用品や小物の形で子どもたちの日常生活に浸透しました。
◆ ゲーム関連
1980年代のアニメ作品では、ファミコンなどの家庭用ゲーム化が多く見られましたが、『ユリシーズ31』は直接的な家庭用ゲームソフト化はされませんでした。その代わり、ボードゲームやすごろくが玩具メーカーから発売されました。
「オデュッセイ号で地球に帰還する」というテーマをすごろく形式で再現した商品は、子どもたちの間で人気を博しました。サイコロを振りながら神々の妨害を受けたり、仲間を救出したりするルールは、アニメ本編の世界観を簡易的に体験できるものとして評価されました。
また、カードゲームやトレーディングカード風アイテムも一部展開され、キャラクターごとの能力を使ったバトル形式で遊べるものも存在しました。これらは短命ではありましたが、当時のアニメグッズ市場に確かにその痕跡を残しています。
◆ 文房具・日用品関連
『ユリシーズ31』は子ども向けの文房具や日用品としても商品展開されました。キャラクターが描かれた下敷き、鉛筆、ノート、カンペンケースなどは定番アイテムであり、特に小学生に人気がありました。
さらに、ランチボックスや水筒といった実用品も存在し、子どもたちが学校や遠足に持参するグッズとして使われていました。これらは「毎日の生活にユリシーズがいる」という感覚をファンに与え、作品を身近な存在にしました。
◆ 食品・食玩関連
アニメ人気を背景に、キャラクター消しゴムやシールが付属する食玩も登場しました。チョコレートやガムに「ユリシーズ31キャラシール」が付属する形で販売され、子どもたちの収集意欲を刺激しました。
また、パッケージにオデュッセイ号やキャラクターのイラストが描かれたスナック菓子も一部地域で販売されており、当時のファンからは「駄菓子屋でよく買った」との思い出話が聞かれます。
◆ 総合的な評価
『宇宙伝説ユリシーズ31』の関連商品は、巨大な市場規模を誇ったロボットアニメ作品に比べればやや限定的でしたが、その分、独自性やマニアックさを持ち合わせていました。映像ソフトや音楽は長期的に再販され続け、ホビーや文具は「昭和レトログッズ」として現在もコレクターに人気があります。
関連商品は単なる販促グッズに留まらず、「神話と未来の融合」という独自の世界観をファンの日常に浸透させる役割を果たしました。こうして『ユリシーズ31』は映像作品としてだけでなく、商品展開を通しても強い印象を残すことに成功したのです。
[anime-9]■ オークション・フリマなどの中古市場
『宇宙伝説ユリシーズ31』は1980年代後半に誕生した国際共同制作アニメであり、その独特の世界観やデザインから、多岐にわたる関連商品が展開されました。現在では新品での入手は難しく、主に中古市場――すなわちヤフオクやメルカリ、フリマアプリ、海外オークションサイト(eBay など)を中心に流通しています。ここでは、ジャンルごとにどのような商品が取引され、どの程度の価格帯で売買されているのかを整理し、当時と現在の市場価値を比較していきます。
◆ 映像関連商品
中古市場でもっとも需要が高いのは映像関連商品です。1986年にキングレコードから発売されたOVA(全3巻)は、現在でもコレクターズアイテムとして人気があります。各巻4話収録で、当時のパッケージイラストが残っている美品は高値で取引され、平均落札価格は一本3,000〜6,000円前後。状態が悪い場合でも2,000円程度から取引されることが多いです。
1990年代に一部リリースされたLD(レーザーディスク)版は希少性が高く、国内外のコレクターから根強い需要があります。1枚あたり5,000〜10,000円で落札されることも珍しくなく、帯付きや解説書付きの完品はさらに価格が上がります。
2000年代以降に発売されたDVD-BOXや単巻DVDは、比較的流通量が多いため落札価格は1本1,500〜3,000円前後ですが、初回限定版やブックレット付きの完全版は10,000円を超えることもあります。2010年代に発売されたBlu-rayリマスター版は、今なおファンの需要が高く、プレミア化して20,000円以上で取引されるケースも確認されています。
◆ 書籍関連
書籍類は数自体が限られていますが、需要は根強いジャンルです。『アニメディア』『ニュータイプ』『月刊OUT』など1980年代当時のアニメ雑誌に掲載された特集記事や付録ポスターは、現在でも人気があり、1冊あたり1,500〜3,000円での落札が一般的です。
特にユリシーズ31特集が表紙を飾った雑誌や、スタッフインタビュー、キャラクターデザイン資料が収録された号は、3,000〜5,000円程度と高めに取引されています。また、後年出版された設定資料集やアニメムックは流通数が少なく、保存状態が良ければ8,000〜12,000円前後にまで高騰する場合もあります。
◆ 音楽関連
シングルレコード「銀河伝説オデッセイ」「愛・時の彼方に」は、アニメソングコレクターの間で特に人気があります。中古市場では、ジャケットの保存状態や帯の有無で価格が大きく変わりますが、一般的に2,000〜4,000円程度。新品未開封品やサイン入りなどの特殊アイテムは10,000円近い価格になることもあります。
サウンドトラックLPやカセットは流通量が少ないため、ファンの間では高値で取引されており、平均相場は4,000〜7,000円前後です。90年代以降に再販されたCD版は比較的安価で入手でき、1,500〜2,500円程度で落札されることが多いですが、帯付きの初回版は価格が高騰傾向にあります。
◆ ホビー・おもちゃ関連
玩具関連は特に希少性が高く、オデュッセイ号のプラモデルや組み立てキットは、中古市場で高額取引の対象となっています。未組み立て品や箱付き完品であれば15,000〜30,000円の範囲で取引され、保存状態が極めて良い場合はさらに価格が上がります。
マスコット的存在であるノノのソフビ人形やミニフィギュアも人気が高く、単品でも1,500〜3,000円程度。ガチャガチャ版のミニフィギュアはフルコンプ状態で出品されると8,000円以上の値が付く場合があります。
また、当時のキャラクター消しゴムやスタンプ玩具など、子ども向けの廉価グッズも「昭和レトロ」として再評価され、数百円〜2,000円程度で取引されています。
◆ ゲーム・ボードゲーム関連
家庭用ゲーム化はされなかったものの、当時発売されたすごろく形式のボードゲームは現在でも人気アイテムのひとつです。箱、コマ、サイコロ、ルールブックが揃っている完品であれば5,000〜10,000円前後の高値が付きます。欠品がある場合は2,000〜3,000円程度に落ち着きますが、それでも需要は高いです。
また、当時の雑誌付録として配布された簡易ゲームシートやトレーディングカード風アイテムも、コレクター間で密かな人気があり、状態の良いものは1,000〜2,000円程度で落札される傾向にあります。
◆ 文房具・日用品関連
文具関連では、キャラクター下敷き、ノート、鉛筆、カンペンケースなどが人気です。特に未使用品は非常に希少で、セット売りされると5,000円以上になることもあります。
また、ランチボックスや水筒、弁当袋といった日用品も市場に出回ることがあります。これらは実際に使用されていたものが多いため、完品・未使用品は滅多に出品されませんが、状態が良ければ1点5,000〜8,000円程度で取引される場合があります。
◆ 食品・食玩関連
当時販売された駄菓子やスナック菓子に付属していたシールやカードは、今となってはプレミア品です。保存状態が良いものであれば1枚500〜1,000円程度ですが、コンプリート状態で揃っていると5,000円を超える価格で落札されることも珍しくありません。
◆ 総合的な中古市場の傾向
『宇宙伝説ユリシーズ31』関連グッズは、市場規模が巨大ではない分、熱心なコレクター層に支えられており、「出品されれば必ず入札がある」という安定した需要を持っています。特に映像ソフトとホビー系アイテムは価格が年々上昇しており、レトロアニメ再評価の流れに乗って「昭和アニメグッズ市場」の中でも存在感を増しています。
総じて、ユリシーズ31の中古市場は「コアなファンにとって宝探しの場」であり、時に高額でも取引が成立するのは、この作品が単なる一時的な流行ではなく、長期的に愛される文化的財産であることの証拠といえるでしょう。
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