【発売】:コナミ
【対応パソコン】:MSX、Windows など
【発売日】:1987年12月
【ジャンル】:アクションアドベンチャーゲーム
■ 概要・詳しい説明
『シャロム 魔城伝説III 完結編』とは――1987年のコナミが送り出したシリーズ最終章
『シャロム 魔城伝説III 完結編』は、1987年にコナミからMSX向けに発売された長編アドベンチャーゲームで、『魔城伝説』シリーズの第3作にして完結編に位置付けられる作品である。シリーズ第1作『魔城伝説』は縦方向を中心に進行するシューティングゲーム、第2作『ガリウスの迷宮 魔城伝説II』は広大なマップを探索しながら敵と戦うアクションアドベンチャーだった。それに対して第3作となる『シャロム』は、住民との会話、アイテム探索、イベント条件の成立、謎解きなどを中心とするアドベンチャーへと大きくジャンルを変更した。同じシリーズでありながら三作品すべての遊び方が異なるという、現在から見ても非常に大胆な展開を見せた作品である。オリジナル版はMSX用ROMカートリッジとして発売され、当時としては大容量の2Mbit ROMを採用した作品としても知られていた。ゲーム世界には多数の登場人物と広大なフィールドが用意され、単純に一つの城を攻略するのではなく、国全体を旅して人々の問題を解決しながら大魔王復活の謎へ迫っていく。後年にはMSX版をWindows PC上で楽しめる公式復刻も実現しており、「Windows版」と紹介されることもあるが、1987年当時にWindows向けの独立版が存在したという意味ではない。基本的にはMSXオリジナル版を現代のPC環境で遊べる形へ復刻したものと考えるのが分かりやすい。
シリーズ第3作なのに主人公まで変更――伝説の勇者ではなく現代の高校生
『シャロム』が過去二作品と大きく異なる点はゲームシステムだけではない。主人公まで完全に変更されている。第1作・第2作で重要な役割を果たしたポポロンやアフロディテではなく、本作でプレイヤーが操作するのは現実世界で生活している高校生である。主人公の名前はプレイヤーが任意で設定できる。彼は学校のパソコンクラブで部長を務めているが、絵に描いたような優等生でも立派な勇者でもない。むしろ少し自分勝手で口が悪く、同じクラブの女子生徒をからかったり、調子に乗った態度を取ったりする、ごく普通の若者に近い存在として描かれる。この人物造形が重要で、最初から世界を救う使命を背負った英雄ではないからこそ、異世界グリーク王国でさまざまな人物と出会い、困難を経験する中で主人公の見方や行動が変化していく物語が成立している。
パソコンゲームを始めたはずがゲーム世界へ――印象的な導入
物語は現実世界の学校から始まる。同じパソコンクラブに所属しているヒロインが持ってきたゲームを主人公が遊ぼうとしたところ、突然ゲームの世界へ引き込まれてしまう。主人公が到着したのは、ファンタジー世界を思わせる「グリーク王国」。そこでは闇の大魔王ゴグが復活しようとしており、王国全体が危機へ向かっていた。主人公は元の世界へ戻るため、王国各地に存在する8人の魔王を退け、最終的にゴグ復活を阻止する冒険へ巻き込まれていく。「ゲームを遊んでいた人物が、そのゲームの登場人物になってしまう」という仕掛けは、現在でこそ異世界転移ものの一種として理解しやすいが、1987年当時のゲームとしてはかなりユニークだった。この設定によって、作中ではゲーム世界そのものをネタにした冗談やメタフィクション的な演出が自然に成立している。
一見RPG風、しかし本質は「情報」で進むアドベンチャー
画面だけを見ると、『シャロム』は当時流行していたトップビュー型RPGと非常によく似ている。主人公を上下左右へ動かし、村、城、山、湖、地下道などを歩き回り、人々と会話しながら物語を進める。しかし、通常のRPGで一般的なランダムエンカウントは基本的に存在せず、敵を倒して経験値を稼いだり、レベルアップで主人公を強くしたりするシステムも中心ではない。攻略に必要なのは、誰が何を話したか、どの人物を助けたか、どの場所へ行ったか、どのアイテムを入手したかといった情報である。つまり強くなるのは主人公の数値ではなく、プレイヤー自身の知識なのである。序盤では意味不明だった人物の発言が、数時間後に別の地域で得た情報とつながり、重要なヒントになる。用途不明だったアイテムが別の人物の問題を解決する道具になる。行けなかった場所が、新しい人物と出会ったことで通れるようになる。このようなイベントの連鎖がゲーム全体を構成している。
細かなフラグ管理が生み出す「答えだけ知っていても先へ進めない」仕組み
『シャロム』を特徴付けているのが、非常に細かなイベント管理である。攻略方法を知っていたとしても、必要な過程を飛ばして最後の答えだけ入力すれば進めるという作りではない。例えば、ある人物から情報を聞くことで別の人物の会話内容が変化し、その結果として新しい場所へ行けるようになり、そこで得たアイテムを第三の人物へ渡すことでさらにイベントが進む、といった構造になっている。そのためプレイヤーはグリーク王国の人々と実際に関わりながら物語を進めなければならない。この作りは現在でいえば複数のクエストが連結するゲームに近いが、当時は目的地マーカーやクエスト一覧が存在しないため、自分で会話内容を覚えたりメモを取ったりすることが重要だった。
グリーク王国――広い世界を旅すること自体がゲームの中心
主人公が冒険するグリーク王国には、城や城下町だけでなく、イリコ村、ブラインド村、複数の山岳地帯、オンナ湖、オトコ湖、地下世界、遺跡など性格の違う地域が存在する。各地域には独特な住民や問題が用意されており、一度訪れただけではすべてのイベントを解決できない場合も多い。序盤で訪れた場所へ、中盤や終盤でもう一度戻る必要が出てくる。この「以前訪れた場所へ意味を持たせ直す」作りによって、世界全体が一つの大きな謎解きになっている。単にマップが広いだけではなく、情報を得るたびに同じ場所の意味が変化するのである。
174人規模とされた登場人物――人そのものが攻略システム
当時の宣伝では、多数の登場人物が存在することが大きくアピールされていた。本作では、主要人物だけでなく脇役の住民にも細かな役割がある。誰かの話が別の人物へつながり、その人物が次の場所の情報を持っていることもある。中には明らかにギャグ目的の人物もいるが、「意味のないNPC」と思っていた人物の一言が後で重要になる場合もある。このため人々と話すこと自体が探索であり、キャラクター数の多さがそのままゲームボリュームへつながっている。
ブタ子――グリーク王国で最初に頼れる相棒
本作を象徴するキャラクターの一人がブタ子である。その名前の通りブタの姿をしているが人間の言葉を話し、主人公の案内役として冒険へ関わる。一見すると完全なギャグキャラクターだが、長い物語を通して主人公と行動を共にするため、次第に重要な相棒として感じられるようになる。主人公一人では単調になりやすい探索場面でも、ブタ子との掛け合いによってテンポが生まれ、作品全体のコミカルな雰囲気を支えている。
ヒロイン――現実世界と主人公をつなぐ存在
主人公の同級生であるヒロインも、名前をプレイヤーが設定できる。主人公から軽く扱われる場面もあるが、実際には彼へ特別な感情を抱いている。グリーク王国内を直接一緒に旅する人物ではないものの、「主人公が帰るべき現実世界」を象徴する存在として物語上重要である。異世界での経験を重ねることによって主人公が成長し、現実世界の人間関係を見直すきっかけにもなる。
パンパース王とチェルシー――王家をめぐる物語
グリーク王国を治めているのがパンパース王である。高齢の国王であり、娘チェルシーが行方不明になったことで大きなショックを受けている。名前からしてギャグ色が強いものの、王家の物語は後半になるほど重要になる。チェルシーは単なる「さらわれた姫」ではなく、兵士ダンテとの関係や魔王パズラに関わる事件など、終盤の中心人物の一人となる。
ダンテ――物語をシリアスな方向へ変える人物
ダンテはグリーク王国の兵士であり、チェルシーと恋仲にある。しかし二人の関係はパンパース王から簡単に認められているわけではない。行方不明となったチェルシーを探す彼の行動には、兵士としての使命だけでなく、愛する人物を救いたいという個人的な感情も込められている。前半のギャグ色が強い世界の中で、ダンテ周辺の物語は徐々にシリアスな雰囲気を強め、本作の印象を大きく変化させる。
ポポロンとアフロディテ――三部作をつなぐ過去の英雄
過去作を遊んだプレイヤーにとって特別な意味を持つのが、ポポロンとアフロディテである。本作の主人公は彼らではないため、序盤では『魔城伝説』シリーズとのつながりが薄く感じられる。しかし冒険が終盤へ近づくと、過去の英雄や前作の出来事が物語へ入り込み、「なぜこの作品が魔城伝説IIIなのか」が徐々に明らかになる。この仕掛けによって、まったく違うゲームジャンルへ変わった『シャロム』が最終的には三部作の完結編として成立する。
ベティ、サウル、テレサなど――脇役の事情が攻略そのものになる
イリコ村の少女ベティは魔王デビル弟にさらわれ、生け贄にされようとしている。彼女を助けることが序盤の大きな目的となる。水脈を探していたサウル、ローソク職人テレサ、仕事道具を忘れた木こりアレクなど、一見すると小さな困り事を抱えた人々が多数登場する。これらの問題は単なるサブイベントではなく、次の地域や重要アイテムへつながる場合がある。本作では「世界を救う」という大きな目標と「村人の困り事を解決する」という小さな物語が同時進行し、それらが最終的に一本の冒険へつながっていく。
モグラ、グヌス、ティオス――特殊能力を持つ住民たち
王国地下にはトンネルを張り巡らせているモグラたちが存在し、独特な話し方で主人公と会話する。ブラインド村には催眠術師グヌスがおり、別の地域では幽体離脱の術を使うティオスが登場する。本作では鍵を入手して扉を開けるだけでなく、「特別な能力を持った人物の協力」によって突破する障害が多い。このため登場人物自身がアイテムのような役割を果たし、誰と知り合ったかが攻略可能範囲を広げていく。
マーマとマーマン――世界の危機とは関係なさそうな恋愛まで攻略へつながる
オンナ湖に暮らす人魚マーマと、オトコ湖にいるマーマンは恋人同士だが、互いに送った手紙が届かなくなっている。世界滅亡の危機と比べれば小さな問題に見えるが、本作ではこうした個人的な事情も冒険へ組み込まれている。人々の暮らしや恋愛を助けながら進むことで、グリーク王国が単なる「ボスを倒すための舞台」ではなく、実際に人々が生活している世界として感じられる。
カリレオとグランドクロス――大魔王復活へ近づく天体現象
天文学者カリレオは、天空で起きるグランドクロスと大魔王ゴグの復活について警告する。対して、闇の復活を迷信扱いする人物も存在するため、プレイヤーは複数の証言を聞きながら「本当に何が起きようとしているのか」を理解していく。序盤では単なる噂話だったものが、物語が進むにつれて現実味を帯びてくる構成は、長編アドベンチャーらしい魅力である。
8人魔王――同じ戦闘方法が二度と続かないボス設計
『シャロム』最大の特徴の一つが、8人魔王との対決である。一般的なRPGならすべてのボスを同じ戦闘システムで攻略するが、本作では魔王によってゲームジャンルが変わる。アクションゲーム、投擲ゲーム、トップビュー戦闘、ブロック崩し、会話イベント、パズルなど、まるで複数のゲームを一本に詰め込んだような構成になっている。
デビル弟――最初の魔王で突然アクションゲームへ
最初の魔王となるデビル弟は、ベティを生け贄としてさらっている。戦闘になると通常の探索画面から一変し、横視点のアクションゲームになる。主人公は短剣を投げ、敵の攻撃を避けながら弱点を狙う。この戦闘によって、プレイヤーは「このゲームの魔王戦は普通のコマンドバトルではない」ということを早い段階で理解する。
デビル兄――同じ兄弟でもまったく違う遊び
デビル兄はブラインド村に異常をもたらしている魔王である。弟と同じ種類の戦闘をするのかと思わせておいて、実際には上下移動を利用しながら攻撃を避け、タイミングを合わせて反撃する別タイプのアクションとなる。同じ「デビル兄弟」でありながらゲームルールを変えることで、本作の自由な設計思想が明確になる。
半魚人――ジャンプによる回避が重要となる魔王
半魚人戦ではトップビュー型の戦闘となり、敵の攻撃をジャンプで避けながら中央付近の弱点を狙う。反射神経だけでなく、攻撃と回避のタイミングを見極める必要がある。魔王撃破後には探索へ関係する変化が生まれ、ボス戦そのものが次の冒険への扉になっている。
リザード――突然始まるブロック崩し
リザードは村人を支配し、ゴグへ従わせようとしている魔王である。この相手との対決では、突然ブロック崩しに近いゲームが始まる。アドベンチャーゲームを進めていたはずなのに、ボールの反射角度や落下位置を考える必要が出てくるという、本作でも特に意外性の大きい場面である。
アゴル――弱点を見抜くアクションと物語上の転換点
アゴルは巨大な目を弱点とする魔王である。戦い自体は敵の攻撃を避けながら弱点を狙う構成だが、アゴル周辺から本作の物語は次第に軽い冒険だけでは済まない方向へ進んでいく。魔王を倒して終わる単純な展開ではなく、その行動によって何が起こるのかを考えさせる場面が増えていく。
ラーナ――攻撃せずに解決する異色の魔王
ラーナは呪いによって巨大化している魔女だが、彼女との対決では力任せに攻撃するだけでは解決しない。ラーナの事情、過去、呪いの意味を理解することが重要となり、会話や物語そのものが攻略方法になる。「魔王だから倒せばいい」というプレイヤーの固定観念を利用した仕掛けであり、アドベンチャーゲームとしての本質が強く表れている。
ガンガン――純粋なアクション能力を要求する終盤の強敵
ダイヤの山を支配するガンガンは、アクション形式の魔王の中でも難しい相手として印象に残りやすい。強力な攻撃をかわしながら弱点を狙う必要があり、それまで情報収集やパズル中心で進めてきたプレイヤーに対して、終盤で改めて反射神経を要求してくる。
パズラ――最後の魔王で待つ「箱入り娘」パズル
パズラはチェルシーを取り込んでいる8人魔王最後の大きな敵である。しかし戦闘形式はアクションではなく、ブロックを動かして目的の駒を出口へ導く箱入り娘型パズルとなっている。最終魔王に近い存在を剣ではなく論理的思考で倒すという発想は、他のゲームではなかなか見られない。プレイヤーはブロックの配置を何手も先まで考え、目的の駒が通れる空間を作らなければならない。
大魔王ゴグ――ゲーム全体で集めた知識が最後の武器になる
8人魔王の背後にいる真の敵が大魔王ゴグである。ゴグ復活にはグランドクロスなどの要素が関係しており、主人公は王国各地で得た情報を整理しながら最終局面へ向かう。ここで重要なのは、ラスボスだから最強装備を用意すればよいというゲームではないことだ。旅の中で何を知り、何を理解したのかが最終攻略へつながる。「世界について知ること」が最大の武器になるという本作の設計が最後まで貫かれている。
スタッフ村――開発者自身までゲーム世界へ登場する遊び心
『シャロム』にはスタッフ村という非常に変わった場所も存在する。一般的ならエンディングのスタッフロールに登場するだけの開発スタッフを、ゲーム世界の中へ組み込んでしまう発想である。現実世界の高校生がゲームへ吸い込まれたという設定だからこそ、「ここはゲームなのだ」ということを隠さず、むしろ笑いへ変えることができる。本作に見られるメタフィクション的な遊びの代表例である。
ギャグと下世話な冗談――1980年代らしい自由なテキスト
本作の会話には多数のギャグが盛り込まれている。人物名、方言、言葉遊び、当時の流行、少し下世話な冗談まで幅広く取り入れられており、物語を進めるための情報収集が単純作業にならないよう工夫されている。現在では意味が分かりにくい時代ネタもあるが、それも含めて1980年代のゲーム文化を感じられる部分となっている。
笑いから涙へ――終盤で印象を大きく変えるシナリオ
前半だけを見ると、『シャロム』はギャグを中心とした明るい作品に思える。しかし、ダンテやチェルシー、ラーナ、王家、大魔王ゴグなどに関係する出来事が深くなるにつれ、ストーリーは徐々にシリアスになっていく。この落差が非常に大きい。序盤で笑わせ、登場人物へ愛着を持たせてから深刻な物語へ移ることで、終盤の展開が強く印象に残る。単なるパロディゲームで終わらない理由は、この後半の物語にある。
音楽――過去作まで思い出させるシリーズ完結編の演出
本作のBGMも高く評価されやすい部分である。地域、魔王、物語場面などによって曲が変化し、探索の雰囲気を支えるだけでなく、終盤には過去の『魔城伝説』シリーズを思い出させる演出も用意されている。長くシリーズを遊んできたプレイヤーにとって、昔の音楽を連想させる場面は「本当にシリーズが終わるのだ」という感情を強める。
1987年当時のMSXソフトとしての存在感
1987年はコナミがMSX向けに数多くの重要作品を送り出していた時代であり、『シャロム』はその中でも異色の存在だった。派手なシューティングやアクションではなく、大量の人物、会話、イベント、謎解きという方向へ容量を使い、長編アドベンチャーとして成立させている。シリーズ最終作でありながら過去作の成功パターンを繰り返さなかった点に、当時のコナミの挑戦的な姿勢が強く表れている。
■■■■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター
最大の魅力は「次にどんなゲームが始まるのか分からない」こと
『シャロム 魔城伝説III 完結編』を実際にプレイして強く感じる魅力は、最後までゲーム内容を予想できないことである。通常フィールドでは人物と話し、手掛かりを探し、アイテムを利用して謎を解く。しかし魔王のところまで到達すると突然アクションになり、次の魔王ではブロック崩し、その次では会話、さらに別の相手ではパズルになる。一般的なゲームでは一度ルールを覚えれば、その技術を最後まで応用できる。『シャロム』の場合は反対で、一つの攻略法だけでは通用しない。観察力、記憶力、反射神経、論理的思考、会話理解など、異なる能力を次々と要求してくる。これによって「また同じことを繰り返している」という感覚が生まれにくく、次の魔王へ到達すること自体が楽しみになる。
主人公ではなくプレイヤーがレベルアップするゲーム
本作には経験値を稼いでレベルを上げるという一般的な成長システムがない。その代わり、プレイヤー自身がグリーク王国について詳しくなっていく。開始直後は地名も人物も分からないが、数時間遊べば「この人物はあの村にいる」「このアイテムはあの人が必要としていた」「この道は今は通れないが後で意味がある」と理解できるようになる。この知識の蓄積こそ、本作におけるレベルアップである。終盤のプレイヤーは主人公の数値が上がっていなくても、ゲーム世界について大量の情報を持っている。そのため初回プレイと二周目では、同じマップでもまったく違って見える。
基本攻略その1――新しい村では全員に話しかける
攻略で最も重要なのは、人物との会話を面倒がらないことである。新しい場所へ到着したら、重要そうな人物だけではなく、可能な限り全員へ話しかけた方がよい。雑談に見える台詞が後から重要なヒントへ変わることもある。特に固有名詞や場所の名前が出てきた場合は覚えておきたい。現在なら簡単なメモを作り、「誰が・どこで・何について話したか」を整理すると大幅に攻略しやすくなる。
基本攻略その2――一度話した人物へもう一度会う
本作では物語が進むと人物の会話が変化する場合がある。そのため「以前話したからもう必要ない」と判断してはいけない。魔王を倒した後、重要人物を救出した後、新しいアイテムを入手した後などは、以前訪れた村へ戻る価値がある。新しいイベントが発生しない場合は、まだ変化した会話を確認していない可能性も考えられる。
基本攻略その3――用途不明のアイテムを捨てた情報として扱わない
入手した時点で用途が分からないアイテムも多い。しかし、後の人物イベントと結び付く場合があるため、「今は使えないもの」として覚えておくことが重要である。誰かが困っていることと手持ちの道具を結び付ける発想が攻略の基本になる。
基本攻略その4――通れない場所を覚えておく
冒険中には、現在の状態では突破できない場所が現れる。そこで長時間粘るのではなく、「後で戻る場所」として記憶しておく方がよい。新しい人物の能力、重要アイテム、イベントの進行によって通れるようになる可能性があるからである。『シャロム』では行き止まりが必ずしも無意味ではなく、未来の攻略場所を先に見せている場合がある。
基本攻略その5――詰まったら目的地ではなく未解決事件を探す
次に何をすればよいのか分からなくなったとき、「次の魔王の場所」だけを考えるとさらに迷いやすい。それよりも、まだ解決していない住民の問題を書き出すとよい。「行方不明の人物がいる」「手紙が届いていない」「道具を失くした人がいる」「通れない場所がある」といった未完了の出来事のどれかが次の進行フラグにつながっていることが多い。
デビル弟攻略――攻撃より回避を優先する
最初の魔王戦では、短剣を投げて弱点を狙う。初見では早く倒したい気持ちから攻撃を連発しやすいが、敵の攻撃パターンを見ることが重要である。無理に連射するより、攻撃を避けた直後に反撃するリズムを作る方が安定する。最初の魔王だからといって雑に戦うと意外に苦戦するが、動きを観察すれば突破できる。
デビル兄攻略――移動量を減らしてタイミングを見る
デビル兄戦では上下方向の位置調整が重要となる。焦って大きく動き回ると敵の攻撃へ自分から当たりやすくなるため、基本位置を決め、必要なときだけ移動する方がよい。敵が攻撃した直後を反撃のチャンスと考えると安定しやすい。
半魚人攻略――ジャンプを回避技として使う
半魚人戦では、ジャンプを単なる移動としてではなく攻撃回避の手段として利用する。攻撃を避けた後で相手へ近づき、短剣を当てるという順番を意識すればよい。「避けながら攻撃する」のではなく、「避ける→位置を整える→攻撃」と分けて考えると攻略しやすい。
リザード攻略――ブロック崩しの感覚へ頭を切り替える
リザード戦では、それまでの魔王攻略方法を一度忘れた方がよい。ボールの反射方向を見ながら位置を調整することが重要で、追いかけるのではなく落下地点を予想して先回りする感覚が必要となる。苦手な人にとっては大きな難所になりやすいが、ボールの角度を理解すると安定してくる。
アゴル攻略――弱点が見えても攻撃を欲張らない
アゴルは弱点が比較的分かりやすいが、そこへ攻撃を当てることに集中しすぎると被弾しやすい。敵の攻撃が終わる瞬間を待って反撃する方が安全である。本作のアクションボスに共通するのは、攻撃回数を増やすより確実な一撃を重ねる方が良いという点である。
ラーナ攻略――「敵だから攻撃する」という考えを捨てる
ラーナは本作で最もアドベンチャーゲームらしい魔王の一人である。力で倒すのではなく、彼女の事情を理解する必要がある。ここでは、それまでに集めた情報、本人の発言、周囲の人物の話などを組み合わせることが攻略となる。ゲームの常識より物語を優先して考えることが大切である。
ガンガン攻略――欲張らず一発ずつ弱点へ
ガンガンは終盤のアクション難所。攻撃が激しいため、すべての攻撃へ反応しようとすると操作が混乱する。安全な基本位置を作り、危険な攻撃だけ大きく避ける。弱点を狙える瞬間になったら確実に攻撃する。短時間で倒そうとせず、攻撃パターンを一つずつ覚える方が結果的には早い。
パズラ攻略――出口から逆算して空間を作る
パズラの箱入り娘型パズルでは、目的の駒だけを出口へ近づけようとしてはいけない。まず出口まで通れる空間をどう作るかを考え、その通路を塞いでいるブロックを動かす。そのブロックを動かすスペースを作るため、さらに別の駒を移動する。このように出口側から逆算すると解法を考えやすい。途中で完全に手詰まりになった場合は、無理に修正するより最初からやり直した方が整理しやすい。
ゴグ攻略――旅の途中で集めた情報を読み直す
最終局面で詰まった場合、単純に最強の武器を探すのではなく、これまで聞いた話を振り返るべきである。ゴグ、グランドクロス、王国の過去、前作との関係など、物語上の情報そのものが攻略材料になっている。最終決戦まで含めて「アドベンチャーゲーム」として考えることが重要である。
ゲームの難易度――アクションよりフラグ探しの方が難しい
魔王戦に難しい場面はあるものの、何度か挑戦すれば敵の動きを覚えることができる。それより厄介なのが「何を見落としているのか分からない」状態である。イベント条件の一つを見逃すと、正しい場所へ行っても何も起こらない。そのため本作の本当の難易度は情報整理にある。メモを取るだけでも大きく遊びやすくなる。
攻略情報のおすすめ利用法――完全解答ではなくヒントを見る
現在は攻略情報を簡単に調べられるが、最初から全部見てしまうと本作の魅力を大きく失ってしまう。おすすめなのは一定時間自力で考え、どうしても分からない場合だけ「どの地域を調べればよいか」程度のヒントを見る方法である。パズラのようなパズルも、最初から完成手順を見るより、なるべく自力で考えた方が突破時の達成感が大きい。
好きなキャラクター・ブタ子――本作を象徴する最高の相棒
好きなキャラクターを一人挙げるなら、ブタ子は非常に有力である。最初は「しゃべるブタ」というギャグだけで登場するように見えるが、長い冒険を共にすることでプレイヤーにとって自然な相棒になる。主人公の性格が少々癖のあるものだからこそ、ブタ子が会話のバランスを取っている。ゲームをクリアした後、魔王の名前をすべて忘れてしまってもブタ子だけは覚えている、というタイプのキャラクターである。
印象に残るラーナ――敵味方の境界を曖昧にする存在
ラーナは「魔王だから悪い」という単純な構造を崩す人物である。彼女の背景を理解することが攻略につながるため、プレイヤーは初めて相手を倒すこと以外の解決方法を真剣に考える。この体験が後半のシリアスな物語へ入る準備にもなっている。
印象に残るダンテ――ギャグの世界で本気の感情を持つ男
ダンテは恋人チェルシーを想う気持ちによって行動する。その真剣さが、作品全体の軽いノリと対照的である。彼の存在によってチェルシー救出は単なるゲーム上の目的ではなく、「誰かが本当に助けたいと思っている人物を救う」という意味を持つようになる。
ポポロンとアフロディテ――シリーズを知る人への特別なご褒美
前二作品を知っているプレイヤーにとって、ポポロンやアフロディテに関係する展開は大きな意味を持つ。序盤ではシリーズとのつながりをあえて薄くし、最後に過去作品を思い出させることで感動を強める。この構成は単独プレイでも成立するが、三部作を順番に遊ぶほど価値が増す。
『シャロム』を最大限楽しむなら「迷うこと」をゲームの一部と考える
効率だけを考えれば、攻略チャートを見ながら最短ルートを進めればよい。しかし本作の本当の楽しさは、王国をさまよい、人々の話を聞き、「あの情報はここにつながるのか」と気付く瞬間にある。迷う時間まで含めて一つの冒険と考えると、『シャロム』の評価は大きく変わる。
クリアした瞬間に残るのは「世界を理解した」という満足感
一般的なRPGをクリアしたときは、「最強のボスを倒した」「主人公を最大まで育てた」という達成感が残る。『シャロム』では、それよりも「この国のことをようやく理解した」という感覚が強い。最初は知らない人だらけだった世界で、終盤には多くの人物の事情や住んでいる場所を覚えている。これが本作独自の達成感である。
■■■■ 感想・評判・口コミ
「魔城伝説IIIなのにアドベンチャー?」という発売当時の驚き
シリーズ経験者が本作を初めて見た際、最も驚いたのはジャンル変更だったと思われる。初代がシューティング、第2作が探索型アクションだったため、「III」と名付けられた作品にはさらに進化したアクションを期待した人も多かったはずである。ところが実際には大量の会話と謎解きが中心。主人公まで別人であり、最初だけ見ればシリーズ作品に思えないほど大きな変化だった。この大胆さは賛否を生みやすいが、後半まで遊ぶことで「なるほど、これは確かに魔城伝説の完結編だった」と感じられる構成になっている。
当時のMSXユーザーから一定の人気を獲得
正確な累計販売本数については確かな数字を簡単に断定できないが、当時のMSX専門誌ランキングで上位へ入った記録があり、少なくともMSXユーザーの間で注目されたタイトルだったと考えられる。1987年末はコナミ自身が強力なMSXソフトを多数送り出していた時期であり、その中でアドベンチャーという異なる方向から存在感を示した作品だった。
好評ポイント1――住民との会話が面白い
『シャロム』を好きなプレイヤーが高く評価しやすいのが、会話の楽しさである。情報収集のためにNPCへ話しかけるゲームではあるが、台詞が単なる攻略ヒントに終わらず、ギャグやキャラクター性を含んでいる。そのため「攻略のために仕方なく話す」のではなく、「この人は次に何を言うのだろう」と会話そのものを楽しめる。
好評ポイント2――ブタ子の存在感
ゲーム内容を細かく覚えていない人でもブタ子だけは印象に残るほど、強いキャラクター性を持っている。マスコットであり、案内役であり、主人公の会話相手でもある。本作が長時間の情報収集ゲームでありながら暗くなりすぎないのは、ブタ子の存在による部分が大きい。
好評ポイント3――後半のストーリーが意外に感動的
序盤は冗談だらけなので、「最後までコメディで進む」と思わせる。しかし中盤から終盤にかけて人物同士の関係や悲しい出来事が増え、想像以上に真面目な物語へ変化する。この落差を高く評価するプレイヤーは多い。前半でキャラクターへ愛着を持たせているため、後半の出来事がより強く響く。
好評ポイント4――シリーズファンへの終盤サービス
過去の『魔城伝説』を知る人にとって、終盤でシリーズとのつながりが強まる展開は大きな魅力である。音楽、人物、物語などを通して、それまで別作品のように見えた『シャロム』が一気に三部作の最終章になる。この瞬間は、前二作品を遊んだ人ほど強い印象を受ける。
好評ポイント5――一作品で複数ジャンルを楽しめる
魔王ごとにアクション、ブロック崩し、パズルなどへ変化するため、「次に何が起こるのか分からない」という面白さがある。現在の視点では統一感に欠けると感じる人もいるかもしれないが、当時としては非常に遊び心にあふれた構成だった。
賛否ポイント1――フラグ管理が非常に厳しい
一方で、不満点として挙げられやすいのが進行条件の分かりにくさである。正しい場所へ来ているのに前提イベントが不足しているため何も起きない場合がある。ゲーム側から「まだ○○が必要です」と教えてくれるわけではないため、何を見落としているのか分からなくなる。これは本作最大の難所であり、同時に自力で突破したときの喜びを生む要素でもある。
賛否ポイント2――移動の多さ
広い王国を何度も往復するため、現在の感覚では移動が面倒に感じられる。高速移動やファストトラベルが一般的ではなかった時代の作品なので、一つの会話を確認するために長距離を戻ることもある。世界を旅している感覚を強める長所である一方、テンポ面では明確な弱点でもある。
賛否ポイント3――魔王によって得意不得意が極端に出る
アクションが上手い人でもパズルが苦手ならパズラで止まり、謎解きが得意でもブロック崩しが苦手ならリザードで苦戦する。一つの技能だけでは最後まで進めないため、人によって「どの魔王が一番難しいか」が大きく異なる。
パズラの思い出――当時の子供には強烈な壁
現在なら攻略情報を検索できるが、発売当時は箱入り娘型パズルを自力で解く必要があった。何時間考えても解けず、雑誌の攻略情報や友人の助言を待ったという経験を持つ人もいたはずである。クリアできた人にとっては強烈な達成感があり、できなかった人には長く記憶に残る難所となった。
現在では時代を感じるギャグも魅力の一部
会話には1980年代の流行や当時のテレビ的な感覚、少し下品な冗談なども含まれているため、現在では古く感じる部分がある。しかし、それも作品が作られた時代を知る資料として見ると面白い。現代の作品ではあまり見られない自由なテキストから、当時のパソコンゲーム文化を感じることができる。
「子供の頃にクリアできなかったゲーム」として再挑戦する楽しみ
発売当時に子供だった人にとって、人物関係の整理、一般知識、論理パズルなどはかなり難しかった可能性がある。大人になってから再挑戦すると、昔理解できなかったヒントが簡単に分かる場合もある。ゲームは変わっていないのに、プレイヤー自身が成長したことで難易度が変わる。これは長く残ったレトロゲームならではの面白さである。
現在初めて遊ぶ人にも意外と分かりやすい基本操作
ゲームシステムは複雑だが、操作そのものは極端に難しくない。主人公を動かし、人と話し、必要な行動を行うという基本は理解しやすい。難しいのは操作より「何をすべきか」を考える部分である。そのため、必要に応じて攻略ヒントを使えば、現在初めて遊ぶ人でもストーリーを楽しめる。
総合的な評判――万人向けではないが非常に記憶へ残りやすい
『シャロム』は、短時間でテンポよく進むゲームが好きな人には合わない場合がある。反対に、メモを取りながら謎を解くこと、登場人物の会話を読むこと、寄り道しながら世界を知ることが好きな人には非常に相性がよい。万人が同じように高く評価する作品というより、「好きな人にとっては忘れられない作品」になりやすいタイプである。
個人的な感想――作り手の遊び心が画面の向こうから伝わってくる
本作を現在振り返って特に面白いのは、制作者が「このゲームはこのジャンルでなければならない」という枠に縛られていないことである。面白そうだからブロック崩しを入れ、別の魔王ではパズルを入れ、スタッフ村まで作る。普通なら散漫になりそうだが、「主人公がゲーム世界へ入った」という設定が全体を一つにまとめている。遊び心がそのまま作品の個性へ変わった好例である。
■■■■ 当時の宣伝・現在の中古市場など
1987年当時の宣伝――大容量と世界の広さが大きな売り
本作の宣伝では、シリーズ完結編であることに加え、2Mbit ROMを使用した大容量作品である点、登場人物の多さ、画面数の多さなどが大きくアピールされた。当時のユーザーにとってROM容量はゲームの豪華さを示す分かりやすい指標の一つであり、「大容量だから多くのイベントや人物が入っている」という印象を与えやすかった。
全600画面規模という数字が伝えた冒険の大きさ
当時の広告では多数の画面が収録されていることも強調された。現在の広大な3Dマップとは意味が違うものの、画面切り替え式のMSXゲームで数百画面を探索できることは十分なボリューム感があった。村、城、湖、山、地下など、多くの地域へ移動しながら長時間遊べることを数字で分かりやすく伝えた宣伝だった。
登場人物174人規模――人の多さそのものをセールスポイントへ
本作では敵キャラクターの数より「会話できる人々の数」が重要だった。そのため登場人物の多さを宣伝材料へ使ったことは非常に合理的である。誰から何を聞いたかが攻略の中心となるため、人物数=謎解きのボリュームとも言える。
『完結編』という言葉が持つシリーズファンへの訴求力
タイトルへわざわざ「完結編」と付けたことで、過去二作品を遊んできた人に対して「物語の最後を見届けたい」という気持ちを刺激した。ゲームジャンルが変わっていても、シリーズの結末を知りたいユーザーにとっては強い購入理由となったはずである。
専門誌が最大の情報源だった時代
1987年にはSNSも動画サイトもなく、MSXユーザーは専門誌やパソコン雑誌、ゲームショップ店頭の広告などから新作情報を得ていた。雑誌にはスクリーンショットやゲームシステムの説明、攻略のヒントなどが掲載され、作品の知名度や売上にも大きく影響した。『シャロム』のように静止画だけではジャンルの多彩さが伝わりにくいゲームにとって、専門誌による詳しい紹介は特に重要だった。
当時のコナミブランドそのものが大きな宣伝
1980年代後半のMSX市場では、コナミは非常に強いブランド力を持っていた。アクション、シューティング、探索ゲームなど質の高い作品を多数発売しており、「コナミの新作」というだけでも注目を集めやすかった。『シャロム』もその流れの中で登場し、さらに『魔城伝説』シリーズ完結作という看板を背負っていた。
同時期の強力タイトルの中でも異色の存在
当時のコナミには派手なシューティングやアクション作品も多く、その中で『シャロム』は地味に見える可能性があった。しかし、会話、物語、謎解き、複数のミニゲームを組み合わせることで別方向の豪華さを提示した。アクション作品の技術力だけでなく、長編アドベンチャーまで作れるメーカーであることを示した一本でもある。
パッケージと説明書も商品の魅力
ROMカートリッジ、外箱、説明書などを含む当時の商品は、現在ではコレクターズアイテムとなっている。特に本作の説明書は単なる操作説明だけではなく、多数の人物から得た情報を整理するためにも役立つ存在だった。当時のプレイヤーが説明書へメモを書き込みながら攻略した個体も存在すると考えられ、それ自体が1980年代の遊び方を伝える資料になっている。
ROMカートリッジという販売形態の利点
当時のパソコンゲームにはカセットテープやフロッピーディスクも多かったが、本作はROMカートリッジだったため本体へ差してすぐ起動できた。長いロード時間を待つ必要がない点は大きな長所だった。一方、長編作品なのでゲーム進行を保存するための仕組みも必要であり、当時のMSX環境に合わせた複数の保存方法が考慮されていた。
販売本数を簡単に断定できない理由
現在、『シャロム』の国内累計販売本数について確実な公式数字を一般資料から簡単に確認することは難しい。そのため「○万本売れた」と推測だけで書くのは適切ではない。ただし、当時のMSX専門誌ランキングで上位へ入った記録があることから、発売当時一定以上の人気と注目を集めた作品であることは分かる。
現在の中古市場――カートリッジ単品と完品で価格差が大きい
中古市場では、同じ『シャロム』でもカートリッジのみの商品と、箱・説明書付きの商品では価格が大きく異なる。実際に遊ぶだけならカートリッジ単品で十分だが、コレクション目的の場合には当時の商品状態へ近いものが好まれるため、外箱や説明書の価値が高くなる。
ソフト単品は数千円台が一つの目安
現在の国内中古市場では、MSX版カートリッジ単品は数千円台で見かけることがある。状態、動作確認の有無、ラベルの傷みなどによって差が出るため、単純に固定価格で考えることはできない。レトロゲームの出品数は少なく、一時的な高値商品だけを見て相場と判断しないことが大切である。
箱・説明書付きは1万円前後以上になる場合も
箱や説明書が残っている商品は、裸ソフトより高くなる傾向がある。さらに箱の潰れが少ない、説明書に大きな傷みがない、カートリッジラベルの退色が少ないといった条件がそろうとコレクション価値は高くなる。美品として販売される商品では1万円を超える価格設定が見られることもある。
出品価格と落札価格は別物
中古市場を見る際に注意したいのが、「出品されている価格」と「実際に売れた価格」の違いである。例えば2万円で出品されていても、その価格で取引が成立したとは限らない。そのため相場を見るなら、可能であれば過去の落札・成約例を複数確認する方がよい。
過去最高価格を断定しにくい理由
オークション、フリマアプリ、専門店、イベント、個人売買など取引場所が分散しているため、すべての過去取引を把握することは困難である。また、未使用品と裸ソフトでは条件が違いすぎる。「過去最高○万円」と断定するより、「単品はこの程度、完品はこの程度」と状態別に考える方が現実的である。
購入時は動作確認と端子状態を確認
ROMカートリッジは比較的耐久性が高いが、発売から長い年月が経過している。端子部分の汚れや酸化によって起動しにくくなる場合もあるため、実用品として購入するなら動作確認済みの商品を選ぶと安心できる。
ラベル・箱・説明書の状態も重要
コレクション目的なら、カートリッジのラベル退色、剥がれ、書き込み、箱の潰れ、値札跡、説明書の折れや破れなども確認したい。本作の場合は説明書への攻略メモが残っている可能性もあり、無記入品を求める人と「当時のプレイヤーの痕跡」を楽しむ人で評価が分かれる。
Windows環境で遊べる公式復刻
後年にはProject EGGを通じて、MSX版『シャロム』をWindows PC上で楽しめる公式復刻が実現した。これは現代向けにグラフィックを全面的に描き直したリメイクではなく、オリジナルMSX版を現代環境へ残すことを目的とした復刻である。
公式復刻によって「遊ぶだけ」なら実物カートリッジが必須ではなくなった
実物MSXカートリッジしか存在しなければ、年々ハードルは高くなる。しかし公式復刻が存在することで、「ゲーム内容を体験したい人」と「当時の商品を収集したい人」が別々の方法を選べるようになった。これはゲーム保存という意味でも重要である。
多数の家庭用ゲーム機へ移植された作品ではない
『シャロム』はファミコン、スーパーファミコン、PlayStationなどへ大量に移植された作品ではない。そのため機種ごとの大幅なアレンジを比較するタイトルではなく、MSX版そのものが作品の中心にあり続けている。このことが、本作とMSX文化を強く結び付けている。
実物MSX版を買う価値――1987年の商品を手にできる
公式復刻がある現在でも、オリジナル版には独自の価値がある。カートリッジを当時のMSX本体へ差し込み、紙の説明書を見ながら遊ぶ体験は、復刻版では完全には再現できない。魔城伝説三部作を実物で集めたいコレクターにとっても、『シャロム』は重要な一本である。
中古価格の今後を投機的に予測するのは難しい
レトロゲーム価格は人気、出品数、海外需要、保存状態など多くの要素で変化するため、「今後必ず高騰する」と断言することはできない。ただし時間が経つほど箱・説明書まで良好な完全品は減少するため、裸ソフトより完品の希少性が高まりやすいと考えることはできる。
現在の中古市場が示すもの――忘れられていないMSXコナミ作品
発売から長い年月が経っても専門店やフリマなどで商品が取引されていることは、本作に現在も需要があることを示している。超高額プレミアソフトというより、「遊びたい人・懐かしい人・集めたい人が継続的に存在する作品」と見る方が適切である。
■■■■ 総合的なまとめ
シリーズ最終作で最も大胆なジャンル変更を行った作品
『シャロム 魔城伝説III 完結編』は、シリーズ最終作だからこそ安全策を取らず、これまでと違うことへ挑戦した作品である。シューティング、探索アクションと変化してきたシリーズを、最後には長編アドベンチャーで締めくくる。通常なら人気作品のシステムを引き継ぐ方が分かりやすいが、本作はゲーム性そのものを作り直した。この大胆さが最大の個性である。
「世界を知ること」が主人公の成長となる
経験値もレベルも中心ではないため、最初から最後まで主人公の能力値はRPGのようには変化しない。しかしプレイヤー自身は確実に成長する。王国の地理を覚え、人物関係を理解し、魔王の弱点を知り、大魔王ゴグ復活の意味を理解する。最初は何も知らなかった世界が、最後には自分の知っている場所になる。この変化が本作最大の成長要素である。
ゲーム世界へ吸い込まれる設定が、すべての自由さを許している
アクション、ブロック崩し、パズル、ギャグ、スタッフ村など、本来なら統一感を失いそうな要素が一本へ詰め込まれている。それでも成立しているのは、「主人公がゲーム世界へ入り込んだ」という設定があるからだ。ゲームの中なのだから、次に別のゲームが始まってもおかしくない。その自由さを設定そのものが支えている。
不便さも含めて1980年代アドベンチャーらしい
現在のゲームと比べると、目的地案内、クエストログ、高速移動、イベント履歴などがなく不便である。フラグを一つ見落とせば長時間迷う可能性もある。しかし、この不便さによって「自分で世界を調べている」という感覚が生まれる。快適さでは現代ゲームに及ばないが、発見する喜びは強い。
MSXオリジナル版の魅力――限られた性能で大きな世界を作った
2Mbit ROM、大量の登場人物、多数の画面、複数種類の魔王戦、長編シナリオなど、限られたMSX環境の中へ非常に多くの要素を入れている。技術的な豪華さだけではなく、データ容量を「世界の広さ」と「人の多さ」へ利用したことが特徴である。
Windows環境の復刻版の魅力――1987年の内容を現代へ残す
後年のWindows PC向け復刻は、別のゲームへ作り替えたものではなく、オリジナルを現在も遊べるようにする役割が大きい。実機のMSXを所有していない人でも正式な形で作品へ触れられるため、ゲーム保存の観点からも意味がある。
オリジナル版と復刻版は優劣ではなく目的が違う
実物MSX版は当時の商品、ハード、説明書を含めた体験が魅力。Windows環境の公式復刻は、実機維持の負担を減らしてゲーム内容そのものを楽しみやすいのが魅力である。内容の優劣というより、「1987年の環境まで含めて体験したいか」「作品自体を手軽に遊びたいか」という目的によって選択が変わる。
多数の移植がないことがMSX作品としての個性を守った
さまざまな家庭用ゲーム機へ移植されなかったことで、本作は現在でも「MSX時代のコナミ作品」という印象が非常に強い。知名度を広げる意味では不利だったかもしれないが、MSXというハード文化を象徴する一本としての立場を守ることにもつながった。
三部作を順番に遊ぶことで評価がさらに高くなる
単独でも遊べるが、初代『魔城伝説』、『ガリウスの迷宮』を知っていると、終盤で過去作品との関係が明らかになったときの印象が大きく変わる。「ゲームシステムはまったく違うのに、最後には一つの物語としてつながる」という構造は、シリーズを順番に経験した人への大きなご褒美である。
現在遊ぶなら攻略情報を上手に使うと楽しみやすい
完全自力で挑戦するのも面白いが、現在では生活時間やゲーム環境も当時とは違う。長時間進めない場合だけヒントを見ることで、謎解きの面白さを保ちながらテンポも確保できる。完全攻略を最初から読むのではなく、必要最小限の情報を使う方法が本作には向いている。
最大の魅力は「作り手が楽しんでいること」が伝わる点
細かい完成度だけで評価すると、フラグ管理、移動、ジャンルのばらつきなど欠点は存在する。しかし本作には、それを上回る「面白そうだから入れてみた」という熱量がある。アクションもパズルもギャグもドラマも全部一つのゲームへ入れ、最後にはシリーズ完結編として成立させる。その自由な発想こそ現在まで記憶される理由である。
プレイヤーの記憶そのものが最終的な武器になる
終盤で最も重要なのは、どれだけ主人公を強くしたかではない。これまでどんな人物と会い、どんな話を聞き、何が起きたのかを理解していることである。プレイヤーの記憶と理解がそのまま最終攻略へつながる。この構造は本作を象徴しており、長い冒険全体がラスボス攻略の準備になっている。
総合的に見た『シャロム 魔城伝説III 完結編』
『シャロム 魔城伝説III 完結編』は、不便で、難しく、時には何をすればよいのか分からず、それでも強烈に記憶へ残る作品である。広大なグリーク王国、個性豊かな多数の住民、ブタ子との掛け合い、8人魔王ごとに変わるゲーム形式、スタッフ村のような遊び、前半のコメディと後半のドラマ、そして過去の魔城伝説シリーズへつながる終盤。どれか一つだけなら、より洗練されたゲームは他にも存在する。しかし、それら全部を一つの冒険へまとめた作品は非常に珍しい。
主人公は伝説の勇者ではない。ゲーム好きの高校生が偶然異世界へ飛ばされ、最初は元の世界へ帰りたいだけだったのに、さまざまな人々と出会うことでグリーク王国そのものを救うために行動するようになる。プレイヤー自身も同じように、最初は何も知らない世界を歩き始め、最後には住民の名前や場所、魔王の特徴、王国の歴史まで知るようになる。
その意味で『シャロム』は、主人公とプレイヤーが同時に「異世界へ慣れていく」ゲームである。
最初はゲームの中へ迷い込んだだけだった高校生が、最後にはその世界を救えるほど詳しくなる。そしてプレイヤーも、最初は何も分からなかったMSXの画面の中を歩き続け、やがてグリーク王国の住民たちへ愛着を感じるようになる。
シリーズ最終作としてこれほど奇妙な作品を選びながら、最後まで進めば確かに「魔城伝説はここで完結した」と感じられる。
それこそが『シャロム 魔城伝説III 完結編』最大の成功であり、1987年のMSXゲームという枠を越えて現在でも語り継ぐ価値のある理由なのである。





