【発売】:テクノソフト
【対応パソコン】:PC-8801、X1turbo、X68000 など
【発売日】:1987年8月
【ジャンル】:シミュレーションゲーム
■ 概要・詳しい説明
自分で戦車を操縦するのではなく「戦わせる思考」を作る異色のシミュレーションゲーム
『COMSIGHT(コムサイト)』は、1987年頃にテクノソフトから発売されたパソコン向けのプログラミング・タンクバトル・シミュレーションゲームである。PC-8801系、X1系、X68000系など、当時の国産パソコンを舞台に展開された作品で、一般的なシューティングゲームや戦車ゲームとは根本から異なる発想を採用していた。その最大の特徴は、プレイヤーが戦闘中のタンクをキーボードやジョイスティックで直接操縦しないことである。プレイヤーが行うのは、戦闘が始まる前にタンクがどのように考え、索敵し、移動し、敵を攻撃するのかという行動手順をプログラムとして組み上げること。戦闘開始後は、そのプログラムに従ってタンクが自律的に行動し、プレイヤーは自分が構築した作戦が正しかったのかを見守る立場になる。
つまり本作で重要になるのは反射神経ではなく、「敵を発見したら何をするか」「敵が正面にいなかった場合にはどちらへ旋回するか」「どの距離なら攻撃し、どの距離なら接近するか」「エネルギーをどの程度残しておくか」といった条件判断を、戦闘前にどれだけ合理的に組み立てられるかという点である。普通のアクションゲームならば敵の行動を見た瞬間にプレイヤー自身が判断を変更できるが、『COMSIGHT』ではそれができない。戦いが始まった時点で、プレイヤーの判断はすでにプログラムという形でタンクの中へ組み込まれている。もしタンクが不可解な場所で旋回したり、敵を発見しているのに攻撃しなかったり、意味のない行動を繰り返したりしたなら、それは自分自身が作ったロジックの不備である可能性が高い。この「負けた原因をプログラムまで戻って考える」という循環こそ、本作ならではの面白さである。
BPLによって作り出す「自分だけの戦闘AI」
タンクの頭脳を記述するために用意されているのが、「BATTLE PROGRAMMING LANGUAGE」、略してBPLと呼ばれる専用言語である。BPLは当時のパソコン利用者に比較的なじみ深かったBASICを思わせる構造を持ち、移動、旋回、索敵、条件分岐、内部計算、攻撃といった命令を組み合わせながら、一連の戦闘行動を設計していく。プログラムという言葉だけを聞けば専門知識が必要な難解な作品にも思えるが、本作の目的は本格的なソフトウェア開発そのものではない。限られた命令をどう組み合わせれば強いタンクになるかを試行錯誤する、いわば「ゲームとしてのプログラミング」が中心である。
たとえば最も単純な思考なら、「周囲を調べる」「敵を発見したらその方向を向く」「射程内なら攻撃する」「敵が見つからなければ移動する」という流れだけでも成立する。しかし、それだけでは複雑な行動を行う相手には簡単に対応されてしまう。そこでプレイヤーは、敵との距離によって武器を使い分けたり、相手の方向を計算して進路を予測したり、一定回数索敵しても敵が見つからなければ移動方向を変更したりと、次第に高度な条件を追加していくことになる。
この設計作業の面白いところは、「プログラムを長くすれば必ず強くなる」わけではないことである。命令にはそれぞれ処理に必要な時間やエネルギーという概念が存在するため、必要以上に複雑な判断処理を組み込むと、その間にも戦況は変化してしまう。敵の位置を正確に計算しようとしているうちに相手が別の場所へ移動してしまえば、せっかくの精密な計算も意味を失う。反対に、単純でも素早く判断して即座に攻撃するプログラムが勝つ場合もある。「賢さ」と「処理速度」の折り合いをどこにつけるのかが重要であり、この部分は現代の自律型ロボットゲームやプログラミング競技にも通じる発想になっている。
戦闘開始後には手を出せないからこそ生まれる独特の緊張感
対戦そのものは基本的に1対1のタンクバトルとして進行する。プレイヤーが作ったプログラムをタンクへ設定し、対戦相手を決定して戦闘を開始すると、そこから先はプログラム同士の勝負となる。戦闘中に「今すぐ右へ曲がれ」「そこから逃げろ」「撃て」といった指示を追加することはできない。目の前で明らかな失敗が起きていても、プレイヤーにできるのは結果を見届けることだけである。
一見すると操作することのないゲームは退屈にも思えるが、実際には逆である。自分が何十分、何時間もかけて調整したプログラムが初めて実戦へ投入され、想定した通りに敵を発見して旋回し、攻撃を仕掛けた瞬間には、アクションゲームとは違った達成感が生まれる。一方、想定外の状況に陥り、タンクが同じ場所を回り続けたり、射撃するべき場面で何もしなかったりすると、「どの条件式がおかしかったのか」「敵の位置情報を取得した後の処理に穴があるのではないか」と考えたくなる。戦闘画面そのものが完成したプログラムの試験場になっているわけである。
さらに戦闘では、単に攻撃を当てれば即座に勝利するわけではない。タンクにはエネルギー、シールド、ダメージといった複数の状態が用意され、プレイヤーはそれらを総合的に考える必要がある。行動を行うたびにエネルギーが消費され、何もせず延々と生存し続けることもできないため、消極的すぎるプログラムでは最終的に自滅へ近づいてしまう。逆に攻撃を連発すればよいというわけでもなく、必要以上の索敵や移動、射撃によってエネルギーを浪費すれば、相手を仕留める前に活動能力を失う危険がある。
攻撃を受ければまず防御を担うシールドが削られ、それを突破された状態からさらに被弾を重ねればダメージが蓄積していく。一定以上の損傷を受けるか、戦闘を継続するためのエネルギーを失えば敗北となる。そのため本作では、攻撃能力だけではなく生存能力やエネルギー効率まで含めた総合的な設計が要求される。
プログラムそのものが「武器」であり「操縦技術」になる
通常の戦車ゲームでは、車体性能が同じなら最終的にはプレイヤー本人の操作能力が勝敗を大きく左右する。それに対して『COMSIGHT』の場合、操縦技術に相当するものはすべて事前に記述したプログラムの中へ封じ込められている。索敵能力を重視するか、先制攻撃を狙うか、相手の接近を待つか、移動し続けながら攻撃するかなど、プレイヤーごとの思想がそのままタンクの性格として現れる。
たとえば索敵を頻繁に行うタンクは敵を見失いにくい反面、その分だけ処理を繰り返すことになる。敵の位置を取得したら即座に攻撃するタンクは反応が速いが、移動中の敵に対して現在位置だけを狙っていると攻撃が外れやすい。そこでさらに高度なプログラムになると、敵の現在位置だけを見るのではなく、向きや移動傾向などから少し先の位置を想定して射撃する発想が生まれる。しかし予測計算を増やすほど処理も複雑になるため、精密さを求めすぎれば反応が遅れる。この相反する要素をどう処理するかがプログラマーとしての腕の見せどころになる。
また、本作ではプログラムにエラーが存在すること自体も戦闘上の重大な弱点となる。条件分岐の組み方を間違えたり、計算上成立しない処理を発生させたりすると、単に命令を無視される程度では済まず、戦闘そのものを失う原因になり得る。ゲームを始める前に正しくプログラムが動くか試す工程が重要であり、「書く→テストする→戦わせる→失敗を分析する→書き直す」という開発作業そのものがゲームサイクルへ組み込まれている。
3D空間で自分のプログラムが動き出すという1980年代ならではの衝撃
戦闘画面ではタンクや戦場が立体的に表現され、自分が文字として入力した命令が、実際のタンクの移動や旋回、索敵、攻撃として視覚化される。当時のパソコンゲームにおいて、プログラムを組むこと自体は決して珍しい文化ではなかった。パソコン雑誌に掲載されたプログラムリストを自分で入力してゲームを動かした経験を持つ利用者も多く、「ゲームを遊ぶ人」と「プログラムを書く人」の距離は現在よりもはるかに近かった時代である。
『COMSIGHT』は、そうした1980年代のパソコン文化を巧みにゲームへ取り込んでいた。単にBASIC学習ソフトのように課題を解かせるのではなく、自分で書いたロジックの成果を「戦車同士の戦闘」という分かりやすい結果として見せる。プログラムが成功すれば相手を撃破し、失敗すれば目の前で自分のタンクが敗れていく。抽象的になりがちなプログラミングを、勝敗という非常に明快な形へ変換したことは、本作の大きな発明だったと言える。
メーカー製タンクは「敵」であると同時に自作プログラムの性能試験でもある
最初からメーカー側が準備した対戦用タンクも存在し、自分で作成したプログラムをそれらと戦わせることができる。これらの相手は単なるCPUキャラクターというだけでなく、自作したAIの完成度を測定する基準として機能する。最初はまったく歯が立たなかった相手に対し、索敵方法を見直し、移動の無駄を削り、攻撃条件を改良することで次第に互角に戦えるようになる。その過程そのものが、本作における成長要素なのである。
一般的なRPGなら経験値を獲得することでキャラクターが強くなるが、『COMSIGHT』ではプレイヤー自身がアルゴリズムについて学習することによってタンクが強くなる。ゲーム内の数値だけが上昇するのではなく、「以前より効率のよい条件式を思いついた」「無駄な動きを一つ削れた」「敵の未来位置を予測できるようになった」といったプレイヤー側の知識が戦力へ直結する。
ネットワーク以前の時代に「プログラムを持ち寄って戦う」という発想
『COMSIGHT』を語るうえで興味深いのが、自分一人でCPU相手に遊ぶだけで終わらない点である。自作した戦闘プログラムを他のプレイヤーのものと競わせるという遊び方が想定されており、当時はパソコン通信を利用した交流や、メーカー側が関わるバトルコンテストといった試みまで行われていたとされる。現在ならオンラインサーバーへ自分のAIデータを送信し、自動的にランキング戦を行わせるような仕組みを想像できるが、それに似た発想を通信環境がまだ限られていた1980年代に実践しようとしていたところに、本作の先進性が感じられる。
プレイヤー本人の操作テクニックではなくプログラムデータさえあれば戦えるため、距離の離れた相手とも「どちらのアルゴリズムが強いか」を比較できる。この仕組みは『COMSIGHT』というゲームの設計と非常に相性がよい。人間同士が同じ時間に集まって操作する必要がなく、完成したプログラムそのものがプレイヤーの分身となるからである。
後年のプログラム型対戦ゲームを連想させるほど早かったゲームデザイン
現在の視点から『COMSIGHT』を見ると、ロボットや兵器のAIを組み立て、自律戦闘させるタイプのゲームを先取りしていた作品として非常に興味深い。後年には、自分でロボットの動作を設計して戦わせるゲームや、プログラミングした機体同士を競わせるソフトが複数登場するが、「戦闘前に思考ロジックを完成させ、戦闘開始後は基本的に自律行動を見守る」という核となるアイデアを1980年代の国産パソコンゲームで実現していた点は特筆できる。
テクノソフトといえば後年、スピード感のあるシューティングゲームなどで広く知られるメーカーになるが、初期のパソコン作品には技術的なアイデアを前面に押し出した意欲作も存在していた。『COMSIGHT』もその一つで、派手な物語や大量のキャラクターより、「コンピューターを使うからこそ成立する遊び」を追求している。プログラムを入力できるパソコンという機械そのものをゲームシステムへ深く取り込んだ作品であり、家庭用ゲーム機中心の発想からは生まれにくいタイトルだったとも言える。
『COMSIGHT』の本質は「勝つ方法を操作する」のではなく「勝つ方法を考えて機械に教える」こと
本作を一言で表現するならば、「プレイヤーが戦うゲームではなく、プレイヤーが作った思考に戦わせるゲーム」である。戦車を直接運転し、照準を合わせて射撃する一般的なタンクゲームとは違い、戦闘が始まるより前の段階ですでに勝負の大部分が決まっている。どのような情報を調べ、その情報をどう判断し、次にどんな命令を実行させるのか。その一連の流れをプレイヤー自身が設計するため、勝利した時には「操作がうまかった」という感覚ではなく、「自分の考え方が正しく機能した」という知的な満足感が得られる。
逆に敗北した場合にも、ただゲームオーバー画面を見て終わる作品ではない。「なぜ負けたのか」という疑問が自然に生まれ、プログラムを開き直して原因を探すことになる。索敵の頻度が足りなかったのか、旋回が遅かったのか、敵の位置を取得してから攻撃するまでに時間がかかりすぎたのか、エネルギーを無駄遣いしていたのか。原因を一つ修正して再び戦わせ、それでも負ければさらに改良する。このデバッグと再挑戦の連続こそが『COMSIGHT』のゲームプレイそのものである。
■■■■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター
最大の魅力は「上手に操作する」のではなく「上手に考える」ことが強さになるゲーム性
『COMSIGHT』の面白さを理解するうえで最も重要なのは、本作が一般的な戦車ゲームとはまったく異なる方向から「戦う楽しさ」を作り出していることである。普通のアクションゲームでは、敵が右側から現れれば右を向き、危険になれば後退し、攻撃できる瞬間にボタンを押す。つまり、ゲーム画面を見ながら人間がリアルタイムで判断する。しかし『COMSIGHT』では、その判断をプレイヤー本人が戦闘中に行うことはできない。敵が現れた時にどうするか、敵を見失ったら何をするか、攻撃後にその場へ残るか移動するかといった行動を、あらかじめBPLによるプログラムとしてタンクへ教え込んでおかなければならない。
この仕組みによって、本作では「プレイヤーの考え方」そのものが戦闘能力になる。反射神経が優れていても、プログラムの条件分岐に穴があれば簡単に負けてしまう。反対にアクションゲームが不得意でも、相手の行動を想定して効率のよいアルゴリズムを組めれば強いタンクを作り上げられる。この知的な勝負こそ、『COMSIGHT』最大の魅力と言ってよい。
攻略の基本は「索敵・判断・行動」を一つの循環として設計すること
『COMSIGHT』攻略の基本となる考え方は、タンクの動作を「索敵」「判断」「行動」「再索敵」という一連の循環として組み立てることである。初心者がありがちな失敗は、一つの動作だけを極端に重視してしまうことだ。攻撃命令をたくさん用意しても、相手の位置を正しく把握できなければ意味がない。反対に索敵を何度も繰り返しても、発見後の攻撃処理が遅ければ相手に先手を取られてしまう。
最も基本的な流れとしては、まず周囲を索敵し、敵を確認できた場合には相手との位置関係を判定する。正面に近ければ攻撃へ移り、大きく方向がずれているなら旋回する。距離が遠ければ接近し、近すぎる場合には後退や方向転換を検討する。そして一連の動作を終えたら、以前取得した情報をいつまでも信用せず、再び索敵を行う。この循環を短く安定させることが重要になる。
ここで注意したいのは、「敵を一度見つけたから、その位置へずっと攻撃すればよい」という考え方では勝ち続けられないことだ。相手も移動しているため、取得した位置情報は時間が経過するほど古くなる。したがって、攻略では情報の「鮮度」を意識したい。
エネルギー管理を軽視すると「戦っていないのに負ける」ことがある
本作の攻略を考える際、攻撃命中率と同じくらい大切なのがエネルギー管理である。『COMSIGHT』では、タンクの行動にはコストが存在するため、無意味な動作を繰り返しているだけでも自分を不利な状況へ追い込んでしまう。特に初心者のプログラムでは、「とにかく索敵する」「とにかく旋回する」「見つからなければ動き続ける」といった処理を延々と繰り返しやすい。
しかし、戦場で最も危険なのは敵の攻撃だけではない。自分自身が作った無駄なアルゴリズムもまた敵となる。
攻略上の一つの考え方として、「何もしない時間」と「動きすぎる時間」の両方を減らすことが重要になる。索敵に失敗したら、すぐに同じ場所でもう一度索敵するのではなく、一定距離移動してから再確認する。敵を発見した場合にも、毎回大きく旋回するのではなく、現在の向きと相手の方向を比較し、本当に必要な場合だけ方向転換する。こうした細かな節約が長期戦では大きな差になる。
ビームとミサイルは「撃てる時に撃つ」だけではなく使用条件を考える
『COMSIGHT』ではビームやミサイルを利用して相手へ攻撃を仕掛けることができるが、攻略を進めると重要になるのが「いつ、どの状況で撃たせるのか」という条件設定である。初心者のうちは敵を発見したら即射撃する単純なプログラムでも十分面白い。しかし対戦相手のアルゴリズムが高度になるにつれ、ただ攻撃命令を実行するだけでは安定して勝てなくなってくる。
相手との距離、相対的な位置、こちらの向き、相手の移動方向などを考え、命中する可能性が高い場面を見極める必要がある。特に移動している相手に対しては、索敵時に確認した場所へそのまま攻撃しても、実際の着弾時には敵がそこから移動している可能性がある。そのため、「相手は次にどちらへ進むのか」という予測を取り入れたプログラムには大きな価値がある。
ただし、予測処理を複雑にすれば無条件に強くなるわけではない。相手が直進すると想定して未来位置を算出したところで、相手側のプログラムが直後に旋回するなら予測は外れる。また、計算そのものに時間がかかれば、正確な予測を行ったつもりでも結果的に古い情報を使うことになる。
強いプログラムほど「何をするか」より「何をしないか」が洗練されている
プログラミング型ゲームでは、新しい命令を覚えるたびにあれもこれも追加したくなる。しかし『COMSIGHT』で強さを求めるなら、プログラムを長くすることより、無駄な処理を減らすことが重要になる。
敵を発見した直後に余計な旋回をしていないか。すでに十分近いのにさらに接近していないか。敵が見えなくなった瞬間に意味なく大きく移動していないか。同じ条件判定を連続で行っていないか。
こうした問題を一つずつ整理していくことで、同じ戦術でも反応速度が向上する。強力なAIというと非常に複雑なプログラムを想像しがちだが、『COMSIGHT』ではむしろ「必要な時に必要なことだけをする」設計が強さにつながるのである。
「万能型」を作るか「特定の相手を倒す専用型」を作るかで攻略思想が変わる
本作を遊び込むほど悩ましくなるのが、どのような相手にもある程度対応できる万能型タンクを目指すのか、それとも特定の相手を徹底的に研究した専用型を作るのかという問題である。
CPU側の行動特性を観察し、その敵だけを倒すことを目的とするなら、相手の癖を利用するプログラムを作ることができる。一方、人間が作った未知のプログラムと戦わせる場合、相手が何をしてくるかは分からない。その場合は特定の行動パターンだけを前提とした設計では危険である。
ここが非常に面白い。本作には「このプログラムを書けば絶対に勝てる」という単純な必勝法が成立しにくい。あるアルゴリズムを倒す方法を作れば、その対策を行うアルゴリズムが考えられる。その対策をさらに読むプログラムも作れる。人間同士の対戦まで考えれば、『COMSIGHT』は戦車同士が撃ち合うゲームであると同時に、プログラムを書いた人間同士による読み合いのゲームになるのである。
初心者向け攻略は「単純で確実に動くタンク」を完成させるところから始める
初めて『COMSIGHT』に触れる場合、最初から高性能なプログラムを作ろうとしないことが重要である。おすすめしたいのは、まず最低限の動作だけを確実に行えるタンクを完成させることである。
最初の目標は「敵を探す」「敵を見つけたら向きを合わせる」「攻撃する」「見つからなければ移動する」という程度でよい。この段階では勝率よりも、想定通りに動いているかどうかを確認する。
次に、実際の戦闘を観察しながら問題を一つだけ改善する。敵を見失うことが多いなら索敵方法を変更する。接近しすぎて不利になるなら距離判定を加える。射撃が外れるなら攻撃直前にもう一度位置を確認する。
このように一段ずつ機能を追加していくと、どの命令がどの動作を生み出しているのか理解しやすい。
中級者以上は相手の移動を「現在位置」ではなく「流れ」として読む
ある程度ゲームに慣れてきたら、敵の現在位置だけを利用する方法から一歩進め、相手の動きを連続的な情報として扱いたい。
前回の索敵時に敵がどこにいたのか、今回どこへ移動したのか、その間にどちらを向いていたのかといった情報を利用すれば、相手がどの方向へ進んでいるのかを推測できる。
そこで、直前の情報を変数として保存し、次の索敵結果と比較する考え方が生まれる。ここまで来ると『COMSIGHT』は単純なゲーム攻略を越え、「敵AIの行動モデルを作る」という領域へ近づいてくる。
プログラムエラーによる自滅を防ぐことも立派な「攻略」である
本作で忘れてはいけないのが、戦闘以前にプログラムが正しく動かなければ勝負にならないということである。文法上の問題や計算処理の異常などが実戦中に発生すれば、それだけで致命的な結果につながる。
したがって、「強い攻撃アルゴリズムを作ること」と同じくらい「異常終了しにくいプログラムを作ること」が重要になる。特に危険なのは、普段ほとんど発生しない条件である。敵が近距離にいる場合、非常に遠い場合、真横にいる場合、見失った場合、連続して発見できなかった場合など、極端な条件ほど確認しておきたい。
本作における「キャラクター」は人間ではなくタンクとアルゴリズムそのもの
『COMSIGHT』について「登場キャラクター」を語る場合、一般的なRPGやアドベンチャーゲームとは少し考え方を変える必要がある。本作には物語を進める主人公やヒロイン、敵幹部といった人物キャラクターが中心となっているわけではない。主役になるのは対戦するタンクであり、それぞれに与えられた性能と、その内部で動いているプログラムである。
つまり、タンクの性格を作っているのは台詞や人物設定ではなく「行動」である。積極的に敵へ接近して攻撃するプログラムなら、見ている側には好戦的なキャラクターとして映る。敵との距離を保ちながら攻撃するタンクなら、慎重な狙撃手のように感じる。索敵を頻繁に行い、相手の隙を待ってから攻撃するタイプは冷静な戦術家にも見えてくる。
個人的に最も印象に残るのは「完成した万能型」より失敗を重ねながら強くなった自作タンク
本作で好きなキャラクター、あるいは印象に残る存在を一つ選ぶなら、最初から用意された強力な相手よりも、自分で何度もプログラムを書き換えて完成させた自作タンクを挙げたくなる。
最初は敵を発見できず戦場をうろうろしていた。次の版では敵を見つけられるようになったが、旋回ばかりして攻撃できなかった。さらに改良すると攻撃できるようになったものの、今度はエネルギーを使いすぎて負けてしまった。そうした失敗を一つずつ直し、ついには以前まったく勝てなかった相手を撃破する。
この瞬間、自作タンクは単なるゲーム内ユニットではなくなる。そこには自分が考えた条件分岐、何度も変更した計算式、敗北から学んだ対策が詰まっている。
難易度は高めだが、難しい理由が分かるため再挑戦したくなる
『COMSIGHT』の難易度を一般的な基準で評価すれば、決して低くはない。プログラミングそのものに抵抗がある人にとっては、ゲーム開始時点から何をすればよいのか分かりにくく感じる可能性がある。
しかし、本作の難しさには独特の納得感がある。理不尽に敵が強いのではなく、自分のプログラムの弱点がそのまま敗因になることが多いからである。敵を見つけられなかったので負けたなら索敵を改良する。攻撃する前に倒されたなら処理を簡略化する。エネルギー切れなら無駄な移動を減らす。
問題と改善方法の関係が比較的理解しやすいため、「もう一度作り直して戦わせてみよう」という気持ちが生まれる。
明確なエンディングを目指すより「最強の思考」を作り続けることが実質的な目的
一般的なストーリー型ゲームのように、最終ボスを倒して物語のエンディングを見ることだけを目的とする作品とは、『COMSIGHT』の楽しみ方は大きく異なる。本作における実質的な目標は、自分が納得できる戦闘プログラムを作り、それをさまざまな相手と戦わせながら改良していくことにある。
もっと短いプログラムで同じことができないか。もっとエネルギー消費を抑えられないか。相手の未来位置を予測できないか。異なる戦術のプログラムを作ればどちらが強いのか。目標はいくらでも自分で設定できる。
攻略を極めるほど「戦車ゲーム」から「アルゴリズム対戦ゲーム」へ印象が変わっていく
初めて画面を見た時には、『COMSIGHT』は3D表示されたタンク同士が戦う戦車ゲームに見える。しかし遊び込むほど、戦車そのものはアルゴリズムを可視化するための存在なのだと分かってくる。
タンクが右へ旋回するのは、そこにプレイヤーが書いた理由がある。敵を追い越してしまうのも、攻撃を外すのも、絶妙なタイミングで撃破するのも、すべて事前に作られた思考ロジックの結果である。
1987年前後のゲームでありながら、『COMSIGHT』が今見てもユニークなのはここにある。現代で言うプログラミングゲーム、AIバトル、ロボット戦闘シミュレーションにつながる遊びを、非常に早い段階で形にしていたのである。
■■■■ 感想・評判・口コミ
遊ぶ人を選ぶ一方で、仕組みを理解すると強烈にハマるタイプの作品
『COMSIGHT』に対する感想や評価をまとめると、「一般的なゲームとして見ると非常に特殊だが、プログラムを考えること自体が好きな人には忘れにくい作品」という評価が最も似合う。画面には3D風に描かれたタンクが登場し、ビームやミサイルを使って戦うため、一見すると未来的な戦車ゲームに見える。しかし実際には、プレイヤーがタンクを直接動かすことはない。戦闘前にBPLを使ってプログラムを完成させ、その結果を眺める。ここを面白いと思えるかどうかで評価が大きく分かれる作品だったと言える。
アクションゲームのように「あと少し早くボタンを押していれば勝てた」というゲームではない。負けた時に考えるのは、「索敵する間隔が長すぎたのではないか」「敵を発見した後の条件分岐が多すぎたのではないか」「無駄な旋回で時間を使っていないか」「移動のさせ方そのものが間違っているのではないか」という内容である。この独特さこそ、人によっては難解さとなり、別の人にとっては他作品では代えられない魅力となった。
「何も操作できないのに面白い」という逆転したゲーム体験
『COMSIGHT』を初めて見た人が抱きやすい疑問の一つが、「戦闘中に何も操作できないなら、本当にゲームとして面白いのか」という点である。しかし、実際にはここが本作の最も特徴的な部分である。
戦闘が始まると、プレイヤーは基本的に自分のタンクを助けることができない。敵が背後へ回り込んでも、攻撃する絶好の機会を逃しても、無意味な方向へ進んでも、それをその場で修正することはできない。そのため、自作タンクを見ている時の感覚は、一般的なゲームにおける「操作」よりも、自分が育てた選手を試合へ送り出す監督に近い。
「そこでは旋回しないでくれ」「今こそ撃ってほしい」「もう一度索敵すれば敵が見つかるのに」と思っても、タンクはプレイヤーの願いではなくプログラムに書かれた命令だけを実行する。このもどかしさが非常に面白い。
プログラミング経験者ほどニヤリとできるが、初心者には最初の壁が高い
評判を考えるうえで避けられないのが、難易度の高さである。『COMSIGHT』はBPLというゲーム用言語を採用しているため、本格的な商用プログラムを書くほどの知識までは要求されないものの、条件分岐、変数、計算、繰り返し処理などに対する理解がある方が入りやすい。
1980年代のパソコンユーザーには、自分でBASICプログラムを入力したり、パソコン雑誌に掲載されたプログラムリストを打ち込んだりしていた層も少なくなかった。そのような利用者から見ると、プログラムを組むこと自体がゲームになる『COMSIGHT』は非常に自然な発展形だった。
一方で、「市販ゲームは起動したらすぐ遊びたい」という人にとってはハードルが高い。そのため、万人向けの娯楽作品という評価にはなりにくい。しかし、この構造を突破すると評価が逆転する。命令の意味が分かり、自分の意図した通りタンクが動き始めると、それまで難点だったプログラミング部分が最大の遊び場になる。
失敗したプログラムさえ笑って楽しめるところが本作らしい
『COMSIGHT』では、強いタンクを作ることだけが面白いわけではない。思った通りに動かないタンクを見ること自体が、意外なほど楽しい。
敵を探しているはずなのに同じ場所で旋回し続ける。敵を発見しているのに攻撃条件が成立せず何もしない。接近するように書いた結果、必要以上に敵へ近づき、まともに攻撃を受ける。敵を避けようとした結果、逆に危険な場所へ移動してしまう。
これらは攻略だけを考えれば失敗なのだが、自分が作ったプログラムだからこそ奇妙な行動にも愛着が湧く。タンクが賢い動きをすれば自分の成果であり、間抜けな動きをしても自分の成果である。そのため、性能の低い初期プログラムにも独特の思い出が残る。
3Dポリゴンのタンク戦は「プログラムの結果を見る舞台」として印象的
グラフィックに対する感想も、本作を考える際には重要である。現代の3Dゲームと比べれば当然ながら極めてシンプルだが、1987年前後という時代を考えると、タンク同士の戦いを立体的に見せるビジュアルは十分に魅力的だった。
特に本作の場合、3D表示は単なる見栄えのためだけに存在するわけではない。自分が入力した文字列が「移動」「旋回」「索敵」「攻撃」といった具体的な動きへ変換され、立体的な戦場の中で実行される。そのため戦闘画面は、プログラムの結果を視覚的に確認するための重要な装置でもある。
「勝つプログラム」より「美しいプログラム」を目指したくなる
遊び込んだプレイヤーほど感じやすいのが、単純な勝率だけでは満足できなくなっていくことである。同じ勝率でも、非常に長いプログラムと、短く整理されたプログラムが存在すれば、後者の方に美しさを感じる人が出てくる。
無駄な条件分岐をなくす。必要以上に変数を使わない。同じ処理をまとめる。頻繁に実行される部分を高速化する。
こうした改善はゲーム内の派手な演出として表示されるわけではない。しかし自分には違いが分かる。「前より短い」「前より速い」「前より無駄がない」。それだけで嬉しい。この感覚を理解できる人にとって、『COMSIGHT』は非常に長く遊べるタイトルだったはずである。
CPUを倒した後から本当の面白さが始まる
一般的なゲームでは、メーカーが用意したCPUキャラクターをすべて倒すことが攻略の最終目標になりやすい。しかし『COMSIGHT』は、CPU戦だけで終わらせるには惜しい設計になっている。
用意された相手は、自分のプログラムを鍛えるための一つの基準になる。しかし次に考えたくなるのが、「このプログラムを他の人が作ったタンクと戦わせたらどうなるのか」である。
相手が人間の作ったプログラムになると、攻略方法は一変する。高速索敵型が強ければ、その弱点を突くプログラムを作る。接近型が強ければ距離を取る。距離を取る相手が増えれば、それを追跡するロジックを開発する。この繰り返しによって、絶対的な正解が存在しにくくなる。
「ゲームなのに勉強している」「勉強しているのにゲームとして面白い」
『COMSIGHT』を長時間遊んでいると、ゲームをしているのかプログラムの勉強をしているのか分からなくなる瞬間がある。変数の使い方を考え、条件分岐を整理し、計算方法を工夫し、異常動作が起きれば原因を追跡する。やっていることだけを文章にすると、プログラム学習そのものである。
しかし目的は課題を提出することではなく、相手のタンクを撃破することである。この目的の違いが非常に大きい。「条件分岐を覚えなさい」と言われれば面倒でも、「敵を見つけた時だけミサイルを撃たせたい」と考えれば必要な条件分岐を覚えたくなる。ゲームとしての目的が存在することで、プログラミングの概念が具体的な意味を持つのである。
不満点は「手軽さのなさ」と「面白さへ到達するまで時間がかかる」こと
もちろん評価の高い部分だけではない。『COMSIGHT』最大の弱点は、面白さを理解するまでの距離が長いことである。
一般的なシューティングゲームなら、起動して数分もあれば「撃つ」「避ける」という楽しさを理解できる。しかし本作の場合、最初にBPLについて学び、最低限動くプログラムを作らなければ、自分のタンクをまともに戦わせるところまで到達できない。
しかも、初めて作ったプログラムが期待通りに動くとは限らない。この時点で「面倒なゲーム」と判断してしまう人がいても不思議ではない。
要するに『COMSIGHT』は、プレイヤーへ即座に快感を与えるタイプのゲームではない。考える時間、試す時間、失敗する時間まで含めて楽しむゲームである。
当時の大衆的ヒットというより「知っている人ほど高く評価する」存在
当時の人気については慎重に考える必要がある。現在確認できる範囲では、大規模な販売本数を裏付ける具体的数字は見つけにくい。そのため、当時のパソコンゲーム市場を代表する超大ヒット作だったと断定するのは適切ではない。
しかし、それは作品として評価されなかったという意味ではない。パソコン通信を利用した対戦やメーカー主催のバトルコンテストといった展開が行われたことからも、プログラムを作り込んで競わせる遊び方を理解したユーザー層が存在していたことはうかがえる。
誰もが遊んだ国民的ゲームというより、パソコンやプログラミングが好きだった人の記憶へ深く残った作品と考える方が近い。
総合的な感想は「ゲームの攻略ではなく、自分の考え方を攻略する作品」
『COMSIGHT』を総合的に評価すると、非常に人を選ぶ作品であることは間違いない。派手なストーリーを楽しみたい人、魅力的な人物キャラクターを求める人、短時間で爽快な戦闘を味わいたい人には向いていない。
しかし、「試行錯誤が好き」「自分で仕組みを考えることが好き」「失敗した原因を探すことが面白い」「プログラムを少しずつ改良することに喜びを感じる」という人には、非常に強く刺さる。
最大の魅力は、ゲーム内の敵だけを攻略する作品ではないことにある。本当に攻略するのは自分自身が作ったプログラムである。
「自分が敵を倒した」のではない。「自分が作った思考が敵を倒した」。この感覚を1987年頃の国産パソコン上で味わわせたことが、『COMSIGHT』という作品の価値なのである。
■■■■ 当時の宣伝・現在の中古市場など
1987年のパソコン市場で「プログラムを組んで戦わせる」という異色さを前面に出した作品
『COMSIGHT』が登場した1987年は、国産パソコンゲーム市場が非常に活気を持っていた時期であり、PC-8801シリーズ、X1シリーズ、X68000など、性能やユーザー層の異なる複数のパソコンが競い合っていた。そうした市場でテクノソフトが投入した『COMSIGHT』は、一般的なシューティングゲームやRPGとは異なり、「BPLと呼ばれるプログラム言語でタンクの思考を作り、そのタンク同士を戦わせる」という説明だけでも十分に目を引く存在だった。
当時のパソコンゲームの宣伝は、現在のような動画配信サイト、SNS、ゲーム専門ニュースサイトによって瞬時に拡散されるものではない。中心となったのはパソコン専門誌、ゲーム雑誌、マイコン誌、販売店の店頭、メーカー広告、口コミ、パソコン通信などであった。新作ゲームの画面写真やメーカー広告を雑誌で見て、興味を持った利用者が専門店へ足を運び、箱の裏面や店頭ポップを見て購入を決めるという流れが一般的だった。
その中で『COMSIGHT』は宣伝しやすい一方、説明が難しいゲームでもあった。「3Dポリゴンで描かれたタンクが戦う」とだけ紹介すると普通の戦車ゲームに見えてしまうが、実際には戦闘中にプレイヤーが操縦しない。「自分でタンクのプログラムを作る」と説明すると今度は難しそうな学習ソフトにも見えてしまう。そのため、本作の魅力を伝えるには、BPLによるプログラミング、テスト、完成したタンクによるBATTLEという一連の流れまで説明する必要があった。
雑誌広告だけでなく「バトルコンテスト」そのものが強力な宣伝になった
『COMSIGHT』の宣伝史で特に興味深いのが、単純にゲームソフトを広告して販売するだけでなく、ユーザーが作ったプログラム同士を競わせる方向へ遊びを広げたことである。
これは『COMSIGHT』にとって非常に合理的な販促方法だった。一般的なゲームなら大会を開催する場合、参加者本人が会場へ行き、その場で操作する必要がある。しかし『COMSIGHT』では、プレイヤーが作成したBPLプログラムそのものが戦闘能力を持っている。そのためプログラムデータさえ受け渡せれば、作者本人がその場にいなくても対戦を成立させられる。
「自分が作ったタンクはどこまで強いのか」「他人が考えたアルゴリズムと戦わせたらどうなるのか」という競争心を刺激することは、本作の継続的なプレイにもつながる。一度CPUを倒して終わるのではなく、より強い相手を求めて何度もプログラムを書き換えるようになるからである。
販売方法は「箱入りパソコンソフト」を専門店で購入する時代
発売当時の『COMSIGHT』は、現在のダウンロード販売のようにインターネットから数分で購入する商品ではない。フロッピーディスク、パッケージ、マニュアルなどを含む物理商品として販売されていた。
本作の場合、特にマニュアルの存在価値が高い。アクションゲームなら操作方法だけ理解すれば遊べる場合もあるが、『COMSIGHT』ではBPLの命令やプログラム構造を理解する必要がある。したがって説明書は単なる付属品というより、ゲームを遊ぶためのプログラミングリファレンスに近い役割を持つ。
この点は現在の中古市場にも大きく関係している。ゲームディスクだけが残っていても、コレクション価値では箱・マニュアル付きの完品に及ばない。また実際に当時に近い環境で遊びたい人にとっても、マニュアルが欠品している商品より説明書付きの方が価値は高い。
販売本数については具体的な数字を断定しない方がよい
『COMSIGHT』の販売実績について調べる場合に注意したいのが、現在参照できる公開資料では累計販売本数を明確に確認しにくいことである。したがって「何万本売れた」「大ヒットした」と具体的な数字を付けて紹介するのは避けるべきである。
本作はゲーム性そのものが非常に専門的であり、誰にでも分かりやすいアクションゲームやRPGほど広いユーザー層を狙った作品ではない。販売数だけで評価するより、「アルゴリズムを組んで自律戦闘させる」という発想を商品として成立させ、コンテストまで展開したことを実績として見る方が適切である。
現在の中古市場では「大量にいつでも買えるソフト」ではない
現在の『COMSIGHT』は、ファミコンの有名作品のように中古ショップへ常時大量入荷する商品ではない。そもそも1980年代の国産パソコンソフトは、家庭用ゲームソフトより流通数が少ないものが多く、さらにフロッピーディスク、箱、説明書を40年近くまとめて保存することが難しい。そのため、状態の良い完品は徐々に見つけにくくなる傾向がある。
中古価格は状態、箱の有無、マニュアル、ディスク枚数、動作確認済みかどうか、販売機種、出品時期、購入希望者同士の競争によって大きく変化する。数千円程度で取引される例もあれば、専門ショップでそれ以上の価格が付く場合もあり、「絶対的な相場価格」があるわけではない。
「過去最高価格」は信頼できる記録がないため断定できない
中古ゲームを紹介する記事では「過去最高○万円」といった数字が目立つが、『COMSIGHT』については公開検索で追跡できる取引履歴だけから過去最高額を断定することはできない。
オークションサイトの古い取引記録は永久に公開されるとは限らず、店頭販売、個人間取引、イベント販売などは検索データにも残らない。またX1系やX68000系など機種の違いによって希少性が変わる可能性もある。
したがって、記事で「最高価格」を掲載する場合には推測で数字を作らない方がよい。本作は、テクノソフト収集家、PC-8801やX1、X68000のソフトを集めている人、プログラミングゲームの歴史に興味を持つ人など、比較的限られた層が探すコレクター向けソフトという位置づけに近い。
中古で購入するなら価格だけでなく「内容物」と「動作条件」を確認したい
『COMSIGHT』を現在購入する場合、単純に最安値の商品を探せばよいわけではない。
第一に確認したいのが対応機種である。同じ『COMSIGHT』という名称でもPC-8801系、X1系、X68000系などが存在するため、自分が所有している環境と合わなければ実行できない。
第二が付属品である。箱、マニュアル、フロッピーディスクなどが揃っている商品と、ディスクのみの商品ではコレクション価値が大きく異なる。
第三が動作確認である。1987年発売の磁気メディアなので、すでに長い年月が経過している。出品時に動作確認済みとされていても、購入者のドライブで必ず動く保証にはならない。
第四が保存状態である。ディスク表面だけでなく、箱の日焼け、潰れ、説明書への書き込み、湿気による傷みなども価格へ影響する。
移植版は存在するが、現代ゲーム機へ広く復刻された作品ではない
『COMSIGHT』はPC-8801だけの作品ではなく、X1系やX68000など複数の国産パソコンへ展開された。そのため発売当時という意味では複数機種への移植が行われた作品である。
ただし、後年になってPlayStation、Nintendo Switch、Steamなどへ大規模に復刻され、誰でも簡単に購入できるクラシックタイトルになったわけではない。その意味で、現在正規の実機環境で体験しようとすると、古いパソコン本体とオリジナルメディアを用意する必要性が高くなる。
エミュレーション環境が存在することと、ゲームデータを合法的に入手できる公式再販売が存在することは別問題である。この点はレトロPCゲーム全般に共通する問題である。
X68000など機種違いはコレクター的には別商品として見る面白さがある
『COMSIGHT』には複数機種版が存在するため、中古収集という視点では「タイトルを一本持っていれば終わり」というわけではない。
PC-8801版を中心に集める人、X1版を探す人、X68000ソフトとして収集する人では目的が異なる。パッケージデザイン、媒体、対応ハード、画面表現などの差を比較する楽しさもある。
レトロPCソフトでは、機種によって市場への出現頻度が大きく異なり、「相場」そのものより「欲しい版に出会えるかどうか」が重要になることも珍しくない。
現在の中古価値は「遊べるソフト」以上に1980年代パソコン文化を残す資料として考えたい
現在『COMSIGHT』のパッケージを手に入れる価値は、単純にゲーム一本を購入することだけにあるのではない。
そこには1987年当時のパソコンゲーム文化が凝縮されている。フロッピーディスクという記録媒体、プログラム言語を解説する説明書、PC-8801やX1、X68000という国産パソコン、ユーザーが自らアルゴリズムを組むゲーム設計、パソコン通信を利用した交流、メーカー主催のバトルコンテスト。
これらすべてを含めて『COMSIGHT』という作品なのである。
■■■■ 総合的なまとめ
『COMSIGHT』は「戦車を操るゲーム」ではなく「戦車の考え方を作るゲーム」だった
1987年前後にテクノソフトから発売された『COMSIGHT』を総合的に振り返ると、本作の最大の価値は、戦車ゲームという題材を使いながら、実際には「アルゴリズムを設計すること」そのものを遊びへ変えた点にある。画面上では3D表現されたタンク同士がビームやミサイルを撃ち合うため、外見だけなら未来的な戦闘シミュレーションに見える。しかしプレイヤーが担当するのは砲撃や操縦ではない。戦闘が始まる前にBPLを使い、「敵をどう探すのか」「敵を発見したら何をするのか」「どの距離なら接近し、どの距離なら攻撃するのか」「見失った場合にどう立て直すのか」といった判断基準を組み立てることが中心となる。
この仕組みを理解すると、『COMSIGHT』の面白さは一般的なゲームとはかなり異なっていることが分かる。普通ならプレイヤー自身の反射神経や操作技術を鍛えるところを、本作ではプログラムそのものを鍛える。昨日より今日の方が強くなったとしても、それは指が素早く動くようになったからではなく、条件分岐を改善したり、無駄な処理を減らしたり、索敵と攻撃の流れを整理したりした結果なのである。
「戦闘前に勝負する」という構造が本作最大の個性
一般的な対戦ゲームでは、試合が開始されてからプレイヤーが状況を判断する。しかし『COMSIGHT』の場合、本当の勝負は対戦開始ボタンを押す前に行われている。
どのような状況を想定したのか。敵が正面にいなかった場合を考えたか。索敵に失敗した後の処理は用意したか。相手が移動している可能性を考慮したか。エネルギーを使いすぎないか。プログラムエラーを起こす危険な計算はないか。
こうした要素をあらかじめ考え、プログラムへ書き込む。そして戦闘が始まれば、プレイヤーは基本的に見守るしかない。
この「介入できない」という要素は、本作最大の弱点にも最大の魅力にもなっている。自分のタンクが明らかに間違った行動をしているのに、戦闘中には修正できない。しかし、その失敗が次の改良へ直接つながる。戦闘を見ることそのものがデバッグなのである。
BPLはゲームシステムであると同時にプレイヤーとタンクを結ぶ「操作装置」
本作を特徴づけるBPLは、単にゲーム内へプログラミング要素を追加した付属機能ではない。通常のアクションゲームにおける十字キーやジョイスティックに相当するものが、『COMSIGHT』ではBPLなのである。
プレイヤーが右へ曲がりたいと思った時、その場でキーを押すのではなく、「どの条件になったら右へ旋回するか」を事前に決める。撃ちたい時にボタンを押すのではなく、「敵がどの位置にいたら攻撃するか」を決める。逃げたい時に後退するのではなく、「危険と判断する条件」と「その時の回避行動」をプログラムにする。
つまりプレイヤーの意志をリアルタイム操作からルールへ変換しているのである。
PC-8801・X1系・X68000など複数機種で遊ばれたことにも意味がある
『COMSIGHT』はPC-8801系だけではなく、X1系やX68000系など当時の国産パソコンへ展開された作品として知られている。この複数機種展開によって、それぞれ異なるパソコン環境を持つユーザーが同じ基本コンセプトを体験できた。
もっとも、機種が変わればハードウェア性能も異なる。PC-8801系は1980年代国産パソコンゲームを代表する大きな市場を持ち、X1系もゲーム用途で人気の高かったパソコンである。そしてX68000は、当時として非常に高いグラフィック性能や処理能力を備えたパソコンとして知られていた。
こうした性能差によって、画面表示や動作感、処理の印象などには各機種なりの違いが存在する。ただし、『COMSIGHT』で最も重要な部分は映像性能だけではない。どの機種でも中心にあるのはBPLによるプログラム作成と、自律行動するタンク同士の戦闘である。
完成度の違いを見るならグラフィックより「操作環境と処理の快適さ」に注目したい
複数機種版の完成度を比較する際、「最も性能の高い機種版が最も優れている」と単純に決めるのは適切ではない。
もちろんハードウェア性能の高い環境では、戦闘表示の滑らかさや画面の見やすさなどで有利になる場合がある。しかし『COMSIGHT』はシューティングゲームのようにフレーム単位の操作感がゲームの大部分を占めるタイトルではない。
プレイ時間のかなりの割合をプログラムの作成、修正、確認に使うため、エディット画面の扱いやすさ、文字情報の見やすさ、テストと再編集を繰り返すテンポなどが総合的な快適さへ大きく影響する。
つまり本作における「完成度」は、単なる映像美だけでは判断できない。
家庭用ゲーム機へ単純移植しにくかったことも『COMSIGHT』らしさ
『COMSIGHT』のゲームデザインを考えると、なぜ本作が後年の家庭用ゲーム機で定番シリーズのように広く展開されなかったのかも理解しやすい。
本作はキーボードを使ってプログラムを書くことを前提としたゲームである。家庭用ゲーム機のコントローラーだけで文字や命令を大量に入力するのは、1980年代から1990年代の環境では非常に扱いづらい。
そのため、『COMSIGHT』はパソコンというプラットフォームそのものと深く結び付いた作品だった。
当時のパソコンには「ゲームを遊ぶ機械」と「自分でプログラムを書く機械」という二つの側面があった。『COMSIGHT』はその両方を一つにしたのである。
後のプログラム型戦闘ゲームを知る人ほど先進性を感じやすい
後年、自律型兵器やロボットへ行動ロジックを設定して戦わせる作品が登場すると、『COMSIGHT』のゲームデザインがいかに早かったかが分かりやすくなる。
もちろん後世の作品とはシステムも操作方法も異なるため単純に同一視することはできないが、「プレイヤーが直接戦うのではなく、戦闘前に思考を設計する」という基本思想には共通する面がある。
さらに現在では、ロボットのコードを書いて他のプログラムと戦わせるソフト、プログラミング競技、AIコンテストなども一般化した。そうした文化から振り返ると、『COMSIGHT』の仕組みは非常に理解しやすい。
しかし1987年当時、「AI同士を戦わせる」という考え方が現在ほど一般的ではない中で、敵を探し、判断し、攻撃するロジックをユーザー自身に書かせるゲームを商品化したことには大きな意味がある。
物語やキャラクターではなく「自分のプログラム」が思い出になる珍しいゲーム
多くのゲームでは、時間が経った後に思い出されるのは主人公、ヒロイン、ラスボス、名場面、音楽などである。しかし『COMSIGHT』の場合、プレイヤーの記憶へ残るものが少し違う。
「初めて敵を正しく発見できたプログラム」「何度直しても同じ場所を旋回してしまったプログラム」「CPU相手に初勝利したプログラム」「エネルギー効率を徹底的に改善したプログラム」。
こうした自分自身の試行錯誤が思い出になる。
ゲームメーカーが用意した物語を受け取るのではなく、プレイヤーが自分の失敗と成功によって体験を作る。その意味では、自分で作ったタンクそのものが主人公なのである。
現代に復刻するなら非常に相性のよい作品
『COMSIGHT』は現在こそ再構築すると面白い作品でもある。
もし現代向けに正式な復刻やリメイクを行うなら、BPLの基本思想を残しながら、構文の色分け、リアルタイムエラーチェック、変数監視、戦闘ログ、プログラムの速度解析などを追加するだけでも大幅に遊びやすくなる。
さらにオンライン対戦を実装すれば、自分が作ったプログラムをサーバーへ登録し、世界中の他プレイヤーのタンクと自動対戦させることもできる。
ランキングを設ける。勝率を表示する。使用エネルギー効率を比較する。プログラムの行数を制限した大会を開催する。初心者向け、無制限、特定命令禁止などの部門を設ける。
こうした仕組みは『COMSIGHT』のゲーム性と極めて相性がよい。
弱点は明確だが、その弱点と魅力が表裏一体になっている
もちろん『COMSIGHT』を無条件に名作として勧められるわけではない。
最大の弱点は敷居の高さである。プログラムに興味がない人には、BPLを覚える作業そのものが面倒に感じられる。戦闘中に操作できないため、アクション性を求める人には退屈に映る可能性もある。派手なストーリーや人物キャラクターを求めるユーザーにも向かない。
しかし面白いことに、こうした弱点はほとんどそのまま魅力の裏返しでもある。
戦闘中に操作できないからこそ、事前のプログラム設計が重要になる。プログラムを覚える必要があるからこそ、上達した時の達成感が大きい。ストーリーが中心でないからこそ、自分のアルゴリズムが主役になる。手軽ではないからこそ、一つのプログラムへ長時間向き合う価値が生まれる。
総合評価――1987年という時代を考えるほど驚かされる「AI対戦ゲームの先駆者的存在」
『COMSIGHT』を総合的に評価するなら、販売本数や知名度だけでは測れない、非常に先進的なパソコンゲームだったと言える。
グラフィックの派手さだけを売りにした作品ではない。物語の壮大さで引き込むゲームでもない。プレイヤー自身に「敵をどう判断させるか」を考えさせ、その結果を自律戦闘という形で見せる。このアイデアこそ作品の中心である。
索敵する。敵の位置を調べる。条件を判断する。移動する。旋回する。攻撃する。再び情報を集める。
文字で記述した一連の処理が、画面上では一台のタンクの意思のように見える。そして、その意思を作ったのが自分自身だと分かった時、『COMSIGHT』独特の面白さが完成する。
最初はまともに戦えなかったタンクが、修正を重ねるごとに少しずつ無駄を減らし、敵を素早く発見し、有効な距離を保ち、適切なタイミングで攻撃するようになる。その成長を見ていると、単なるゲーム攻略以上の愛着が生まれる。
これは「キャラクターを育てるゲーム」ではなく、「思考を育てるゲーム」なのである。
PC-8801、X1系、X68000など当時の国産パソコン環境で展開されたこと、BPLという専用言語によってタンクを制御したこと、ユーザー同士のプログラム対戦やコンテストへ発展したことなどを含め、『COMSIGHT』は1980年代パソコンゲーム文化の特徴が強く詰まった一本だった。
古いから価値があるのではない。
1987年頃という早い時代に、「プレイヤーが操作するのではなく、プレイヤーが作ったアルゴリズムに操作させる」というゲームの面白さを真正面から追求したことに価値がある。
『COMSIGHT』は、速い指ではなく考える頭が武器になるゲームである。そして最大の敵は画面上のタンクだけではない。無駄な命令、間違った条件、甘い予測、想定不足といった「自分自身が書いたプログラムの弱点」である。
負けるたびにその弱点を発見し、修正し、再び戦わせる。その果てに、自分が一切操作していないタンクが理想通りに戦い、敵を撃破する。
「自分が勝った」のではなく、「自分が作った思考が勝った」と感じられる瞬間。
そこにこそ、『COMSIGHT』というゲームが現在まで語る価値を持つ最大の理由があるのである。
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