【発売】:スクウェア
【開発】:スクウェア
【発売日】:2000年3月30日
【ジャンル】:レースゲーム
■ 概要・詳しい説明
PS2初期に登場した、スクウェア製リアル系ドライブゲーム
『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、2000年3月30日にスクウェアから発売されたプレイステーション2用のドライブシミュレーション系レースゲームです。スクウェアといえば当時は『ファイナルファンタジー』シリーズを中心に、RPGメーカーとして非常に強い印象を持たれていました。そのスクウェアが、PS2という新世代ハードの初期に、実在車を扱った本格的なリアル志向のレースゲームを投入したことは、当時としてはかなり意外性のある出来事でした。プレイステーション2は2000年3月4日に発売されたばかりで、ユーザーの関心は「次世代機ではどれほど美しい映像が見られるのか」「PS1では難しかった表現がどこまで可能になるのか」という点に集中していました。そうした時期に登場した本作は、単に速さを競うアーケード風レースではなく、実在メーカーの車を細かく再現し、車内視点やメーター、サウンド、挙動表現まで含めて“車を操っている感覚”を前面に押し出した作品として企画されていました。タイトルにある「EMOTION」という言葉も、ただ機械的に走るのではなく、運転中に生まれる緊張、興奮、怖さ、集中、達成感といった感情を表現しようとした方向性を感じさせます。
実在車を使った本格派としての売り込み
本作の大きな特徴は、実在する自動車メーカーと実在車種を収録していた点です。日本車だけでなく、海外メーカーの車も登場し、スポーツカー、チューニングベースとして人気の車、ラグジュアリー寄りの車、スーパーカー系の車まで、幅広い車種を扱っていました。とくに当時の家庭用レースゲームでは、ライセンスの都合で登場が難しいメーカーや車種も多く、車名や外観を実名で楽しめること自体が大きな魅力でした。プレイヤーは単に“速い架空マシン”を選ぶのではなく、「この車に乗ってみたい」「このメーカーの走りを試してみたい」「見た目が好きだから選びたい」という、実車好きならではの感覚で車を選べました。さらに、外観だけでなくコックピット視点にも力が入れられており、ハンドル、インパネ、メーターまわり、視界の雰囲気など、車内に座っているような演出が取り入れられていました。現在のリアル系レースゲームでは車内視点は珍しくありませんが、PS2初期の時点でそこまで打ち出していたことは、本作の先進的な部分だったといえます。
鈴鹿・筑波など、車好きに響くコース選び
コース面でも、本作は車好きの心を意識した作りになっていました。実在サーキットとして鈴鹿サーキットや筑波サーキットが収録されており、家庭用ゲーム機でそれらのコースを走れることには大きな意味がありました。鈴鹿サーキットは日本を代表する国際的なサーキットで、テクニカルなコーナー、長いストレート、リズムよく抜ける複合区間など、総合的な運転技術が求められるコースです。一方の筑波サーキットは、全長こそコンパクトながら、チューニングカー文化やタイムアタック文化と深く結びついた存在でした。1990年代の自動車雑誌やビデオでは、筑波でのラップタイムが車の性能やチューニングの完成度を測る目安として扱われることも多く、走り好きにとっては非常に象徴的な場所でした。そのため、本作で筑波を走れるというだけでも、当時のカーマニアにとっては魅力的な要素でした。また、サーキット以外にも、高速道路風のコースやダート系のコースなどが用意され、単調な周回だけでなく、さまざまな環境で車の挙動を味わう構成になっていました。
ゲーム内容はレース、タイムアタック、練習を中心に構成
ゲームの基本は、選んだ車でコースを走り、ライバルカーと競いながら順位やタイムを狙うレースゲーム形式です。モード構成は、レース、タイムアタック、トレーニング系の走行、対戦など、リアル系ドライブゲームとしては標準的な内容を押さえています。プレイヤーは最初からすべての車やコースを自由に使えるわけではなく、走行を重ねたり条件を満たしたりすることで、使用できる車やコースが増えていく仕組みが取られていました。これは当時のレースゲームではよく見られた構成で、最初は限られた選択肢の中で車に慣れ、徐々に高性能な車や新しいコースへ進んでいくことで達成感を得る形です。また、単にアクセルを踏み続ければ勝てる作品ではなく、ブレーキング、ステアリング、車体の向き、コーナー進入の速度などを意識する必要がありました。特に本作は操作感に強い癖があるため、練習なしで気持ちよく走るのは難しく、車の反応を身体で覚えていくタイプのゲームになっています。
最大の個性であり、最大の賛否点でもあるハンドリング
『DRIVING EMOTION TYPE-S』を語る上で避けられないのが、独特すぎる操作性です。本作はリアルな車の挙動を目指した作品でしたが、実際のプレイ感覚は非常にシビアで、少しハンドルを切っただけでも車体が過敏に反応し、思った以上に曲がりすぎたり、滑り出したりする場面が多くあります。一般的なレースゲームでは、コントローラーの方向キーやアナログスティックを離せば自然に車体が安定方向へ戻る感覚がありますが、本作ではその戻りが弱く、プレイヤー側が細かく逆方向へ操作して姿勢を整えなければなりません。そのため、車をまっすぐ走らせるだけでも神経を使い、コーナーでは少しの入力ミスが大きな挙動の乱れにつながります。この特徴は、慣れないプレイヤーにとっては大きなストレスになりました。一方で、極端にピーキーな挙動を理解し、繊細な入力で車をねじ伏せることに面白さを見出す人にとっては、他のレースゲームでは味わえない緊張感を持つ作品でもあります。つまり本作は、完成度の高い快適な運転ゲームというより、癖の強い車を無理やり制御するような、かなり人を選ぶドライブ体験を持っていました。
映像表現と車内視点にはPS2初期らしい意欲が詰まっていた
操作面では厳しい評価を受けやすい本作ですが、映像表現については当時のPS2初期作品らしい挑戦が見られます。車体のモデリングは実車らしさを重視しており、外観のフォルム、ライト、ボディライン、ホイールまわりなど、PS1時代から一段上がった表現を見せようとしていました。とくに車内視点は本作の象徴的な要素で、メーターやステアリングが画面内に表示され、操作に応じてハンドルが動くことで、プレイヤーが運転席に座っている感覚を高めています。外から車を眺めるだけでなく、車に乗り込んで走るという体験を重視していた点は、後のリアル系レースゲームにも通じる考え方です。また、コース背景も実在サーキットの雰囲気を意識して作られており、看板、路面、ガードレール、観客席、空の色などに、当時の次世代機らしい立体感を出そうとした形跡があります。PS2初期特有の粗さやちらつきはあるものの、スクウェアが映像面で新ハードに挑戦した作品として見ると、かなり野心的な内容でした。
音楽とサウンドが作る、冷たく鋭いドライブ感
本作の音楽面も、作品の印象を支える大切な要素です。BGMはテクノ、ロック、フュージョン的な雰囲気を含んだ楽曲が中心で、レース中の緊張感や近未来的な空気を演出しています。スクウェア作品といえば壮大なRPG音楽を思い浮かべる人も多いですが、本作では車、スピード、機械、サーキットという題材に合わせ、硬質でリズム感のあるサウンドが採用されています。エンジン音についても、車載映像のような臨場感を目指しており、コックピット視点と組み合わせることで、ただBGMを聴きながら走るのではなく、車内でエンジンの回転や速度の変化を感じながら走る雰囲気が出ています。もちろん、現在のレースゲームと比べれば音の情報量や実車再現度には限界がありますが、PS2初期の作品としては“音でもリアルさを出したい”という意図がはっきり感じられます。映像、車内視点、音楽、エンジン音をまとめて味わうと、本作が単なる競争ゲームではなく、ドライブそのものの空気感を表現しようとしていたことが分かります。
スクウェアらしい挑戦と、レースゲーム作りの難しさ
『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、スクウェアがPS2初期に送り出した挑戦的なタイトルでした。RPGの名門が、リアルカー、実在サーキット、車内視点、次世代映像を掲げてレースゲームに踏み込んだことは、メーカーの幅を広げようとする意欲の表れでもあります。しかし、レースゲームは映像が美しいだけでは成立しません。プレイヤーが入力した操作に対して、車が気持ちよく、納得できる形で反応することが非常に重要です。本作は、車種、コース、内装、音楽といった素材面では魅力的なものを多く持っていましたが、肝心の運転感覚が多くのプレイヤーにとって扱いづらく、そこが作品全体の評価を大きく左右しました。特に、同時期には『リッジレーサーV』のような爽快感の強い作品や、後に『グランツーリスモ3 A-spec』のような完成度の高いリアル系レースゲームが登場していくため、本作の不安定な操作感はより目立つことになりました。素材は豪華で、目指した方向性も先進的だったからこそ、基本操作の癖が惜しまれる作品になっています。
販売実績と作品イメージ
販売面では、PS2初期タイトルという注目度はあったものの、長期的に大ヒットした代表的レースゲームという位置づけにはなりませんでした。スクウェア初のPS2タイトルとして話題性はあり、実車ライセンスやフェラーリ、ポルシェなどの存在、実在サーキット、車内視点など、発売前に興味を引く材料は多く備えていました。しかし、発売後は操作性に対する厳しい意見が広がり、良くも悪くも“扱いづらいレースゲーム”として記憶されることになります。単に地味で忘れられた作品ではなく、むしろ車内視点の作り込みや収録車種の豪華さなど、褒められる要素があったからこそ、「なぜ操作部分がこうなってしまったのか」と語られやすい作品になりました。現在では、PS2初期の実験的なタイトル、スクウェアがレースゲームに本気で挑んだ珍しい作品、そして独特すぎるハンドリングで強烈な印象を残したゲームとして振り返られることが多いです。
概要として見た本作の位置づけ
総合的に見ると、『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、完成度の高い万人向けレースゲームというより、PS2初期の熱気と未成熟さが同時に詰まった作品です。実在車、実在サーキット、コックピット視点、硬派なサウンド、リアル志向の画面作りなど、後の時代なら評価されやすい要素を先取りしていました。その一方で、レースゲームの根幹である操作性が非常に癖の強いものになってしまい、プレイヤーの多くが快適に走る前に挫折しやすい構造を抱えていました。だからこそ本作は、単純に失敗作と片付けるには惜しく、同時に名作と呼ぶには大きな難点を持つ、非常に複雑な存在です。スクウェアがPS2という新しい舞台で、映像表現とリアルドライブの可能性を探った結果生まれた、野心と課題がはっきり残る一本。それが『DRIVING EMOTION TYPE-S』というゲームの大きな輪郭です。
■■■■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター
魅力は“気持ちよく走れること”ではなく“手強い車を支配すること”にある
『DRIVING EMOTION TYPE-S』の魅力を語るとき、一般的なレースゲームのように「爽快に走れる」「誰でもすぐに楽しめる」「ドリフトが簡単に決まる」といった方向で説明すると、作品の本質から少し外れてしまいます。本作の面白さは、むしろ逆です。思い通りに走れない車を、少しずつ理解し、何度も失敗しながら、ようやく一周をまとめられるようになる過程にあります。ステアリングは過敏で、車体は不安定に感じやすく、アクセルを踏みすぎれば姿勢が乱れ、ブレーキのタイミングを誤ればコーナーで大きく膨らみます。普通のレースゲームなら不満になりやすい要素ですが、本作ではその扱いにくさ自体が、独特の緊張感を生み出しています。プレイヤーは速く走る以前に、まず車を破綻させずに走らせる必要があります。そのため、一つのコーナーをきれいに抜けられただけでも達成感があり、難しい車をねじ伏せたような満足感があります。快適さではなく、制御の難しさに挑むゲームとして見れば、本作には他のレースゲームにはない個性があります。
実在車が“キャラクター”として存在している面白さ
本作には物語を進める人間キャラクターがいるわけではありません。RPGのような主人公やライバル、会話イベント、ドラマ性のある登場人物は存在しません。しかし、実在する車そのものが、ある意味で本作のキャラクターになっています。メーカーごとの個性、車種ごとの性能差、外観の印象、エンジン音、コックピットの雰囲気が、それぞれの車に人格のような違いを与えています。軽快に曲がろうとする車、速度の伸びを楽しむ車、見た目の迫力で選びたくなる車、扱いが難しいが乗りこなすと気持ちいい車など、プレイヤーの好みは自然と分かれます。レースゲームにおける「好きなキャラクター」は、ここでは「好きな車」と言い換えることができます。たとえば、フェラーリやポルシェのようなスーパーカー系は、所有欲や憧れを刺激する存在です。国産スポーツカーは、現実の自動車文化と結びつきやすく、チューニング雑誌やサーキット走行に憧れていたプレイヤーにとって親しみやすい存在でした。全日本GT選手権系のマシンは、見た目からして特別感があり、通常の市販車とは違う“レース専用の迫力”を感じさせます。このように、本作では車が単なる性能表の数字ではなく、プレイヤーの感情移入先になっている点が魅力です。
好きな車を選ぶ楽しさと、見た目で選ぶ贅沢
レースゲームでは、どうしても最速車や扱いやすい車ばかりが選ばれがちです。しかし『DRIVING EMOTION TYPE-S』では、必ずしも速さだけで車を選ぶ必要はありません。むしろ、見た目が好き、内装が好き、メーカーが好き、エンジン音が好きという理由で選んだ方が、本作らしい楽しみ方になります。コックピット視点が用意されているため、外観だけでなく“運転席から見える景色”も車選びの重要な要素になります。メーターの配置、ハンドルの見え方、フロントウィンドウ越しの視界などが違うことで、同じコースを走っていても気分が変わります。とくに本作は車内視点に力を入れているため、第三者視点でタイムだけを追うよりも、好きな車の運転席に座っている気持ちで走る方が魅力を感じやすい作品です。好きなキャラクターを選ぶように、好きな車を選び、その車の癖を覚え、少しずつ扱えるようになる。これが本作の楽しみ方の中心といえます。
攻略の第一歩は、速く走ろうとしないこと
本作を攻略するうえで最も大切なのは、最初から速く走ろうとしないことです。一般的なレースゲームの感覚で、アクセル全開のままコーナーに突っ込み、必要になったら少しブレーキを踏む、という走り方をすると、車体が大きく乱れやすくなります。本作では、まず安全に曲がることを優先するべきです。コーナーのかなり手前から減速し、ハンドルを急に切らず、車体の向きを少しずつ変え、出口が見えたらゆっくりアクセルを戻していく。この基本を守るだけで、完走率は大きく上がります。タイムを削るのは、その後で十分です。特に初心者は、ライバルカーに勝つことより、コースアウトせずに一周すること、同じ場所で何度もスピンしないこと、ストレートで車体を安定させることを目標にした方が上達しやすくなります。本作は操作の癖が強いため、雑な走りを勢いでごまかすことが難しいゲームです。だからこそ、丁寧に走る意識が攻略の土台になります。
ステアリング操作は“押しっぱなし”ではなく“小刻みに修正”する
攻略で重要になるのが、ステアリング操作です。本作では、方向入力を長く入れ続けると車が曲がりすぎたり、姿勢が戻らなくなったりしやすいです。そのため、ハンドルを切りっぱなしにするのではなく、短く入力し、少し戻し、また必要なら入力するという小刻みな操作が有効です。コーナーに入るときも、いきなり深く切るのではなく、軽く向きを変えながら車体の反応を見て調整する感覚が大切です。また、コーナーを抜けた後も、入力を離しただけで完全に安定すると思わず、逆方向に軽く修正して車体をまっすぐ戻す意識を持つ必要があります。これを怠ると、コーナーを抜けた後に車がふらつき、次の直線や次のコーナーで大きなミスにつながります。本作の運転は、ハンドルを一度切って終わりではありません。曲げる、戻す、整えるという三段階の操作が必要です。この感覚を覚えると、最初は氷の上を走っているように感じた車も、少しずつ制御できるようになります。
ブレーキは早め、アクセルは遅めが基本
本作のコーナリングで失敗しやすい原因は、ブレーキが遅すぎることと、アクセルを戻すタイミングが早すぎることです。コーナー直前で急ブレーキをかけると、車体の姿勢が乱れ、曲がる準備ができないままコーナーへ入ってしまいます。逆に、コーナーの途中でアクセルを強く踏むと、車が外側へ逃げたり、姿勢が暴れたりしやすくなります。攻略の基本は、コーナーの手前で十分に減速を終わらせ、曲がっている最中はなるべく車体を落ち着かせ、出口で車がまっすぐ向き始めてからアクセルを開けることです。特に鈴鹿のようなテクニカルなコースでは、次のコーナーへつながるライン取りが重要なので、一つのコーナーで無理をすると、その後の区間すべてが崩れます。筑波のような短いコースでは、低速コーナーでの立ち上がりがタイムに直結するため、焦ってアクセルを踏まず、きれいに向きを変えてから加速することが大切です。派手に走るより、地味に安定させることが結果的に速さにつながります。
筑波サーキット攻略は“止めて曲げる”意識が重要
筑波サーキットは、本作を練習するうえで非常に分かりやすいコースです。全体の距離が短く、コーナーの特徴も把握しやすいため、車の挙動を覚えるには向いています。ただし、コース幅が広すぎるわけではなく、低速から中速のコーナーが多いため、雑な運転をするとすぐにタイムが落ちます。攻略の基本は、しっかり減速してから向きを変えることです。筑波では、コーナーに入る速度を欲張るよりも、出口で車をまっすぐ向けて早く加速する方が安定します。特に最終コーナーのように長く回り込む区間では、ハンドルを切りすぎると車が不安定になりやすいため、進入で無理をせず、一定の舵角でじわじわ曲げる意識が必要です。筑波は一周が短いので、何度も走ってブレーキ位置とハンドル量を覚えるのに向いています。最初はタイムよりも、毎周同じラインを通ることを目標にすると、上達を実感しやすくなります。
鈴鹿サーキット攻略は“リズムを崩さない”ことが鍵
鈴鹿サーキットは、本作の中でも特に攻略しがいのあるコースです。高速区間、連続コーナー、ヘアピン、シケインなど、さまざまな要素が詰め込まれており、車の安定感とプレイヤーの集中力が試されます。鈴鹿で大切なのは、各コーナーを単独で考えすぎないことです。S字区間では、ひとつ目のコーナーで無理に攻めると、次の切り返しで姿勢が崩れます。デグナーやヘアピンでは、進入速度が高すぎると外へ膨らみ、立ち上がりで大きく損をします。シケインでは、ブレーキの遅れがそのままコースアウトや接触につながります。攻略の考え方としては、コーナーごとに最速を狙うのではなく、コース全体の流れを崩さないことが重要です。本作の車は一度姿勢を乱すと立て直しに時間がかかるため、鈴鹿では“ミスしない走り”が強いです。特に慣れないうちは、ブレーキポイントを早めに取り、縁石を大きく使いすぎず、直線で車体を完全に安定させることを意識すると、完走しやすくなります。
レース攻略ではライバルカーとの接触を避ける
本作のレースでは、ライバルカーとの接触に注意が必要です。一般的なレースゲームでは、多少ぶつかってもそのまま押し切れる作品がありますが、本作では接触によって車体の姿勢が大きく乱れたり、予想外の挙動が起きたりすることがあります。スタート直後の密集状態では、無理にイン側へ飛び込まず、前の車の動きを見ながら安全なスペースを探す方が結果的に安定します。とくに本作のAIは、プレイヤーの位置に対して必ずしも柔軟に反応してくれるわけではないため、相手が避けてくれることを期待しすぎると危険です。攻略としては、接触しながら抜くのではなく、相手が減速するコーナー手前でラインを変え、立ち上がりで横に並ぶ形が安全です。ストレートで速度差がある場合は無理なく抜けますが、コーナー途中で並ぶと不安定になりやすいため、無理な勝負は避けた方がよいでしょう。本作では、ライバルを倒すよりも自分の車を乱さないことが勝利への近道です。
難易度は高いが、慣れると独特の中毒性がある
本作の難易度は、かなり高めです。コースを覚えるだけならそれほど難しくありませんが、車を安定して走らせること自体が難しいため、一般的なレースゲームよりも上達までに時間がかかります。最初は、なぜ曲がりすぎるのか、なぜ直進できないのか、なぜコーナー出口で暴れるのかが分かりにくく、理不尽に感じることもあります。しかし、操作の癖を少しずつ理解してくると、車体の向きが乱れる前に修正できるようになり、コーナーを安全に抜ける感覚がつかめてきます。この段階に入ると、本作は単なる扱いにくいゲームではなく、非常に神経を使う運転ゲームとして楽しめるようになります。失敗した原因が分かり、次の周回で修正できたときの満足感は大きいです。万人向けではありませんが、難しいゲームを攻略することに喜びを感じるプレイヤーには、独特の中毒性があります。
クリア条件と進行の考え方
『DRIVING EMOTION TYPE-S』には、物語性のあるエンディングを目指すタイプの明確なストーリーモードはありません。攻略の目的は、各レースやモードで好成績を収め、使用可能な車やコースを増やし、より多くの環境で走れるようにしていくことです。そのため、クリアの感覚は「ラスボスを倒す」というより、「すべての要素を開放する」「各コースで納得のいくタイムを出す」「扱いにくい車を乗りこなす」といったものになります。プレイヤーごとに目標を設定しやすい作品でもあり、ある人は全車種を使うことを目標にし、ある人は筑波のタイム更新にこだわり、ある人はコックピット視点で鈴鹿を安定して走ることを目指すかもしれません。本作では、ゲーム側から与えられる達成感だけでなく、自分で課題を作って乗り越える楽しみが重要です。
セッティングは大改造ではなく、走りやすさの調整として考える
本作では、車を大きく改造して馬力を上げたり、エンジンを別物にしたりするようなチューニング要素は中心ではありません。車のカラーや一部の調整要素を使いながら、自分の好みに近づける形になります。そのため、攻略で大切なのは「強化して勝つ」より「今ある車をどう扱うか」です。セッティングを行う場合も、極端な最高速重視や曲がりやすさ重視に振るより、まずは安定して走れる方向に整える方がよいでしょう。特に操作に慣れていない段階では、車が過敏に反応する設定よりも、多少曲がりが鈍くても姿勢が乱れにくい方が扱いやすくなります。タイムを狙うのは、安定して周回できるようになってからです。本作の攻略では、車を速くするより、自分がミスしにくい状態を作ることが重要です。
裏技的な楽しみ方は、珍現象やリプレイ鑑賞にもある
本作には、特定のコマンドで一気に無敵になるような分かりやすい万能裏技よりも、挙動の癖や衝突時の珍しい現象を楽しむような“遊び方の裏道”があります。クラッシュ時に車が大きく跳ねたり、横転したり、他車と絡んで予想外の動きを見せたりすることがあり、真面目に攻略していると困る場面でも、見方を変えれば非常に印象的な光景になります。リプレイ機能を使えば、自分の走りを確認するだけでなく、失敗した場面や偶然起きた面白い場面を眺める楽しみもあります。もちろん、レースで勝ちたい場合には接触やクラッシュは避けるべきですが、本作の語り草になっている部分のひとつは、こうした予測不能な挙動にもあります。攻略を突き詰めるだけでなく、時には“何が起きるか分からないレースゲーム”として遊ぶと、本作ならではの味わいが見えてきます。
初心者におすすめの練習方法
初めて遊ぶ場合は、いきなり高性能車や難しいコースに挑むより、まずは比較的扱いやすい車で筑波のような短いコースを走り込むのがおすすめです。最初の目標は勝利ではなく、コースアウトしないことです。次に、同じブレーキ位置で毎回減速することを意識します。その次に、コーナー出口で車体をまっすぐ向ける練習をします。最後に、少しずつアクセルを踏むタイミングを早めていきます。この順番で練習すると、どこでミスが起きているのかが分かりやすくなります。また、視点は好みによりますが、本作の雰囲気を味わうならコックピット視点、操作を安定させたいなら外部視点を使うとよいでしょう。コックピット視点は臨場感がありますが、車体の動きがつかみにくい場合もあります。慣れるまでは外部視点でライン取りを覚え、慣れてきたら車内視点で走ると、本作の魅力を段階的に楽しめます。
好きな車を“育てる”ように乗り込む楽しみ
本作では車そのものをパーツ交換で大きく育成するわけではありませんが、プレイヤーの腕前が上がることで、同じ車がまるで成長したように感じられます。最初は暴れてばかりだった車が、練習を重ねるうちにスムーズに曲がるようになる。これは車が変わったのではなく、プレイヤーがその車を理解した結果です。この感覚は、扱いやすいゲームでは得にくい本作ならではの魅力です。好きな車を一台決めて、筑波で練習し、鈴鹿に挑み、高速コースやダート系コースでも走らせてみる。そうして車の反応を覚えていくと、その車に対する愛着が強くなります。スペック上の最速車ではなくても、自分が一番安定して走れる車、一番気持ちよく運転できる車が“お気に入り”になります。これこそ、本作における好きなキャラクターの考え方です。
総合的な攻略ポイント
本作を攻略するための考え方をまとめると、第一に、操作を大きく入れすぎないこと。第二に、ブレーキを早めに終わらせること。第三に、アクセルを焦って踏まないこと。第四に、接触を避けること。第五に、タイムより安定を優先することです。この五つを意識するだけで、プレイ感覚は大きく変わります。『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、気軽に遊べるレースゲームではありません。しかし、だからこそ、少し上達しただけでも達成感があります。最初は難しすぎると感じても、車の反応を覚え、コーナーの入り方を変え、走り方を修正していくことで、少しずつ自分のものになっていきます。豪華な実在車や実在サーキット、車内視点のこだわりを本当に楽しむためには、まずこの癖の強い操作性を受け入れる必要があります。そこを乗り越えたとき、本作は単なる評価の低いレースゲームではなく、PS2初期にしか生まれなかった奇妙で濃いドライブ体験として楽しめるようになります。
■■■■ 感想・評判・口コミ
発売当時の第一印象は「素材は豪華、しかし操作が難しすぎる」
『DRIVING EMOTION TYPE-S』をプレイした人の感想で、まず多く語られやすいのは「見た目や収録内容への期待感」と「実際に操作したときの戸惑い」の落差です。発売前や店頭でパッケージを見た段階では、実在車、実在サーキット、スクウェア、PS2初期タイトルという要素がそろっており、かなり期待を持たれやすい作品でした。スクウェアがレースゲームを出すという意外性もあり、RPGとは違う分野でどのような映像表現を見せてくれるのかと注目した人も少なくありません。さらに、フェラーリやポルシェを含む実名車、鈴鹿や筑波といった実在コース、車内視点の再現など、カーマニアが反応しやすい要素が多く、事前情報だけを見ればかなり魅力的なソフトに見えました。しかし、実際にコントローラーを握ると、多くのプレイヤーが最初の数分で操作の難しさに直面しました。車が思ったよりも曲がりすぎる、まっすぐ走らせるだけでも気を使う、コーナーで姿勢が乱れる、ハンドルを戻したつもりでも車が不安定に動くなど、普通のレースゲームの感覚では扱いにくい部分が目立ったためです。そのため、発売当時の感想には「惜しい」「見た目はいいのに走りにくい」「車種は魅力的なのに快適に遊べない」という、期待と失望が入り混じったものが多く見られました。
操作性への厳しい意見が評価の中心になった
本作の評判を大きく決定づけたのは、やはり操作性です。レースゲームにおいて、操作したときに車がどう反応するかは、作品全体の印象を左右する最重要部分です。映像が美しくても、車種が多くても、音楽が良くても、肝心の走りが気持ちよくなければ、プレイヤーは長く遊び続けにくくなります。本作の場合、リアル志向を目指していたことは伝わるものの、その挙動が多くのプレイヤーには“リアル”というより“扱いづらい”と受け取られました。ステアリングを少し切っただけで車が過敏に反応し、逆に修正しようとすると反対側へ振られ、結果として直線でもフラフラしてしまう。こうした感覚は、実車の重さやタイヤの接地感を楽しむというより、常に滑りやすい路面で車を押さえ込んでいるような印象を与えました。そのため、口コミでは「氷の上を走っているようだ」「車が自分の意思と違う方向へ行く」「リアルというより制御が難しい」といったニュアンスの感想が目立ちました。特に、同時期のユーザーは『リッジレーサー』シリーズや『グランツーリスモ』シリーズの操作感に慣れていたため、本作の挙動はかなり異質に感じられました。
リアル派を期待した人ほど戸惑いやすかった
本作は実在車を扱い、車内視点や実在サーキットを収録していたため、見た目の印象としてはリアル系レースゲームを期待させるものでした。つまり、プレイヤーの中には『グランツーリスモ』のように、実車の感覚をゲームとして分かりやすく落とし込んだ作品を想像して購入した人も多かったはずです。しかし、実際のプレイ感覚はかなり癖が強く、リアルドライブを楽しむというより、独特な物理挙動を攻略するゲームに近いものでした。この点が、リアル派のプレイヤーにとって大きな戸惑いになりました。車内視点でメーターやハンドルが再現され、サーキットも実名で登場するため、画面だけを見れば本格派に見えます。ところが、走らせるとコントローラー入力と車体反応の間に強い違和感があり、理想としていた“実車を操る感覚”から離れていると感じられやすかったのです。リアル志向を掲げる作品ほど、プレイヤーは挙動に対して厳しい目を向けます。見た目がリアルだからこそ、操作の違和感が余計に目立ってしまったといえます。
一方で、映像や車内視点を評価する声もあった
厳しい評判が多い本作ですが、すべてが否定的に見られていたわけではありません。映像表現や車内視点については、当時として評価する声もありました。PS2初期の作品として、実車の外観を立体的に表現しようとした点、コックピットを再現して運転席からの視点を楽しめる点、メーターやハンドルの動きを画面内に入れた点などは、車好きにとって魅力的でした。特に、車内視点は当時の家庭用レースゲームではまだ一般的とはいえず、車ごとのインテリアを眺めながら走れることは新鮮でした。車を外から操作するだけでなく、自分が車に乗り込んでいるような気分を味わえるため、操作性への不満を抱えながらも「この視点は良い」「雰囲気は出ている」「内装再現は面白い」と感じたプレイヤーもいました。また、実在サーキットの収録も好意的に受け止められました。鈴鹿や筑波を家庭用ゲームで走れるという点は、車好きやモータースポーツファンにとって価値があり、コース選びそのものは魅力として語られています。
収録車種の豪華さは強く印象に残った
本作の口コミで比較的好意的に語られる部分として、収録車種のラインナップがあります。国産車だけでなく、海外の有名スポーツカーやスーパーカー、さらにレース色の強いマシンまで収録していたことは、当時のプレイヤーにとって大きな魅力でした。特に、フェラーリやポルシェといったメーカー名は、家庭用レースゲームの中でも特別な響きを持っていました。実名で登場するだけでも所有欲や憧れを刺激し、カタログを眺めるように車を選ぶ楽しさがありました。プレイヤーによっては、レースで勝つことよりも「この車をゲーム内で走らせられる」という点に価値を感じた人もいます。実車ファンにとっては、ゲーム内の一台一台がキャラクターのような存在であり、好きなメーカーや車種が収録されているだけで購入理由になり得ました。だからこそ、操作性に不満があっても、車種の豪華さだけは評価するという声が残りました。本作は、走らせたときの快適さでは評価を落としましたが、車を集め、眺め、選ぶ楽しさには確かな魅力がありました。
音楽への評価は比較的安定していた
『DRIVING EMOTION TYPE-S』のBGMやサウンドについては、操作性ほど厳しい評価ばかりではありませんでした。レース中の音楽はスピード感や緊張感を演出しており、硬質でスタイリッシュな雰囲気がありました。スクウェア作品らしい華やかなメロディというより、ドライブゲームに合わせたクールなサウンドで、走行中の集中力を高める役割を果たしていました。プレイヤーの中には、ゲーム部分には不満を持ちながらも「曲は良い」「BGMは印象に残る」「音楽面はさすが」と感じた人もいます。また、エンジン音やメーターの動きと組み合わせた車内視点では、実際に車載映像を見ているような雰囲気があり、サウンド演出が作品のリアル志向を支えていました。もちろん、車種ごとのエンジン音再現という点では、後年のレースゲームと比べて限界がありますが、当時のプレイヤーには一定の雰囲気作りとして伝わっていました。音楽と映像の方向性だけを切り取れば、本作は決して雑な作りではなく、かなり意欲的な作品だったことが分かります。
ロード時間やボリュームへの不満
操作性以外で不満として挙げられやすかったのが、ロード時間とゲーム全体のボリュームです。PS2初期のゲームでは、ディスク読み込みの長さが気になる作品も多く、本作もレース開始前の待ち時間が長めに感じられました。レースゲームは、失敗したらすぐにやり直し、何度も同じコースに挑戦して上達していく遊びが中心になります。そのため、ロードが長いとテンポが悪くなり、再挑戦する気持ちが削がれやすくなります。本作のように操作が難しく、何度もミスをしやすいゲームでは、やり直しの快適さが特に重要です。ところが、そこで待ち時間が目立つと、プレイヤーのストレスはさらに大きくなります。また、収録要素についても、実在車やサーキットという魅力はあるものの、全体として遊びの幅が非常に豊富だったとは言いにくく、長く遊ぶにはプレイヤー側の目的設定が必要でした。車を集める、タイムを縮める、好きな車で走り込むといった楽しみ方ができる一方、ゲーム側から次々と新しい刺激が与えられるタイプではありません。そのため、操作に慣れられなかった人ほど、内容の薄さを感じやすかったといえます。
珍しいバグやクラッシュ挙動が別方向の話題になった
本作の評判の中で、ある意味で強烈な記憶として残っているのが、クラッシュ時の奇妙な挙動や予想外の現象です。車が横転したり、他車と絡んで不自然な動きをしたり、場面によってはかなりシュールな光景が生まれることがありました。普通にレースを楽しみたいプレイヤーにとっては困った要素ですが、後から振り返ると、こうした珍現象が本作を“語りたくなるゲーム”にしている面もあります。完成度の高いレースゲームではまず見られないような動きが起こるため、プレイ中に笑ってしまったり、リプレイで見返したくなったりすることもあります。もちろん、これは本来なら欠点に分類される部分です。車の接触判定や物理挙動が安定していないために起こる現象であり、真剣に遊んでいるときにはレースの邪魔になります。しかし、ゲームの歴史を振り返る中では、こうした不思議な出来事が作品の個性として語られることがあります。本作もまさにそのタイプで、完成度とは別の意味で印象に残るゲームになりました。
「クソゲー」と呼ばれながらも忘れられない存在
本作は、プレイヤーの間で厳しい評価を受けることが多く、いわゆる“クソゲー”として語られることもあります。ただし、その扱いは単なる低品質ゲームというより、「素材は良かったのに、肝心なところで大きく失敗した惜しいゲーム」というニュアンスを含んでいます。もし収録車種が平凡で、映像にも見どころがなく、音楽も印象に残らない作品だったなら、ここまで長く語られることはなかったかもしれません。本作が記憶に残るのは、実在車、車内視点、鈴鹿、筑波、スクウェア、PS2初期という魅力的な要素を持っていたからです。それだけ期待させる材料があったにもかかわらず、操作性が多くのプレイヤーに受け入れられなかったため、落差が大きくなりました。つまり、本作への厳しい感想は、単なる否定ではなく「もっと良いゲームになれたはずなのに」という惜しさの裏返しでもあります。
現在の視点では、PS2初期の挑戦作として再評価できる部分もある
現在の視点で本作を振り返ると、発売当時とは少し違った見方もできます。現代のレースゲームでは、実在車の内装再現、車内視点、実在サーキット、細かなサウンド表現はかなり一般的になっています。しかし、PS2初期にそれらを家庭用ゲームで前面に出そうとしたことは、決して小さな挑戦ではありませんでした。スクウェアがRPGだけでなく、車の表現や物理挙動に挑もうとした姿勢も興味深いものです。もちろん、結果として操作性には大きな問題があり、万人に勧められる作品ではありません。しかし、映像表現の方向性や車内視点へのこだわりを見ると、時代を先取りしていた部分も確かにあります。失敗作として語られる一方で、PS2初期の試行錯誤を示す資料的な価値を持つ作品ともいえます。新ハードの性能をどう使うか、リアルな車をゲームでどう表現するか、メーカーがまだ手探りだった時代の空気が、本作には強く残っています。
口コミを総合すると、評価は低いが印象は強い
『DRIVING EMOTION TYPE-S』の感想や評判をまとめると、総合評価は決して高くありません。特に操作性の悪さ、ロードの長さ、ボリューム不足、AIや衝突挙動の不安定さは、多くのプレイヤーにとって大きなマイナスでした。レースゲームとして最も大切な“走っていて楽しいか”という部分でつまずいたため、映像や車種の魅力が十分に活かされなかったのです。しかし、それでも本作は忘れられにくい作品です。スクウェアが作ったPS2初期の実車レースゲームという珍しさ、フェラーリやポルシェを含む車種の豪華さ、車内視点の先進性、そして独特すぎる挙動が、良くも悪くも強烈な個性になっています。プレイヤーの反応は「難しい」「走りにくい」「惜しい」「でも記憶に残る」というものに集約できます。万人に愛された名作ではありませんが、PS2初期のレースゲーム史を語るうえで、妙な存在感を放つ一本です。
■■■■ 当時の宣伝・現在の中古市場など
PS2初期タイトルとして注目を集めた発売前の立ち位置
『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、2000年3月30日にスクウェアから発売されたプレイステーション2用ソフトであり、発売時期そのものが非常に重要な意味を持っていました。プレイステーション2本体は2000年3月4日に登場したばかりで、ゲーム業界全体が新ハードの性能に注目していた時期です。ユーザーは「PS2ではどんな映像が出せるのか」「DVD-ROM時代のゲームはどれほど豪華になるのか」「PS1からどれだけ進化したのか」という期待を抱いていました。そうしたなかで、スクウェアが送り出した本作は、RPGではなくリアルカーを扱うドライブゲームという点で、かなり目立つ存在でした。スクウェアといえば、当時は『ファイナルファンタジー』シリーズを中心に、物語性や映像演出に強いメーカーという印象がありました。その会社が、実在車、実在サーキット、車内視点、リアル志向の挙動を掲げたレースゲームを発売するという事実は、ゲームファンにも車好きにも意外性を持って受け止められました。宣伝上も、単なるレースゲームではなく「スクウェアがPS2で新しい表現に挑む作品」という雰囲気があり、PS2初期のラインナップの中でも、映像表現を見せるためのタイトルとして期待されていました。
宣伝の中心は“実在車”“実在サーキット”“運転席視点”
本作の宣伝で強調されやすかったポイントは、まず実在車の収録です。国内外の自動車メーカーの車が実名で登場し、スポーツカーや高性能車、人気車種を家庭用ゲームで操作できることが大きな売りになっていました。特に、フェラーリやポルシェといった憧れのブランドが登場することは、車好きに対して非常に強い訴求力を持っていました。当時のレースゲームでは、実在車のライセンス取得は今ほど当たり前ではなく、メーカー名や車名が正式に使われていること自体が価値でした。さらに、鈴鹿サーキットや筑波サーキットといった実在コースを走れる点も、宣伝材料として分かりやすい魅力でした。鈴鹿は日本を代表する国際サーキット、筑波はチューニングカー文化やタイムアタック文化で知られる象徴的なコースであり、名前を聞いただけで反応する車好きも多かったはずです。そしてもう一つの大きな訴求点が、コックピット視点です。ハンドル、メーター、インパネ類まで再現された運転席からの視点は、当時としてはかなり新鮮で、「車に乗って走る」感覚を前面に出した宣伝と相性が良い要素でした。
スクウェアのブランド力が生んだ期待感
『DRIVING EMOTION TYPE-S』の宣伝効果を考えるうえで、スクウェアという社名の影響は無視できません。2000年前後のスクウェアは、家庭用ゲーム市場において非常に強いブランド力を持っていました。美しいムービー、凝った演出、洗練されたサウンド、話題性のある大作というイメージがあり、スクウェアが新作を出すだけで一定の注目を集める時代でした。そのため、本作も「スクウェアが作るなら、普通のレースゲームとは違うのではないか」「映像面で驚かせてくれるのではないか」という期待を背負っていました。実際、車体のモデリングや光の表現、コース背景、車内視点などには、PS2の性能を使って見栄えを良くしようとする意欲がありました。RPGメーカーがレースゲームに挑戦するという意外性は、宣伝上ではプラスに働きました。ゲーム雑誌や店頭紹介でも、スクウェア初期PS2タイトルのひとつとして扱われ、PS2購入者に向けて「新ハードでこんなリアルな車表現ができる」という印象を与えようとしていた作品だったといえます。
ゲーム雑誌での紹介と、発売前の見え方
発売当時のゲーム雑誌では、PS2の新作紹介が大きな注目を集めていました。本作も、スクリーンショット、収録車種、コース、車内視点、操作システムなどを中心に紹介されていたと考えられます。誌面で見た場合、本作の魅力は非常に伝わりやすいものでした。実在車の写真のような画面、サーキットを走る車、メーターが映るコックピット画面は、PS1時代からの進化を感じさせる材料になります。特に紙面では、実際の操作感よりも画面の美しさや収録要素が先に伝わるため、本作は発売前の印象ではかなり魅力的に見えたはずです。読者は「鈴鹿を走れる」「筑波を攻められる」「フェラーリやポルシェに乗れる」「車内まで描かれている」という情報から、本格的なドライブシミュレーターを想像します。つまり、雑誌での宣伝や紹介は、本作の長所を非常に見せやすい一方で、最大の問題点である操作性の癖までは十分に伝わりにくかったといえます。そのため、発売前に抱いた期待と、購入後に実際に操作した感覚との間に大きな差が生まれやすい作品でもありました。
テレビCM・映像広告で映えた“高級感”と“スピード感”
本作の宣伝映像では、実在スポーツカーの存在感、PS2らしいポリゴン表現、スピード感のある走行シーンが前面に出しやすい内容でした。レースゲームは、テレビCMや店頭デモとの相性が良いジャンルです。数秒間の映像でも、車が走る、コーナーを曲がる、ライトが反射する、サーキットを駆け抜けるという要素が視覚的に伝わるため、プレイヤーに「かっこいい」「走らせてみたい」と思わせやすいからです。『DRIVING EMOTION TYPE-S』の場合も、フェラーリやポルシェのような華のある車、実在サーキット、車内視点のメーター表示などを見せることで、硬派で高級感のあるレースゲームとして印象づけることができました。スクウェア作品らしく、単なる玩具的なレースではなく、スタイリッシュで大人っぽいドライブ体験を連想させる宣伝だったといえます。ただし、映像広告では操作の難しさやステアリングの癖は見えません。走行シーンが美しくまとまっていればいるほど、購入者はスムーズに走れるゲームを想像しやすく、実際のプレイで戸惑う原因にもなりました。
店頭販売ではPS2初期需要とスクウェア人気が追い風に
販売方法としては、通常のPS2パッケージソフトとしてゲームショップ、量販店、通販などで展開されました。PS2初期は本体そのものへの注目度が高く、対応ソフトを探しているユーザーが多い時期でした。本体と一緒に何本かソフトを買う人も多く、レースゲームは新ハードの性能を体感するジャンルとして選ばれやすい傾向があります。『DRIVING EMOTION TYPE-S』も、そうした初期需要の中で手に取られた作品のひとつです。パッケージや販促物では、実車の存在感やスクウェアの名前が購入意欲を刺激しました。PS2を買ったからには映像のきれいなゲームを遊びたい、RPG以外のスクウェア作品も試してみたい、実在車を動かしてみたいという動機で購入した人もいたでしょう。特に車好きのユーザーにとっては、当時のPS2ソフト棚の中で、本作はかなり目を引く存在でした。新ハードの初期に発売されたことは、宣伝面でも販売面でも大きな追い風になっていました。
販売後の評価が伸び悩んだ理由
発売前の材料は魅力的だったものの、販売後の評判は大きく伸び悩みました。その理由は、やはりプレイ後の口コミです。レースゲームは、実際に遊んだ人の感想が広まりやすいジャンルです。友人同士で遊ぶ、ゲームショップで話題にする、雑誌レビューを読む、インターネット掲示板で感想を見るといった流れの中で、「このゲームは操作が難しい」「車が滑る」「思ったように走れない」という意見が目立つようになると、購入を迷っていた人にも影響します。本作の場合、実在車やグラフィックを評価する声があった一方で、根本的な操作性への不満がかなり強く、レースゲームとしての評価を押し下げました。レースゲームでは、第一印象の操作感が非常に重要です。最初のレースで気持ちよく走れないと、プレイヤーはその後の要素を見ようとする前に離れてしまいます。本作は、車種やコースの魅力がありながら、最初の壁が高すぎたため、発売前の期待ほど長く支持を広げることができなかったといえます。
海外版で調整が加えられたことが示す、日本版の課題
本作は日本だけでなく海外でも展開されましたが、海外版では操作性や内容面に調整が加えられたことで知られています。これは、日本版発売後に寄せられた反応を受けて、扱いづらさを改善しようとした動きと見ることができます。海外市場では、同時期のレースゲームとの比較も厳しく、操作性の悪さがそのままでは大きなマイナスになると判断されたのでしょう。日本版の『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、リアル志向を目指しながらも、プレイヤーにとって自然な運転感覚に落とし込む部分で課題を残しました。海外版で調整が行われたことは、開発側や販売側も日本版の問題点を認識していたことを示す材料になります。ただし、海外版で改善があったとしても、日本国内で最初に遊ばれたバージョンの印象は強く残りました。そのため、本作は日本のPS2初期作品として、特に操作性の癖が語られ続けることになります。
現在の中古市場での位置づけ
現在の中古市場における『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、極端な高額プレミアソフトというより、比較的入手しやすいPS2初期タイトルという位置づけです。通常の中古ソフトとしては、状態や付属品の有無によって価格差がありますが、一般的には数百円台から千円台前半あたりで見かけることが多い作品です。説明書付き、ケース状態良好、帯付き、ディスク傷少なめといった条件がそろうと価格が少し上がり、逆にディスクのみ、ケース傷み、説明書欠品などでは安くなります。PS2ソフト全体の中古市場では、人気シリーズ、希少タイトル、ホラーゲーム、ギャルゲー、限定版などに高値が付きやすい傾向がありますが、本作はそこまで強いプレミア枠には入っていません。ただし、スクウェア製PS2初期作品、実車レースゲーム、独特な評価を持つ作品という点で、コレクション目的の需要はあります。安価に入手しやすい一方で、状態の良い完品を探す場合には、多少選別が必要なタイトルです。
オークション・フリマでの出品傾向
ヤフオク、メルカリ、その他フリマ系サービスでは、『DRIVING EMOTION TYPE-S』は単品出品だけでなく、PS2ソフトまとめ売りの中に含まれていることもあります。単品の場合は、ケース・説明書付きの一般中古品として出品されることが多く、価格は比較的安めに設定される傾向があります。まとめ売りでは、PS2初期のレースゲームやスクウェア作品、スポーツ系ソフトと一緒に出されることがあり、単体価値よりもセット全体の一部として扱われることもあります。オークションで高値を狙うタイプのタイトルではありませんが、逆に言えば、遊ぶ目的なら入手しやすい作品です。購入時に確認したいのは、ディスク裏面の傷、説明書の有無、ケースの割れ、ジャケットの日焼け、動作確認の記載です。PS2ソフトはディスクメディアなので、見た目がきれいでも読み込み不良の可能性がゼロではありません。特に本作はロード時間が気になりやすいゲームでもあるため、ディスク状態はできるだけ良いものを選んだ方が安心です。
コレクター目線で見た価値
コレクター目線で見ると、『DRIVING EMOTION TYPE-S』にはいくつかの面白い価値があります。第一に、スクウェアがPS2初期に発売したレースゲームという珍しさです。スクウェアの歴史を集めている人にとって、本作はRPG以外の挑戦を示す一本として意味があります。第二に、PS2初期タイトルとしての資料的価値です。PS2発売直後のゲームは、開発者が新ハードの性能をどう使おうとしていたかを感じられるものが多く、本作もその一つです。第三に、実在車・実在コース・車内視点という、当時としては意欲的だった要素を備えていることです。第四に、ゲーム評価としては賛否が強く、独特の操作性や珍しい挙動が語り草になっていることです。名作コレクションというより、クセの強い作品、メーカーの挑戦作、PS2初期の空気を残す資料として持っておきたいタイプのソフトです。価格が比較的安いこともあり、PS2ソフトを幅広く集めている人にとっては手を出しやすいタイトルといえます。
サウンドトラックや関連商品について
本作はBGM面にも注目点があり、ゲーム音楽ファンからはサウンドの存在が語られることがあります。レースゲームとしての評価は厳しめでも、音楽には一定の魅力があり、作曲陣やスクウェア系サウンドに関心のある人にとっては関連音源もチェック対象になります。ゲームソフト本体と比べると、サウンドトラックや関連CDは流通量が限られる場合があり、状態や時期によってはソフト本体より探しにくいこともあります。ゲーム内容だけでなく、音楽面から本作に興味を持つ人もいるため、関連商品は単なる周辺品ではなく、作品を別角度から楽しむ資料になります。また、当時のゲーム雑誌、攻略記事、レビュー記事、広告ページなども、コレクションとしては面白い対象です。ソフト単体では安価でも、当時の雑誌広告や販促物まで含めて集めようとすると、探す楽しみが増します。本作は大ヒット作ではないため、関連資料が大量に残っているタイプではありませんが、だからこそ見つけたときの面白さがあります。
現在購入するなら、遊ぶ目的と資料目的で選び方が変わる
現在『DRIVING EMOTION TYPE-S』を購入する場合、目的によって選び方が変わります。実際に遊ぶ目的なら、価格の安さよりもディスク状態を重視するのがおすすめです。説明書や帯にこだわらなければ、比較的安く入手できる可能性があります。とりあえずPS2初期のクセのあるレースゲームを体験したい、噂の操作感を確かめたい、車内視点を見てみたいという目的なら、通常の中古品で十分です。一方、コレクション目的なら、ケース、ジャケット、説明書、ディスクの状態がそろった完品を選びたいところです。さらに帯付きや美品にこだわるなら、多少価格が上がっても状態の良いものを探す価値があります。スクウェア作品を集めている人、PS2初期ソフトを集めている人、実車系レースゲームの歴史を追っている人にとって、本作はコレクションの中で小さくても目立つ存在になります。遊んで楽しい名作として買うより、当時の挑戦と失敗を体験する資料として買うと、満足しやすい作品です。
宣伝と中古市場から見える本作の評価
『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、発売当時の宣伝では非常に魅力的に見せやすい作品でした。スクウェア、PS2初期、実在車、実在サーキット、車内視点、リアル志向という要素は、どれも購入意欲を刺激する力を持っていました。しかし、実際のプレイ評価では操作性の癖が大きな壁となり、発売前の期待ほど高い支持を得ることはできませんでした。現在の中古市場で比較的安価に流通していることは、その評価を反映しているともいえます。ただし、安いから価値がないというわけではありません。むしろ本作は、PS2初期の実験的な空気、スクウェアの異色挑戦、リアル系レースゲームの発展途上を一度に感じられる作品です。高額プレミアではないからこそ手に取りやすく、今から遊ぶことで当時のプレイヤーが味わった期待と戸惑いを追体験できます。宣伝では未来的で本格派に見え、実際には非常に扱いづらい。しかし、その落差こそが、本作を長く記憶に残る一本にしているのです。
■■■■ 総合的なまとめ
『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、成功作ではなく“挑戦の跡が濃い作品”
『DRIVING EMOTION TYPE-S』を総合的に振り返ると、誰にでも気軽にすすめられる完成度の高いレースゲームというより、プレイステーション2初期の熱気、スクウェアの挑戦心、そして新しい表現に踏み込んだ結果の未完成さが強く残った作品といえます。2000年3月30日という発売時期は、PS2本体が登場してからまだ間もない頃であり、各メーカーが新ハードの性能をどう使うかを模索していた時代でした。その中でスクウェアは、得意分野であるRPGではなく、実在車を扱うリアル系ドライブゲームに挑みました。これは非常に意欲的な選択でした。実在メーカーの車、鈴鹿サーキットや筑波サーキット、車内視点、メーターやインパネの表現、硬質なBGM、PS2らしい車体モデリングなど、目指していた方向には明らかな先進性があります。しかし、その一方で、レースゲームとして最も大切な“操作して気持ちよく走れること”が大きく揺らいでしまいました。そのため本作は、良い素材を集めながらも、肝心の調理で評価を落としてしまったような作品になっています。
最大の長所は、時代を先取りした車内表現と実車へのこだわり
本作の長所を一つ挙げるなら、実車へのこだわりと車内視点の存在です。現在のレースゲームでは、運転席視点でハンドルやメーターを見ながら走ることは珍しくありません。しかし、PS2初期の段階でそれを強く押し出していた本作は、表現の方向性としてかなり先を見ていました。車を外から眺めるだけでなく、実際に乗り込んでいるような感覚を味わわせようとした点は、単なるアーケードレースとは違う魅力を持っていました。また、登場車種も当時としては見応えがあり、国産車、海外スポーツカー、スーパーカー、レース色の強い車まで収録されていたことで、車好きの所有欲や憧れを刺激しました。フェラーリやポルシェのようなブランドを家庭用ゲームで走らせられることは、それだけで大きな話題性がありました。さらに、鈴鹿や筑波といった実在サーキットを走れる点も、モータースポーツやチューニングカー文化に関心のあるプレイヤーには魅力的でした。つまり本作は、企画段階で見れば非常に強いカードをいくつも持っていた作品だったのです。
最大の弱点は、レースゲームの根幹である操作感
一方で、本作の評価を決定的に下げたのは操作感です。レースゲームは、画面が美しいだけでは成立しません。プレイヤーがアクセルを踏み、ブレーキをかけ、ハンドルを切ったときに、車が納得できる反応を返してくれることが大切です。『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、リアルな挙動を目指していたと思われますが、実際のプレイ感覚は非常に過敏で、車が滑りやすく、姿勢を保つのが難しいものになっていました。ステアリングの戻りが弱く、切ったハンドルを自分で細かく戻し続けなければならない感覚は、多くのプレイヤーにとって自然ではありませんでした。リアル系レースゲームを期待した人ほど、この違和感は大きかったはずです。車内視点や実車再現が本格的であるほど、運転感覚にも本格性を期待してしまいます。しかし、その期待に対して、実際の挙動は“リアル”というより“扱いにくい”と受け止められやすかったのです。この部分が改善されていれば、本作の評価は大きく変わっていた可能性があります。
惜しさが強いからこそ、今も語られる
『DRIVING EMOTION TYPE-S』が今も語られる理由は、単に出来が悪かったからではありません。もし何の見どころもない作品であれば、時間とともに忘れられていたでしょう。本作には、はっきりとした魅力があります。実在車の豪華さ、車内視点の意欲、PS2初期らしい映像表現、スクウェアがレースゲームに挑戦した珍しさ、音楽の良さ、実在サーキットの収録など、評価できる要素はいくつもあります。だからこそ、「なぜ操作性だけがここまで難しくなってしまったのか」という惜しさが強く残ります。本作は、素材の方向性が悪かったわけではありません。むしろ、後の時代のリアル系レースゲームで重要視される要素をいくつも先に取り入れていました。問題は、それらを快適なゲーム体験としてまとめきれなかったことです。名作になり得る材料があったからこそ、失敗部分が強く印象に残り、プレイヤーの記憶に残る作品になりました。
レースゲームとして見ると厳しいが、資料として見ると面白い
純粋なレースゲームとして本作を評価すると、厳しい点が多くなります。操作は難しく、ロードも気になりやすく、AIや衝突挙動にも不安定さがあります。気持ちよくレースを楽しみたい人や、スムーズなドライブ体験を求める人には向きません。しかし、ゲーム史の資料として見ると、本作は非常に興味深い存在です。PS2初期に、メーカーがどのように次世代表現を考えていたのか。RPGで有名なスクウェアが、車という題材にどのように取り組んだのか。実在車ライセンスや車内視点が、当時どれほど魅力的に見えたのか。そうした時代の空気を感じるには、かなり面白い一本です。また、現在のレースゲームに慣れた状態で本作を遊ぶと、現代作品がどれほど操作性や挙動表現を丁寧に調整しているかも分かります。つまり本作は、遊びやすい名作としてではなく、レースゲームの進化を考えるうえでの比較対象として価値があります。
好きになれる人と、すぐに投げ出す人がはっきり分かれる
本作は、人を選ぶゲームです。多くのプレイヤーにとっては、最初の数分で「走りにくい」と感じる可能性が高いでしょう。普通のレースゲームの感覚で遊ぶと、コーナーを曲がるだけで苦労し、ライバルカーと競う以前に自分の車を制御できない状態になりやすいです。そのため、気軽に楽しみたい人にはかなり厳しい作品です。しかし、逆に言えば、扱いにくいゲームを攻略することに面白さを感じる人には、独特の魅力があります。少しずつハンドル操作を覚え、ブレーキの位置を変え、アクセルを我慢し、車体を安定させる方法を理解していく過程には、他のレースゲームとは違う達成感があります。快適ではありませんが、慣れてくると「この変な挙動を自分だけが乗りこなしている」という妙な満足感が生まれます。つまり本作は、万人に向けた優等生ではなく、癖の強い問題児のような作品です。その問題児ぶりを笑って受け入れられるかどうかで、評価は大きく変わります。
スクウェア作品として見たときの異色性
スクウェア作品の歴史の中でも、『DRIVING EMOTION TYPE-S』はかなり異色です。スクウェアといえば、壮大な物語、美しいムービー、キャラクター性、RPG的な成長要素を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし本作には、そうした分かりやすいスクウェアらしさはあまりありません。物語も、キャラクター同士のドラマも、RPG的な育成も中心ではありません。あるのは車、コース、スピード、操作、映像表現です。その意味で、本作はスクウェアが自社ブランドの可能性を広げようとした作品ともいえます。結果として大成功にはなりませんでしたが、スクウェアがPS2という新しい環境で、RPG以外の分野に本気で踏み込もうとした姿勢は感じられます。ゲーム会社の歴史を振り返ると、成功作だけでなく、こうした挑戦作にも重要な意味があります。なぜなら、挑戦作には、その時代のメーカーが何を目指していたのかが色濃く残るからです。
中古で手に取る価値は“名作体験”ではなく“珍作体験”にある
現在、中古で本作を手に取る場合、期待の仕方を間違えないことが大切です。完成度の高い名作レースゲームを遊びたいなら、他に選択肢は多くあります。滑らかな操作感、豊富なモード、洗練された挙動、快適なロード、充実した車種育成を求めるなら、本作はおすすめしにくいです。しかし、PS2初期の空気を味わいたい、スクウェアの異色作を体験したい、実在車の車内視点を当時の技術で見てみたい、評判になった操作性を自分で確かめたいという目的なら、本作には十分な価値があります。中古価格も比較的手に取りやすいことが多く、コレクションとしても面白い存在です。遊んで快適というより、遊んで驚く、戸惑う、笑う、考えるタイプのゲームです。その意味では、単なる低評価作品ではなく、ゲーム好きが一度触れてみると話の種になる“珍作”としての魅力があります。
総合評価は「野心は高いが、完成度は追いつかなかった」
『DRIVING EMOTION TYPE-S』を一言でまとめるなら、「野心は高かったが、完成度が追いつかなかったレースゲーム」です。目指していたものは決して悪くありません。むしろ、実在車、実在サーキット、車内視点、リアルな雰囲気作りという方向性は、後のレースゲームの発展を考えるとかなり正しいものでした。しかし、それをプレイヤーが気持ちよく遊べる形に整えるには、車の挙動、入力の反応、ロード、AI、モード構成など、細かな部分の完成度が必要でした。本作は、その重要な調整で大きくつまずいてしまいました。結果として、豪華な外見と扱いづらい中身の差が目立ち、評価は厳しいものになりました。ただし、だからといって完全に無価値な作品ではありません。PS2初期の勢い、スクウェアの挑戦、実車表現への意欲、そして失敗の印象まで含めて、非常に記憶に残る一本です。名作ではないかもしれませんが、忘れがたい作品ではあります。
最後に残る印象
『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、プレイヤーに快適な走行体験を提供することには失敗したかもしれません。しかし、ゲームの記憶というものは、必ずしも完成度だけで決まるわけではありません。美しい部分、惜しい部分、理解しがたい部分、笑ってしまう部分、怒りたくなる部分が混ざり合うことで、妙に忘れられない作品になることがあります。本作はまさにそのタイプです。スクウェアがPS2初期に作った本格志向の実車レースゲームであり、車内視点や収録車種には確かな魅力がありながら、操作性の強烈な癖によって評価を大きく落とした作品。そうした複雑な立ち位置こそが、本作の個性です。今あらためて見ると、成功した未来ではなく、うまくいかなかった挑戦の記録として興味深く、ゲーム史の片隅で独特の存在感を放っています。『DRIVING EMOTION TYPE-S』は、優れた名作としてではなく、PS2初期の野心と未成熟さをそのまま閉じ込めた、忘れにくいドライブゲームなのです。
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