
【中古】 ウルティマ 恐怖のエクソダス MSX2
【発売】:ポニーキャニオン、スタークラフト
【対応パソコン】:PC-8801、PC-9801、MSX2、FM-7、FM TOWNS
【発売日】:1985年
【ジャンル】:ロールプレイングゲーム
■ 概要
1980年代の黎明期におけるコンピュータRPGの発展を語る上で、『ウルティマII』(Ultima II: The Revenge of the Enchantress)は避けて通れない存在である。日本ではポニーキャニオンおよびスタークラフトからPC-8801、PC-9801、MSX2、FM-7、そしてFM TOWNSといった複数のプラットフォーム向けに発売された。この作品は、リチャード・ギャリオットが創造した壮大なウルティマシリーズの第二章にあたり、前作『ウルティマI』で描かれたモンデイン討伐後の世界を舞台としている。
モンデインの死と魔女ミナクスの復讐
『ウルティマII』の物語は、前作でプレイヤーが成し遂げた英雄的行為、すなわち魔法使いモンデインの討伐の直後から始まる。しかし、平和は長く続かなかった。モンデインの弟子であり、彼の妻でもあった若き魔女ミナクス(Minax)が、師の仇を討つべく立ち上がったのである。彼女は師から受け継いだ時間操作の術を極め、ムーンゲート(Moon Gate)と呼ばれる異空間の門を使いこなし、時空そのものを支配する能力を手に入れた。
ミナクスは太古の地球、すなわち人類史がまだ神話と伝説に包まれていた時代に拠点を築き、歴史を改変して世界を崩壊へと導く。彼女の策略により、地球はついには全面核戦争の炎に包まれ、文明は荒廃し、時代は混沌へと転じていく。プレイヤーは再び“アバター”として召喚され、この歪められた時空を正し、ミナクスの野望を打ち砕くために旅立つこととなる。
時空を超える壮大な冒険
本作の最大の特徴は、ウルティマシリーズの中でも初めて「時間移動」という要素を本格的に導入した点にある。プレイヤーは過去・現在・未来という複数の時代、さらには太陽系の惑星までも旅することができる。中世ヨーロッパ風の世界を探索していたかと思えば、突如として宇宙空間を飛び回るSF的な展開へと転じる。時代の違いによって登場する街や人物、テクノロジーが大きく変化し、ファンタジーとサイエンスフィクションが融合した世界観が形成されている。
例えば、“Legends Time(伝説の時代)”では剣と魔法の世界が広がり、“Aftermath(戦後時代)”では核戦争の爪痕が残る荒廃した地球を旅することになる。各時代に点在するムーンゲートが、時空を行き来する鍵であり、それぞれのゲートが開くタイミングは月の満ち欠けによって変化する。この独自のメカニクスが、当時のプレイヤーにとって新鮮な挑戦となった。
前作からの進化と変化
システム的には『ウルティマI』を基盤としつつも、グラフィック表現とゲームバランスには改良が施されている。マップが広大になり、街の数やダンジョンの種類も増加した。また、プレイヤーキャラクターの育成要素が拡張され、職業や種族によって攻略のアプローチが変化する点も注目すべき進化だった。
フィールド上では上空から見下ろす「トップビュー」のマップ画面が採用され、町やダンジョンに入ると表示が切り替わる。この構造は後のシリーズ作品にも継承され、『ウルティマII』は“現代RPGの骨格”を形成した重要な中継点といえる。モンスターとの遭遇や戦闘方式も前作から発展しており、敵の種類が増加したほか、魔法や遠距離攻撃などの選択肢も増えている。
日本語版移植の背景と意義
日本での移植は、ポニーキャニオンとスタークラフトによって行われた。当時、海外のRPGは日本のユーザーにはまだ馴染みが薄く、英語版をそのまま遊ぶにはハードルが高かった。日本語版ではメッセージやコマンドがローカライズされ、さらに当時の国産パソコン環境に合わせた操作系やロード時間の短縮など、技術的な最適化が施されている。特にFM TOWNS版ではグラフィックが高解像度化し、BGMもよりクリアな音源で再生されるようになった。
このように『ウルティマII』は、単なる海外作品の移植ではなく、日本におけるパソコンRPG文化の発展に大きな影響を与えた一本として位置づけられる。プレイヤーに“RPGとは何か”という問いを投げかけ、後の国産RPG開発者たちにも多大な刺激を与えた。たとえば『ドラゴンクエスト』シリーズを手掛けた堀井雄二も、当時のウルティマ体験がゲームデザインの根幹にあると語っている。
時代を超えた影響力
『ウルティマII』は1982年にアメリカで発売された後、世界各国で移植・再発され続けた。ギャリオット自身が自らの会社“オリジン・システムズ”を設立してから初めての作品でもあり、制作環境が整ったことで、前作に比べて技術的完成度が飛躍的に向上している。マップデータの容量拡大に伴い、より複雑な地形やイベントが組み込まれ、プレイヤーの自由度も高まった。
シリーズ全体で見ても、『ウルティマII』は“時間”という概念をテーマに据えたことで、後続作『ウルティマIII:エクソダス』や『ウルティマIV:クエスト・オブ・ザ・アバター』への橋渡し的な役割を担っている。善悪や道徳といった抽象的な要素が強調されるのは次作以降だが、その萌芽はすでに本作の中に見て取れる。単に敵を倒すだけでなく、「何のために戦うのか」「歴史をどう修正するのか」といった哲学的問いがプレイヤーに投げかけられている点は、ウルティマシリーズが単なる娯楽を超えた存在として評価される理由のひとつである。
まとめとしての位置づけ
『ウルティマII』は、物語・システム・技術のすべてにおいて、当時のパソコンRPGの限界を押し広げた革新的な作品であった。ファンタジーとSFを融合した設定、時空を超える冒険、そして世界規模のスケール感は、後に多くのRPGに影響を与えることになる。今日においても、“RPGの歴史を学ぶならまずウルティマを”という言葉が語られるほど、本作の存在感は色褪せていない。ポニーキャニオンとスタークラフトによる日本語版の登場は、国内にRPG文化を根付かせる重要な一歩であり、『ウルティマII』はまさにその礎を築いた作品といえるだろう。
■■■■ ゲームの魅力とは?
時空を超える旅のスケール感と世界観の広がり
『ウルティマII』の最も際立った魅力は、当時のRPGとしては異例の「時空を超える旅」という壮大な設定にある。プレイヤーは、剣と魔法が支配する中世風の世界から、核戦争によって荒廃した近未来の地球、さらには宇宙空間へと冒険の舞台を広げていく。ひとつの作品の中にファンタジーとサイエンスフィクションという二つのジャンルが融合していることは、1980年代初頭のゲームとしては極めて挑戦的な試みだった。
この広大な世界を旅する際、プレイヤーは「ムーンゲート」と呼ばれる神秘的な転移装置を利用する。ムーンゲートの開閉は月の満ち欠けに連動しており、タイミングを誤ると目的の時代や場所に到達できない。この仕組みにより、単なる移動手段が戦略的要素を兼ね備え、プレイヤーに時間の概念を意識させるデザインとなっている。まさに“時間を操るRPG”の原点ともいえる。
自由度の高さとプレイヤー主導の冒険
『ウルティマII』のもう一つの魅力は、プレイヤーに与えられた自由度の高さだ。ゲームは明確な一本道のストーリーに沿って進むのではなく、広大な世界のどこへでも足を運び、どのように行動するかはすべてプレイヤーの判断に委ねられている。これは現代のオープンワールドRPGにも通じる精神であり、1980年代のパソコンゲームとしては驚異的な発想だった。
プレイヤーは時代を自由に行き来し、武器や防具、乗り物、魔法を自分のペースで収集していく。たとえば、戦闘を避けて探索を優先するプレイも可能であり、戦略的に敵を倒して経験値を稼ぐか、あるいは交渉で物資を集めるかといった選択肢が用意されている。これにより、プレイヤーごとに異なる体験が生まれる構造が実現されていた。
プレイヤーの想像力を刺激するグラフィック表現
グラフィックは現在の基準から見れば極めてシンプルだが、当時としては先進的であった。地形や建造物、キャラクターはドット絵で表現されながらも、想像力を掻き立てる余白を残している。特に、時代ごとに異なる風景――緑豊かな“Legend Time”、戦争の爪痕が残る“Aftermath”、未来都市の煌めく“Future”――など、画面上の色彩や配置の違いが物語の雰囲気を見事に演出している。
また、宇宙空間においては船や惑星の表現にベクター的な描画を採用し、無限の空間を旅しているかのような没入感を与える。これらの表現は、プレイヤーが頭の中で“世界を補完して想像する”というRPGの原点的な楽しみを思い出させるものである。
音楽と効果音が生む緊張感と高揚感
サウンド面においても、『ウルティマII』は評価が高い。ポニーキャニオン版・スタークラフト版ともに、プラットフォームの性能差を考慮しつつ、それぞれの機種の音源を最大限に活用している。FM音源を搭載したFM TOWNS版では特に音の厚みが増し、戦闘時のBGMやムーンゲート出現時の効果音が、プレイヤーの緊張感を巧みに煽る。
静かなフィールドで流れる穏やかなメロディから、戦闘突入時に切り替わる激しいリズムへの転換は、当時のプレイヤーに強い印象を与えた。音楽がプレイヤーの行動や感情に呼応するという仕組みは、後のRPG音楽表現に多大な影響を及ぼしたといえる。
個性的な登場キャラクターと世界を彩る人物たち
『ウルティマII』の登場人物は、単なる案内役や戦闘相手に留まらない。それぞれが独自の性格と背景を持ち、時代を超えて存在していることがプレイヤーに深い印象を与える。たとえば、未来の都市では科学者が文明再建を目指し、過去の王国では騎士たちが失われた誇りを取り戻そうと奮闘している。プレイヤーが彼らとどのように関わるかによって、物語の進行が微妙に変化する仕組みも導入されていた。
また、ミナクス自身の描かれ方も魅力的だ。単なる悪役ではなく、愛する者を奪われた悲しみから世界に復讐を誓うという、複雑な感情を持つ人物として描かれている。彼女の存在はシリーズの“道徳的ジレンマ”の原点でもあり、プレイヤーに「本当の悪とは何か」を問いかける。
知略を要求する戦闘と戦術の奥深さ
戦闘はターン制のコマンドバトル形式で展開されるが、単に敵を倒すだけではない。敵の種類や地形、プレイヤーの位置関係によって戦略を立てる必要がある。たとえば、敵が遠距離攻撃を得意とする場合は遮蔽物を利用して近づき、魔法を使う敵には魔法防御を上げる装備を整えるなど、事前準備の重要性が高い。戦略的な判断を積み重ねることで、難敵を打ち倒す達成感が得られる。
さらに、戦闘後のリソース管理もシビアで、体力・魔力・食料といったパラメータを常に意識しなければならない。この緊張感がプレイヤーをゲーム世界に没頭させる要素のひとつであり、単なるレベル上げでは得られない“生き延びるためのリアルな感覚”を生み出している。
シナリオと探索が織りなすプレイヤー体験
『ウルティマII』は、シナリオ進行と探索が密接に結びついている。各地に散らばる手がかりを集め、時代を超えて情報をつなぎ合わせることで、ようやく全体像が見えてくる仕組みだ。断片的に語られる伝承や、住民の何気ない会話が重要なヒントとなる場合もあり、注意深く観察することが攻略の鍵となる。
このような構造は、プレイヤー自身が“物語を発見していく”体験を生み出す。与えられた目的をただ追うのではなく、世界の中で試行錯誤を重ねる過程そのものが本作の醍醐味といえる。
他作品にはない哲学的なテーマ性
『ウルティマII』の根底には、単なる冒険譚を超えた哲学的メッセージが存在する。時間という絶対的な概念に人間が干渉することの是非、過去の改変によって生じる倫理的問題――それらを暗喩的に描き出しているのだ。プレイヤーはミナクスを倒すために過去へ干渉し、歴史を修正していくが、それが本当に正しい行為なのかという問いが常につきまとう。
この“プレイヤーの行動に意味を問う”姿勢こそ、後に『ウルティマIV』で明確化される「アバターの徳」思想の前段階であり、シリーズを通じた精神的骨格を形作っている。単なるRPGの枠を超え、プレイヤーに思索を促す作品としての奥深さが、『ウルティマII』最大の魅力といっても過言ではない。
まとめ:混沌と秩序の狭間に立つ体験
『ウルティマII』の魅力は、一言で言えば“混沌と秩序の狭間を歩む体験”である。時代と空間を越える冒険、善と悪のあいまいな境界、そしてプレイヤー自身の選択によって変わる世界――それらが複雑に絡み合い、他に類を見ないRPG体験を生み出している。現代の多くのRPGがこの自由度と深みを再現しようとしてもなお、本作が放つ独特の雰囲気を完全に再現することは難しい。
プレイヤーの想像力を信頼し、その想像の中に世界を完成させる――それが『ウルティマII』という作品が放つ最大の魅力であり、40年以上経った今も多くのファンの記憶に残り続けている理由である。
■■■■ ゲームの攻略など
序盤の立ち回りとキャラクター育成の基礎
『ウルティマII』を攻略する上でまず重要なのは、最初のキャラクターメイキングである。プレイヤーは種族(人間、エルフ、ドワーフ、ホビット)と職業(ファイター、ウィザード、シーフ、クレリックなど)を選択することができ、ここでの選択が後々の戦略に大きな影響を与える。たとえば、戦闘中心に進めたいならファイターやドワーフが有利だが、ムーンゲートを活用して時代を跨ぐ複雑な探索を重視するなら、魔法や俊敏性に優れたエルフ系やシーフが適している。
序盤は資金が限られているため、まずは比較的安全なエリアで敵を倒して経験値とゴールドを稼ぐことが肝心だ。食料の消費が激しいため、資金の使い道は常に「食料>装備>魔法」の優先順位で管理することが推奨される。無理に強敵へ挑むよりも、まずは確実に生き延びることを重視した立ち回りが、このゲームを制する鍵である。
時代ごとの特徴と進行ルート
『ウルティマII』では、複数の時代を行き来しながらストーリーを進行させる。プレイヤーは「伝説の時代(Legend Time)」「中世期」「近未来」「戦後」「宇宙時代」などの異なる時間軸に足を踏み入れ、それぞれで情報を集めたり、装備を整えたりする必要がある。攻略の基本は、まず過去の世界で強力な装備や呪文を手に入れ、未来世界でそれらを活用してミナクスの拠点を突き止めるという流れだ。
序盤は中世の城下町で情報を集めつつ、ムーンゲートの出現位置と時間帯を確認しておこう。ムーンゲートはランダムではなく、月の位相(満ち欠け)によって出現タイミングが変わるため、月の動きを把握しておくことが効率的な移動につながる。これを理解していないと、目的の時代にたどり着けず、何度も同じ場所をさまようことになる。
資金稼ぎとアイテム収集の効率化
序盤から中盤にかけて最もプレイヤーを悩ませるのが資金不足である。敵を倒すことで得られるゴールドは決して多くないため、効率的に稼ぐ方法を知っておくことが重要だ。おすすめは、敵が比較的弱い地域での“周回プレイ”と、戦闘以外での金策である。中には町の住民や盗賊からゴールドを奪えるコマンドも存在するが、行いによっては衛兵に追われるため、リスク管理が必要だ。
また、ダンジョン探索中には、宝箱の中身が罠になっている場合がある。罠を解除するには特定のスキル値が必要であり、職業によって成功率が変動する。これを理解しないまま開けるとダメージを受けたり、毒状態になったりと、序盤では致命的な結果を招くことがある。慎重な行動と装備の強化が生存の鍵となる。
戦闘システムの理解と戦略の立て方
『ウルティマII』の戦闘はターン制ながら、単なるコマンド選択ではなく地形や距離の要素が重要になる。敵が遠くにいる場合は遠距離武器(弓や魔法)での攻撃が有利だが、近距離戦では盾や鎧の防御力が勝敗を左右する。特に屋内や狭いエリアでは敵が複数方向から攻めてくるため、進行ルートを限定して戦うことが重要だ。
魔法を使う場合は、MPの管理が非常にシビアである。魔力が尽きた状態で強敵に遭遇するとほぼ敗北が確定するため、温存と回復のタイミングを常に意識しなければならない。また、魔法には敵の属性や種族による効果の違いがあり、特定の敵に対しては攻撃魔法が無効な場合もある。こうした知識を積み重ねることで、戦闘が徐々に戦略ゲームのような深みを増していく。
ミナクス討伐への道筋と最終局面
最終目標は魔女ミナクスの討伐であるが、彼女の居場所にたどり着くまでの道のりは長く、数多くの謎解きが待ち受けている。各時代に存在する賢者や科学者から情報を聞き出し、ミナクスの拠点となる“Time of Legends”への入口を見つけなければならない。これには複数の鍵や特殊アイテムを集める必要があり、それぞれが別の時代に点在している。
ミナクスの城に突入した後は、激しい戦闘が続く。彼女は強力な魔法を駆使し、瞬時に時間を巻き戻すなどの特殊攻撃を行う。これに対抗するには、十分に鍛えたキャラクター能力と、最強クラスの装備を整えておく必要がある。特に“Force Field”や“Blink”などの魔法を適切に使うことで、被ダメージを抑えながら攻撃の隙を突く戦法が有効だ。
攻略上の隠し要素と裏技
『ウルティマII』には、当時のゲームらしくいくつかの隠し要素や裏技も存在する。たとえば、特定の条件を満たした状態で特定の座標を調べると、通常では入手できない装備が見つかる場合がある。また、ムーンゲートを特定の順序でくぐることで通常では行けない時代に飛ぶことができる裏ルートも報告されている。
さらに、ゲーム中に登場するNPCの中には、特定のセリフを繰り返すと別の台詞に変化する隠し会話があり、それがミナクス討伐に関する重要なヒントにつながることもある。こうした要素は、プレイヤー同士の情報交換を促進し、当時のパソコン通信や雑誌で話題となった。『ウルティマII』が単なるゲームを超えて“探索と共有の文化”を生み出した要因のひとつである。
難易度とリプレイ性の高さ
本作の難易度は決して低くない。敵の攻撃力や資源の制限、そして時空移動による混乱など、常に試練が続く構成になっている。しかし、このシビアさこそが『ウルティマII』の魅力でもある。プレイヤーが試行錯誤を重ねる過程で、世界の法則や時間の流れを“体で覚える”感覚が生まれ、単なるクリア目標を超えた満足感を味わえる。
また、キャラクター育成や選択肢によってゲーム体験が変化するため、2回目以降のプレイでは全く異なる展開を楽しむことができる。たとえば、前回は戦士として力押しで進めたプレイヤーが、次は魔法使いとして知略で挑む――そんなリプレイ体験が自然と生まれる構造を持っている。
日本版特有の攻略ポイント
ポニーキャニオンとスタークラフトによる日本語版は、オリジナルの英語版からいくつかの仕様変更が行われている。たとえば、キー操作の簡略化やセーブ方法の最適化、メッセージの日本語化により、より直感的にプレイできるようになっている。また、一部のバランス調整により、敵の出現頻度や難易度が若干緩和されており、初心者にも配慮された設計となっている。
FM TOWNS版では特に読み込み速度が高速化しており、ムーンゲート間の移動もスムーズになっているため、攻略テンポが格段に上がる。こうした改善は、シリーズの新規ファンを取り込むうえで大きな役割を果たした。
総括:知恵と観察が試されるRPG体験
『ウルティマII』の攻略は、単なるレベル上げや強装備の収集だけでは突破できない。時代を超えた情報のつながり、NPCとの対話、そして時間移動の仕組みを理解する論理的思考力が問われる。プレイヤーは“強さ”よりも“知恵”を試されるのだ。困難を乗り越えてミナクスを討伐したとき、プレイヤーはゲームの中で確かに成長した自分自身を感じるだろう。まさに“考えるRPG”の真髄がここにある。
■■■■ 感想や評判
プレイヤーの第一印象――前作からの驚異的な進化
『ウルティマII』を初めてプレイした当時のユーザーの多くがまず感じたのは、「前作とは次元の違うスケール感」だった。前作『ウルティマI』がすでに革新的なRPGとして知られていたにもかかわらず、『II』はその世界を時間と空間にまで広げ、プレイヤーの想像を遥かに超える冒険を実現してみせた。プレイヤーたちは、ファンタジー世界から突然宇宙空間に飛び出す展開に驚嘆し、当時のパソコンゲームとしては異例の“物語の幅”に強い衝撃を受けたという。
また、ムーンゲートによる時空移動のシステムが新鮮で、「時間そのものを冒険するゲーム」という印象が深く刻まれた。多くのユーザーが「理解するまで時間がかかるが、分かると一気に面白くなる」と語っており、慣れるまでの難しさと、その後の爽快感の対比が高く評価されていた。
日本語版移植の評価――RPG文化を広げた立役者
ポニーキャニオンとスタークラフトによる日本語移植版は、当時の国内RPGファンにとって貴重な窓口だった。1980年代初頭、日本ではまだ「RPG」というジャンル自体が浸透しておらず、英語版パソコンゲームをプレイするには相応の語学力と知識が必要だった。そうした中で、本作の日本語版は“海外RPGへの扉”を開いた存在として、多くのプレイヤーから歓迎された。
特に、メッセージがすべて日本語化されている点は、物語理解を飛躍的に助けた。FM-7版やPC-8801版ではフォントも見やすく、文字情報が多い本作において快適なプレイ環境が提供されていたことが、長期的な人気の理由でもある。雑誌レビューでは「日本語化によって初めてウルティマの世界観の深さを実感できた」とする意見も多く、移植スタッフの丁寧な仕事ぶりが高く評価された。
当時のゲーム誌・専門誌でのレビュー
1980年代の『ログイン』や『テクノポリス』、『マイコンBASICマガジン』といったゲーム誌では、『ウルティマII』の紹介記事がしばしば掲載された。特に注目されたのは、単なる“続編”ではなく“物語の連続性”を持つシリーズ構成である点だった。雑誌上では「映画のようなスケールで描かれる時空の冒険」と評され、ストーリーとシステムが緊密に結びついていることが新鮮に受け止められた。
また、一部のレビューでは難易度の高さを指摘する声もあり、「現代のプレイヤーには不親切」との評価もあった。しかし、それすらも「挑戦的でやりがいのあるRPG」という肯定的な文脈で語られることが多く、総じて“知的冒険ゲーム”としての評価が確立していった。
プレイヤー間で語り継がれる思い出
多くのベテランプレイヤーが本作を語る際に口をそろえるのが、「苦労してミナクスにたどり着いた瞬間の達成感」だ。単なるボス戦ではなく、そこに至るまでの時間と空間の旅路そのものが印象に残っているという。プレイヤー自身の努力で世界の仕組みを理解し、試行錯誤の末に真実へたどり着く――この体験こそが、『ウルティマII』の本質であり、後年のRPGが模倣しようとした核心的魅力だった。
当時のパソコン通信や同人誌では、「どの時代から進めるのが最も効率的か」「ムーンゲートのパターンはどうなっているか」といった攻略情報がプレイヤー同士で共有され、まるで学問のように分析が進められた。ゲームが単なる娯楽を超えて“研究対象”となった最初期の作品といえる。
海外プレイヤーの反応と評価の違い
海外ではオリジナル版『Ultima II: The Revenge of the Enchantress』が1982年にリリースされ、すぐに高い評価を得た。特にアメリカやイギリスのゲーム誌では、「ファンタジーRPGの常識を覆した野心作」として称賛された。中でも注目されたのは、“プレイヤーが宇宙に出て惑星を巡る”という発想である。『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』の影響を受けたSF要素が、従来の剣と魔法のRPGと融合した点が画期的だった。
一方で、海外の一部レビューでは「時間旅行の構造が複雑すぎる」「方向感覚を失いやすい」との指摘もあった。それでも、「システムに慣れた者だけがたどり着ける深淵な世界」として、マニア層からは絶大な支持を集め続けた。英語圏では本作を“thinking man’s RPG(思考する者のRPG)”と呼ぶ評論家も存在し、知的挑戦の象徴とされていた。
後のシリーズファンに与えた影響
『ウルティマII』の独自性は、後続作への期待を決定づけた。特に次作『ウルティマIII エクソダス』では、戦闘やパーティシステムが大幅に進化するが、その基盤を築いたのが本作である。プレイヤーの間では、「IIを理解してこそIIIをより深く楽しめる」という言葉がしばしば語られた。シリーズのファンの間では、IIは“試練の書”とも呼ばれ、挑戦的なデザインが愛され続けている。
さらに、日本の開発者にも多大な影響を与えた。堀井雄二(『ドラゴンクエスト』)、高橋宏之(『ハイドライド』)、さらには木屋善夫(『ザナドゥ』)といった開発者たちが、ウルティマから受けたインスピレーションを公言している。とりわけ「世界を自由に歩ける感覚」「プレイヤーの倫理を問う構造」は、のちの国産RPGの根幹へと受け継がれていった。
ミナクスという存在が残した印象
本作の敵役ミナクスは、ウルティマシリーズの中でも特に印象的なキャラクターとして語り継がれている。彼女は単なる“悪の魔女”ではなく、失われた愛と怒りに支配された悲劇的存在として描かれている。その感情の複雑さがプレイヤーの想像力を刺激し、「悪にも理由がある」というシリーズ全体のテーマを象徴するキャラクターとなった。
プレイヤーの中には、最終戦でミナクスを倒したあとに複雑な感情を抱く者も少なくなかったという。彼女の行動が憎悪からではなく、愛する人の死に対する悲しみから生まれたと理解した瞬間、単純な勧善懲悪の物語ではないことに気づかされる。そうした心理的深みも、本作の高い評価を支える要因の一つだった。
後年の再評価とクラシックRPGとしての地位
1990年代以降、PCゲーム文化が成熟する中で、『ウルティマII』はしばしば“クラシックRPGの原点”として再評価されてきた。リマスター版やコレクションパッケージに収録されるたびに、新世代のプレイヤーがその難解さと魅力に触れ、「昔のゲームには心がある」と感じるきっかけになっている。
現代の視点から見ると操作性やテンポに不便さはあるが、それ以上に“自ら発見していく喜び”がプレイヤーを惹きつける。攻略サイトやガイドブックがない時代に、手探りで世界を探索し、少しずつ真相をつかんでいく――この感覚は、今日のオートマッピングやヒントシステムでは決して再現できない体験である。
総合的な評価とプレイヤーからの信頼
総じて『ウルティマII』は、「難しいが忘れられないRPG」として位置づけられている。ストーリーの壮大さ、時空を超える設定、複雑な構造、すべてがプレイヤーに試練を与える。しかし、その試練を乗り越えた先に見える景色は格別だ。プレイヤーは単にゲームを“遊んだ”のではなく、“体験した”と語ることが多い。そうした強い記憶の残り方こそが、本作の偉大さを物語っている。
発売から40年以上が経った今でも、『ウルティマII』はRPGの礎を築いた作品として尊敬を集め続けている。名作という言葉が安易に使われる中で、本作だけは真に“時を超えた名作”という称号がふさわしいだろう。
■■■■ 良かったところ
壮大な世界観と時間を超えたスケールの物語
『ウルティマII』の最も高く評価された点のひとつは、そのスケールの大きさである。前作『ウルティマI』がすでに一つの王国と宇宙を行き来する広がりを持っていたのに対し、本作ではそれを「時空の概念」にまで拡張し、過去・現在・未来を自由に行き来できるという大胆な設計を導入した。これにより、プレイヤーは単なる冒険者としてではなく、“歴史そのものに干渉する存在”として物語の中心に立つことになる。
この「時代を超える冒険」は、当時の他のゲームには見られない独自の体験であり、プレイヤーがゲーム世界の壮大さに没入する最大の要因となった。特に、異なる時代の文化や文明を見比べながら世界の変遷を体験できる点は、ゲームでありながら文学的な深みを感じさせたと、多くのプレイヤーが絶賛している。
ムーンゲートシステムの革新性
時間移動を実現する手段である「ムーンゲート」の存在は、『ウルティマII』の代名詞ともいえる要素だ。月の満ち欠けと連動して出現するこのゲートは、単なるワープ装置ではなく、プレイヤーの観察力と理解力を試す仕組みとして設計されている。ゲートのタイミングを逃せば目的の時代に行けないという制約があり、それが緊張感とリアリティを生み出していた。
この独特のシステムは、後の多くのRPGに影響を与えた。たとえば、スクウェアの『クロノ・トリガー』やファルコムの『イースII』など、時間や空間の概念を取り入れた作品には、間違いなく『ウルティマII』の精神が息づいているといえる。プレイヤーの行動が直接歴史の流れに影響を与えるという発想は、当時としては画期的であり、ファンの記憶に深く刻まれている。
多様な世界構造と探索の自由度
『ウルティマII』では、各時代に個性的な世界が用意されており、それぞれのマップが独自の文化・文明・敵キャラクターを持っている。プレイヤーは特定のルートに縛られず、どの時代をどの順に探索するかを自由に決められる。これは当時の“一本道RPG”とは一線を画すデザインであり、「自分だけの旅路」を作り出す体験を可能にした。
たとえば、あるプレイヤーはまず中世の世界で武具を整え、別のプレイヤーは未来都市でテクノロジーの恩恵を受けてから過去に戻るなど、攻略ルートに個性が出る。プレイヤーごとに異なる冒険譚が生まれるという点は、まさに“プレイヤー主体の物語”を先駆けた作品といえる。
知的な挑戦を促す謎解きと探索要素
本作の探索や謎解きの要素は、単にアイテムを集めるだけではなく、情報をつなぎ合わせて自ら答えを導き出すよう設計されている。各時代で登場する人々のセリフや、遺跡に刻まれた文字の意味を読み解くことが進行の鍵になるため、プレイヤーは論理的思考力を求められる。単純な「敵を倒す」ゲームではなく、「世界を理解する」知的な冒険である点が多くの支持を集めた。
このような“プレイヤーの思考を刺激する構造”は、現代のRPGでは希少になりつつある。ヒントが少ないことで生まれる達成感が強く、答えを見つけた瞬間の快感は何ものにも代えがたい。実際、当時のプレイヤーの中には、「一つの謎を解くのに数週間を費やしたが、それだけの価値があった」と語る者も多い。
キャラクターの個性と道徳的テーマ
『ウルティマII』の登場人物は、単なるイベントキャラではなく、各時代に生きる“人間らしさ”を持っている。商人や兵士、盗賊、科学者、王など、彼ら一人ひとりが自分の時代の中で信念を持って行動しており、プレイヤーとの会話からその背景が垣間見える。こうした描写が、プレイヤーに「時間を越えて人々の営みを感じる」感覚を与えた。
さらに、敵対者であるミナクスの存在も“悪”として単純に描かれない点が評価された。彼女の行動には愛と憎しみが混在しており、プレイヤーに善悪の境界を考えさせる構成となっている。このような道徳的なテーマ性は後の『ウルティマIV』の“徳のシステム”へと発展し、シリーズの思想的支柱となった。
ゲーム音楽とサウンドの表現力
当時のパソコンゲームは音源チップの制約が大きく、サウンド表現には限界があった。しかし、『ウルティマII』の日本版では各機種の特性を最大限に活かした音楽が用意され、雰囲気作りに成功している。FM音源を搭載したFM TOWNS版では重厚な戦闘BGMが印象的で、プレイヤーの緊張感を高めた。逆にPC-8801版のPSG音源では、シンプルながらも郷愁を誘う旋律が評価されている。
特に、ムーンゲート通過時の効果音や、時代が切り替わる瞬間の短いフレーズなど、音の演出がプレイヤーの体験を強化していた。音楽が“時間の流れ”を象徴する役割を果たしており、単なるBGMを超えた芸術的な演出として記憶されている。
多機種展開によるプレイヤー層の拡大
ポニーキャニオンとスタークラフトが展開した『ウルティマII』は、PC-8801、PC-9801、MSX2、FM-7、FM TOWNSといった複数のプラットフォームで発売された。これにより、当時の主要パソコンユーザーほぼ全員が作品に触れることが可能となった。グラフィックやサウンドの仕様は機種ごとに異なるが、いずれも高品質で、どのバージョンも“その機種の代表作”と呼べる仕上がりだった。
こうした幅広い展開は、『ウルティマ』シリーズを国内に浸透させる大きな要因となった。異なる環境でプレイする友人たちが情報を共有し合う“交流の文化”を生み出し、結果として日本のRPGコミュニティ形成に寄与したことも忘れられない。
自由度と想像力を刺激するデザイン哲学
『ウルティマII』の本質的な魅力は、プレイヤーの想像力を信頼する設計思想にある。マップやグラフィックは決して派手ではないが、そこに“余白”があるからこそ、プレイヤーが自分の頭の中で世界を補完できる。ゲームがすべてを説明せず、プレイヤーに「考え、感じ、想像させる」――この哲学が、本作を時代を超えた名作に押し上げた。
現代のRPGでは、プレイヤーに答えを与える設計が主流だが、『ウルティマII』はその逆を行く。常に「自分で見つけろ」「自分で考えろ」と語りかけるような構成で、プレイヤーを成長させる体験を提供していた。その思想は、今なお多くのクリエイターが参考にしている。
総括:時間を越えて語り継がれる完成度
『ウルティマII』の“良かったところ”を一言でまとめるなら、それは「挑戦と発見に満ちた自由な冒険」である。プレイヤーが世界を歩き、自ら学び、成長していく体験――この根源的なRPGの魅力が、40年を経ても色褪せることなく輝き続けている。グラフィックでも音楽でもなく、“知的探求と想像力の冒険”こそが本作の真価なのだ。
そして、時代を超えて語り継がれる理由は単純である。『ウルティマII』は、プレイヤーが“遊び手”であると同時に“創造者”であることを教えてくれたからだ。その精神は、現代のRPGデザインの根底にも脈々と息づいている。
■■■■ 悪かったところ
操作性とインターフェースの不便さ
『ウルティマII』は、当時としては革新的なシステムを多く取り入れていたものの、その分プレイヤーに対する説明が極端に少なく、操作の習熟に時間を要した。キー入力によるコマンド操作が基本で、現代のようなメニュー選択式ではないため、どのキーがどの動作を担当するのかを覚えるまでが大きな壁だった。「Tで取る」「Aで攻撃」「Zで時間移動」など、英語の頭文字で動作を割り当てていたが、説明書がなければ理解が難しい。
また、マップ上での移動速度は遅く、特に敵と遭遇した際の処理に時間がかかることが多かった。日本語版で多少の調整は行われたものの、FM-7やPC-8801といった機種ではロードのたびにテンポが途切れる印象を受けたプレイヤーも少なくない。これにより、プレイヤーの中には“長時間プレイに疲れる”と感じる声も見られた。
難易度の高さと説明不足による理不尽さ
『ウルティマII』の最大の欠点として挙げられるのが、全体的な難易度の高さである。敵の攻撃力が強く、序盤から死にやすい設計になっているうえに、戦闘のバランスが不安定なため、レベルを上げても苦戦を強いられる場面が多い。特に初めてシリーズに触れたプレイヤーは、「どこへ行けばよいのか」「何をすればよいのか」が明確に示されないまま放り出され、途方に暮れることが多かった。
現代のゲームであればチュートリアルやヒント機能が用意されているが、本作にはそのような救済措置が一切存在しない。そのため、「攻略本なしでは進めなかった」「序盤で挫折した」という声も少なくなかった。自由度の高さが魅力である一方で、情報の欠如がプレイヤーを突き放す要因になっていたともいえる。
時空移動の複雑さと混乱しやすい構造
本作の特徴でもある“時空を超える冒険”は、同時にプレイヤーを最も混乱させる要素でもあった。ムーンゲートの出現タイミングは月の満ち欠けに依存しており、そのサイクルを理解していないと目的の時代に行くことができない。さらに、時代ごとの地形や町の位置が微妙に異なるため、地図を覚えるのにも苦労する。
ゲーム内で時代移動の仕組みを詳しく説明するNPCがほとんどいないため、初見プレイヤーは“偶然の成功”に頼らざるを得なかった。これにより、「面白いけれど分かりにくい」「試行錯誤が多すぎてテンポが悪い」という評価が生まれた。革新的なシステムゆえに、プレイヤーに負担を強いてしまった部分といえる。
バランス調整の甘さとランダム要素の強さ
戦闘におけるバランス調整も、多くのプレイヤーが不満を抱いた点だった。敵の攻撃力や命中率がランダムに変動するため、同じ敵であっても戦闘結果が大きく異なることがあり、戦略よりも運に左右される印象が強い。さらに、アイテムの入手確率にも偏りがあり、重要な装備がなかなか手に入らず苦戦する場面も多かった。
こうした要素は“試練としてのRPG”を象徴するものでもあるが、プレイヤーによっては「不公平」「作業的」と感じる部分でもあった。特に、終盤での難敵ミナクス戦は異常な難易度を誇り、十分に育成していても敗北するケースが多く、「達成感よりも疲労が勝った」という感想も見られる。
物語演出の淡白さと感情移入の難しさ
『ウルティマII』は壮大なストーリーを持ちながらも、その語り口は淡白で、イベントシーンや会話によるドラマ性が乏しかった。ゲーム内で展開されるストーリーはほぼすべてテキストベースであり、プレイヤー自身が背景を想像して補う必要がある。この構造は想像力を刺激する一方で、感情的な没入感を求めるプレイヤーには物足りなく感じられた。
また、ミナクスというキャラクターの人物像も、ゲーム内の表現だけでは十分に掘り下げられていない。そのため、プレイヤーによっては「なぜ彼女が世界を滅ぼそうとしているのかがわからない」と感じることもあった。物語の設定やテーマ性が優れているだけに、演出面でもう一歩踏み込んでほしかったという意見が多かった。
日本語翻訳の不自然さと誤訳
日本版のローカライズにおいては、当時の技術的制約や翻訳リソースの問題から、テキストの一部に不自然な翻訳や誤字が見られた。特に、英語特有のニュアンスを直訳した結果、意味が分かりづらくなっている台詞も存在する。たとえば、英語版で哲学的な問いとして機能していたセリフが、日本語では単なる指示文のように変わってしまっている箇所もあり、原作の深みがやや損なわれてしまった。
また、機種によってはフォント制約により長文が収まりきらず、文章が途中で切れてしまうケースも報告されていた。これらの小さな翻訳・表示ミスは、プレイヤー体験に直接大きな影響は与えないものの、作品の完成度を損ねる要素として指摘されることが多い。
長時間プレイによる疲労感とテンポの問題
本作の構造上、目的地や進行方向が明確に示されないため、プレイヤーは何時間も探索を繰り返すことになる。セーブポイントが限られているうえに、戦闘や移動のテンポもゆっくりしているため、長時間プレイでは疲労を感じやすかった。特に、同じエリアを何度も行き来しなければならない部分では、「ゲームとしてのテンポが悪い」という指摘が多かった。
また、難解な仕掛けが多く、誤った行動を取ると大きく時間をロスする構成も批判の対象となった。ムーンゲートの位置を間違えただけで何十分も無駄になることもあり、「せっかくの冒険がストレスに変わる」という声もあった。
ビジュアル面での限界と時代的制約
1980年代初期のパソコンゲームとしては優れたグラフィックを誇っていたが、現代の視点から見れば当然ながら表現力には限界があった。モンスターや人物のドット絵は極めて簡素で、同じ形のキャラクターが異なる時代にも登場するため、プレイヤーが世界の違いを直感的に把握しづらい面があった。背景の色彩も機種によっては制約が多く、特にFM-7版やMSX2版では表示の粗さが気になるという声があった。
また、宇宙空間や未来都市の表現では開発者の野心を感じるものの、ハードウェアの性能が追いつかず、描画がカクついたりスクロールが滑らかでなかったりする場面も存在した。このような技術的限界は、プレイヤー体験に多少の違和感をもたらした点として挙げられる。
総括:挑戦的だが不親切な“完成前夜の名作”
総じて、『ウルティマII』の“悪かったところ”は、当時の技術や設計思想の限界をそのまま映し出したものである。操作性や難易度、テンポの悪さなどは確かに欠点であるが、それらは同時に“自由度”や“挑戦性”を支える土台でもあった。つまり、遊び手に試練を課すことで没入感を生み出すという、リチャード・ギャリオットの哲学がそのまま表れている。
現代のプレイヤーから見れば不親切に感じる部分も、1980年代のゲーム文化の文脈ではむしろ「自分で考える面白さ」として受け止められていた。結果として、『ウルティマII』は“完璧ではないが記憶に残るゲーム”として、今日まで語り継がれている。欠点を含めて愛される――それこそが本作が“クラシックRPG”と呼ばれるゆえんなのである。
[game-6]
■ 好きなキャラクター
シリーズ初の本格的な“女性ヴィラン”――ミナクス(Minax)
『ウルティマII』に登場するキャラクターの中で、最も多くのプレイヤーの印象に残った存在は、やはり魔女ミナクスである。彼女は前作『ウルティマI』の宿敵モンデインの弟子であり、同時に若き妻でもあった。師の死後、復讐の念に駆られて時空を操る力を手に入れ、地球そのものを破滅へと導く――その壮絶な設定だけでも圧倒的な存在感を放っている。
しかし、彼女の魅力は単なる「悪の象徴」にとどまらない。ミナクスは冷酷な魔女であると同時に、愛する者を奪われた“人間的な女性”として描かれている。モンデインの死により心の均衡を失い、悲しみが怒りへ、怒りが破壊衝動へと変化していく過程が、彼女を単なる敵役以上の存在にしているのだ。プレイヤーは彼女を倒すことで世界を救うが、同時に「彼女がそうならざるを得なかった理由」を知り、複雑な感情を抱くことになる。
この“悲劇的な悪役像”は後のゲーム作品に大きな影響を与え、ファイナルファンタジーシリーズの“ジェノバ”や“アルティミシア”など、女性ヴィランの原型と呼ばれるほどである。プレイヤーの中には「ミナクスこそ最も記憶に残るウルティマのキャラクター」と語る者も多く、彼女はシリーズを象徴する存在として長く語り継がれている。
善と秩序を象徴する存在――ロード・ブリティッシュ(Lord British)
もう一人の重要人物が、シリーズを通じてプレイヤーの指導者として登場するロード・ブリティッシュである。彼はリチャード・ギャリオット自身を投影したキャラクターであり、ウルティマ世界の精神的支柱として機能している。『ウルティマII』では、前作に引き続きプレイヤーに助言を与え、旅の目的を示す存在として登場する。
当時のプレイヤーにとって、ロード・ブリティッシュは単なるNPCではなく、“ゲーム世界の神のような存在”だった。彼の言葉には常に寓意が含まれ、短い台詞の中にも深い哲学が込められていた。たとえば、「時を越え、己を見つめよ」という一文は、単なるゲーム内メッセージに留まらず、プレイヤー自身の人生観に影響を与えたという声もあるほどだ。
シリーズ全体を通してロード・ブリティッシュはプレイヤーを見守る存在であり、『ウルティマII』での登場はその原点ともいえる。プレイヤーに道を示す“光の象徴”として、今なお根強い人気を誇っている。
知恵と科学を司る存在――未来世界の科学者たち
『ウルティマII』では、時代ごとに異なる人々との出会いがあり、その中でも未来の都市に住む科学者たちは多くのプレイヤーの記憶に残っている。彼らはミナクスによって歪められた時空を修正しようとする知識人たちであり、プレイヤーに重要なアイテムや情報を授けてくれる。見た目は地味で、会話も淡々としているが、彼らの言葉には“人類の知恵を信じる希望”が感じられる。
中でも印象的なのは、「知識は力なり、だが誤用すれば破滅を招く」というセリフだ。この言葉はウルティマシリーズ全体に通じるテーマを象徴しており、魔法と科学、善と悪のバランスをどう保つかという根源的な問いを投げかけている。プレイヤーにとって彼らは単なる情報提供者ではなく、哲学的な導師のような存在であった。
人間味あふれる町の人々と旅の仲間
本作では、町や村に住む名もなき人々の存在も印象深い。彼らのセリフは短いが、それぞれが自分の時代を生きる庶民としてリアルに描かれている。たとえば、戦後時代の荒廃した町では「昔は星を見上げるだけで幸せだった」と語る老人が登場し、プレイヤーに“失われた平和”を想起させる。また、中世時代の宿屋の娘が「あなたが未来を変えてくれるのね」と微笑む場面は、多くのプレイヤーが心に残る瞬間として挙げている。
一部のNPCは、特定の条件を満たすと同行してくれる仲間として登場する。彼らは戦闘で直接役立つわけではないが、プレイヤーに助言や情報をもたらし、冒険に“人の温もり”を添える。こうした細やかな人物描写が、『ウルティマII』の世界に生命を吹き込んでいる。
宇宙を旅するパイロットたちの存在
『ウルティマII』の中盤で登場する宇宙船のパイロットたちも、プレイヤーに強い印象を残すキャラクター群だ。彼らは未来時代に登場し、かつての文明が宇宙進出を果たした名残として描かれる。パイロットたちは荒廃した地球を見限り、宇宙へと活路を見いだそうとするが、ミナクスによる時空の歪みによってその努力は虚しく終わってしまう。
彼らの台詞には、夢と絶望が同居している。「星々に自由を求めたが、神々の怒りに囚われた」という彼らの言葉は、シリーズ全体を通じて繰り返される“人間の傲慢さ”というテーマを象徴している。プレイヤーは彼らを通じて、文明の進歩とその危うさを同時に感じ取ることになる。
その他の印象的な人物たち
各時代には、プレイヤーの旅を支える個性的な登場人物が数多く存在する。たとえば、過去の王国に仕える勇敢な騎士は、己の誇りをかけて古代のモンスターと戦い続けている。また、近未来の反政府組織のリーダーは、科学による独裁支配に立ち向かう自由の戦士として登場し、プレイヤーに強い共感を呼んだ。
彼らはいずれも“時代の犠牲者”でありながら、“希望を託す者”でもある。その生き様が、時代を超えて繰り返される「人間の意志の強さ」を表現しており、無名のNPCでありながらシリーズの魂を感じさせる存在となっている。
プレイヤー自身=もう一人のキャラクター
『ウルティマII』において、実は最も印象的なキャラクターはプレイヤー自身なのかもしれない。本作ではプレイヤーの選択と行動が物語の形を変え、世界の歴史に直接影響を与える。そのため、主人公は単なる“ゲーム内のアバター”ではなく、プレイヤー自身の倫理観や判断力を投影した存在として機能している。
たとえば、時代を超えて人々を助けるか、それとも無視して自分の目的を優先するか――その選択一つひとつが世界に影響を及ぼす。こうした構造は、プレイヤーを“物語の登場人物の一人”として深く関与させる仕掛けであり、現代のロールプレイングの根幹を作り上げたといっても過言ではない。
ファンの間で語り継がれる“心に残る人物たち”
長年のシリーズファンの間では、『ウルティマII』のキャラクターたちにまつわる思い出が今も語り継がれている。SNSやファンサイトでは「最初に話しかけた商人のセリフが忘れられない」「未来都市で出会った孤独な子供の言葉が胸に残っている」といった声が数多く寄せられており、本作の登場人物がどれほどプレイヤーの心に残ったかがうかがえる。
ミナクスのような強烈な悪役だけでなく、名もなき一般市民までが印象的に描かれていることが、『ウルティマII』を単なるゲームではなく“物語世界”として成立させた大きな理由だろう。彼ら一人ひとりが、時空を超えてプレイヤーの記憶の中で生き続けている。
総括:キャラクターが紡ぐ時空のドラマ
『ウルティマII』のキャラクターたちは、単なる物語の装飾ではなく、時代・思想・人間性の象徴として存在している。ミナクスは復讐と愛の二面性を、ロード・ブリティッシュは秩序と希望を、科学者や庶民たちは“生きる意志”そのものを体現している。彼らが織り成す人間ドラマこそが、『ウルティマII』の魅力を支えるもう一つの柱である。
プレイヤーは時を越え、さまざまな人々と出会い、その言葉に導かれながら旅を進めていく。その過程で得られるのは、単なる達成感ではなく、“人と人とのつながり”に対する感動だ。だからこそ、『ウルティマII』のキャラクターたちは今もなおファンの心の中で生き続け、時を超えて語り継がれているのである。
[game-7]
●対応パソコンによる違いなど
国内移植の背景と複数機種展開の意義
『ウルティマII』は、ポニーキャニオンおよびスタークラフトによって日本語化・移植されたが、その特徴のひとつが、同時期に複数の国内パソコンへ展開された点にある。対象となったのは、PC-8801シリーズ、PC-9801シリーズ、FM-7、MSX2、そしてFM TOWNSと、当時の主要な5機種。これほど幅広い環境に対応した洋ゲー移植は当時としても珍しく、パソコンRPG市場の発展に大きく寄与した。
この多機種展開の背景には、1980年代後半の国内パソコン文化の多様性がある。ハード性能が機種ごとに大きく異なっていたため、移植作業は単なる移し替えではなく、それぞれの機能を最大限に生かす「最適化」が求められた。結果として、どの機種で遊ぶかによって『ウルティマII』の印象は微妙に異なり、ファンの間では「どの版がベストか」を巡って議論が起きるほどだった。
PC-8801版――日本版RPG文化の入口
PC-8801版は、国内で最も多くのユーザーにプレイされたバージョンであり、日本語RPG文化の入口として多くのプレイヤーを惹きつけた。グラフィックは8色表示ながら、マップの描き込みは丁寧で、キャラクターの動きも軽快。ロード時間も比較的短く、テンポの良さが評価されている。
音源はPSG(プログラマブル・サウンド・ジェネレーター)を採用しており、音色はシンプルながら耳に残るメロディが多い。戦闘時のBGMが単調な一方で、ムーンゲート通過時の効果音やイベント時の短い音の変化が巧みに使われており、音の演出による緊張感が高かった。操作系も日本人向けに調整されており、英語コマンドの入力も簡略化されているため、シリーズ初心者でも比較的入りやすかった。
また、テキストのフォントがくっきりしていて読みやすく、翻訳の品質も安定していたことから、「最も遊びやすいウルティマ」と呼ばれることもある。総じて、バランスと完成度の高さが特徴のバージョンといえる。
PC-9801版――高解像度と洗練されたインターフェース
PC-9801版は、グラフィックとテキストの両面で大きな進化を遂げたバージョンである。640×400ドットという高解像度表示を活かし、マップやキャラクターがより細かく描写されている。特に、城や街の建築物、ムーンゲートのアニメーション表現が精緻になっており、当時としては“PCゲーム最高峰の画面美”と評された。
音源はFM音源ボードに対応しており、BGMの厚みが格段に増している。シーンごとに音色が変化し、戦闘や時代移動の臨場感が大幅に向上した。また、マウス対応こそなかったものの、キー操作のレスポンスが改善されており、ウィンドウ切り替えの速度も早い。これにより、シリーズを通しての「快適さ」という点では最も優れているバージョンとなった。
当時のゲーム誌では、「ウルティマの持つ重厚な世界観を最も忠実に再現したのがPC-9801版」と紹介され、ハイエンド志向のユーザーから絶大な支持を得た。
FM-7版――色彩の柔らかさと独自の魅力
FM-7版の『ウルティマII』は、8色表示ながら色の使い方に温かみがあり、グラフィック全体に独特の柔らかさを感じさせるバージョンである。FM-7特有のRGB表現により、海や草原の色が深みを持ち、特に夜のマップやムーンゲート周辺の表現が美しいと評価された。描画速度はやや遅いが、丁寧な発色が雰囲気を補っている。
音源はPSGで構成されており、効果音中心の演出が主体。派手さはないものの、静謐な空気感をうまく演出しており、「幻想的なウルティマ体験ができる」として一部ファンに人気が高い。特に、戦闘時の効果音に微妙な余韻が加えられており、没入感を高めていた。
FM-7ユーザーの間では、ロード時間の長さが難点とされつつも、「静かに世界を旅する感覚が心地よい」と好意的に受け止められており、今なおコアなファンを持つバージョンである。
MSX2版――簡略化と再構成による挑戦
MSX2版『ウルティマII』は、ハード性能の制約の中で大胆に再構成されたバージョンである。他機種に比べて画面解像度やメモリ容量が限られていたため、一部のマップやイベントが簡略化されているが、それでも世界観の骨格はしっかり保たれている。
グラフィックは16色表示対応であり、色彩の鮮やかさはPC-8801版を上回る。特に海や草原のコントラスト表現が美しく、限られたリソースの中で巧みに表現されていた。一方で、処理速度はやや遅く、敵との遭遇や移動時にフレーム落ちが発生することもあった。
音楽面では、FM音源未対応ながらもPSGで緻密なメロディラインを再現し、MSXユーザーから「最も親しみやすいウルティマ」として支持された。操作系が簡略化され、コマンド数が減ったことで、シリーズ初心者にも入りやすい設計となっているのが特徴である。
FM TOWNS版――最上位機種による完成形
FM TOWNS版は、シリーズの中でも“決定版”と呼ばれるほど完成度の高い移植である。256色同時表示によるグラフィックは非常に美しく、ムーンゲートや宇宙空間の描写がまるでアニメーションのように滑らか。BGMも高音質PCM音源で再構成され、オリジナル版にはなかった荘厳な雰囲気が加わった。
さらに、ゲーム全体のテンポが改善され、ロード時間もほぼ皆無。セーブ/ロードもワンタッチで行えるため、プレイヤー体験が圧倒的に快適になっている。ユーザーインターフェースも直感的で、メニュー表示や会話ウィンドウのデザインがモダンにアレンジされている。
特筆すべきは、エンディング演出の強化である。他機種版では簡潔なテキストのみだったが、FM TOWNS版ではグラフィックと音楽が融合した演出が追加され、物語の余韻をより深く味わえる構成となっていた。まさに“ウルティマIIの集大成”と呼ぶにふさわしいバージョンである。
機種ごとの比較とプレイヤーの評価
これらの各機種版を比較すると、それぞれに個性と魅力があることが分かる。
- PC-8801版:安定したプレイ感とバランスの良さ
- PC-9801版:高解像度グラフィックとFM音源の迫力
- FM-7版:柔らかな色調と静寂の雰囲気
- MSX2版:シンプルながら親しみやすい操作性
- FM TOWNS版:映像・音響ともに最も完成された体験
それぞれの環境で最適化されているため、どのバージョンが“正解”ということはなく、むしろ「機種ごとに違うウルティマIIが存在する」と言ってよい。
移植スタッフの努力と技術的挑戦
ポニーキャニオンとスタークラフトの開発陣は、単なる移植ではなく、各ハードの個性を生かした再設計を行っている。特にグラフィックデータの圧縮や描画速度の最適化は当時の技術水準を超えるものであり、限られたメモリ容量で複雑な世界を再現するために独自のローダー構造が導入されていた。
また、日本語フォントの美しさにもこだわりが見られ、機種ごとに異なる文字レンダリング方式が採用されている。これにより、当時のパソコン環境においても“読みやすいRPG”として評価されることになった。
総括:機種ごとの個性が生んだ多様なウルティマ体験
『ウルティマII』は、ハードウェア性能の差を「欠点」ではなく「個性」として活かした希有な作品である。PC-8801版の素朴な冒険感、PC-9801版の精緻な表現、FM-7版の幻想的な雰囲気、MSX2版の手軽さ、FM TOWNS版の完成度――それぞれが異なる味わいを持ち、プレイヤーにとっての“自分だけのウルティマ”を作り出している。
多機種展開が盛んだった1980年代後半において、ここまで丁寧に各環境に合わせて最適化されたRPGは稀であり、『ウルティマII』はまさに“時代を超えて遊ばれ続けるRPG”の先駆けといえるだろう。
[game-10]●同時期に発売されたゲームなど
★ウィザードリィ(Wizardry)
/サーテック社(Sir-Tech)/1981年/価格:オープン価格
『ウィザードリィ』は、『ウルティマII』と並んで初期RPGの二大巨頭と称される名作である。舞台は中世の地下迷宮“狂王トレボーのダンジョン”。プレイヤーは冒険者パーティを組み、迷宮の最下層に潜む“ワードナ”を討伐する。
本作の特徴は、3Dダンジョン視点による臨場感と、パーティ制による戦略性の高さだ。キャラクターの育成や職業選択、魔法詠唱など、後のRPGデザインに大きな影響を与えた。『ウルティマII』が“時空の旅”なら、『ウィザードリィ』は“内面の深淵”を探る冒険といえる。
★ザ・ブラックオニキス(The Black Onyx)
/BPS(Bullet-Proof Software)/1984年/価格:6,800円
国産RPGの先駆けとして名高い作品。開発はオランダ出身のジョン・ロメロではなく、ジョン・シェンク。日本語圏ユーザーのために作られた“和製ウルティマ”ともいわれ、PC-8801を中心にヒットした。グラフィックは線画中心だが、装備による外見変化や、迷宮探索のスリルが評価された。
『ウルティマII』が持つ西洋的な世界観を日本の文化と融合させた点で画期的であり、以後の国産RPG(特に『ドラゴンクエスト』)の誕生に多大な影響を与えた。
★ザナドゥ(Xanadu)
/日本ファルコム/1985年/価格:7,800円
『ウルティマII』の日本的解釈といえる存在が『ザナドゥ』である。プレイヤーは広大な地下世界を探索し、レベルアップと同時にカルマ値を管理しながら冒険する。アクション要素とRPGを融合させた“アクションRPG”というジャンルを確立し、発売当時は社会現象的な人気を博した。
『ウルティマII』のような自由な探索要素を、日本のパソコン文化に最適化したことで、以後のファルコム作品(『イース』『ソーサリアン』など)へと連なる礎となった。
★ハイドライド(Hydlide)
/T&Eソフト/1984年/価格:6,800円
国産アクションRPGの始祖と呼ばれるタイトル。『ウルティマII』のように見下ろし視点のフィールドを移動し、剣と魔法で敵を倒すシンプルな構成。特徴的なのは、体力が自然回復する“リアルタイムRPG”システムである。
『ウルティマII』がプレイヤーの思考を重視する設計なのに対し、『ハイドライド』は操作の直感性を重んじた。日本国内では爆発的ヒットを記録し、後の『ゼルダの伝説』(1986年)にも影響を与えたと言われている。
★ロードランナー(Lode Runner)
/ブローダーバンド社(Broderbund)/1983年/価格:6,000円前後
RPGではないが、当時のパソコンゲーム市場を象徴する存在として外せないのが『ロードランナー』。プレイヤーは金塊を集めながら敵を避けるアクションパズルで、単純なルールながらも戦略性が高い。『ウルティマII』と同じく海外からの移植でありながら、日本のユーザーに大ヒットした。
この作品を通じて、“パソコンゲームは個人で作る時代”という風潮が広まり、後の同人RPG文化の発展にもつながっていく。
★ポートピア連続殺人事件
/エニックス(現スクウェア・エニックス)/1983年/価格:6,800円
堀井雄二が手掛けた国産アドベンチャーの金字塔。コマンド入力型のインターフェースや、サスペンス要素を取り入れた物語構成が特徴で、後の『ドラゴンクエスト』シリーズの誕生につながる重要な作品である。
『ウルティマII』と同時期に登場し、海外RPGの“自由な探索性”を日本的な物語構築へと翻訳する役割を果たした。特に、テキスト表現の豊かさとプレイヤーの想像力を刺激する構成は、ギャリオットの“自己投影型RPG”思想と響き合っている。
★キングス・クエスト(King’s Quest)
/シエラ・オンライン/1984年/価格:7,500円
『ウルティマII』がRPGの自由度を追求した一方で、シエラの『キングス・クエスト』はアドベンチャー性を強調した作品である。美しいグラフィックとアニメーションで描かれる王国の物語は、当時のプレイヤーに強烈な印象を与えた。
本作では“見える冒険”という表現が初めて成立し、パソコンRPGのビジュアル進化を後押しした。『ウルティマII』のSF要素とは対照的に、純粋なファンタジーを貫いた点も興味深い。
★タイム・ゾーン(Time Zone)
/シエラ・オンライン/1982年/価格:9,800円
時空を超えるアドベンチャーという点で、『ウルティマII』と非常に近いテーマを持つ作品。プレイヤーは古代エジプトから未来の宇宙まで、さまざまな時代を旅しながら謎を解いていく。全12枚組のディスクに及ぶ大作で、当時としては空前のボリュームを誇った。
『ウルティマII』と同様に“時間移動”という概念をエンターテインメントに落とし込んだ先駆けであり、リチャード・ギャリオットが本作に刺激を受けて『ウルティマII』を構想したともいわれている。
★ドラゴンスレイヤー(Dragon Slayer)
/日本ファルコム/1984年/価格:6,800円
『ザナドゥ』の前身であり、日本独自のRPGデザインを確立した作品。プレイヤーは一人の冒険者として塔を探索し、リアルタイムに戦闘を行う。この“ひとりで迷宮を攻略する構造”は、海外RPGのパーティ制とは異なる日本的な感覚を示しており、『ウルティマII』とは対照的な方向性を打ち出した。
その後のアクションRPGの基礎を築いた本作は、“ウルティマ的自由度”を受け継ぎながら、スピード感を重視する新時代のRPG像を示したといえる。
★ドラゴンクエスト(Dragon Quest)
/エニックス/1986年/価格:5,400円
最後に挙げるのは、『ウルティマII』の影響を最も強く受けたとされる国民的RPG『ドラゴンクエスト』である。堀井雄二が『ウルティマ』と『ウィザードリィ』の両シリーズに感銘を受け、日本の家庭用機市場向けに再構築したものだ。コマンド入力を廃し、メニュー選択型にしたことでRPGを大衆化した功績は大きい。
『ウルティマII』の時空を超えるスケール感や、ロード・ブリティッシュに通じる導師的存在など、その精神的DNAは随所に見られる。もし『ウルティマII』がなければ、日本のRPG史そのものが違っていたかもしれない。
総括:『ウルティマII』が切り開いた時代
1980年代前半のパソコンゲーム界は、まさに“RPGの黎明期”であった。『ウルティマII』はその中で、時間移動・世界改変・倫理的選択といった概念を導入し、単なる冒険譚を超えた知的体験を提示した。その精神は、『ウィザードリィ』の緻密な迷宮、『ザナドゥ』の成長システム、『ドラゴンクエスト』の物語構成など、後の名作群に確実に受け継がれている。
こうして振り返ると、『ウルティマII』は単なるシリーズの続編ではなく、“時代そのものを変えた作品”であったことがわかる。その影響は国境を越え、ジャンルを越え、今なおゲーム史の根幹に息づいているのである。
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