【中古】 真・女神転生IV FINAL/ニンテンドー3DS




評価 5【発売】:アスキー
【対応パソコン】:PC-9801、Windows
【発売日】:1997年4月4日
【ジャンル】:ロールプレイングゲーム
■ 概要
発売形態と作品の立ち位置
偽典・女神転生 東京黙示録は、アスキーからリリースされたPC向けタイトルで、PC-9801向けとして展開されたのち、後年にWindows対応版も用意された作品です。女神転生シリーズの根幹である悪魔召喚と交渉、合体による育成、そして人間側の選択が世界を変えていく重苦しいテーマを受け継ぎつつ、物語や登場人物は家庭用の本編とは異なる独自路線で構築されています。いわば同じ世界観の匂いを保ちながら、別の角度から東京崩壊後の地獄を覗き込む外伝的な位置づけで、PCならではの表現や設計思想が強く前面に出ているのが特徴です。キャラクターの造形は相崎勝美・相崎直美のコンビが担当し、硬質で陰影の濃い雰囲気を作り出しています。さらにゲームデザイン面では、過去にシリーズに深く関わった鈴木一也の色が濃く、単なる派生作ではなく、女神転生らしさをPCで突き詰める方向へ舵を切った意欲作として語られます。
物語の時間軸と背景設定
舞台は大破壊後の東京。地上は荒廃し、悪魔が当然のように徘徊する危険地帯となり、人々は生存そのものを制度に縛られながら維持しています。本作で印象的なのは、完全な終末でありながら生活圏が存在する点です。生き残った人間は地下シェルターへ避難し、そこでは秩序を守るための階級制度が敷かれます。表向きは安全を確保するための仕組みでありながら、閉鎖空間の息苦しさや不公平感が日常に染み込み、精神的な圧迫がじわじわと住民を追い詰めていきます。加えて、悪魔の侵入という外敵要素が現実味を帯びることで、平穏に見える共同体は常に崩壊寸前の緊張を抱えています。物語は、ある日突然、主人公の周囲に異常が連鎖していく導入から始まり、個人の違和感が共同体全体の危機へ膨張していく構図で、終末世界の恐怖を段階的に体感させます。
主人公と導入のフック
主人公はシェルターで生まれ育った少年で、過去に悪魔によって家族を失うなど、個人的な傷を抱えています。一方で彼はただの被害者で終わらず、特殊部隊への志望や、外の世界への焦燥といった能動的な衝動を持ち合わせています。この能動性が重要で、物語は主人公が何かに選ばれるというより、主人公が自分の意志で踏み込んでいくことに重心が置かれます。転機となるのは、差出人不明のプログラムや、PCに浮かび上がる不気味な文字列など、情報機器を媒介にした異常現象です。ここで本作はPCゲームとしてのテーマを自然に噛み合わせます。端末に現れる得体の知れないメッセージが、主人公の生活と世界の法則を書き換えるきっかけになり、プレイヤーにとっても自分の操作する画面そのものが物語装置として機能し始める感覚を生みます。結果として、悪魔と会話できる力や仲間を増やす手段が、単なる便利機能ではなく、世界の裏側へアクセスする鍵として演出されていきます。
シリーズ性の継承点とオリジナル要素
女神転生の核となる要素はしっかり残っています。悪魔との会話を通じて戦闘を回避したり仲間に引き入れたりする交渉、仲間となった悪魔を素材にして新たな存在を作る合体、そして仲間の編成と育成で攻略の幅を広げていく流れは健在です。ただし本作は、家庭用作品の焼き直しではなく、キャラクターや舞台の構造を独自に組み直しています。シェルター社会の階級、部隊という組織、地上に残された拠点や人間関係など、文明が壊れたあとの生活圏をどう描くかに強い関心が向けられており、悪魔との戦いは世界の終わりそのものではなく、終わった世界で何を守り、何を捨てるかという問いに接続されます。結果として、選択の重さや、協力と裏切りの温度が高く、悪魔よりも人間の方が怖い場面すら生まれやすい作りになっています。
TRPG由来の設計思想とパラメータの厚み
本作が特異なのは、コンピューターRPGでありながら、卓上ゲーム的なルール感を強く残している点です。能力値の設計が細かく、直感、精神力、加護など、単純な力や魔力だけでは割り切れない要素が多層的に組み込まれています。これにより、キャラクターを育てる行為が単なる数値上げではなく、人格や資質をどう伸ばすかという方針決めに近い感触になります。また、覚醒イベントの存在がこの思想を補強します。特定の条件や状況で主人公が技能や魔法を得る展開は、レベルアップのご褒美というより、物語上の変化や内面の転機と連動しやすく、プレイヤーの行動履歴がキャラクターの成長として返ってくる手触りを作ります。仲間側も単なる召喚獣ではなく、育成対象として扱われ、成長や技能獲得の流れが濃密です。
悪魔育成と装備まわりの尖り
悪魔が経験値で成長し、レベルが上がるごとに技能を得ていく仕組みは、本作の中毒性を支える大きな柱です。合体して終わりではなく、育てて仕上げる工程が確立しているため、お気に入りの仲間を長く連れ回す動機が生まれます。さらに仲間の悪魔にも装備という概念が深く関わり、武器・防具だけでなく射撃武器まで視野に入るため、編成の考え方が人間パーティに近い密度になります。装備は単なる攻防の上下ではなく、役割分担の調整に直結し、近接で押し切る悪魔、遠距離で支援する悪魔、属性と耐性で盾になる悪魔など、同じ種族でも運用が変わります。合体を行う場として邪教の館が用意される点も含め、シリーズらしさを残しながら、育成の楽しさをPC向けに太くした設計と言えます。
戦闘システムの独自性とプレイ感
本作の戦闘は、ターン制の安心感とは違う緊張を持っています。敵味方の行動がリアルタイムに近いテンポで進行し、状況判断と操作の速さが求められる場面が多く、交渉や魔法選択も含めて決断の遅れがそのまま損失につながります。この設計は、終末世界での戦闘が安全なパズルではなく、必死のやりくりであることを体感させる意図が読み取れます。一方で、環境の違いが難易度の体感に影響しやすいという性質も持ち、当時のPC事情と強く結びついた作品でもあります。だからこそ、攻略や育成の理解が進むほど、勝ち筋を組み立てて突破する面白さが増し、プレイヤー側の経験がそのまま実力として反映されます。
移動操作と探索の作法
探索はキーボードとマウスを軸に設計され、操作体系そのものがPCゲームらしさを持ちます。テンキー移動のようなPC-98文化に寄り添った感覚と、Windows向けのマウス中心の感覚が混在し、同じ作品でもプレイ環境によって探索のテンポが変わりやすい点が特徴です。ダンジョンはただ迷路を歩く場所ではなく、遭遇する悪魔やイベント、資源管理の負荷を通じて、外の世界に踏み出す怖さを積み上げる舞台になります。危険地帯を少しずつ踏破し、拠点へ戻って整える、この往復が本作の緊迫感を支え、物語の暗さを単なる設定ではなく体験として落とし込みます。
表現面のトーンと作品が放つ温度
偽典・女神転生 東京黙示録は、女神転生作品の中でも刺激が強い部類に入ります。暴力や残酷さ、性的な含意を伴う場面が用意され、世界の腐臭や人間の弱さを遠慮なく描くことで、終末という題材を生ぬるいファンタジーにしない姿勢が徹底されています。ただしそれは過激さのための過激さというより、悪魔の恐怖だけでなく、人間の欲望や制度の歪みがもたらす地獄を描くための手段として働きます。プレイヤーは、強くなれば解決する問題だけでなく、選択しても後味が残る問題に何度も直面し、この苦さが作品の記憶を濃くします。
総合するとどんなゲームか
本作は、女神転生らしい悪魔交渉と合体、仲間を育てる喜びを押さえつつ、TRPG的なルール感と濃密なパラメータ設計で、PCならではの遊び応えに振り切ったタイトルです。地下社会の閉塞、地上の荒廃、情報機器を媒介にした異常、そして人間と悪魔の境界が崩れるような不安が重なり、ただの冒険譚ではない終末体験としてプレイヤーを引き込みます。緻密な育成と判断の速さが要求される戦闘、そして容赦のないトーンが一体となり、刺さる人には深く刺さる異色作として語り継がれる理由がここにあります。
■■■■ ゲームの魅力とは?
終末の「生活感」を描く舞台装置が強い
偽典・女神転生 東京黙示録の魅力を語るうえで外せないのが、荒廃した世界を「ただの背景」で終わらせず、そこに暮らす人間の息遣いまで含めて体験させる作りです。大破壊後という言葉だけなら多くの作品にありますが、本作は地下シェルターという閉鎖社会を中心に据えることで、終末の恐怖を爆発的な破壊ではなく、日々の圧迫として積み上げてきます。安全を維持するはずの秩序が、同時に人を縛る鎖にもなる。身分や役割が固定されることで、善意も打算も同じ空間でねじれていく。こうした“社会の息苦しさ”が、悪魔の脅威と並走してプレイヤーの判断を鈍らせ、焦りを生み、物語への没入を加速させます。地上に出れば悪魔が跋扈し、地下に戻れば制度と疑心暗鬼が牙をむく。どちらにいても安息がない構造が、独特の緊張感を作り出しているのです。
悪魔交渉が「戦闘の別ルート」ではなく「心理戦」になっている
女神転生らしい会話交渉は本作でも核ですが、ここでの面白さは、単に戦闘を回避したり仲間にしたりする便利機能を超えて、相手の機嫌と価値観を読み合う心理戦に寄っている点です。悪魔は単なる敵駒ではなく、“交渉が通る存在”として個性を持ちます。強さが足りない、言葉が合わない、提示する条件がずれている、そんな小さなすれ違いが即座に破局へつながる場面もあり、会話そのものが緊迫した勝負になります。ここで重要なのは、交渉が成功したときの達成感が「勝った」ではなく「通じた」という手触りを残すことです。荒廃した世界で、暴力以外の手段がまだ機能する瞬間がある。その希少さが、プレイヤーにとっての交渉を特別な行為にしています。
TRPG的な成長設計が“自分の主人公”を作らせる
本作のキャラクター育成は、数値を上げれば正解という単純さから距離を取り、資質や適性の組み合わせでプレイ感が変わるように設計されています。直感や精神力、加護といった多層的なパラメータが絡むことで、同じ「戦士型」を目指しても、粘り強いタイプ、危機回避に長けたタイプ、交渉や魔法の取り回しが上手いタイプなど、性格の違いのような差が出やすい。さらに、特定の条件を満たしたときに起こる覚醒イベントが、単なるスキル獲得以上の意味を持ちます。レベルアップだけで積み上げるのではなく、歩き方や選び方が主人公の“変化”として返ってくるため、プレイヤーは攻略のためだけでなく、物語の中の自分の立ち位置を意識しながら育成方針を決めることになります。これが、プレイ後に「自分の葛城史人(主人公)」という感覚を残す大きな要因です。
仲魔育成の深さが、編成遊びを底なしにする
女神転生の醍醐味である仲魔集めと合体は、本作では「作って終わり」になりにくいのが強みです。仲魔が経験を積んで成長し、段階的に技能を獲得していくため、合体で理想形を一発で用意するだけでなく、連れて歩いて鍛え、役割を洗練させていく工程が楽しくなっています。さらに装備という要素が仲魔にも強く関わることで、編成の発想が広がります。前衛の耐久を装備で底上げして盾にする、遠距離や支援の担当に持ち物で個性を付ける、属性耐性の穴を装備で埋めて事故を減らす、といった調整が効くため、同じ仲魔でも“運用の仕立て直し”が可能です。結果として、悪魔の選択が「強いから入れる」ではなく、「今の隊列の欠けている役を埋める」「このダンジョンの危険に合わせる」という戦略に繋がり、パーティビルドがゲームそのものになります。
リアルタイム寄り戦闘が、判断の価値を跳ね上げる
戦闘が落ち着いたターン制ではなく、テンポよく進行する仕組みになっていることで、本作は“判断の遅れ”がそのまま痛手になりやすい緊迫感を持ちます。敵の行動を眺めてから最適解を探すのではなく、状況が悪化する前に先手を打つ、危険を感じたら撤退の準備をする、交渉で流れを変える、回復のタイミングをずらす、といった判断が連続して求められます。だからこそ、勝てたときの快感が強い。単純にレベル差で押し切ったのではなく、手札の使い方と決断の速度で切り抜けた感触が残ります。また、仲魔の構成が機能しているときは戦闘が驚くほど滑らかに回り、逆に噛み合っていないときは小さな事故が連鎖する。この差が編成の面白さと直結し、戦闘が育成と探索を束ねる中心体験になります。
探索と資源管理が“怖さ”をゲームとして成立させている
終末世界を題材にしたRPGは多いですが、本作は探索の中で消耗し、戻って立て直す循環が特に濃い。ダンジョンを一歩進めば何かが削れていく感覚があり、回復や弾薬、交渉に使う資源、装備の整備など、細かな管理が生存そのものに直結します。ここで面白いのは、プレイヤーが「どこまで欲張るか」を常に問われる点です。もう少しだけ奥へ進めば収穫があるかもしれない。しかし事故が起きれば全てを失うかもしれない。引き返すのは臆病か、それとも賢明か。こうした判断が、世界観の恐怖を“操作と結果”に変換し、物語の暗さをただ眺めるのではなく、自分の選択として背負わせます。
ストーリーは“救いの薄さ”が逆に引力になる
本作のシナリオは、爽快な英雄譚というより、終末を生き延びる人間の弱さと執念を描く方向に寄っています。誰かが誰かを守るために動く一方で、同じ理屈で誰かを切り捨てることも起こる。正しさがいつも人を救うわけではなく、善意が災いを呼ぶこともある。こうした苦さが、プレイヤーを“簡単に気持ちよくさせない”代わりに、先を見たいという強い動機になります。先に進めば明るくなるとは限らない。それでも進まないと真実に届かない。だから探索も戦闘も、勝ち負け以上に「確かめるための行為」へ変わっていきます。キャラクター同士の関係も、単純な仲間集めではなく、互いの立場や秘密が影を落とす形で描かれるため、会話イベントや合流の瞬間にも独特の緊張が宿ります。
ビジュアルと音が、PCオリジナルの“湿度”を作る
キャラクターデザインや画面全体のトーンは、華やかさよりも陰影を重視し、荒廃と閉塞を視覚で伝えます。派手な演出で押し切るのではなく、じっとりとした空気が画面にまとわりつくような方向性で、これはPC向けに作られた女神転生外伝だからこそ似合う質感です。加えて、音の使い方も“気分を上げるBGM”より、“不安を維持する環境音的な役割”が強く、探索中に心が休まらない感じが残ります。この居心地の悪さが、逆に作品の個性になっていて、クリア後に記憶に残るのは派手な勝利より、暗い通路を進んだときの息苦しさだった、というタイプの魅力を持っています。
PC-98/Windowsという環境が、遊び味を変えるところも含めて面白い
同じタイトルでも、操作体系や環境の違いがプレイ体験に影響しやすいのが本作の“時代性”です。キーボード主体の感覚、マウス主体の感覚、移動や戦闘のテンポの違いなど、PC文化の変遷がそのまま遊び味に滲みます。これは万人向けの整った快適さとは逆方向ですが、当時のPCゲームが持っていた“環境込みの体験”を濃く味わえるポイントでもあります。手触りが少し不親切だからこそ、慣れてくると自分の操作が洗練され、攻略が上達していく実感が強い。現代のゲームに慣れた人ほど最初は驚きますが、その壁を越えた先に、独自の中毒性が待っています。
まとめると、刺さる人には一生残るタイプの魅力
偽典・女神転生 東京黙示録の面白さは、悪魔交渉と合体というシリーズの快楽を軸にしながら、TRPG的な育成の厚み、リアルタイム寄りの戦闘が生む緊張、終末社会の閉塞を体験として落とし込む探索設計が噛み合っている点にあります。分かりやすい爽快感や優しさより、重さと不穏さで引っ張るタイプの作品ですが、その分、プレイヤーの判断と工夫が強く物語へ刻まれます。「暗いのに、やめられない」「苦しいのに、先が見たい」──そんな感情を生む設計そのものが、本作最大の魅力です。
■■■■ ゲームの攻略など
まず押さえたい前提:本作の難しさは「数値」だけでなく「テンポ」から来る
偽典・女神転生 東京黙示録の攻略を考えるとき、最初に意識しておきたいのは、強い装備や高レベルだけで安心しにくい設計だという点です。本作は敵味方が同じ時間軸で動く、リアルタイム寄りの戦闘が採用されています。そこで問題になるのが、戦闘テンポがPC環境(特にCPUの速度)に影響されやすいこと。想定より速い環境だと、こちらが一回の判断をしている間に相手が複数回行動してしまい、体感難易度が極端に上がることがあります。現代のプレイ環境で遊ぶ場合、まず「戦闘が成立する速度」に整えるだけで、同じ敵でも別物のように戦いやすくなるはずです。環境調整は攻略情報以前の“入口”で、ここを整えてはじめて、育成や編成の工夫が正しく成果として返ってきます。
戦闘の基本方針:事故を減らすために「先手の段取り」を重視する
リアルタイム寄りの戦闘では、目の前で起きた危機に反射的に対処し続けると、回復が後手に回り、交渉も崩れ、押し切られて終わりがちです。そこで重要になるのが、戦闘に入る前から勝ち筋を用意しておく感覚です。具体的には「初動で何をするか」を固定化するのが強い。たとえば、開幕で隊列の役割をはっきり分け、前に出る者は耐久寄り、後ろは支援・回復・射撃寄りと決めておきます。敵を見てから役割変更を始めるのではなく、戦闘前に“事故が起きにくい形”を作っておき、戦闘中はその形を崩さないように判断します。単体の強敵が相手なら集中して落とす、多数相手なら危険な相手(行動阻害や大ダメージを出すタイプ)を優先して止める、という優先順位も固定しておくと迷いが減り、リアルタイムの難しさが一段下がります。
交渉は「欲張らない」ほど成功率が上がる:会話の目的を一つに絞る
女神転生らしい悪魔会話は、慣れるほど強力な攻略手段になりますが、欲張ると失敗して被害が膨らみます。本作では、交渉は“成功すれば得、失敗すれば即損”になりやすいので、戦闘の最中は会話の目的を一つに絞るのが安全です。仲魔にしたいのか、その場を離脱させたいのか、時間を稼ぎたいのか。ここを曖昧にすると、要求を積み上げて相手の機嫌を損ねる、交渉中に被弾して崩れる、といった事故が増えます。特に序盤は「勝てないから交渉する」のではなく、「勝てるけれど、被害を抑えるために交渉する」という使い方の方が安定します。戦うか交渉するかを迷う局面ほど、交渉を“勝ちを早める手段”として扱えるようになると、攻略のテンポが一気に良くなります。
育成のコツ:主人公は「万能」より「役割の芯」を作ると伸びが速い
パラメータが多い作品は、全部を平均的に伸ばしたくなりますが、それをやると「どの場面でも一歩足りない」主人公になりやすいです。まずは芯を作りましょう。前線で耐えるなら生存寄り、戦闘判断を軽くしたいなら命中や行動の通しやすさを意識した伸ばし方、交渉を絡めるなら会話が成立しやすい方向へ寄せる、といった具合に“主役の仕事”を決めます。もちろん後から補強はできますが、最初に芯があると装備・仲魔・スキルの選び方が一気に整理されます。また本作には覚醒イベントがあり、条件を満たすことで主人公が魔法や技能を覚えることがあります。つまり、育成はレベルだけでなく行動の積み重ねとも結びつきやすい。だからこそ「こういう主人公で行く」という方針を持って動くほど、結果として戦い方が固まり、覚醒を含めた成長の手触りも掴みやすくなります。
仲魔育成が本番:合体は“作る”より“育てて完成させる”意識が強い
本作は、悪魔が経験を積んでレベルアップし、段階的にスキルを得ていく仕組みが用意されています。だから、合体で完成形を一発で狙うというより、戦力の骨格を合体で作り、連れて歩いて育てて“完成に近づける”方が噛み合います。さらに重要なのが、合体には制約があること。邪教の館で合体を行い、作れる仲魔は基本的に自分のレベルより低い仲魔に限られます。つまり「今すぐ最強を作る」より、「今のレベル帯で強い軸を作って、次の段階に繋げる」という階段式の発想が大切になります。攻略が安定しないときは、無理に背伸びした合体を狙うより、今のレベルで扱える仲魔を“育てて厚くする”方が、結果として突破力に直結します。
装備システムを理解すると世界が変わる:仲魔にも武器・防具が持てる重み
偽典・女神転生 東京黙示録の攻略上の目玉は、「仲魔にも装備を持たせられる」点です。主人公やパートナーだけでなく仲魔にも武器・防具を装備でき、しかも装備には相性グループが設定され、誰でも何でも持てるわけではありません。加えて、相性だけでなく必要体力や必要器用さといった装備資格を満たす必要もあります。ここを理解すると、仲魔の運用が“召喚獣”から“パーティメンバー”に変わり、戦闘の安定感が一段上がります。たとえば前衛役の仲魔には耐久を伸ばす装備を優先し、後衛の支援・射撃役には命中や行動の通りを良くする装備を回す。装備条件を満たせないなら、同じ種族でも別の仲魔に役割を譲る。こうした判断ができるようになると、単純なレベル差を装備の工夫で埋められ、結果として“事故死”が減ります。
探索のコツ:戻る判断が早いほど、結果的に進行は速くなる
終末世界のRPGでありがちな失敗が「もう少し行けそう」を繰り返して、回復や弾薬、交渉の余力が削れ、帰還途中で崩れるパターンです。本作は戦闘テンポの都合もあり、崩れ始めると立て直しが難しい局面が出やすい。だからこそ、探索は“区切り”を決めるのが強いです。アイテムが一定数減ったら戻る、回復手段が尽きたら戻る、仲魔の状態が悪ければ戻る。こうした撤退ラインを先に決めておくと、無駄な全滅が減り、経験や資金がきちんと積み上がっていきます。結果として、慎重に見えて進行が速くなる。特に序盤は、強引に一発突破を狙うより「安全に往復して強くなる」方が、この作品の設計に合っています。
操作面の注意:PC-98版とWindows版で“できることの感覚”が変わる
本作はマウスとキーボードで操作でき、マウスだけで完結させることも可能ですが、PC-98版ではテンキー移動ができ、いわゆるカニ歩きのような移動も可能だった一方で、Windows版ではその移動が廃され、探索や戦闘中の行動で同じことができない場面がある、とされています。つまり、同じ攻略方針でも「入力のしやすさ」や「小回りの効き方」が変わり、体感難易度に差が出ます。自分がどの環境で遊んでいるかを前提に、移動の癖(曲がり角での調整、距離の取り方、戦闘への入り方)を早めに身体に覚えさせると、余計な被弾や事故が減っていきます。
“裏技”というより実戦的な小技:環境と運用で難易度を下げる
本作で効いてくるのは、コマンド入力の秘密というより、プレイ環境と運用の工夫です。代表例が戦闘速度の調整で、CPU速度の影響で難易度が跳ね上がる問題は昔から知られており、当時はクロック調整を行ってプレイする例があり、近年は戦闘速度を調整できるパッチが作られ配布されている、とも言及されています。ここは“ズル”というより、そもそもゲームバランスを想定域に戻すための調整です。現代環境で遊ぶ場合は、まずここを整えるのが最大の小技になります。次に効くのが、仲魔装備と役割分担の徹底です。仲魔にも装備が持てる以上、前衛が崩れる原因(耐久不足)や後衛が機能しない原因(条件不足・相性不足)を装備と編成で潰せます。最後に、撤退ラインの固定。全滅は“時間も戦力も失う”最大の損なので、損切りを早くするだけで攻略効率が大きく上がります。
結局どう進めると楽になるか:攻略の王道ループ
まとめると、楽になる流れはシンプルです。①戦闘速度を含む環境を整え、戦闘が成立するテンポにする。②主人公は芯のある役割で育て、覚醒も含めた成長を狙う。③仲魔は合体で骨格を作り、育成で完成に近づける(合体制約を前提に階段を上る)。④仲魔装備を使って前衛の安定と後衛の仕事を成立させる。⑤探索は撤退ラインを固定して全滅を避ける。この循環が回り始めると、本作は“理不尽に押しつぶされるゲーム”から、“準備と判断で勝てるゲーム”へ変わっていきます。リアルタイム寄り戦闘の怖さは残りますが、怖さがそのまま緊張と快感に転じるはずです。
■■■■ 感想や評判
総評:ハマる人には刺さり続けるが、合わない人には拒否反応が出やすい“尖った外伝”
偽典・女神転生 東京黙示録の評判をひと言でまとめるなら、「濃さと尖りがそのまま賛否になるゲーム」です。女神転生シリーズの中でも、雰囲気・展開・システムのクセが強く、作品の求めるテンションに乗れた人は深く熱中しやすい一方、同じ要素がそのまま“しんどさ”として跳ね返ってくる人もいます。発売時期としてはPC-98版が1997年、Windows版が1999年にアスキーから出たとされ、当時のPCゲームらしい荒削りさや、環境込みの手触りも評価の分岐点になりました。
好意的に語られやすい点①:終末の空気が濃く、救いの薄い物語が“忘れにくい記憶”になる
ポジティブな感想でまず多いのは、世界観の密度です。崩壊後の東京を舞台にした終末観そのものはシリーズにも通じますが、本作は“生き残りの社会”に焦点を当て、地下シェルターの閉塞や人間同士の歪みまで含めて、息苦しさを体験させる方向に寄っています。そのため、明るいカタルシスよりも「読後感が重いのに先を見たくなる」タイプの引力が強く、プレイ後に場面や空気だけが妙に残る、という語られ方をされがちです。ダークさを求めるメガテンファンほど「こういうのを待っていた」と感じやすく、逆に重い話が苦手な人は序盤で心が折れやすい、という二極化が起きます。
好意的に語られやすい点②:TRPG寄りの骨太さと、仲魔育成の“手間が楽しい”という評価
システム面では、TRPG的なルール感を強く残した作りが「独自性」として支持されます。能力値が多く、伸ばし方でキャラクターの性格が変わっていくような感触があり、万人向けの分かりやすさより「自分で理解して組み立てる面白さ」を重視している印象です。加えて、仲魔(悪魔)が経験を積んで成長する要素や、技能獲得の積み重ねが、合体一発で完成というより“育てて自分の戦力にする”快感へつながります。手間のかかる設計を、面倒ではなく“味”として捉えられる層からは、PC外伝ならではの魅力として好意的に語られやすいです。
好意的に語られやすい点③:過激な描写が「禁忌へ踏み込むメガテンらしさ」として話題になりやすい
本作は、性的・残酷表現がシリーズ内でも強めだと言われることが多く、そこが強烈な印象として語られます。一方で年齢区分としては18禁指定ではない、という前提も含めて、当時のPCゲームとしての“境界線”が話題になりがちです。近年でも、ショッキングな展開がネット記事で取り上げられ、「トラウマ級」「家庭用では難しそうな描写」といった方向で再注目されることがあります。こうした語られ方は賛否が割れますが、少なくとも“忘れられないゲーム”としての知名度を補強しているのは確かです。
否定的に語られやすい点①:不親切さ(情報不足・説明不足)で置いていかれる
ネガティブ寄りの感想で目立つのは、ゲームの案内不足です。何をすればいいかの導線が薄かったり、アイテムの性質や効果が分かりにくかったりして、「理解する前に損をする」場面が出やすいと語られます。とくに初見だと、世界観の暗さとシステムの複雑さが同時に襲ってくるため、気分転換の余裕がなく、気づけば“疲れるゲーム”になってしまう。こうした体験が「名作だけど人を選ぶ」の根拠として繰り返し挙げられます。
否定的に語られやすい点②:戦闘テンポが環境に左右され、体感難易度が変わる
本作の評判をややこしくしている要素として、戦闘の進行がPC環境の影響を受けやすい、という話があります。特定の条件下では、プレイヤー側の操作が追いつかないほどテンポが速く感じられ、結果的に理不尽な難しさとして記憶されやすい。逆に、想定に近いテンポで遊べた人は「緊張感が良い」「判断で勝てる」と感じやすく、同じ作品でも印象が割れます。現代の視点だと、こうした“環境込みの難易度差”が、古いPCゲームらしさとして理解される一方、初めて触れる人にはハードルにもなります。
否定的に語られやすい点③:過激表現が「作品の魅力」より先に来てしまう人もいる
過激さを評価する声がある一方で、「きつすぎて無理」「内容以前に受け付けない」となる人がいるのも事実です。とくに、残酷な場面や性的ニュアンスを、作品テーマの一部として消化できるかどうかで受け止めが大きく変わります。また、ファンの間でも「思われているほど露骨ではない/誇張されて広まった部分がある」といった議論が起きることもあり、噂が一人歩きして作品像が固まってしまうケースも見られます。つまり本作は、内容を知る前からイメージで好き嫌いが決まりやすいタイプのタイトルでもあります。
当時のメディア的な見られ方:PCゲーム文化の“濃い読者層”に向いた企画色
発売当時のPCゲームは、家庭用よりも尖った題材・複雑なルール・濃い世界観が許容されやすい土壌がありました。本作もその文脈で受け止められ、「シリーズの別解として面白い」「PCならではの実験作」といった見方がされやすかった反面、家庭用のテンポや親切さを期待して入ると、その差が不満になりやすい。さらに、本作はPC-98とWindowsで展開されているため、遊ぶ環境や導入の手間が感想に影響しやすく、“評価が揺れやすい条件”が揃っていました。
現代の口コミ傾向:レアさ・入手難とセットで語られ、プレイ体験が“伝説化”しやすい
近年の感想では、作品そのものの評価に加えて「そもそも現物が手に入りにくい」「環境を用意するのが大変」といった話題がセットになりがちです。中古市場で見かける機会が限られたり、対応OSや当時の前提が絡んだりすると、プレイの障壁が上がるぶん“知っている人だけが語れる”雰囲気が生まれます。その結果、実際のプレイ感(暗さ、難しさ、衝撃)だけが強調され、良くも悪くも“伝説っぽい評判”になりやすい。レビュー欄でも、TRPG寄りで戸惑うがハマる人はハマる、という方向の語られ方が見られます。
結論:評判のバラつきこそが、この作品の性格を表している
偽典・女神転生 東京黙示録は、褒め言葉も不満も、同じ根から生えている作品です。救いの薄い終末描写、TRPG的な重さ、戦闘の緊張、過激な場面──それらを“唯一無二の味”と感じる人には宝物になり、“ただただ辛い”と感じる人には苦痛になります。だからこそ評判は割れますが、割れるほど語り継がれる強度があり、シリーズの外伝群の中でも特異点として名前が挙がり続ける。そういうタイプのゲームだと言えます。
■■■■ 良かったところ
世界観の濃度がとにかく高い:終末を「設定」ではなく「空気」で押し切る
本作を遊んだ人がまず強く挙げがちなのは、終末世界の湿度の高さです。大破壊後の東京という舞台は、それ自体はシリーズでも馴染みがありますが、本作は“荒廃した街を歩く”だけで終わらず、地下シェルターでの暮らしや階級、組織のルール、日々の息苦しさまでをセットにして、終末が生活そのものを変形させた感触を丁寧に積み上げます。敵が怖いというより、世界がずっと不穏で、休まる場所がない。にもかかわらず、そこに人間関係や小さな希望や打算が渦巻いていて、ただ暗いだけの舞台にならない。この「生き残りの社会を描く」方向性が、プレイ後に妙な後味として残り、語りたくなる理由になっています。
“人間が怖い”場面の説得力:悪魔より先に社会の歪みが刺さる
良かった点として印象に残るのが、悪魔との戦いが単純な勧善懲悪になりにくいところです。閉鎖空間に秩序を敷けば、そこには必ず歪みが生まれる。誰かを守るルールは、同時に誰かを切り捨てる刃になる。本作はその現実味を、会話やイベントの積み重ねでじわじわ見せていきます。結果として、プレイヤーは“敵を倒せば解決”という単純な気分転換を得にくい代わりに、次の展開を見る動機が強くなります。勝っても苦い、助けても割り切れない、選んでも後味が残る。そういう場面の連続が、作品の芯を太くしています。
悪魔交渉の手触りが深い:運任せではなく「読み合い」として成立する
女神転生の顔である悪魔交渉が、本作では特に“会話の勝負”として際立ちます。単に戦闘を回避するためのコマンドではなく、相手の性質を探り、こちらの提示や態度を調整し、通じる瞬間を作る行為になっているため、成功したときの快感が独特です。力でねじ伏せるのではなく、言葉で状況を変える。しかもそれが、終末世界の不安定さの中で成立するからこそ価値がある。交渉の成否がプレイヤーの判断や準備に結びつきやすく、「上達した」という実感が得られるのも良いところです。
仲魔育成が“連れて歩く理由”になる:作って終わりではなく、育てて完成させる喜び
合体して強い仲魔を得るだけでなく、その仲魔を連れ回し、経験を積ませ、技能が揃っていく過程を楽しめる点が評価されます。お気に入りの仲魔が“使い捨ての素材”になりにくく、育てるほどに働き方が洗練され、パーティの要として頼りになっていく。こうした成長の密度があると、攻略が「最適解の仲魔を作る作業」ではなく、「自分の隊を鍛えていく旅」になります。合体と育成が対立せず、合体で骨格を作って育成で血肉を与える感覚があり、育成好きのプレイヤーほど満足度が高くなりやすいです。
仲魔にも装備という発想が効く:パーティ編成が“人間だけ”のゲーム並みに奥深い
仲魔にも装備の概念が深く絡むため、戦術の幅が広がるのも大きな長所です。前衛に立つ仲魔は耐久を整え、後衛の仲魔は支援や射撃の役割を持たせるなど、単純に属性やスキルだけでなく“運用の仕立て”で性能が変わります。これにより、同じ仲魔でも使い方で強さが変わり、プレイヤーの工夫がそのまま結果に繋がりやすい。装備や役割分担を詰めるほど戦闘の事故が減り、難しい局面でも「準備で勝った」と感じられる場面が増えていきます。
パラメータ設計が多層で面白い:伸ばし方が“キャラの個性”に見えてくる
能力値が多いタイプの作品は、人によっては取っつきにくい反面、刺さる人にはとことん刺さります。本作はまさにその方向で、単純な力押しに寄り切らず、直感や精神面の要素を含む複合的な育成が、主人公像に陰影を作ります。万能にするより「こういう役割の主人公にする」と決めて育てると、装備選び、仲魔の揃え方、戦闘の立ち回りまで一本の線で繋がっていき、ビルドの面白さが強く出ます。育成が“攻略のための作業”ではなく、“自分の主人公を作る遊び”になる点が、良かったところとして語られやすいです。
リアルタイム寄り戦闘の緊張感:上手く回った瞬間の快感が強い
戦闘がテンポよく進み、判断の遅れが損に直結しやすい設計は、万人向けではない反面、噛み合ったときの快感が非常に強いのが魅力です。危険な敵を見抜いて先に潰す、回復のタイミングをズラして崩れを防ぐ、交渉で流れを変える、仲魔の役割を信じて初動を固定する――こうした判断が連続するぶん、勝利が“計画の成果”として体に残ります。ターン制のような落ち着きはない代わりに、「生き延びた」という実感が得られやすく、終末世界の題材と相性が良いと感じる人が多いです。
探索の怖さが“ゲームとして成立”している:欲張りと撤退の判断が面白い
ダンジョン探索では、進むほど消耗し、引き返すにも危険がある、という終末らしい不安が続きます。このとき、プレイヤーは常に「どこまで欲張るか」を問われます。もう少し奥に行けば収穫があるかもしれないが、事故が起きれば全てを失うかもしれない。この葛藤がゲームの中心体験として成立していて、単にマップを埋める作業にならず、緊張と計算の往復になります。全滅を避けて帰還し、整えて再挑戦するという王道ループが、重い世界観に“手触りのある達成感”を与えています。
ビジュアルとトーンが統一されている:派手さより「気分」を優先した作り
本作は、派手な演出でテンションを上げるより、画面全体の陰影やキャラクターの硬質さで“終末の気分”を維持する方向が強いです。PCオリジナル色のある作品だからこそ、家庭用的な分かりやすいカッコよさではなく、じっとりした不安や背徳感を前面に出せる。その統一感が、好きな人には唯一無二の味になります。音や間の取り方も含め、明るく盛り上げるより、プレイヤーの心拍を落ち着かせない方向でまとまっているため、「怖いのに進めてしまう」引力が生まれます。
刺さる人には“代替がない”タイプ:一度ハマると抜けにくい独自配合
総じて良かったところは、世界観・育成・交渉・戦闘テンポが、同じ方向の温度でまとまっている点です。暗い世界で、言葉と準備で道を切り開き、仲魔を育てて隊を作り、緊張の高い戦闘を抜け、消耗と撤退の判断を繰り返す。この循環がハマると、他の女神転生や他社のRPGでは埋めにくい“PC外伝ならではの隙間”を満たしてくれます。クセはあるけれど、クセがあるからこそ濃い。プレイの手間や重さを含めて「それが良い」と言える人にとって、本作は強く記憶に残る良作になりやすいです。
■■■■ 悪かったところ
“人を選ぶ”を超えて、最初の入口が硬い:慣れる前に疲れてしまう
偽典・女神転生 東京黙示録で不満点として挙がりやすいのは、世界観やシステムが濃いぶん、導入からプレイヤーに要求してくる理解量が多いところです。女神転生に慣れている人でも、本作はTRPG寄りの設計や複合パラメータ、装備条件など、把握しないと損をする要素が多く、最初の数時間で「面白くなる前に疲れる」ことがあります。シリーズの中でも外伝色が強いぶん、家庭用のテンポや説明の親切さを期待して入るとギャップが大きく、「何が正解か分からないまま消耗する」感覚になりがちです。これは慣れた後には味になるのですが、入口の硬さとしては大きな欠点になりえます。
説明不足・情報不足が起きやすい:理解の遅れがそのまま損失になる
古いPCゲームらしい弱点として、チュートリアル的な案内が手薄に感じられる点が語られます。アイテムや技能の扱い、パラメータの意味、交渉の癖など、経験で学べば分かる一方、初見では「知らないと不利」になりやすい。特に本作は事故が起きると立て直しが難しい局面があり、理解する前に痛い目を見て、そこで気持ちが折れるケースが出ます。結果として、プレイヤーはゲームを攻略する以前に“ルールを推測するゲーム”を強いられているように感じることもあり、ここが好みに合わない人にはストレスになります。
戦闘テンポが環境で変わり、体感難易度が揺れる:理不尽に感じる原因になりやすい
本作の欠点として特に厄介なのが、戦闘がリアルタイム寄りであることに加え、テンポがPC環境(CPU速度)に左右されやすいと言われている点です。想定より速い環境では、こちらがコマンドを選んでいる間に敵が何度も動き、実力以前に操作が間に合わない状況になりやすい。これが「難しい」ではなく「理不尽」に繋がり、作品評価を下げる大きな要因になります。逆に、想定に近いテンポで遊べた人は適正難易度として楽しめるため、同じゲームでも評判が割れる原因にもなりました。現代に遊ぶ場合も、この点を知らずに触ると、まずここで拒否反応が出やすいです。
操作感の差が出やすい:PC-98文化とWindows環境の断層が残る
同一タイトルでも、PC-98版とWindows版では移動や操作の感覚が変わるとされ、これが遊びやすさの評価に影響します。特にテンキー移動に慣れている人にとっては、移動の手触りが変わること自体がストレスになりやすい。逆にマウス中心に慣れている人は、当時のUI作法を「もっさり」「回りくどい」と感じることもあります。どちらが上というより、入力の作法が違うだけなのですが、探索と戦闘の密度が高いゲームほど操作感の差は大きく響きます。快適さで現代的RPGと比べると、どうしても分が悪いところです。
過激描写が“必要以上に目立つ”ことがある:気分が沈む、あるいは受け付けない
本作は残酷さや性的ニュアンスを含む表現が強めで、そこが話題性や独自性として支持される一方、苦手な人には明確な拒否反応を生みます。物語を暗くしたい意図は理解できても、映像的な刺激が強すぎて気分が沈む、あるいは「そこまで見たくない」と感じてしまうことがある。さらに、過激さが注目されすぎることで、作品の魅力(育成や交渉や世界観の密度)より“ショッキングさ”が先行し、結果として本来の面白さに辿り着けないまま評価が固まってしまうケースもあります。
バランスが尖っている:強い戦術を掴むまでが長く、掴むと単調になりやすい瞬間もある
本作は理解が進むほど戦いやすくなる一方で、強い運用パターンに辿り着くまでが長い、という不満が出やすいです。序盤は資源が薄く、仲魔や装備も揃わず、できることが少ない。そこでリアルタイム寄り戦闘の負荷が重なり、難しさが尖って見えます。逆に中盤以降、安定する隊列や技能構成を掴むと、同じ型で押し切れる場面が増えて、緊張が薄れる瞬間もあります。これは“成長の成果”とも言えますが、戦闘テンポが速いぶん、単調さを感じたときの消耗も早い。緊張と作業の境目が、プレイヤーによっては見えやすいゲームです。
世界観の暗さが休憩を許さない:遊ぶ体力がいる
雰囲気が常に陰鬱で、安心できる場面が少ないため、プレイの合間に気分をリセットしにくいという弱点もあります。明るいイベントや爽快な逆転が少ないわけではないですが、基本的には「重い空気を吸い続ける」タイプの体験です。短時間でちょっと遊ぶ、というより、腰を据えて“世界に浸かる”必要がある。これは濃厚な魅力と表裏一体ですが、仕事や生活の合間に気軽に遊びたい人には向きにくい。結果として、最後まで走り切れず途中で止まる、という感想にも繋がります。
現代プレイの障壁:入手性・動作環境・調整の手間が“ゲーム外のストレス”になる
これは内容そのものとは別ですが、現代に遊ぶ場合は、対応環境の用意や動作調整が必要になりやすく、ここが不満として語られます。特に戦闘速度の問題がある以上、環境の違いが体験を壊す可能性があり、プレイヤー側が整える前提になりがちです。「ゲームを始める前に準備がいる」こと自体が、今の感覚だと大きなハードルになります。作品の魅力に辿り着くまでの“外側の手間”が、悪かったところとして強く残る人もいます。
まとめ:欠点は多いが、欠点の多くが“尖った設計”の裏返し
偽典・女神転生 東京黙示録の悪かったところは、親切さの不足、環境依存の戦闘テンポ、操作感の古さ、過激表現の強さ、暗さによる疲れやすさ、といった「現代的な快適さ」と正面からぶつかる要素に集約されます。ただし、これらは作品の個性と表裏一体でもあり、合わない人には苦痛だが、合う人には唯一無二の味になる。だからこそ“人を選ぶ”の言葉が常に付きまといます。欠点を理解して受け入れられるかどうかが、そのまま評価の分岐点になるゲームです。
[game-6]
■ 好きなキャラクター
「好き」は性能だけで決まらない:終末の物語で光るのは“役割”と“弱さ”
偽典・女神転生 東京黙示録で語られる「好きなキャラクター」は、単純に強い/かわいい/かっこいいだけで固まりにくい傾向があります。舞台が終末で、登場人物がそれぞれに傷や事情を抱えているため、プレイヤーが惹かれるポイントも「戦闘力」より「この状況でどう振る舞ったか」「誰を守ろうとしたか」「どこで弱さを見せたか」といった“生き方”に寄りやすいのが特徴です。さらに本作は、閉鎖社会(シェルター)と荒廃地上という二重の地獄を行き来する構造があり、キャラクターの価値観や覚悟が場面ごとに試されます。そのため、好きな理由が「頼りになる」だけでなく、「危ういのに放っておけない」「信じたいけど疑ってしまう」といった複雑な感情に繋がりやすい。ここでは、よく名前が挙がりやすい人物像を中心に、“好きになりやすい理由”を掘り下げます。
葛城史人(主人公):不器用な執念がプレイヤーの手で“意味”に変わる
主人公を好きだと言う人の理由は、派手なカリスマ性よりも、芯の固さと不器用さに集まります。終末の地下社会で生き、悪魔によって家族を奪われた背景を抱えながら、それでも自分の足で前へ進もうとする。その姿勢はときに危うく、周囲を巻き込むこともありますが、だからこそ「プレイヤーが操作することで救いたい」と思わせる力があります。育成や覚醒、仲魔編成といったゲーム的な手段が、そのまま主人公の成長と重なりやすい点も大きいです。プレイヤーが慎重に強く育てれば、ただの被害者ではなく“生き残るための意思”を体現する存在になる。逆に無理をすれば脆さが露呈する。こうした手触りが、主人公への愛着を強め、「自分の葛城史人」という感覚に繋がります。
橘由宇香:エリート性と人間臭さの同居が、終末の物語で際立つ
由宇香を好きになる人が挙げがちなポイントは、“強い立場にいるのに、完全に強い人間ではない”ところです。エリート階級としての背景があると、普通は鼻につく方向へ転びやすいのですが、終末の世界ではその優位がそのまま責任や孤独に繋がります。由宇香は、理屈で割り切れない現実にぶつかりながらも、逃げずに前へ出ようとする。そのときに見せる迷いや焦り、そして踏みとどまる意志が、ただの優等生ではない人間味になります。パーティの中での役割としても、主人公の独走を止めたり、逆に背中を押したりと、関係性の揺れが物語に厚みを出すため、「いるだけで空気が締まる」キャラクターとして好かれやすいです。
飛鳥泪:謎と透明感が、荒廃世界の“異物感”として魅力になる
泪(るい)が人気になりやすいのは、彼女が物語の中で“説明しきれない余白”を担っているからです。地上で出会う少女という導入は王道ですが、本作はそこに安心感ではなく不穏さを混ぜます。泪は素性が見えにくく、感情の輪郭も掴みにくい。だからこそ、プレイヤーは彼女の一言一言に意味を探し、行動の裏を読みたくなります。終末の世界では、誰かの正体が「味方か敵か」を決めることすらあり、その緊張の中で泪の存在は物語の磁石になります。好きだと言う人は、彼女の弱さや儚さに惹かれるだけでなく、「彼女は何者なのか」という問いに取り憑かれたまま進めてしまう。結果として、物語を引っ張る“気になる存在”として強く印象に残ります。
早坂達也:実直さが武器になる――終末で頼れる“現場の人”
達也が支持される理由はシンプルで、状況が崩れても仕事をするタイプだからです。終末世界の物語では、理想を語る人や野心に燃える人は目立ちますが、実際に危機を越えるのは“地に足のついた実務”だったりします。達也は格闘戦を得意とする戦闘要員で、言葉より行動、理屈より現場という気配を持っています。その実直さは、陰謀や疑心暗鬼が渦巻く空気の中で貴重な“基準点”になります。プレイヤーが迷ったときに、達也のような分かりやすい軸があると、パーティが崩れにくい。好きになる人は、彼の強さそのものより、「彼がいると安心して探索できる」という体感を理由に挙げることが多いです。
桐島英美:メカニックの視点が、終末の世界を“現実”に引き戻す
英美が印象に残るのは、終末や悪魔といった非日常の中に、技術者としての生活感を持ち込むからです。武器や装備、補給、修理といった要素は、ゲーム的には単なる数値調整に見えがちですが、英美の存在はそれを「生き延びるための段取り」に変換します。現実的に考えれば、悪魔と戦うには銃も防具も整備が必要で、補給が切れれば死ぬ。その当たり前を思い出させてくれるキャラクターは、物語の中で意外と希少です。好きになる人は、華やかなヒロイン性より、「現場の汗が似合う」「派手じゃないのに欠かせない」という役割に惹かれます。終末を“空気”だけでなく“生活”として感じさせる点で、英美は作品のリアリティを支える存在です。
西野義雄:組織の人間としての葛藤が、渋い魅力になる
西野のような隊長格は、作品によっては単なる上司役で終わりますが、本作の世界では「組織に属する」ということ自体が重い意味を持ちます。守るべき規律、責任、部下の命、上層の意向、そして個人の感情。これらが絡み合う中で、西野は単純な善人にも悪人にもなりきれない立場に置かれやすい。好きになる人は、その曖昧さに魅力を見ます。明確なヒーローではないが、冷たい機械でもない。状況に応じて判断を変えざるを得ない“現実の指揮官”としての渋さが、終末の物語では強い説得力になります。
山瀬勇:皮肉屋の裏にある優しさが、苦い世界で光る
勇のような皮肉屋キャラは、暗い物語でこそ活きます。彼が軽口を叩くのは、空気を壊すためというより、空気に押しつぶされないための防御に見える瞬間があるからです。銃の扱いに長けるという分かりやすい強みを持ちながら、口の悪さや距離感で自分の心を守っているように感じられる。こうした“傷の隠し方”が分かる人は、勇に強く惹かれます。終末の中で、優しさをストレートに出すのは難しい。だからこそ、皮肉の隙間から見える気遣いが印象に残り、「好き」の理由になりやすいです。
相馬三四郎:失われた世界を背負う“旅人”の香りがする
隻腕の青年・三四郎のような人物は、物語に“過去の重み”を持ち込みます。大破壊前の仲間を探しているという動機は、終末の世界ではとても贅沢で、同時にとても痛い。生き残ることだけが正義の世界で、誰かを探すために動くというのは、希望にも執念にも見えます。好きになる人は、その執念の美しさに惹かれるだけでなく、「過去を諦めない」という姿勢が世界観に対する反抗に見える点を評価します。終末が“終わり”であるなら、彼は終わりを終わりのままにしない。そういう存在として、印象に残りやすいキャラクターです。
結局いちばん好かれやすいのは「弱さを抱えて進む人」
本作で語られる“好きなキャラクター”は、完璧で強い人より、欠けた部分を抱えたまま前へ進む人に集まりやすい傾向があります。閉鎖社会の息苦しさ、荒廃地上の危険、悪魔の脅威、人間の歪み――その全部の中で、綺麗に割り切れる人物はむしろ少ない。だからこそ、迷いながらも選ぶ、傷を抱えながらも動く、信じたい相手を信じようとする。そうした瞬間が、プレイヤーの心に引っかかり、「好き」の根拠になります。偽典・女神転生 東京黙示録は、キャラクターの華やかさで惹きつけるというより、“終末での振る舞い”で惹きつける作品であり、そこがキャラ語りを濃くする理由でもあります。
[game-7]
●対応パソコンによる違いなど
まず押さえておきたい“2つの版”:PC-98版(1997)とWindows版(1999)
『偽典・女神転生 東京黙示録』は、同じ内容を核にしつつも、当時のPC事情に合わせて「PC-9800シリーズ向け(PC-98)」と「Windows 95/98向け(Windows)」の2系統で展開された作品です。発売時期も分かれており、PC-98版が1997年、Windows版が1999年という流れになります。 ここで重要なのは、単に動作OSが違うだけでなく、入力デバイスの前提や画面処理・速度感といった“遊びの手触り”が別物になりやすいことです。本作はそもそも、仲魔や装備、パラメータが多層で、さらに戦闘テンポが独特という尖った個性を持っています。その尖りが、PC-98文化(テンキー移動・DOS由来の操作感)と、当時のWindows環境(マウス主体・OS側の制約)の違いによって、体験として増幅されたり、逆に一部が削がれたりします。そこで以下では「何がどう変わるのか」を、遊ぶうえで体感に直結する順に整理していきます。
いちばん体感差が出るのは移動:PC-98はテンキー移動が活き、Windowsは一部の動きが削がれる
探索型RPGで重要なのは、戦闘以前に“歩き回る気持ちよさ”です。本作はマウスでもキーボードでも操作できるように設計されていますが、PC-98版ではテンキー移動が強く機能しており、独特の小回り(いわゆる横歩きのような挙動)まで含めて、ダンジョンを細かくさばける感覚がありました。 一方でWindows版は、このテンキー由来の移動要素が廃されているとされ、探索や戦闘で“できなくなる行動”が出る点が語られています。 この違いは、単なる好みでは終わりません。たとえば、狭い通路で敵や危険を避けながら位置取りする、曲がり角で視界と距離を調整する、戦闘の初動に向けて間合いを作る……といった「事故を減らすための丁寧な操作」が、PC-98側のほうが肌に馴染みやすい人がいます。逆に、Windows側は“割り切った操作”に寄るため、慣れると簡潔でも、PC-98の手癖で遊ぶ人ほど違和感が残りやすい。ここが「同じゲームなのに、遊び心地が違う」と言われる最大の理由です。
戦闘テンポの問題:CPU速度依存が“版の違い”以上に体験を変えてしまう
本作の戦闘は、敵味方がリアルタイムで進行する方式が採用されており、ターン制のように落ち着いてコマンドを選ぶ感覚とは違います。 しかも厄介なのが、戦闘速度がCPU速度に依存して変化し、想定より高速な環境だとプレイヤーが1回行動する間に敵が複数回動くなど、難易度が一気に跳ね上がる可能性がある点です。 つまり、PC-98版/Windows版の差以前に、「どんな速度で動いてしまうか」がゲーム性そのものを変えます。現代的な感覚で言えば“フレームレートが固定されていないアクションに近い危うさ”があり、適正速度なら緊張感として成立するものが、過剰に速いと理不尽へ転びます。実際、当時のOSに合わせたゲームバランスのため、現行環境では敵の行動が速くなりすぎる、といった趣旨の指摘も見られます。 ここは「Windows版だから速い/PC-98版だから遅い」と単純化できません。むしろ“想定環境に近づけられるか”が鍵で、版の違いはその次に効いてくる、と考えたほうが納得しやすいです。
動作環境と周辺機器:PC-98はDOS前提の匂いが強く、音源やマウス条件も当時の作法
PC-98版は、作品情報としてMS-DOSが必要とされることが明記されています。 さらに販売情報ベースでは、i486 33MHz以降、メモリ8MB以上、MS-DOS 5.0以降(またはWindows95)、バスマウスが必要、FM音源およびMIDI音源(GS規格)対応、といった当時らしい要件が挙げられています。 ここから分かるのは、PC-98版は「DOSゲームとしての血統」が濃いことです。音源もFMとMIDIを前提にしているため、鳴らし方・鳴り方が“PC-98末期の濃い質感”として印象に残りやすい。操作もまた、マウスが前提に入っている点が面白く、当時のRPGとしては比較的マウス運用を意識した部類と言えます(ただし、キーボード中心の文化も同居しているため、そこで好みが割れます)。 Windows版は対応機種としてWindows 95/98が示されており、時代としては「家庭や職場にWindowsが浸透し、PC-98文化が薄れていく」流れに沿った展開です。 ただし、Windowsだから即“現代PCで快適”という意味ではなく、前述の戦闘速度問題などが絡むため、動けばそれでOK、というタイプの移植ではありません。
画面・操作の“気分”の違い:PC-98は手触りが濃く、Windowsは整理される代わりに失うものがある
PC-98版の魅力は、テンキー移動を含む操作の細やかさ、そしてDOS由来の“手で動かしている感”が、終末世界の重さと妙に噛み合うところです。探索中の小さな入力が積み重なって緊張を作り、その緊張が物語の陰鬱さと同じ温度で続く。結果として、プレイヤーは「世界に浸かっている」時間が長くなります。 対してWindows版は、環境としては一般的でも、PC-98的な移動の一部が廃されることで、遊びの一部が“簡略化”されます。 これは良し悪しがはっきりしていて、PC-98の癖を面倒と感じる人には入りやすい一方、PC-98の操作感まで含めて作品の味だと思う人には物足りない。ここで面白いのは、どちらも単純に上位互換ではなく、「作品の尖りがどこに残るか」が変わる点です。尖りの残り方が違うので、好きな人は“自分に合う版”を選びたくなります。
他ハードへの展開はどうなのか:基本はPC(PC-9821/Windows)に留まった“幻感”
女神転生シリーズは家庭用へ広がっていく流れが強い中で、本作は“PCでしか触れにくい外伝”として語られがちです。実際、PC-9821とWindows PCのみでリリースされた、と紹介されることもあります。 この「PCに留まった」事実が、作品の雰囲気をさらに特殊にしています。PCオンリーだからこそできた表現の濃さ、TRPG的な設計の振り切れ方、当時のPCユーザーの空気を吸ったような暗さ。もし家庭用へ大きく移植されていたら、どこかで整えられ、丸くされていたかもしれない――そう想像させる“未整理の魅力”が、本作の伝説性を支えています。
結論:違いは「どっちが上」ではなく「どの癖を選ぶか」
PC-98版は、テンキー移動を含む細かな操作と、DOS文化の濃い手触りが残り、探索の身体感覚が強い。一方Windows版は、Windows 95/98の一般性に寄る代わりに、PC-98由来の一部の動きが失われる。 そして両者をまたいで最大の注意点になるのが、戦闘テンポがCPU速度に依存し、環境次第で難易度が激変しうることです。 だからこそ、本作の“対応パソコンによる違い”は、スペック表の差というより「プレイ感の差」をどう受け止めるかに尽きます。終末の空気にどっぷり浸かって、操作の癖ごと味わいたいならPC-98の方向性が合いやすい。逆に、当時のPC-98作法に馴染みが薄いならWindowsの方が入口としては整って見えることがある。ただし、どちらにせよ“速度の適正化”ができないと、作品の面白さより先にストレスが勝つ。ここを理解したうえで選ぶと、同じ『偽典』でも、まったく違う手触りの終末旅行になります。
[game-10]●同時期に発売されたゲームなど
★信長の野望・将星録
:シリーズの“地図を眺めて采配する快感”を、立体感のある戦国へ押し広げた一本 ・販売会社:光栄(現コーエーテクモ系) ・販売された年:1997年 ・販売価格:11,800円(当時の予定表記) ・具体的なゲーム内容:全国図をただの平面ではなく、見下ろし視点の“城下と地形が立ち上がる”感覚で捉え直し、城の押さえ方や兵站の意識を強く求める歴史SLG。合戦だけが見せ場ではなく、領内の整備や人材の活用、外交の駆け引きがそのまま戦の強さに直結するため、プレイヤーの性格がプレイ結果に出やすいのが魅力です。大名としての大局観と、前線の現実の両方を同時に見せてくる作りで、終末世界で“資源を回す”偽典とは別方向の重さを味わえます。
★ルナティックドーン ~Passage of The Book(前途への道標)~
:物語を“読む”より、世界を“彷徨う”ことが主役になるRPG ・販売会社:アートディンク ・販売された年:1997年 ・販売価格:7,800円 ・具体的なゲーム内容:固定の主人公像を押しつけるより、冒険者として稼ぎ、成長し、危険と取引しながら自分の旅を組み立てるタイプのRPG。新マップやモンスター、アイテムが追加され、音楽も新規という“遊びの手触り”を拡張する方向の進化が特徴で、ストーリーに導かれるというより「何をして生き延びるか」を積み上げていく設計です。偽典が“濃い設定と尖ったシステムで押してくる終末譚”なら、こちらは“世界の空気を吸いながら自分の物語を作る放浪譚”。同じ時代のPC RPGでも、求める没入の質が違います。
★ロードモナーク First
:短い手数で勝ち筋を作る、軽快だけど頭を使う“陣取り系” ・販売会社:日本ファルコム ・販売された年:1997年 ・販売価格:2,800円 ・具体的なゲーム内容:大軍同士のド派手な戦争ではなく、ユニットの増え方・陣地の広げ方・相手の手を読むタイミングが勝敗を分けるシミュレーション。マップを一新した“新しい盤面”で、序盤の小さな一手が終盤に雪だるま式に効いてくるので、派手さより判断の鋭さが気持ちよさになります。長時間の重厚作の合間に挟んでも成立するテンポの良さがあり、PCゲームらしい“手触り重視”の一本として挙げやすい存在です。
★レイヤーセクション
:アーケードの張り詰めた火力感を、PCで追いかける移植系シューティング ・販売会社:ゲームバンク ・販売された年:1997年 ・販売価格:5,800円 ・具体的なゲーム内容:縦スクロールSTGの“弾幕というより、圧で押してくる敵編隊”を、正確なショット運用と位置取りで切り抜けるタイプ。家庭用でも知られた作品をPCへ持ち込み、アーケードの緊迫感を自室で味わう、という当時のロマンを体現しています。偽典が“判断の遅れが死に直結する”緊張なら、こちらは“指先の遅れが死に直結する”緊張。ベクトルは違っても、胃が締まる感じは同じです。
★マスターオブモンスターズ 魔道王の試練
:召喚と戦術の組み合わせで、盤面そのものを制圧していくSLG ・販売会社:システムソフト ・販売された年:1997年 ・販売価格:8,800円 ・具体的なゲーム内容:モンスター運用の戦術SLGとして積み上げてきた系譜を、グラフィック刷新+要素追加で作り直したタイプ。部隊相性、地形、展開速度など“盤面の理屈”が強く、正面衝突で押し切るより、勝ちやすい形を作ってから叩くのが楽しいゲームです。偽典の仲魔運用が“会話と合体で編成を練る面白さ”なら、こちらは“盤面の位置と相性で勝ち筋を練る面白さ”。思考の使いどころが近いのがポイントです。
★ToHeart
:日常の積み重ねが、そのまま“好き”の説得力になるビジュアルノベル系 ・販売会社:Leaf ・販売された年:1997年 ・販売価格:5,800円(税抜表記の製品情報) ・具体的なゲーム内容:大事件で引っぱるというより、学校生活や何気ない会話の温度でキャラクターの距離が変わっていき、選択の積み重ねが“関係のかたち”として結実するタイプ。攻略の本質はフラグというより、誰の言葉に耳を傾け、どの時間を大切にしたか、という感情の配分に近いところがあります。終末の暴力性で心を揺さぶる偽典とは真逆の方向で、当時のPC市場で強い存在感を放ったジャンルの代表例として挙げやすい一本です。
★ホワイトアルバム
:夢と現実の間で揺れる“関係の負荷”を、選択で受け止め続ける物語 ・販売会社:Leaf ・販売された年:1998年 ・販売価格:9,680円 ・具体的なゲーム内容:恋愛の甘さだけで進むのではなく、仕事・立場・嫉妬・すれ違いといった、現実の重さが関係に乗ってくるタイプのドラマ性が特徴。プレイヤーは「正しい答え」を選ぶというより、どの痛みを引き受け、どの未来を優先するかを迫られます。偽典が“世界が壊れた後の倫理”を問うなら、こちらは“日常の中で壊れていく倫理”を問う感触があり、方向は違っても、読後に残る苦味が記憶に残りやすい作品です。
★ONE ~輝く季節へ~
:テンプレに見える日常から、感情の芯へ潜っていく“泣き”の設計 ・販売会社:Tactics ・販売された年:1998年 ・販売価格:8,580円 ・具体的なゲーム内容:序盤は軽いノリや日常の会話で距離を縮めつつ、中盤以降で“それぞれが抱えていた欠け”が輪郭を持って立ち上がり、プレイヤーの選択が救いにも傷にもなる構造。テンポよく読めるように見せながら、実際は感情の伏線を細かく積み上げて回収していくタイプで、プレイ後に「あの言葉、そういう意味だったのか」と効いてくる場面が多い。偽典の覚醒や成長が“システム上の変化”として刺さるなら、こちらは“感情上の変化”として刺さる、同時代PCの別ベクトル代表です。
★Kanon
:同じ街を巡るほどに、季節と記憶が“物語の装置”になる ・販売会社:Key ・販売された年:1999年 ・販売価格:9,680円 ・具体的なゲーム内容:雪の街という環境そのものが、人物の過去や距離感と結びつき、何気ないやり取りが後で強い意味を持って返ってくる構造が特徴。ルートごとに異なる物語を辿りながら、共通する“記憶の影”が街の空気に溶けていて、プレイヤーは推理するように感情の因果を拾っていきます。終末の陰惨さを直球で見せる偽典に対し、こちらは静かな冬景色で心の痛みを浮かび上がらせるタイプ。同じPC時代の作品でも、心の削り方が違うのが面白さです。
★BOMB JACK(Windows移植)
:アーケードの“手触り”そのものを、PCで保存する発想の移植作 ・販売会社:マインドウェア ・販売された年:1997年 ・販売価格:5,800円 ・具体的なゲーム内容:単に遊べるようにするのではなく、アーケードの感覚を“できるだけそのまま再現する”ことに価値を置いた移植。縦画面モードのような遊びやすさの工夫に加え、資料的なおまけ要素も同梱される予定が語られており、“ゲームを保存する”という視点が早い段階から見えるのがポイントです。偽典がPCならではの尖りを残した作品なら、こちらはアーケード文化をPCへ持ち込むことで尖りを残す作品――同時代のPC市場の広さを感じられる一本として挙げられます。
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