ナツメアタリ 【Switch】奇々怪界 黒マントの謎 [HAC-P-A43XC NSW キキカイカイ クロマントノナゾ]
【発売】:ソニー
【対応パソコン】:MSX2、Windows
【発売日】:1987年9月21日
【ジャンル】:アクションシューティングゲーム
■ 概要
ソニーなどから発売されたパソコン用『奇々怪界』(MSX2版/Windows版)は、1986年にアーケードで登場したタイトーの同名タイトルを、自宅のPC環境で味わえるようにした移植版です。神社の若い巫女「小夜(さよ)」が主人公となり、日本各地の神社や街道、妖しげな寺社を舞台に、次々と現れる妖怪たちと戦いながら七福神を救い出していく、見下ろし視点のアクションシューティングゲームに分類されます。アーケード版はタイトーから稼働を開始し、その後MSX2やファミコンディスクシステム、PCエンジン、さらにはWindows向けにも展開されましたが、その中でもMSX2版はソニーのHiTBiTブランドから登場し、MSX2ユーザーにとって憧れの1本となりました。
● 和風テイストあふれる独特の世界観
『奇々怪界』を語るうえで欠かせないのが、「和」の雰囲気に全振りしたビジュアルと設定です。当時のシューティングゲームは、宇宙空間を飛び回る戦闘機や、近未来兵器が登場するSF世界を舞台にしたものが主流でしたが、本作では一転して、灯籠が並ぶ参道や鳥居、社殿、古びた橋といった日本人には見慣れた風景がステージとして描かれます。そこに、提灯お化けやからかさ小僧、のっぺらぼうなどの妖怪たちがひしめき、コミカルでありながらどこか薄暗い「怪異の日本」が広がっていきます。プレイヤーは小夜を操作し、お札を飛ばす遠距離攻撃と、払い串による近距離攻撃を駆使して妖怪を退治しながら前進していきますが、その一挙手一投足が、まるでお祓いの儀式をゲーム化したかのような独特のリズムを生み出します。神話や民間伝承をモチーフにしながら、怖すぎず、かといって子ども向けに単純化しすぎない絶妙なデフォルメ感覚が、他のどのシューティングとも違う個性を与えています。
● 七福神救出の冒険譚というわかりやすい物語
物語の枠組みは非常にシンプルです。ある夜、小夜の元を訪れた七福神が、突如現れた妖怪の軍勢にさらわれてしまい、各地へ連れ去られてしまいます。プレイヤーは巫女である小夜として、行く先々に巣食う妖怪たちの群れを払いながら、囚われの神々を救出していくことになります。ステージを進むごとに、地形や背景の雰囲気は少しずつ変化し、素朴な神社の境内から、陰の気が濃い山奥の社、巨大な妖怪がはびこる魔境へと、世界のスケールが徐々にスライドしていきます。アーケードゲームらしく派手な会話イベントや長いデモシーンはありませんが、ステージ構成に合わせて背景や敵キャラクターが変化していくことで、七福神救出という道筋が自然にプレイヤーの頭の中で補完されるようになっています。「難しい設定を覚える必要がなく、妖怪退治を続けていくうちにいつの間にかクライマックスへたどり着く」という構造は、家庭用への移植版であるMSX2・Windows版でもきちんと受け継がれています。
● 基本的なゲームシステムと操作感
ゲーム画面は縦長のフィールドを上方向へ進んでいく構成で、8方向レバー+2ボタンというアーケード版の操作体系をPC向けにアレンジして再現しています。プレイヤーは方向キーまたはジョイスティックで小夜を移動させ、1つ目のボタン(キー)で前方に払い串を振って近くの敵をなぎ払い、もう1つのボタンでお札を飛ばして遠距離から攻撃します。お札は敵を一撃で倒せることも多い強力な手段ですが、画面に映る敵は四方八方から押し寄せてくるため、至近距離に詰め寄られたときには払い串での素早い応戦が重要になります。ステージ中には、壺や灯籠、賽銭箱など、攻撃を当てることで中身が飛び出すオブジェクトが点在しており、そこからは得点アイテムやパワーアップアイテムが出現します。攻撃力を一時的に高めるお札強化、移動速度アップ、一定時間無敵になる守りのアイテムなどを使いこなすことで、押し寄せる妖怪の波を切り崩して進む手応えが生まれます。操作そのものは極めて直感的ですが、アイテムの取得順や使いどころを考えないとすぐに追い詰められるため、「シンプルながら奥行きのあるゲーム性」を持った作品だと言えるでしょう。
● MSX2版『奇々怪界』の位置づけと特徴
ソニー(HiTBiT)から発売されたMSX2版『奇々怪界』は、当時としては贅沢な部類に入る移植作でした。アーケードゲームを家庭のパソコンで遊べること自体がまだ珍しく、しかもMSX2のグラフィック機能を活かして、縦長のプレイフィールドやキャラクターの色使いを可能な限り再現しようとした意欲的な作りになっていました。アーケード版に比べると、表示色数やスプライトの制約から演出が簡略化されている部分はあるものの、神社の鳥居や灯籠、橋など、印象的なオブジェクトはしっかり描き込まれており、「パソコンでここまでやれるのか」と驚かせるビジュアルを実現しています。また、全体的なゲーム内容はアーケード版に沿った構成でありながら、敵の攻撃がやや苛烈になっていたり、序盤から後半ステージの敵が顔を出してきたりと、難度調整の面で独自の味付けが施されているのも特徴です。敵配置のアレンジによって、アーケードをやり込んだプレイヤーでも新鮮な緊張感が味わえるようになっており、MSX2版ならではの「遊び慣れていても油断できない構成」がプレイの手応えをさらに高めています。
さらに特筆すべき点として、MSX2版のパッケージや取扱説明書に力が入っていたことが挙げられます。説明書を広げると大判の紙面いっぱいに世界観紹介やイラストが並び、裏面にはすごろく風の簡単なボードゲームが印刷されているなど、「ソフトを買って箱を開けること」そのものが一つのイベントとして楽しめるような構成になっていました。こうしたアナログ的な楽しさは、パソコンゲームがまだ高価で、1本1本をじっくり味わう時代を象徴しており、『奇々怪界』というタイトルに対する思い入れをいっそう強める要素になっています。
● Windows版『奇々怪界』と近代的なリバイバル
その後、時代が進み、アーケード筐体やMSX2本体を持たない世代のプレイヤーにも向けて、『奇々怪界』はWindows向けタイトルとして再登場します。日本国内では、メディアカイトの廉価シリーズや、タイトーの往年のアーケードゲームをまとめたPC用コンピレーションなど、いくつかの形でWindows版が提供されました。これらのバージョンは、基本的なゲーム内容こそアーケード版を忠実に再現しつつも、キーボードとゲームパッドの両方に対応し、画面サイズの変更や、描画の滑らかさを微調整できるオプションが用意されているなど、現代的なPC環境で遊びやすいように手が加えられています。
また、Windows版ではインストールも比較的簡単で、CD-ROMを挿入してセットアップを済ませれば、あとはアイコンをダブルクリックするだけで「巫女さんの妖怪退治」が始まります。アーケードやMSX2版のように、本体やカートリッジ、フロッピーを用意して配線を行う手間が不要となり、ライトユーザーでも気軽に80年代の和風シューティングを体験できるようになった点は大きな意義があります。
● PC版『奇々怪界』が果たした役割
アーケードで人気を博した作品が、その後コンシューマー機やPCへと展開される例は少なくありませんが、PC版『奇々怪界』は、当時のパソコンユーザーがアーケードの最先端に触れる窓口として、そして後年にはレトロゲームファンが気軽に名作を遊び直すための入り口として機能してきました。MSX2版は、「アーケードゲームが遊べるMSX2」というイメージを強く印象づけたタイトルのひとつであり、パソコンゲーム雑誌やショップの店頭で、その和風テイストのパッケージがひときわ目を引く存在となっていました。一方、Windows版は、すでに多くのプレイヤーにとって懐かしのタイトルとなっていた『奇々怪界』を、現代の環境で再評価させる役割を担いました。アーケードアーカイブとしての価値だけでなく、「今あらためて遊んでも面白いクラシック・シューティング」として、新たなファンを獲得するきっかけにもなっています。
このように、ソニー発売のMSX2版と、その後のWindows版を含むPC向け『奇々怪界』は、単なるアーケード移植にとどまらず、和風アクションシューティングの魅力を時代ごとに別の形で伝えてきた存在だと言えるでしょう。ユーザーは、80年代当時の空気を色濃く残すMSX2版の味わい深さと、現行PCで手軽に楽しめるWindows版の利便性という、二つの異なるアプローチを通じて、巫女・小夜と妖怪たちの不思議な戦いを体験できるのです。
■■■■ ゲームの魅力とは?
● 巫女が主役の「和風アクションシューティング」という唯一無二のコンセプト
『奇々怪界』の魅力を語るうえで真っ先に挙げられるのが、「巫女×妖怪退治×シューティング」という、当時としては非常に珍しい組み合わせです。プレイヤーが操作する小夜は、白と赤の装束に身を包んだ典型的な神社の巫女でありながら、敵を前にしてただ祈るだけではなく、自ら前線に立ってお札と払い串で妖怪をなぎ倒していきます。この「清らかで楚々とした巫女」が、「どこか愛嬌のある妖怪たち」を怒涛の勢いで退治していくというギャップが、本作の最大のアイデンティティと言っていいでしょう。ステージ背景には、鳥居や狛犬、石段、灯籠といった日本人に馴染み深いモチーフがふんだんに散りばめられつつ、そこに絡みつくように妖気漂う魔方陣や、不気味な紋様の浮かぶ床が描き込まれています。可愛らしさと怪しさ、日常と非日常が同居する世界観が、プレイを続けるうちにじわじわとクセになっていき、「またあの空気を吸いに行きたい」と思わせてくれるのです。
● シンプル操作なのに奥が深い二種類の攻撃アクション
操作体系は非常にシンプルで、方向キーと2ボタン程度で完結しますが、その中に濃密な駆け引きが詰め込まれています。遠距離攻撃のお札は、敵に触れると一瞬で浄化してしまう頼れる存在ですが、連発していると出現タイミングが噛み合わず「弾切れ」のような隙が生まれる瞬間もあります。一方、払い串は射程こそ短いものの、振りが素早く、間合いさえ詰めてしまえば複数の敵を巻き込んで一掃できる心強い武器です。敵が少ないときはお札で安全に遠距離から処理し、大量の妖怪が雪崩れ込んでくる場面では、あえて前に出て払い串で道をこじ開ける――この「攻守の切り替え」を瞬時に判断する感覚が身についてくると、本作の面白さが一段階上がります。攻撃ボタンを連打しているだけではすぐに追い詰められ、画面端に追いやられてしまうため、「この敵はお札で仕留める」「この列は払い串で切り裂く」と、自然と頭の中で優先順位を組み立てるようになっていきます。システム自体は単純なのに、プレイヤーに考えさせる余地をきちんと残しているのが、『奇々怪界』ならではの味わいです。
● 妖怪たちのポップでコミカルなデザインセンス
本作に登場する妖怪たちは、ホラー映画のように恐怖心を煽る方向ではなく、どこか憎めないコミカルなデザインに統一されています。ぶよぶよとした丸い体を揺らしながら迫ってくる妖怪、ひょこひょこと跳ね回る傘、おどけた表情を浮かべる提灯など、見た瞬間に「こいつは何をしてくるんだろう」と興味をそそられるものばかりです。同時に、動き方や攻撃パターンがひとつひとつ異なっており、「見た目の印象」と「ゲーム上の振る舞い」が絶妙にリンクしている点も評価できます。のんびり歩いてくる妖怪は耐久力が高い代わりに攻撃が単調で、ひらひらと画面内を飛び回る敵は体力は低いものの、うまく軌道を予測しないと当てにくい――といった具合に、見た目を見ればだいたいの特徴が察せられるため、初めて出会う敵でも直感的に「このタイプは危険だ」「これは近寄られても対処できそうだ」と判断しやすくなっています。こうしたキャラクターデザインとゲーム性の結びつきは、ハード性能に制約があるMSX2版や後年のWindows版でもしっかりと活かされており、プレイヤーが視覚情報から素早く状況を理解し、対策を組み立てられるよう工夫されています。
● スコアアタックを誘うアイテム配置と危険な賽銭箱
ステージ各所に配置された壺や賽銭箱、灯籠などのオブジェクトを攻撃すると、中からお札強化や移動速度アップ、得点アイテムといったさまざまなボーナスが飛び出してきます。このアイテム要素が、『奇々怪界』に強いリプレイ性を与えているポイントです。敵の波をやり過ごすだけならルートを慎重に選んで進めばよいのですが、高得点を目指そうとすると、どうしても敵のど真ん中に飛び込んでオブジェクトを壊しに行かねばなりません。しかも、すべてのオブジェクトがプレイヤーに優しいわけではなく、中には敵を追加で出現させたり、弾幕のような攻撃を誘発する“罠”のようなものも紛れています。つまり、アイテムを取りに行くか、安全を優先して見送るかという選択が、常にプレイヤーに突きつけられているのです。MSX2版やWindows版でもこの構造は受け継がれており、単にアーケードの難度をなぞるだけでなく、家庭用・PC版ならではの「何度も遊び直してベストルートを探す楽しさ」を喚起する仕掛けとして機能しています。
● BGM・効果音が醸し出す、耳に残る「不思議感」
ビジュアルと同じくらい印象に残るのが、独特のサウンド面です。和楽器風のフレーズを取り入れたBGMは、どこか祭囃子を思わせる陽気さと、妖怪がうごめく夜の静けさを同時に感じさせる、不思議なムードをまとっています。軽快なリズムに乗って敵を次々と倒しているうちは心地よく、ピンチに陥ると逆にその明るさが「こんなに賑やかなのに、こっちは必死だ」という妙な緊張感を生み出します。お札を投げたときのヒュッという音、払い串が敵を浄化したときの爽快なSE、アイテム獲得時の効果音なども、短いながら耳に残るよう作られており、プレイを重ねるほどに「音を聞いただけで状況がわかる」感覚が養われていきます。MSX2版ではFM音源やPSG音源の特性を活かし、限られたチャンネル数の中でメロディと効果音のバランスを調整しながら、アーケード版の雰囲気を可能な範囲で持ち込んでいる点が好印象です。Windows版では、よりクリアで厚みのある音で再現されており、PCスピーカーやヘッドホンから流れる柔らかなサウンドが、世界観への没入を手助けしてくれます。
● PC版ならではの「じっくり味わう」遊び方
アーケード版『奇々怪界』は、当然ながら1プレイごとにクレジットを投入する形態で、短い時間の中でどこまで進めるかを競うゲームでした。一方でMSX2版やWindows版といったPC向けの移植は、家庭で腰を据えて遊ぶことを前提としているため、プレイスタイルも自然と変わってきます。例えばMSX2版なら、自分のペースでステージ構成を研究し、どのタイミングでどのアイテムを狙いに行くか、どこで一息つくかといった「マイベストルート」をじっくり検証できます。Windows版では、キーボード操作とゲームパッドを切り替えながら、自分にとって一番しっくりくる入力デバイスを探す楽しみもありますし、画面キャプチャ機能を使ってお気に入りのシーンを保存しておく、といった遊び方も可能になりました。アーケードゲームのスピード感と、PCゲームならではの研究・鑑賞的な楽しみ方が共存している点が、PC版『奇々怪界』の大きな魅力と言えるでしょう。
● 難しいのに「もう一度」が止まらない中毒性
最後に、好みが分かれつつも多くのプレイヤーを惹きつけてやまない魅力として、「歯ごたえのある難易度と、それを乗り越えたときの達成感」が挙げられます。敵の出現パターンを覚え、危険な場面での切り抜け方が少しずつ身についてくると、「さっきはここでやられたけど、今度はもっと先まで行けるはずだ」という感覚が強まり、自然と連続プレイに突入してしまいます。特にMSX2版は敵の攻撃がやや苛烈な調整になっているため、最初のうちは理不尽に感じる場面もあるかもしれませんが、ルートや立ち回りを改善して少しずつ安定して進めるようになってくると、プレイヤー自身の成長を強く実感できます。何度倒されても「もう一回」と思わせるこの中毒性こそが、『奇々怪界』が長年にわたって遊ばれ続けてきた理由のひとつでしょう。
■■■■ ゲームの攻略など
● まず身につけたい「立ち回りの基本」
『奇々怪界』は一見すると賑やかな和風アクションに見えますが、実際のゲームプレイは非常にシビアで、ほんの少しの判断ミスがそのままミスに直結します。攻略の出発点として意識したいのは「不用意に前へ出過ぎない」「敵の湧き位置を意識する」「お札と払い串の役割をはっきり分ける」という3点です。画面の上端ぎりぎりまで突っ込んでしまうと、視界外から突然敵が出てきて反応が間に合わなくなります。常に自分の1~2キャラ分ほど上に“余白”を残し、敵が出てきた瞬間に動きを確認できる位置をキープするのが基本姿勢です。また、小夜を画面中央よりやや下寄りに置き、「上下左右どちらにも逃げられるスペース」を確保しておくことも重要です。お札は遠距離から接近してくる敵を削る用途に徹し、目の前まで迫ってきた相手は払い串で一掃する、と役割分担を明確にしておくと、操作に迷いが生まれにくくなります。「敵が遠いときはお札、近いときは払い串」と口癖のように意識しておくと、瞬時の判断が必要な場面でも体が自然に動くようになってきます。
● 序盤ステージで身につけるべき習慣
1面・2面はいわゆるチュートリアル的な位置づけで、敵の攻撃もまだ緩やかですが、ここでの立ち回りが中盤以降の生存率を大きく左右します。序盤で意識したいのは「敵を画面の下側に溜めない」「オブジェクトを壊すタイミングを図る」「進行方向を常に斜めにずらす」という3つの習慣です。敵を画面下側に残したまま前進すると、後ろからの押し上げと前方からの新手に挟まれ、逃げ場を失ってしまいます。画面をスクロールさせる前に、できるだけ背後に敵を残さないよう、下方向へのフォロー攻撃もこまめに行いましょう。また、壺や賽銭箱などのオブジェクトは見つけ次第片っ端から壊したくなりますが、敵の波が重なっているタイミングで割ると、アイテムを取る前に押し潰されてしまいます。周囲の敵が落ち着いた瞬間に叩く、あるいは通路の片側だけ壊して、もう片側は緊急時の保険として残しておくといった工夫が効果的です。進行方向に関しては、真正面にだけ進むのではなく、左右に小刻みに移動しながら“蛇行する”イメージを持つと、敵弾や体当たりを自然と避けやすくなります。序盤からこうした動きを意識しておくと、後半ステージの密度にも対応しやすくなります。
● 中盤以降は「パターン化」と「引き撃ち」が鍵
3面以降になると、敵の出現数が一気に増え、初見ではあっという間に囲まれてしまう場面が増えてきます。このゾーンを乗り切るためには、「危険地帯を把握してパターン化する」「無理に進まない引き撃ちの発想を持つ」ことが非常に重要です。まず、何度かゲームオーバーになったとしても、同じ場所で同じようなやられ方をしているポイントを記憶しておき、そこへ差し掛かったときの行動パターンを決めてしまいましょう。「右側から大群が来るので先に左端に寄って待ち構える」「橋の手前でいったんスクロールを止めて、出てくる敵を処理してから渡る」といった具合に、自分なりの“定跡”を用意しておくと、毎回パニックに陥らず安定して切り抜けられます。また、中盤以降は「前に出るより、いったん下がって敵を引きつけてから倒す」引き撃ちテクニックも重要です。画面上端で敵が湧いた瞬間に慌てて回り込むより、少し下がって敵の隊列が揃ったところへお札を撃ち込み、近づいてきた一団を払い串でまとめて処理する方が安全かつ効率的な場合が多くなります。スクロールを止めてでも危険な群れを片付ける、という勇気を持つことが、中盤の攻略安定につながります。
● ボス戦の基本は「安全圏の発見」と「パターン読み」
各ステージの終盤には、それぞれ特徴の異なるボス妖怪が待ち構えています。ボス戦では、細かいテクニックよりも「安全に立てる位置を見つける」「攻撃のサイクルを読む」という二点に集中しましょう。多くのボスは、一定時間ごとに弾をばらまいたり、取り巻きを呼び出したりと、明確な行動パターンを持っています。最初の数回は無理に攻撃を当てようとせず、「この動きのあとには何が来るのか」「どの方向に弾を撃つのか」を観察するつもりで挑むのが得策です。例えば、広範囲に弾を拡散させるボスであれば、弾幕の切れ目ができる位置が必ず存在しますし、取り巻きを多数呼び出すボスなら、本体に張り付くのではなく周囲の雑魚を素早く片付けることが被弾リスクの低減につながります。MSX2版やWindows版では、処理落ち具合や入力レスポンスの違いにより、アーケード版とは若干タイミングが変わっている場合もありますが、「広い場所を選ぶ」「弾の発射音や動きの前兆を見逃さない」という基本さえ押さえておけば、どの環境でも大きく応用が利きます。焦って連射ボタンを押し続けるより、ボスの一連のモーションが終わった“隙”にのみお札を叩き込む方が、安全かつ確実にダメージを蓄積できます。
● アイテム活用と残機管理のコツ
攻略の安定に欠かせないのが、ステージ中に手に入るアイテムの使いどころです。お札の強化や移動速度アップ、一定時間無敵になる効果など、どれも魅力的ですが、一度取ってしまうと効果時間が限られているものも多く、「欲しいときに残っていない」という事態になりがちです。そこで有効なのが、「危ないゾーンの手前にあるアイテムだけは、あえて取らずに残しておく」という考え方です。自分が何度もミスしている場所を把握し、「その直前までに取れるアイテムは温存」「その手前にあるアイテムは積極的に取って強化」と、重要度に応じて取り方を変えましょう。また、スコアによるエクステンド(スコアが一定値に達したときの残機アップ)が存在するバージョンでは、危険を冒してでも高得点のアイテムを取りに行く価値が出てきます。ただし、残機が少ない状態で無理な稼ぎを狙うと逆に首を絞めてしまうので、「残機に余裕があるときだけ稼ぐ」「危なくなったら潔く諦める」といった引き際の見極めも重要です。残機が多ければ、それだけボスのパターン研究や難所の練習を行う試行回数も増えるため、「どうやって残機を増やすか」という視点は、最終的なクリア率と直結しています。
● ノーミスクリアを目指すためのステップ
慣れてくると、多くのプレイヤーが挑戦したくなるのが「ノーミスクリア」や「コンティニュー封印」といった自己縛りです。これを目標にする場合、いきなり最初から最後まで完璧を目指すのではなく、「まずは序盤2面を完全に安定させる」「次に中盤の難所だけを重点的に練習する」と小さな目標を刻むのが現実的です。具体的には、序盤で一切ミスをしないことを当たり前の状態にし、そこから先は「中盤の○○の場面をノーミスで抜ける」「このボス戦だけは絶対にダメージを受けない」といった個別の課題を設定して練習していきます。MSX2版であれば、自分のプレイをビデオやキャプチャで録画して見直し、「ここで不要に前に出ている」「このアイテムを取りに行く必要はなかった」といった反省点を洗い出すのも有効な手段です。Windows版なら、プレイ環境の調整や入力デバイスの変更も含めて、「自分が一番ミスをしにくいセッティング」を探ることも攻略の一部と言えるでしょう。ノーミスを目指す過程で身につけた習慣や冷静さは、普通に遊ぶ時にもそのまま生きてきます。
● 裏技・小ネタ的な楽しみ方
本作には、いわゆる派手な隠しコマンドのようなものがなくても、プレイヤーの工夫次第で「裏ワザっぽく振る舞う」テクニックがいくつも存在します。例えば、敵の湧きポイントのすぐ近くにあえてとどまり、出現直後の無防備な状態を払い串で一気に刈り取る“先制待ち伏せ”は、慣れてくると危険を逆に利用した爽快なテクニックとなります。また、画面端の引っかかりを利用して、敵の集団を無駄に動かさずにまとめて誘導し、お札の通り道にきれいに並べてしまう“整列撃ち”のような遊び方もできます。バージョンによっては、特定条件を満たすことで残機が増えやすくなるスコアテーブルになっていたり、特定のステージでだけ出現するレアなアイテムパターンが用意されていることもあり、それらを探す「検証プレイ」自体がひとつの娯楽になっていました。攻略本や雑誌の記事に頼らず、自分の目と手で少しずつ発見していく過程こそが、PC版『奇々怪界』の裏技的な楽しみ方と言えるかもしれません。
● 反復プレイが生む「自分だけの必勝ルート」
最終的に、『奇々怪界』の攻略は「何度も遊んで、自分だけの必勝ルートを作り上げる」ことに集約されます。敵の湧き方、アイテムの位置、自分の得意・不得意な場面はプレイヤーごとに違うため、誰かの攻略法をそのままなぞるだけでは、本当の意味で安定するとは限りません。MSX2版であれWindows版であれ、遊ぶほどに「あの場面では右へ」「この橋では左側をキープ」といった“自分の型”が自然と出来上がっていき、それがそのままノーミスクリアや高スコア達成への道筋となっていきます。一度パターンが固まると、たとえしばらくゲームから離れていても、再開したときに驚くほどスムーズに指が動くことがあります。そうした「体に染みついたルート」が出来上がったとき、『奇々怪界』というゲームは単なるレトロアクションではなく、自分だけの修行場のような、特別な一本に変わっているはずです。
■■■■ 感想や評判
● 「和風シューティング」というジャンルイメージを決定づけた一本という評価
『奇々怪界』は、アーケード版の時点から「和風テイストを前面に押し出したアクションシューティング」として強い個性を放っていましたが、MSX2版やWindows版を通じて触れたプレイヤーの多くも、「和風シューティングと言えば真っ先にこのタイトルを思い浮かべる」と語ることが少なくありません。巫女が主人公、敵は妖怪、舞台は神社や寺社という構図は、後発作品にも多大な影響を与えたとされており、ファンの間では「後の巫女&妖怪ゲームの祖先的存在」として語られることもあります。BGM、背景グラフィック、敵キャラの動きに至るまで、細かな部分をひとつずつ切り取れば決して派手な演出をしているわけではないのに、全体として強烈な印象を残す――その独特の統一感が、多くのプレイヤーの記憶に深く刻み込まれていると言えるでしょう。
● 「難しいけれど何度も遊びたくなる」中毒性への声
プレイヤーからの感想として頻繁に挙がるのが、「とにかく難しい」という率直な一言です。敵の出現数は多く、弾や体当たり攻撃のスピードも速いため、初見では序盤ステージでもあっさりやられてしまうことも珍しくありません。MSX2版に関しては、アーケード版をプレイした人から「移植としてはよくできているけれど、敵の攻撃が全体的にきつめに調整されている」と語られることが多く、パソコン版から入ったユーザーにとっては、なおさら手強く感じられたようです。しかしその一方で、「何度もやられているのに、つい“もう一回だけ”と遊んでしまう」「気づくと毎日少しずつプレイしてしまう」という声も後を絶ちません。敵の出現パターンを覚え、危険なポイントを少しずつ乗り越えられるようになっていく過程が、プレイヤーに強い達成感を与えているためです。特にPCゲーム雑誌などでは、「難度は高いが、遊ぶほどに腕前が上がっていくのが実感できる良質なアクション」として紹介されることが多く、簡単にクリアさせない硬派なバランスは、むしろ長く遊べる要素として好意的に受け止められていました。
● MSX2ユーザーからの支持 ― グラフィックと再現度への評価
MSX2版については、当時のユーザーから「ハードの限界を感じさせないグラフィック」として高く評価されることが多いです。アーケード版に比べれば色数や解像度は抑えられているものの、背景には鳥居や灯籠、社殿、橋といった印象的なオブジェクトが丁寧に描かれ、キャラクターも小さなスプライトながら表情豊かに動き回ります。MSX2は他機種に比べると、アクションゲームの移植では「キャラが小さい」「処理落ちが目立つ」といった不満を持たれがちなハードでしたが、『奇々怪界』に関しては、「動きも軽快で遊びやすい」「見た目の雰囲気がしっかり再現されている」といった好意的な感想が目立ちます。難易度が高いことには賛否あるものの、「グラフィックとサウンドの再現度は満足」「和風の雰囲気を楽しむには十分」といった声が多く、MSX2ユーザーにとっては「持っていると少し自慢できる一本」として語られてきました。
また、説明書やパッケージに関しても、「広げるとすごろくになっている裏面が楽しい」「イラスト満載で読むだけでもワクワクする」といった意見があり、ソフトそのものだけでなく、周辺の付加価値を含めて愛着を持つユーザーが多かったのも印象的です。パッケージを開けた瞬間から世界観に引き込もうという作り手の工夫が、そのままユーザーの記憶に残っていると言えるでしょう。
● Windows版で再評価された「今遊んでも古さを感じない面白さ」
時代が下り、Windows版として再登場したことで、『奇々怪界』に初めて触れたというプレイヤーも少なくありません。この層から寄せられる感想で目立つのは、「80年代のゲームなのに、今遊んでも鮮烈な個性を感じる」「システムはシンプルなのに、気づくと集中してしまう」といったものです。現代の視点から見れば、グラフィック表現は当然ながらレトロですが、画面構成や敵配置、アイテムの使いどころといったゲームデザイン面には、「無駄な要素を削ぎ落とし、必要なものだけで緊張感を作る」という職人技が垣間見えます。そのため、最新ゲームと比べても見劣りしない「遊ばせ方のうまさ」があると感じる人も多いようです。
一方で、難易度の高さについてはやはり現代のプレイヤーにも印象的らしく、「コンティニューやセーブ機能がある環境でなければ心が折れていたかも」「気軽に遊び始めたのに、本気で攻略法を考える羽目になった」といった声も聞かれます。しかし、そうしたコメントの多くはどこか楽しげで、「久々にゲームで熱くなれた」「アクションゲームの基礎力を試されている気がする」とポジティブに捉えられていることが多いのが特徴です。Windows版は、アーケードやMSX2といった実機環境を持たない世代にも、『奇々怪界』の本質的な面白さを伝える役割を果たしていると言えるでしょう。
● メディア・ゲーム雑誌での取り上げられ方
当時のゲーム雑誌やPC専門誌では、『奇々怪界』は「アーケードで人気の和風アクションがMSX2に登場」「巫女さんが主人公というユニークさ」といったキャッチコピーとともに紹介されることが多く、画面写真を見ただけで読者の興味を引く存在でした。レビューでは、操作性やグラフィック、サウンドなど各項目でバランス良く高得点をつけられる一方、難易度が高い点については「手応えがありすぎる」「遊びごたえ十分」といった表現で語られることもしばしばで、基本的には好意的な評価が主流です。また、「敵配置がアーケード版と完全一致ではない」「序盤から強い敵が出てくる」などのアレンジについても、「別物になってしまったわけではなく、家庭用向けの味付けとして楽しめる」と受け取られているケースが目立ちます。
Windows版がリリースされた際には、いわゆるレトロゲーム再録企画の一環として語られることが多く、「80年代の名作シューティングがPCで蘇る」といった紹介のされ方をしています。その中で、『奇々怪界』は単なる懐古目的のタイトルではなく、「今プレイしても十分通用する、完成度の高いアクション」として再評価されることが多く、レビューや特集記事でも好感触なコメントが目立ちます。
● プレイヤーごとの思い出と「語りたくなるゲーム」性
個々のプレイヤーの思い出という観点で見ても、『奇々怪界』は非常に「語りたくなる」ゲームです。ある人は、友人と交代でMSX2の前に座り、「ここまでノーミスで行けた」「この場面の切り抜け方を発見した」と自慢しあったことを懐かしみます。別の人は、Windows版を通じて初めて本作に触れ、「昔のゲームだと侮っていたら、気づけばクリアするまで眠れなくなった」と笑いながら振り返ります。また、「巫女が主人公のゲームに初めて触れたのがこの作品だった」という人や、「妖怪が怖い存在ではなく、どこか憎めないキャラクターとして描かれているのが印象的だった」と語る人もいます。
こうした思い出話の中に共通しているのは、「単に遊んで終わりのゲームではなく、プレイヤー自身の体験と結びついた記憶を残してくれる」という点です。繰り返し挑戦して難所を突破したときの達成感、ステージの雰囲気とBGMが頭から離れなくなる感覚、箱を開けたときのワクワク感――それらが一体となって、『奇々怪界』というタイトルを特別な一本にしています。
● 賛否が分かれるポイントと、それでも愛される理由
もちろん、すべてのプレイヤーが無条件に称賛しているわけではなく、賛否の対象となるポイントも存在します。代表的なのは、「当たり判定がシビアに感じる」という意見や、「敵の出現が急で理不尽に思える場面がある」といった不満です。特にアクションゲームに不慣れな人にとっては、序盤からの容赦ない洗礼が「とっつきにくさ」に直結することもあります。また、MSX2版特有のアレンジとして、敵の攻撃がより激しくなっていることに対し、「アーケードより難しいのでは」と感じるユーザーも少なくありません。
それでもなお、『奇々怪界』というタイトルが長く愛されている理由は、「不満点を上回るだけの個性と魅力」が備わっているからです。遊び手に多少の理不尽さを感じさせながらも、「次はもっと上手くやれるかもしれない」と思わせてしまうゲームデザイン、和風テイストを存分に活かしたビジュアルと音楽、巫女&妖怪というわかりやすくもユニークな世界観――これらの要素が組み合わさることで、少々の粗さすら味わいの一部として受け止められるようになっています。だからこそ、レビューでは「不親切なところもあるが、それも含めて好きになってしまう」「人におすすめするときは覚悟もセットで勧める」といった、愛情のこもったコメントが並ぶことが多いのです。
● 総評:記憶に残る「クセのある名作」
総じて、PC版『奇々怪界』(MSX2版・Windows版)に対する感想や評判を一言でまとめるなら、「クセは強いが、一度ハマると忘れられない名作」という表現がふさわしいでしょう。現代の基準で見れば、難易度の尖り方や説明不足な部分に戸惑うかもしれませんが、そこを乗り越えて本作のリズムに体が馴染んでくると、ほかのゲームでは得がたい独特の爽快感と没入感を味わえます。巫女・小夜の奮闘と、コミカルな妖怪たちとの攻防は、単なるゲームプレイを超えて、一種の「体験」としてプレイヤーの記憶に残り続けます。
■■■■ 良かったところ
● 巫女と妖怪が織りなす唯一無二の世界観
プレイヤーが「良かった」と口をそろえて挙げるのが、まず何よりも世界観のインパクトです。巫女の小夜が主人公という設定だけでも当時としてはかなり異色でしたが、その彼女が舞台とするのは、縁日後のような賑やかさと、深夜の神社のような薄暗さが同居した不思議な空間です。参道には灯籠が並び、鳥居が重なり合い、その合間をぬって提灯おばけや傘おばけ、得体の知れない妖怪たちがぞろぞろと出てくる――そんな絵面が、プレイヤーの脳裏に焼き付いて離れません。ホラー寄りに振り切るのではなく、コミカル寄りにデフォルメされた妖怪たちが、どこか憎めない動きと表情で迫ってくるため、「怖い」というより「うわ、また変なのが出てきた」と笑いながら対処してしまう。この絶妙なバランス感覚が、「奇々怪界」の“奇々怪界らしさ”であり、多くのユーザーが「ここが一番気に入った」と語るポイントです。
● シンプル操作で“うまくなっていく実感”が味わえるゲーム性
操作自体は「移動+2ボタン」と極めてシンプルで、誰でもすぐに遊び始められる敷居の低さを持ちながら、遊べば遊ぶほど「自分が上達した」と実感できる構造になっているのも、良かった点としてよく挙げられます。最初のうちは、お札と払い串をむやみに連打しているだけで精一杯ですが、プレイを重ねるうちに「ここは遠距離からお札で削る」「この通路は払い串で道をこじ開ける」「この壺は今割ると危険だから後回し」といった判断が自然とできるようになります。すると、今まで抜けられなかった場面をあっさり突破できる瞬間が訪れ、ゲームの中で自分の成長を目に見えて感じられるのです。複雑なコンボや隠しシステムがあるわけではないのに、プレイヤーの理解度によって難度の感じ方がはっきり変わってくる――この「技術の伸びがダイレクトに反映される感覚」は、アクションゲーム好きにとって非常に気持ちの良いものであり、本作の大きな魅力の一つと言えます。
● ステージ構成とテンポの良さが生む“止め時のなさ”
各ステージは、同じような場面の繰り返しにならないように、敵の種類や地形の変化が巧みに配置されています。細い橋を渡ったかと思えば開けた参道に出て、神社の境内を抜けると突然、妖気の立ち込める不気味な空間へ――と、短いサイクルで雰囲気が切り替わっていきます。ステージの長さも絶妙で、「あと少しでクリアかもしれない」「せめて次のエリアまで進んでみよう」と思わせる長さにまとまっているため、「そろそろやめよう」と決めたはずがついもう一回……とプレイを重ねてしまいがちです。ボス戦も、それぞれが分かりやすい特徴を持ちながら、理不尽一歩手前で踏みとどまる絶妙な強さに調整されているため、「負けた理由」が自分で納得しやすいのもポイントです。テンポ良くやられ、テンポ良く再挑戦できるサイクルが見事にハマっており、「気がつくと朝まで遊んでいた」と振り返るユーザーも少なくありません。
● MSX2版ならではの“がんばっている”グラフィックと演出
MSX2版の良さとして、多くのユーザーが評価するのが「ハードの限界の中で、雰囲気を壊さずによく再現している」という点です。アーケード版と比べれば表示色やスプライト数に制約があるにもかかわらず、鳥居の重なり具合や灯籠の明暗、社殿の装飾など、プレイヤーが「奇々怪界」と聞いて思い浮かべる要素はしっかり盛り込まれています。キャラクターも極端に縮小されておらず、小さな身体でちょこまか動く小夜や妖怪たちの姿が、MSX2ならではの味として愛されています。さらに、ステージ開始時の演出やスコア表示のレイアウトなど、細かい部分にも気配りが感じられ、「PC版だからといって妥協していない」姿勢が伝わってきます。こうした“ぎゅっと凝縮された感じ”が、当時のパソコン少年たちの心をつかみ、「MSX2でもここまでできるんだ」と誇らしい気持ちにさせてくれました。
● サウンドが作る独特の高揚感
BGMと効果音も、本作の「良かったところ」として外せません。和楽器を思わせるメロディラインや、どこか祭り囃子風のリズムは、聴いただけで「奇々怪界の世界」に引き戻される強さがあります。MSX2版ではFM音源やPSG音源を駆使し、限られた音色の中でアーケード版の雰囲気をうまく再解釈しており、ハード特有のカッチリした音が、逆にゲームのキレの良さを強調する結果になっています。お札を放ったときの鋭いサウンド、払い串がヒットしたときの爽快な音、アイテム取得時の軽やかな効果音など、プレイ中に耳へ飛び込んでくる音はどれも短く簡素でありながら、役割と印象がはっきり分かれています。そのため、目で画面を追っていなくても、「今、敵が倒れた」「アイテムが出た」「危険な攻撃が来た」といった情報が自然と耳から入ってきて、プレイのリズムを作り出してくれるのです。Windows版ではよりクリアな音質で再現されており、ヘッドホンでじっくり聴き込むと、改めてメロディラインの完成度に感心させられます。
● 説明書・パッケージを含めた“所有する喜び”
パソコンゲームとしての『奇々怪界』は、単に中身のプログラムが良いだけでなく、「箱を手に入れて開くところからもう楽しい」という、所有体験全体の出来の良さも大きな魅力です。MSX2版の説明書は大きく広げるとすごろくになっていたり、イラスト満載の世界観説明が載っていたりと、読むだけでもちょっとした読み物として楽しめる内容でした。これにより、ゲームを起動する前の段階から、プレイヤーは“小夜の冒険”に心構えを整えることになります。パッケージの表紙に描かれた小夜や妖怪たちのイラストも印象的で、棚に並べているだけで満足できるような存在感がありました。PCゲームがまだ高価で、1本を何度も遊び込むのが当たり前だった時代に、「箱から説明書まで全部含めてワクワクさせてくれる」タイトルであったことは、多くのユーザーにとって忘れがたいポイントです。
● Windows版で体験しやすくなった“名作への入り口”
後年のWindows版については、「名作に触れるための入り口として非常に優秀」という声が多く聞かれます。古いアーケード基板やMSX2本体を持っていなくても、自宅のPC環境さえあればすぐにプレイできる手軽さは、レトロゲームに興味を持ち始めた新しい世代のプレイヤーにとって、大きな魅力でした。インストール手順も比較的シンプルで、アイコンをダブルクリックするだけで、あの独特な和風シューティングの世界が立ち上がります。キーボード、USBゲームパッドなど、自分の慣れた入力デバイスで遊べる点も好評で、「昔は難しくて投げ出したけれど、今はパッドでじっくり遊べる」「仕事の合間にちょっと起動して気分転換できる」といった形で、生活の中に溶け込む遊び方ができるようになりました。古い名作に、現代的なアクセス手段を与えたという意味で、Windows版の存在そのものが「良かったところ」と言えるでしょう。
● 時代を超えても色あせない“芯の強さ”
グラフィック技術や演出表現が飛躍的に進歩した今の目で見ても、『奇々怪界』の核となる面白さはまったく色あせていません。シンプルな操作、明快なルール、そしてシビアな難易度と、プレイヤーの創意工夫がものを言うゲームデザイン――これらの要素は、どれだけ時代が変わっても有効であり続けます。巫女と妖怪というモチーフ自体も、日本のポップカルチャーの中で繰り返し取り上げられてきた題材でありながら、本作の「お祓いアクション+コミカルな妖怪」という組み合わせは、今なお独自性を失っていません。「古さ」ではなく「味わい」として受け入れられる部分が多いからこそ、レトロゲームファンの間で語り継がれ、新たなプレイヤーにも勧められ続けているのでしょう。
このように、『奇々怪界』の“良かったところ”は、単にゲームバランスが優れているといった技術的な側面にとどまらず、所有する喜びや、時代を超えても魅力を放ち続ける世界観・キャラクター性まで多岐にわたっています。だからこそ、人によって「一番好きなポイント」は違っていても、「このゲームは何か心に残る」と感じる点だけは共通しているのです。
■■■■ 悪かったところ
● とにかく厳しめな難易度で、入口が狭い
『奇々怪界』の評価で真っ先に挙がる“悪かったところ”は、やはり難易度の高さです。序盤から敵の数が多く、動きも素早いため、アクションゲームに慣れていないプレイヤーは1面の途中で何度もゲームオーバーになる、というケースも珍しくありません。とくにMSX2版は、アーケード版よりも敵の行動がやや攻撃的になっている印象があり、慣れていないうちは「一歩動いたらもう囲まれている」「避けきれない」と感じてしまいがちです。さらに、残機やコンティニューに大きな余裕があるタイトルでもないため、「試行錯誤したくてもすぐにやられてしまう」というストレスが先に立ってしまう人もいます。「難しいゲームが好き」というプレイヤーには歯ごたえのあるバランスですが、ライトユーザーにとっては“最初の壁”が高すぎる点は、どうしてもマイナスとして語られる部分です。
● 当たり判定や被弾のわかりにくさによる理不尽感
もうひとつよく挙げられるのが、当たり判定まわりのシビアさです。小夜の判定が見た目以上に大きく感じられたり、敵キャラのグラフィックに軽く触れただけで即ミスになってしまうことがあり、「いまのは当たっていないのでは?」と首をかしげる場面が出てきます。敵弾もスピードが速いうえに、背景の色合いによっては見えづらいことがあり、気づいたら被弾していた、という印象を受ける人も多いです。シューティング系のアクションでは、「ミスの原因が自分の判断ミスだと納得できるかどうか」がモチベーション維持の大きなポイントですが、本作では、その境界線がやや曖昧な場面があるため、「理不尽にやられた」と感じてしまうことがあります。特にMSX2版では解像度や色数の関係で、画面がゴチャついた印象になりやすく、敵弾と背景のコントラストが十分でないシーンもあるため、この“わかりにくさ”が悪い意味で印象に残ってしまったプレイヤーもいました。
● 画面外からの敵出現や挟み撃ちがストレスになりがち
ステージ構成そのものはよく練られている一方で、「画面外から急に飛び込んでくる敵」や「背後からいつのまにか迫っている妖怪」の存在は、人によっては大きなストレス源になります。スクロールが自動で進んでいく場面では、前方の敵に気を取られているうちに、後ろ側から新手の妖怪が現れ、気づいたら前後を挟まれて逃げ場がない――という状況が頻発します。これはゲーム側がプレイヤーに“周囲の状況を常に広く見る”ことを要求しているとも言えますが、初めて挑戦する人にとっては「対応のしようがない奇襲攻撃」に見えてしまうことも少なくありません。また、ステージの端に寄った状態で敵が湧くと、そのまま狭いスペースに押し込められ、ほぼ回避不可能な状況に追い込まれるケースもあります。こうした配置には「覚えゲー」としての側面もあるのですが、「覚える前に心が折れる」という声が出てしまうのも無理はない部分です。
● MSX2版特有の処理落ちやちらつき、操作遅延
MSX2版は、ハードの性能を考えればよく作られた移植である一方、その限界ゆえに「処理落ち」や「スプライトのちらつき」が避けられない場面もあります。敵が画面に多数出現した際や、アイテムが一度にばらまかれたときなどに、動きが一瞬もたつくことがあり、その瞬間に方向キーを入れ替えようとしても反応がワンテンポ遅れてしまうことがあります。プレイヤーからすると、「ちゃんと操作したのに抜けられなかった」という感覚につながりやすく、被弾したときの納得感を削いでしまう要因になっています。また、敵や弾が多く重なったときにスプライトがちらついて見えにくくなる現象も、緊迫した場面ほど顕著に現れ、「危険な攻撃ほど見分けにくい」という悪循環を生んでしまうこともあります。こうしたハード起因の不満は、当時の多くの横スクロール/縦スクロールアクションに共通する問題ではありますが、『奇々怪界』もその例外ではなく、「もう少しだけ動きが軽ければ」と惜しまれるポイントになっています。
● PC版ゆえの操作性のハードル(キーボード/パッド問題)
PC版『奇々怪界』に特有の“悪かったところ”として挙がるのが、操作デバイスの問題です。アーケード版はレバー+ボタンで遊ぶことを前提に設計されていますが、MSX2やWindowsでは、キーボードでの操作、あるいは対応するゲームパッドを自分で用意する必要があります。キーボードのみでプレイする場合、斜め移動とボタン同時押しを常に求められる本作は、慣れないうちはかなり指に負担がかかります。キー配置によっては「指がつりそうになる」「押し間違いで被弾する」といった状況に陥りやすく、「コントローラ前提のゲームを無理やりキーボードで操作している」という印象を受けてしまう人もいました。Windows版ではゲームパッド対応が進んでいるとはいえ、環境によっては設定がうまくいかず、「ボタンが反応しない」「斜め入力が入りにくい」といったトラブルも発生しがちです。ゲームそのものの完成度が高いだけに、「操作まわりのハードルで敬遠してしまう人がいるのは惜しい」と感じる部分と言えるでしょう。
● 説明不足感と、プレイヤー任せなゲーム進行
『奇々怪界』は、当時のアーケードゲームらしく、物語やシステム面の説明を最低限にとどめており、プレイ中に細かいチュートリアルが入ることはほとんどありません。MSX2版やWindows版でもその方針は基本的に変わらず、「どのアイテムが何の効果を持つのか」「どの敵がどの程度の耐久力なのか」といった情報は、実際に遊びながら自分で体験して覚えていく必要があります。これは「プレイヤーの想像力に委ねる良さ」として評価される一方で、「最低限の説明があってもよかったのでは」という不満にもつながります。とくに、見た目が似ているアイテムが複数存在する場合、効果を誤解したままプレイしてしまい、「なぜか急にピンチになった」「このアイテムは取らない方が良かったのか」といった混乱を招くことがあります。説明書自体には情報が載っているケースもありますが、ゲーム内で補足してくれないため、説明書を手元に置きながらでないと不安、という声もありました。現代的な感覚から見ると、「もう少しだけゲーム内でフォローしてくれれば」という物足りなさが残るのは否めません。
● パターン化前提のバランスゆえに、合う人と合わない人の差が大きい
本作の難易度は、「敵の出現パターンやアイテム位置を覚えることで、ようやく安定して進めるようになる」という設計になっています。そのため、何度も同じ場面を繰り返しプレイしてパターンを構築していくスタイルが好きな人にはたまらない一方で、「毎回違う展開が楽しめるゲームの方が好み」というタイプのプレイヤーには、どうしても単調に感じられてしまうことがあります。「ここで右に逃げる」「この橋は左側だけを通る」といったルートが完全に決まってくると、そこから先は“正解通りに操作できるかどうか”の確認作業のようにも感じられ、純粋なアドリブ性や自由度を求める人には物足りなく映る可能性があります。また、パターンが固まるまでの過程で何度もやられ続ける必要があり、その繰り返しの中でモチベーションが尽きてしまうプレイヤーも少なくありません。「仕組みが分かれば確かに面白いのは理解できるが、そこに到達するまでがつらい」という、ややハードコア寄りのバランスが、“悪かったところ”として語られがちな部分です。
● Windows版の環境依存・互換性の問題
後年に登場したWindows版にも、別種の“悪かったところ”があります。それは、OSのバージョンやハード構成によって、動作が不安定になったり、そもそも起動が難しくなってしまうケースがあることです。古いWindows向けに制作されたパッケージでは、現行OS上で起動しようとすると互換モードの設定が必要だったり、音が鳴らない・画面が正しく表示されないといったトラブルが報告されることがあります。こうした問題は、『奇々怪界』に限らずレトロPCゲーム全般が抱える課題ではありますが、「せっかく名作を遊ぼうと思ったのに、技術的なハードルで挫折した」という体験を生んでしまうのは残念なポイントです。ゲーム内容そのものに不満があるわけではないだけに、「もっと簡単に遊べる形で提供されていれば」という声が出てしまうのも自然な流れでしょう。
● それでも“惜しい”では終わらない、魅力と紙一重の欠点
こうして「悪かったところ」を並べてみると、難易度の高さや当たり判定、処理落ち、説明不足など、さまざまな不満点が存在することがわかります。しかし興味深いのは、それらの多くが、本作の魅力と紙一重の位置にあるという点です。厳しい難易度は歯ごたえのあるやり込み要素にもなり、当たり判定のシビアさは緊張感を生み、説明不足な部分はプレイヤー同士が攻略情報を語り合うきっかけになります。もちろん、万人向けの親切設計とは言いがたいものの、「だからこそ印象に残る」「だからこそ乗り越えたくなる」と感じるプレイヤーも多く、欠点すら“味”として受け入れられているのが『奇々怪界』の面白いところです。言い換えれば、本作は「遊び手を選ぶが、ハマった人には深く刺さるタイプのゲーム」であり、その尖り具合こそが、長年語り継がれてきた理由のひとつだと言えるでしょう。
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■ 好きなキャラクター
● 主人公・小夜ちゃん ― 巫女なのに戦うヒロインとしての人気
『奇々怪界』で「好きなキャラクター」を語るとき、真っ先に名前が挙がるのはやはり主人公の巫女・小夜ちゃんです。白と赤の巫女装束に身を包み、手には払い串とお札――外見だけなら神社で見かける厳かな巫女のイメージそのものですが、ゲームの中では自ら最前線に立ち、容赦なく妖怪たちを祓い続ける頼もしさを見せてくれます。このギャップがプレイヤーの心を強くつかみました。立ち姿はどこか小柄で可愛らしく、歩くモーションもコミカルでありながら、お札を投げるときのキビキビした動きや、払い串を振ったときのキレのあるアクションには、職務への責任感と勇気が感じられます。プレイを重ねているうちに、単なる操作キャラクターという枠を越えて、「自分が育てているヒロイン」のように思えてくる人も少なくありません。ミスをしてしまったときも、「今のは自分が変な動きをさせてしまった」と、どこか申し訳ない気持ちになってしまう――そんな不思議な愛着を抱かせてくれる主人公です。
● コミカルで憎めないザコ妖怪たち
小夜ちゃんに次いで人気なのは、各ステージに登場するさまざまなザコ妖怪たちです。怖がらせることを目的としたデザインではなく、「ちょっと変で、でもどこか愛嬌がある」姿にまとめられているのが特徴で、プレイヤーからは「倒すのが忍びないくらい見た目が可愛い」という声も挙がります。ふよふよと漂う提灯おばけ、ひょいひょいと跳ね回る傘の妖怪、目玉だけが動いているような不思議な敵など、画面を賑やかす存在はどれも個性的で、ステージを重ねるごとに「今度はどんな妖怪が出てくるのだろう」と期待させてくれます。動き方や耐久力もそれぞれ違っていて、「こいつは動きが遅いけど固い」「あいつは柔らかいけど動きがトリッキー」と、見た目と挙動がセットで記憶されていくため、ある意味では“キャラクターとしての役割”が非常に明確です。プレイヤーによっては、「あの傘の妖怪だけは許せない」「あののんびり歩くやつはなぜか好き」と、完全に好みが分かれるところも面白いポイントでしょう。
● 強敵ながら印象深いボス妖怪たち
各ステージの最後に待ち構えるボス妖怪たちも、プレイヤーの記憶に強く刻まれる存在です。巨大な体で画面を占拠するもの、分身したり取り巻きを呼び出したりして翻弄してくるものなど、その姿と攻撃パターンは実に多彩です。初対面の時は、その圧倒的な存在感と派手な攻撃に圧倒され、「こんなの勝てるわけがない」と思ってしまうかもしれません。しかし、何度も挑戦して動きや弾の軌道を理解していくと、次第に「ここだけ安全地帯がある」「この攻撃のあとには大きな隙ができる」といった“攻略の糸口”が見えてきます。そうしてついに撃破できた瞬間、プレイヤーの中ではそのボスは単なる障害物ではなく、「苦労して乗り越えたライバル」のような存在に変わるのです。なかには、「見た目は怖いのに、どこかお茶目な攻撃をしてくる」「やられているときも妙に可笑しい動きをする」といった、キャラクター性の強いボスも多く、理不尽に感じた相手ほど、後になって“お気に入りボス”として語られることもあります。
● 七福神 ― 直接戦わないけれど、物語を支える象徴的存在
ゲーム中で直接操作したり戦ったりするわけではありませんが、さらわれてしまった七福神もまた、プレイヤーにとって印象的なキャラクター群です。彼らは物語の動機そのものであり、小夜ちゃんが冒険に出る理由でもあります。ステージを進め、次々と救出していくことで、「自分はちゃんと目的に近づいている」という手応えが得られる構造になっているため、プレイヤーにとっては“クリアに向かう道しるべ”のような存在と言えるでしょう。のんびりとした表情で描かれていることが多く、妖怪たちに囲まれたこの世界の中で、ほんの少しの安らぎやユーモアを与えてくれます。すべての七福神を取り戻したときの達成感は大きく、「ここまで頑張って良かった」と、プレイヤーの冒険を優しく労ってくれるような存在感があります。
● プレイヤーに嫌われつつも“印象に残る”問題児たち
好きなキャラクターの話題になると、「見た目は好きだけど、行動は大嫌い」という意味で名前が挙がる敵もいます。突然画面端から高速で突っ込んでくる妖怪や、弾をばらまいて足場を奪ってくる厄介な敵など、プレイヤーを何度もゲームオーバーに追い込んだ“問題児”たちは、嫌われ者でありながら同時に強く印象に残るキャラクターです。プレイヤー同士で会話すると、「あのステージのあいつのせいで何度やられたか」「あそこに出てくるあの妖怪がトラウマ」といった話題で盛り上がりがちで、まるでクラスのいたずらっ子を語るような空気になります。こうした“憎まれ役”の存在は、ゲーム全体のドラマ性を高めるうえで欠かせません。小夜ちゃんが頼もしいヒロインとして輝くのも、彼女を苦しめる強敵がいるからこそであり、「こいつさえいなければ楽なのに」と思っていた相手をついに乗り越えたとき、その妖怪もまた、プレイヤーにとって忘れられないキャラクターへと変わっていきます。
● MSX2版・Windows版で印象が変わるキャラクターたち
MSX2版とWindows版(アーケード準拠版)を両方体験したプレイヤーからは、「同じキャラクターなのに、ハードによって印象が微妙に変わる」という感想もよく聞かれます。MSX2版では、表示色数や解像度の制約があるため、キャラクターはドット数の少ない素朴なグラフィックで表現されていますが、そのぶん想像の余地が大きく、「自分の中でイメージを膨らませながら愛着を持っていった」という人も多いです。一方で、アーケード版やそれをかなり忠実に再現したWindows版では、表情や動きがより細かく描き込まれており、「怖いはずの敵が意外とかわいい」「小夜ちゃんがよりきびきび動いて格好良く見える」といった新たな一面に気づくことがあります。同じキャラクターでありながら、MSX2では“想像で補う味わい”、Windows版では“細部まで観察できる楽しさ”という、違った魅力を感じられるのも、本作のキャラクターたちが長く愛されている理由のひとつです。
● プレイヤーごとの“推し妖怪”が生まれるゲーム
『奇々怪界』のキャラクター人気の面白いところは、「誰もが同じキャラを好きになるわけではなく、プレイヤーごとに“推し妖怪”が違う」という点です。ある人は、のんびり歩き回るだけの雑魚妖怪に妙な親近感を抱き、またある人は、やたらとしつこく追いかけてくる敵に「うっとうしいけど、あいつがいると盛り上がる」と不思議な愛着を持ちます。ボスにしても、「最初に自力で倒せたボスが今でも一番好き」「苦戦したボスほど後から思い出して笑ってしまう」といった具合に、プレイヤーの体験と結びついた形で“推しボス”が決まっていく傾向があります。このように、プレイスタイルや好みによって好きなキャラクターが変わる余地が大きいこと自体が、本作のキャラクターデザインの懐の深さを物語っています。
● 総じて、「世界観そのものがキャラクター」として愛されている
個々のキャラクターを挙げていくときりがありませんが、最終的には「奇々怪界の世界そのものがひとつのキャラクターのように感じられる」という感想に行き着きます。小夜ちゃんという軸となる主人公、その周りを取り巻く多彩な妖怪たち、救い出される七福神、そして背景に描かれた神社や寺社、橋や参道、灯籠――それらすべてが一体となり、“奇々怪界”というひとつの人格を持った存在のようにプレイヤーの記憶に刻まれるのです。その意味で、「好きなキャラクターは誰か?」という問いに対して、「結局は“奇々怪界”そのものが好き」と答えるファンも少なくありません。
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●対応パソコンによる違いなど
● アーケード版を軸に見る「ベースの遊び味」
まず比較の基準となるのが、オリジナルであるアーケード版『奇々怪界』です。ゲームセンター向けに作られたこのバージョンは、レバー+2ボタン操作を前提に、キビキビしたレスポンスと歯切れの良いゲームテンポを持っています。操作フィールは軽く、キャラクターの動きやスクロール速度も小気味よく、敵の出現から弾の発射、アイテム取得まで、全体の流れが非常にスムーズです。「短時間で何度も挑戦して、パターンを詰めていく」というアーケードゲーム本来のスタイルに最も向いた作りであり、敵配置や難易度も、100円玉を握りしめたプレイヤーを程よく追い詰めるバランスに調整されています。ここから、MSX2版・Windows版、そして家庭用ゲーム機版へと枝分かれしていく形になるため、「アーケード版が持つテンポと難易度」が、各移植版を語る際のものさしになります。
● MSX2版:家庭用パソコンでの再現と独自のアレンジ
ソニーのHiTBiTシリーズなどで遊べるMSX2版は、アーケード版をいかにPCのハードウェアに落とし込むか、という挑戦の結晶のような存在です。画面構成は縦スクロールの基本をしっかり踏襲しつつ、MSX2特有の表示解像度やスプライト制限に合わせて最適化されています。背景のディテールは多少簡略化されているものの、鳥居や灯籠、社殿といった印象的なオブジェクトは丁寧に描かれ、主人公・小夜や妖怪たちのドットも、限られた色数の中でアイコン的な魅力を持つよう工夫されています。
一方で、ゲームテンポはやや独特です。敵の出現数が多く、弾や体当たりのプレッシャーも強めに調整されているため、アーケード版を遊び込んだプレイヤーでも「お、思った以上に厳しいぞ」と感じることがあります。処理落ちやスプライトのちらつきが起こる場面もありますが、それを逆手に取り、「動きが遅くなるタイミングを利用して敵をさばく」といったローカルな攻略も生まれました。
操作面では、ジョイスティックを接続してアーケードに近い感覚で遊ぶこともできますが、キーボード操作を前提にしているプレイヤーも多く、「斜め移動+2ボタン」を指先でさばく感覚が、独特の“パソコンゲームらしさ”として語られています。総じてMSX2版は、「アーケード版をよく研究したうえで、PCらしい手触りに仕立て直した硬派な移植」と言えるでしょう。
● Windows版:現代的な環境での“ほぼアーケード感覚”
時代が進んでから登場したWindows版は、「アーケード版をできるだけそのままの感覚で再現する」ことを目指した方向性のバージョンです。PCの性能がアーケード基板を大きく上回るようになったことで、スクロールやキャラクターの動きは軽快かつスムーズになり、処理落ちやスプライト制限といった悩みからはほぼ解放されています。画面解像度の違いこそあれ、敵配置や攻撃パターン、アイテム構成などはオリジナルにかなり忠実で、アーケードで味わった緊張感やリズムを自宅のPCで堪能できるのが大きな魅力です。
操作デバイスも柔軟で、USBゲームパッドを用意すれば、ほぼアーケードと同じ感覚でプレイできます。キーボード操作にも対応しているため、「仕事の合間にノートPCで軽く1プレイ」といった、現代ならではのライトな遊び方も可能です。また、ウィンドウ表示/フルスクリーン切り替え、音量調整など、PCゲームとしての基本的な快適機能が備わっている点も、MSX2時代との大きな違いと言えるでしょう。
ただし、Windows版ならではの注意点として、OSのバージョンが変わるたびに互換性の問題が生じる可能性がある、という点があります。古いパッケージだと、最新環境では動作に工夫が必要なこともあり、「動かすまでがちょっとしたPCいじり」になる場合もありますが、それを含めて楽しんでいるユーザーも少なくありません。
● ディスクシステム版・家庭用ゲーム機版との比較
パソコン版を語るうえで、任天堂ディスクシステム版やPCエンジン版など、家庭用ゲーム機向けに移植された『奇々怪界』との違いにも触れておきましょう。コンシューマ機版はいずれも、「自宅のテレビで手軽に遊べる」という点を重視しており、アーケード版の雰囲気を大事にしつつも、操作性や難易度がややマイルドに調整されていることが多いです。ステージ構成が少し変わっていたり、演出が家庭用向けにアレンジされていたりと、「同じタイトルでも別バージョンとして楽しめる」仕上がりになっているケースが目立ちます。
それに対し、MSX2版は「家庭用パソコン」という土台の上で、アーケード版を可能な限り“そのまま持ってくる”方向に寄せた作りであり、良くも悪くも「ゲームセンターの厳しさをそのままパソコンに持ち込んだ」感があります。一方のWindows版は、技術的条件が整ったタイミングで「オリジナルへの回帰」を果たした存在であり、「家庭用としての遊びやすさ」よりも「元のゲームの熱量や手触り」を優先しています。
このように、家庭用ゲーム機版が“テレビで家族と遊ぶための奇々怪界”だとしたら、MSX2版・Windows版は、“パソコンの前にじっくり座り込んで向き合う奇々怪界”という位置づけになっているのが面白いところです。
● 表現力と“想像の余地”の違い
対応プラットフォームごとの違いで興味深いのは、「どこまでが画面に描かれ、どこから先をプレイヤーの想像力に委ねているか」という点です。アーケード版や高性能なコンシューマ版は、背景やキャラクターの細部まで描き込みが行き届いており、プレイヤーはスクリーン上の情報をそのまま受け取って楽しめます。一方、MSX2版は地味に見える場面もあるものの、「大枠だけをドットで提示し、その間をプレイヤーが補完する」余白が多く、そこに独特の味わいが生まれています。
Windows版では、アーケード版に近い表現力で再現されることで、「昔MSX2で遊んでいたとき、頭の中でイメージしていた画」を実際の画面で目にするような、不思議な体験ができる人もいます。子どもの頃に遊んだ“少し荒いドット絵”が、後年になって“ほぼ理想形のグラフィック”として目の前に現れることで、過去の記憶と現在の体験が一本の線でつながる――PC版『奇々怪界』は、そんな時間を超えた楽しみ方を可能にしてくれる作品でもあります。
● 操作感・入力デバイスの違いが生むプレイスタイルの差
対応パソコンごとの差として、もうひとつ無視できないのが「操作デバイスの違い」です。アーケードではレバーとボタン、家庭用ゲーム機ではパッドとボタンが当たり前ですが、パソコン環境ではキーボードやジョイスティック、後年にはUSBゲームパッドなど、プレイヤーによって使うデバイスがまちまちです。
MSX2版の時代、多くのプレイヤーはキーボード操作で遊んでいたため、「斜め移動が出しやすいキー配置はどれか」「スペースキーを攻撃にした方が押しやすい」など、自分なりの“最適レイアウト”を模索していました。この試行錯誤自体がひとつの楽しみであり、「操作方法から自分で組み立てる」という、パソコンゲームらしい体験でもあります。
Windows版の時代になると、USBパッドが普及したことで、操作面はかなりアーケード寄りの感覚になりました。その一方で、ノートPCのキーボードでプレイするユーザーも一定数おり、「会社帰りに出先のPCでこっそり遊ぶ」といったスタイルも生まれています。プラットフォームごとの入力デバイスの選択肢の広さは、そのまま遊び方の多様さにつながっており、「どの環境でどんな姿勢で遊ぶか」によって、同じ『奇々怪界』でもかなり違った印象を受けることになります。
● まとめ:プラットフォームごとに見えてくる“別の顔”
総括すると、対応パソコンごとの『奇々怪界』には、それぞれ次のようなキャラクター付けが見えてきます。
アーケード版:テンポとレスポンスが最も鋭い、原点にして完成形。
MSX2版:制約の中で工夫を凝らした、硬派でやりごたえのあるPC移植。
Windows版:現代環境で気軽に原点に近い手触りを味わえる“再現版”。
家庭用ゲーム機版:家族や友人とテレビの前で楽しむことを意識した、マイルド寄りのアレンジ版。
どれが一番優れている、というよりも、「どの環境で育ったか」によって“自分にとっての本家”が変わる――そんな懐の深さこそが、『奇々怪界』というタイトルの面白さです。MSX2とWindows、どちらもパソコンという同じ土俵にいながら、時代や技術レベルの違いによって、まったく別の味わいを持つバージョンに仕上がっている点も、レトロPCゲーム史の中で見ると非常に興味深いポイントと言えるでしょう。
[game-10]
●同時期に発売されたゲームなど
★メタルギア(MSX2)
★ゲーム名:メタルギア(MSX2版) ・販売会社:コナミ ・販売された年:1987年(MSX2用として発売) ・販売価格:当時のMSX2用メガROMタイトルとして標準的な6,000~7,000円前後の価格帯(一般的相場) ・具体的なゲーム内容: 同時期のPCゲームを語るうえでまず外せないのが、MSX2用『メタルギア』です。軍事要塞に単身潜入し、敵兵との正面衝突を避けながら任務を遂行するというコンセプトは、従来の「撃って進むアクション」とはまったく違う遊び心地を生み出しました。プレイヤーは特殊部隊員スネークとなり、監視カメラや巡回兵の視線を気にしつつ、物陰に隠れたり、音で敵を引き寄せたりしながら少しずつ施設の奥へと進んでいきます。MSX2の表示制限を逆手に取り、「敵をたくさん出さない代わりに、見つからないように進むスリル」で勝負しているのが特徴です。 ゲームはトップビューで描かれ、画面切り替え型でマップを移動していきます。銃や爆弾で派手に暴れる場面もありますが、むやみに撃ち合うとすぐに包囲されてしまうため、「いかに戦闘を避けるか」が重要な戦略になります。段ボール箱に潜り込んでやり過ごしたり、無線で仲間からアドバイスを受けたりと、当時のPCゲームとしては非常にドラマ性が高い構成で、プレイヤーに「映画の主人公になったような感覚」を味あわせてくれました。『奇々怪界』が反射神経とパターン構築を重視した和風アクションだとすれば、『メタルギア』は静かな緊張感を楽しむ“潜入シミュレーション寄りアクション”として、同じMSX2の世代を代表する一本と言えるでしょう。
★イース(PC-8801/PC-9801/MSX2 ほか)
★ゲーム名:イース ・販売会社:日本ファルコム ・販売された年:1987年 ・販売価格:PC用パッケージは概ね8,800~9,800円前後のRPG標準価格帯 ・具体的なゲーム内容: 『奇々怪界』と同じく80年代後半のPCユーザーを熱狂させたのが、アクションRPG『イース』です。赤髪の冒険者アドルが、不思議な古代王国イースの謎を追って旅をする物語で、軽快なフィールド移動とテンポの良い戦闘、そして耳に残るBGMが高く評価されました。戦いは一見シンプルで、アドルを敵に体当たりさせるだけですが、真正面からぶつかるとこちらが大ダメージを負うため、斜めからかすめるようにヒットさせる“半身タックル”が重要となります。操作自体は簡単なのに、立ち位置や角度を意識しなければならない奥深さがあり、プレイヤーは常に敵との間合いを考えながら動き続けることになります。 また、短めにまとめられた物語の密度も魅力で、PCゲームとしては比較的遊びやすいボリューム感ながら、世界の謎や人々のドラマが濃縮されています。『奇々怪界』がアーケードライクな構成で遊びきるタイプのアクションなら、『イース』は物語と育成の楽しさを組み合わせた“腰を据えて遊ぶ一本”として、同じ時期のPCゲームファンに強い印象を残しました。
★ソーサリアン(PC-8801/PC-9801 ほか)
★ゲーム名:ソーサリアン ・販売会社:日本ファルコム ・販売された年:1987年(PC-8801版) ・販売価格:PC-8801版定価9,800円(パッケージ表記) ・具体的なゲーム内容: 『ソーサリアン』は、複数の短編シナリオを順番に攻略していく、エピソード制のアクションRPGです。プレイヤーは4人パーティを編成し、横スクロールのステージを進みながら敵を倒し、謎を解き、冒険を重ねていきます。特徴的なのは、キャラクターが時間経過によって年齢を重ね、一定の年齢を超えると引退してしまう「寿命システム」です。これにより、単にレベルを上げて終わりではなく、「このパーティでどのシナリオまで突破できるか」「後輩にどのスキルを継承させるか」といった長期的な視点での育成を考える必要がありました。 また、数多くの魔法や装備品が用意されており、同じシナリオでもどのような構成で挑むかによって攻略の手触りが変わります。何度も遊べる作りになっていたため、「一本のゲームをとことん遊び込みたい」タイプのPCユーザーにはたまらない作品でした。『奇々怪界』が単独の冒険を濃密に描いたアクションだとすれば、『ソーサリアン』は“長期連載のファンタジー小説”をゲームで体験するようなタイトルであり、同じ時代のPC市場を別方向から盛り上げた存在と言えます。
★ハイドライド3 -THE SPACE MEMORIES-(PC/MSX2)
★ゲーム名:ハイドライド3 ・販売会社:T&Eソフト ・販売された年:1987年(PC・MSX2版が展開) ・販売価格:PC版は一般的なRPG価格帯(約8,800~9,800円前後) ・具体的なゲーム内容: 『ハイドライド3』は、アクションRPGシリーズの3作目として登場し、時間の概念や空腹度、善悪値など、当時としては非常にシミュレーション性の高い要素を盛り込んだ意欲作です。フィールドは時間帯によって明るさが変化し、夜になると敵が強くなったり、店が閉まったりと、世界が“生きている”感覚をプレイヤーに与えました。 戦闘はリアルタイムで進行し、敵との接触と同時に攻撃判定が生まれる方式ですが、ステータスや装備はかなり細かく設定されており、単純なアクション以上に「事前準備とプランニング」が重要になります。物語もSF的な要素を含み、単なる剣と魔法の世界に収まらない展開が待ち受けているのも特徴です。アーケードライクな『奇々怪界』とは異なり、じっくり腰を据えて遊ぶタイプのタイトルですが、「当時のPCゲームはここまで奥深い表現に挑戦していたのか」と感心させられる一本で、同世代のユーザーには強烈な印象を残しました。
★太陽の神殿 ~ASTEKA II~(PC-8801/MSX2 ほか)
★ゲーム名:太陽の神殿 ~ASTEKA II~ ・販売会社:日本ファルコム ・販売された年:1987年 ・販売価格:PC向けADVとして一般的な8,000~9,000円台 ・具体的なゲーム内容: 『太陽の神殿 ~ASTEKA II~』は、古代文明を題材にしたアドベンチャーゲームで、考古学的な謎解きと、危険な遺跡探索が組み合わさった作品です。プレイヤーは調査隊の一員として、伝説の遺跡に眠る秘宝を求めて旅に出ます。遺跡内部はトラップだらけで、石像が動き出したり、床が崩れたりといったイベントが次々に発生し、そのたびにプレイヤーはコマンド選択やパズル的な操作で危機を切り抜けなければなりません。 グラフィックは当時としてはかなり描き込まれており、PC画面いっぱいに広がる遺跡や神殿の情景が、プレイヤーに強い没入感を与えました。『奇々怪界』が和風の神社・妖怪世界を舞台にしているのに対し、『太陽の神殿』はアステカ文明の神話や伝承をモチーフにしており、“異国の神秘”を味わえる構成になっています。同じ「神や伝承」を扱いながら、和と洋、アクションとアドベンチャーという対照的なアプローチで、80年代後半のPCゲームシーンを彩ったタイトルのひとつです。
★うる星やつら ~恋のサバイバル・バースディ~(PC/MSX2)
★ゲーム名:うる星やつら ~恋のサバイバル・バースディ~ ・販売会社:マイクロキャビン ・販売された年:1987年 ・販売価格:キャラクターゲームとして標準的な8,000円前後 ・具体的なゲーム内容: 人気漫画・アニメ『うる星やつら』を題材にしたこのアドベンチャーゲームは、原作のドタバタラブコメディをPC上で再現することに挑んだ一本です。プレイヤーは諸星あたるとなり、ヒロインたちとのイベントをこなしながら、誕生日をめぐる騒動を乗り越えていきます。会話中心のADVながら、選択肢の取り方によって登場キャラの好感度が変化し、ルート分岐やエンディングが変わる構造は、当時のファンにとって斬新でした。 『奇々怪界』と比較すると、こちらは戦いよりもキャラクター同士の掛け合いやギャグに重きが置かれており、PCの画面にアニメ調のキャラクターが大きく描かれるだけでワクワクした時代です。和風テイストで妖怪退治を楽しむ『奇々怪界』と、ラブコメ世界でキャラクターとの会話を楽しむ『うる星やつら』。どちらも「日本的な文化」をベースにしながら、まったく違う方向性でPCユーザーの心をつかんだ作品と言えるでしょう。
★ガンダーラ 仏陀の聖戦(PC/MSX2)
★ゲーム名:ガンダーラ 仏陀の聖戦 ・販売会社:エニックス ・販売された年:1987年 ・販売価格:RPGとして一般的な価格帯(約8,000~9,800円) ・具体的なゲーム内容: 『ガンダーラ 仏陀の聖戦』は、仏教世界観をモチーフにした異色のRPGで、輪廻転生や悟りといったテーマを、ゲームシステムに大胆に取り込んでいます。プレイヤーは修行僧のような存在となり、さまざまな世界を巡って敵を退けながら、最終的な解脱を目指します。戦闘はターン制RPGながら、キャラクターの精神性や徳の高さがゲーム進行に影響を与えるなど、宗教的なモチーフを独特な形でゲーム化しているのが特徴です。 敵も単なるモンスターではなく、煩悩を象徴したような存在や、教義に基づくイメージが多数登場します。グラフィックは派手すぎず、荘厳さと幻想性を併せ持った世界観でまとめられており、当時のPCユーザーからは「重厚な雰囲気を持った一本」として語られました。『奇々怪界』もまた、日本の神道や妖怪をモチーフにしていますが、『ガンダーラ』はより宗教的・哲学的な側面に踏み込んだRPGであり、同じ“和テイスト+神仏モチーフ”というくくりの中で、まったく別の方向に振り切った作品と言えます。
★ジーザス(PC-8801/MSX2 ほか)
★ゲーム名:ジーザス ・販売会社:エニックス ・販売された年:1987年 ・販売価格:ADVとして標準的な8,000~9,000円前後 ・具体的なゲーム内容: 『ジーザス』は、SF色の強いアドベンチャーゲームで、宇宙船を舞台にしたサスペンスドラマを描きます。プレイヤーは調査船ジーザスのクルーとなり、木星圏で起こる不可解な事件の真相を探ることになります。宇宙空間特有の閉塞感と、乗組員たちの人間関係、そして得体の知れない恐怖がじわじわと高まっていく構成は、当時のPCユーザーに強い印象を与えました。 コマンド選択型のADVでありながら、イベントシーンのグラフィックやBGM演出が非常に凝っており、物語を読み進める楽しさに重点が置かれています。『奇々怪界』がアクションを通じてプレイヤーを“熱くさせる”ゲームだとすると、『ジーザス』はストーリーと演出で“じわじわと引き込む”ゲームであり、同じ時期のPC市場における「物語志向の一本」として位置づけられます。
★蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン(PC-8801/PC-9801 ほか)
★ゲーム名:蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン ・販売会社:光栄(現コーエーテクモゲームス) ・販売された年:1986年 ・販売価格:シミュレーションゲームとして高価格帯(1万円前後) ・具体的なゲーム内容: 『蒼き狼と白き牝鹿 ジンギスカン』は、モンゴル帝国の興亡をテーマにした歴史シミュレーションゲームです。プレイヤーはチンギス・ハーンとなり、内政や外交、軍事を駆使して勢力を広げ、ユーラシアの制覇を目指します。コマンドベースで都市の発展や軍備を整え、季節ごとの行動制限や人材登用など、多数の要素を同時に考える必要があり、「じっくり時間をかけて遊ぶPCゲーム」の代表格として親しまれました。 『奇々怪界』が数分単位で一気に盛り上がるアーケードライクな作品なのに対し、『蒼き狼と白き牝鹿』は一回のプレイに何十時間も費やす長期戦が前提です。同時期のPC市場では、このような本格シミュレーションが“PCならではの遊び”として確立されており、アクション派・RPG派・シミュレーション派といったプレイスタイルの違いがはっきりと見えていたのも特徴でした。
★三國志(PC-8801/PC-9801 ほか)
★ゲーム名:三國志 ・販売会社:光栄 ・販売された年:1986年 ・販売価格:シミュレーションに相応しい高価格帯(1万円前後) ・具体的なゲーム内容: 同じく光栄の歴史シミュレーションとして、『三國志』も『奇々怪界』と同時期のPC市場を代表する存在です。中国の三国時代を舞台に、プレイヤーは曹操・劉備・孫権といった群雄の一人となり、広大な中国大陸を統一することを目指します。内政で国力を高め、人材を登用し、外交で同盟や離反を操作しながら、最終的な覇権を争う流れは、歴史好きのユーザーにとってまさに夢のシミュレーションでした。 ターンごとに「どの都市を強化するか」「どの武将を派遣するか」と頭を悩ませるわけですが、その一つひとつの選択が数十ターン後の勢力図に反映されていくため、長期的な視野が求められます。『奇々怪界』のように瞬間的な操作技術を競うゲームと対照的に、「じっくり戦略を練ること」自体が面白さの核になっており、同じPCという土俵の上で、まったく違う遊び方が共存していたことがよくわかる一本です。
★信長の野望 全国版(PC-8801/PC-9801 ほか)
★ゲーム名:信長の野望 全国版 ・販売会社:光栄 ・販売された年:1987年 ・販売価格:前作よりスケールアップしたこともあり、1万円前後の高価格帯 ・具体的なゲーム内容: 『信長の野望 全国版』は、それまで東海地方を中心にしていたシリーズの舞台を日本全国へと拡大した作品で、「日本列島を丸ごと相手にする戦国シミュレーション」として高く評価されました。プレイヤーは織田信長をはじめとする戦国大名のひとりとなり、各国を平定しながら天下統一を目指します。前作からシステムがブラッシュアップされ、勢力ごとの個性やイベントが強化されたことで、歴史ドラマとしての面白さも増しました。 戦の準備として兵糧や金銭、兵力を整え、季節ごとの行動制限を考慮しながら出陣のタイミングを見極める――こうした思考過程そのものがゲームの醍醐味であり、“一手の重み”をじっくり味わえる作りになっています。『奇々怪界』のように敵弾を避けながら瞬間的に判断する世界と、何か月・何年というスパンで戦略を練る世界が、同じパソコンという器の中に同居していたことを実感させてくれる一本です。
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