『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』(プレイステーション5)

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【発売】:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
【開発】:インソムニアックゲームズ、マーベル・ゲームズ
【発売日】:2020年11月12日
【ジャンル】:アクションアドベンチャーゲーム

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■ 概要・詳しい説明

マイルズ・モラレスを主役に据えた、もう一人のスパイダーマンの独立編

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、2020年11月12日にソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されたPlayStation 5用アクションアドベンチャーゲームであり、PlayStation 5本体の登場初期を象徴するタイトルの一つとして大きな注目を集めた作品である。開発を担当したのは『Marvel’s Spider-Man』で高い評価を得たInsomniac Gamesで、前作で築かれたニューヨークのオープンワールド、ウェブ・スイングによる高速移動、映画的な演出、格闘アクションの手触りを受け継ぎながら、主人公をピーター・パーカーからマイルズ・モラレスへと切り替えている。物語上は完全な別物ではなく、2018年発売の『Marvel’s Spider-Man』の後日譚にあたる位置づけで、前作でスパイダーマンとしての第一歩を踏み出したマイルズが、本作では一人のヒーローとして街を守る立場へ進んでいく。いわばナンバリング続編というより、前作の世界観を引き継いだスピンオフでありながら、マイルズという若いヒーローの成長に焦点を絞った独立性の高い一本である。PS5版では高速SSDによる短いロード、DualSenseワイヤレスコントローラーの振動表現やトリガー感覚、レイトレーシングを活かした反射表現、4K/HDRを意識した映像美、3Dオーディオによる臨場感など、次世代機ならではの要素を前面に押し出しており、PlayStation 5の性能を体験するためのショーケース的な役割も果たした。物語の規模は前作よりコンパクトだが、そのぶん主人公の内面、家族、友人、近所の人々との関係、そしてハーレムという地域への愛着が濃く描かれており、巨大な事件を解決するだけではなく「自分の街を守るとは何か」を探す青春ヒーロー譚としてまとまっている点が大きな特徴である。

物語の舞台は冬のニューヨーク、中心となるのはマイルズの新しい生活圏であるハーレム

本作の舞台は、マーベル世界として再構成されたニューヨークである。プレイヤーは高層ビルが立ち並ぶマンハッタンを自由に飛び回り、街角の事件、住民からの依頼、犯罪組織の拠点、収集要素、メインミッションをこなしながら、マイルズの成長を追っていく。前作と同じく都市そのものがゲームの大きな魅力になっており、ビルの谷間をウェブで移動するだけでも気持ちよく、雪の降る冬景色、ホリデーシーズンの光、夜の街に反射するネオン、車道や歩道に流れる生活音が、スパイダーマンとして街を駆け抜ける感覚を強く支えている。特に本作ではマイルズが母リオと共にハーレムへ引っ越してきた直後の時期が描かれるため、ハーレムは単なる背景ではなく、彼にとっての新しい居場所として扱われる。住民の顔が見える小さな商店、地域活動、母の政治活動、近所の人々との交流、地元を脅かす企業の影、若者同士の友情と対立などが積み重なり、ニューヨーク全体を救う物語でありながら、最終的には「ハーレムを守る物語」として収束していく。ピーター・パーカーのスパイダーマンが長年の経験と責任感を背負った完成度の高いヒーローとして描かれていたのに対し、マイルズはまだ迷い、失敗し、感情に揺れながらも前へ進む若者である。その未完成さが本作の個性になっており、彼がビルの間をぎこちなく、しかし楽しそうに飛ぶモーションにも、ピーターとは違う若さと勢いが表れている。

ピーター不在のニューヨークで、マイルズが一人前のヒーローへ近づいていく構成

本作の導入では、ピーター・パーカーがニューヨークを離れることになり、マイルズは一時的に街を任される。これにより、主人公交代は唐突な世代交代ではなく、師匠から弟子へ経験を渡す自然な流れとして描かれている。前作を遊んだプレイヤーにとっては、ピーターが完全に消えるわけではない安心感がありつつも、物語の中心はあくまでマイルズに置かれるため、プレイヤーは彼と同じ目線で「自分だけで街を守れるのか」という不安に向き合うことになる。マイルズはスパイダーマンの能力を持っているが、ピーターと同じ戦い方ができるわけではない。彼には彼だけの力があり、彼だけの人間関係があり、彼だけの守りたい場所がある。そこで本作は、マイルズを単なる代役として扱わず、彼がピーターの模倣を超えて「自分自身のスパイダーマン」になるまでの物語として組み立てられている。序盤では師匠の影を追い、失敗すれば自信を失い、周囲からの期待に戸惑う。しかし事件が進むにつれ、彼はスーツの中に隠れるだけではなく、マイルズ・モラレスという一人の少年として責任を引き受けるようになる。この成長の描き方は、派手なバトルだけでなく、家族との会話、友人とのすれ違い、街の人々との距離感にも表れており、ヒーロー作品でありながら青春ドラマとしての味わいも濃い。

敵対勢力はロクソンとアンダーグラウンド、企業の利害と若者の怒りが衝突する

物語の大きな軸となるのは、巨大エネルギー企業ロクソンと、ハイテク装備を使う犯罪集団アンダーグラウンドの対立である。ロクソンは新エネルギー事業を掲げ、街の未来を明るくする存在のように振る舞うが、その裏には危険な実験や利益優先の体質が見え隠れする。一方のアンダーグラウンドは、紫色のエネルギー武器や高速移動装備を使う若い集団で、単なる暴力組織というより、ロクソンへの敵意と理想を抱えた過激な勢力として描かれる。彼らを率いるティンカラーは、マイルズの物語に深く関わる重要人物であり、その正体や動機は本作のドラマ性を強める要素になっている。プレイヤーはスパイダーマンとして両勢力の争いを止めようとするが、単純に悪人を倒せば終わる話ではない。ロクソンには企業としての権力があり、アンダーグラウンドには若者たちの怒りと痛みがあり、マイルズはその間で何を守るべきかを考え続ける。さらに、前作から続投するライノや、マイルズにとって個人的な意味を持つプラウラーも登場し、敵キャラクターは数こそ多くないものの、一人ひとりが物語上の役割を明確に持っている。特にプラウラーは、マイルズの身近な人物との関係を通じて、ヒーローとしての選択と家族への情の間で揺れるテーマを強く担っている。

マイルズだけの能力が、移動・戦闘・ステルスに新しい個性を与えている

ゲームプレイは前作の基礎を引き継ぎ、三人称視点でニューヨークを自由に移動し、メインミッションやサイド要素を進めていく形式である。基本となるウェブ・スイング、壁走り、ジャンプ、空中トリック、敵との近接戦闘、ウェブを利用した拘束や投げ飛ばしといった要素は健在で、前作を遊んだプレイヤーならすぐに操作感を思い出せる。その一方で、マイルズにはピーターとは異なる固有能力が用意されている。代表的なのが生体電気を利用したヴェノム・パワーで、攻撃に電撃をまとわせて敵を吹き飛ばしたり、防御の硬い相手を崩したり、複数の敵をまとめて無力化したりできる。これは単なる必殺技ではなく、戦闘の流れを変える主力手段として機能し、敵に囲まれたときの突破口、シールド持ちへの対抗策、ボス戦での大ダメージ源として活躍する。また、ステージの仕掛けを起動する場面にも使われ、電気を流す、エネルギーを吸収する、設備を復旧させるといった探索上の役割も持っている。もう一つの大きな能力がカモフラージュで、一定時間姿を消し、敵の視界から逃れることができる。これにより、ステルス攻略の自由度が増し、見つかっても立て直す余地が生まれる。ただし無制限に透明化して一方的に倒せるわけではなく、ゲージ管理や使用タイミングが重要になるため、強力でありながら緊張感も保たれている。マイルズの能力は、ピーターの戦い方と差別化するための飾りではなく、操作そのものに新しいリズムを与える中核的な仕組みになっている。

戦闘は爽快だが油断できず、スパイダーマンらしい立体的な立ち回りが求められる

本作の戦闘は、軽快な打撃、空中コンボ、ウェブ拘束、ガジェット、回避、環境利用を組み合わせて、多数の敵を相手に立ち回るスタイルである。マイルズは単純な力押しだけではすぐに囲まれてしまうため、敵の攻撃予告を見て回避し、空中へ逃がし、壁や床にウェブで貼りつけ、ヴェノム攻撃で大きな隙を作る必要がある。難易度を高めに設定すると、序盤から敵の数や攻撃頻度に圧迫されやすく、アクションが苦手なプレイヤーにとってはやや忙しいバランスに感じられることもある。しかし、慣れてくると攻撃と回避が途切れずにつながり、スパイダーマンらしい縦横無尽の戦いが成立する。ガジェットの種類は前作より絞られているが、その分マイルズ固有の能力が前面に出ており、戦闘の印象はかなり違う。ピーターの戦闘が豊富な装備と熟練の技で敵を制圧するものだったとすれば、マイルズの戦闘は若さと爆発力、瞬間的なひらめきで状況をひっくり返すものに近い。また、敵拠点では最後までステルスで進める余地もあり、上から敵を吊り上げる、透明化して配置を変える、仲間から孤立した相手を狙うなど、正面突破以外の遊び方も楽しめる。前作で賛否が分かれた一般人視点の強制ステルスや、失敗で即ゲームオーバーになりやすい演出は大きく抑えられており、全体的にプレイヤーがスパイダーマンを操作している時間を重視した作りになっている。

PS5版ならではの映像表現と体感要素が、冬のニューヨークをより鮮やかに見せる

PS5版の大きな魅力は、次世代機の性能を使った見た目と快適性である。とりわけロード時間の短さは印象的で、起動やリトライ、ファストトラベルの待ち時間が非常に短く、都市を移動するテンポを止めにくい。前作やPS4世代のオープンワールドゲームでは、移動や再開の合間にロードを意識する場面があったが、本作のPS5版ではそうした待ち時間がかなり薄まり、プレイヤーはほぼ途切れずに街を飛び回れる。映像面では、レイトレーシングによるビルの窓や濡れた路面の反射、夜の街の光、雪景色の白さとイルミネーションの対比が美しく、ハーレムやマンハッタンの雰囲気を華やかに見せている。パフォーマンス重視の設定では滑らかな動きが楽しめ、映像美を重視する設定では反射や解像感の豊かさを味わえるため、自分の好みに合わせて遊び方を選べるのも嬉しい点である。さらにDualSenseのハプティックフィードバックは、ウェブを放つ感覚、ヴェノム攻撃の衝撃、街を飛び回るときの手応えに細かな違いを与え、アダプティブトリガーはウェブ・スイングの張力を手元に伝えるような体験を作っている。3Dオーディオも、街のざわめき、敵の位置、飛び交う効果音を立体的に感じさせ、ヘッドホン使用時にはスパイダーマンとして都市の中にいる感覚が増す。PS5の機能を説明するだけでなく、それらがゲームの気持ちよさに直結している点が本作の強みである。

エディション展開と前作リマスターの同梱により、シリーズ入門としても入りやすい

本作は通常版に加えて、『Marvel’s Spider-Man Remastered』を含むUltimate Editionも用意された。これにより、前作を未プレイの人はマイルズの物語だけでなく、ピーター・パーカーを主人公とする前作のPS5向けリマスター版も一緒に楽しめる構成になっていた。前作の出来事は本作の前提として重要であり、マイルズがどのようにスパイダーマンの世界へ関わっていったのか、ピーターとの師弟関係がどのように生まれたのかを知っているほど、本作の序盤や会話の意味が深く伝わる。そのため、シリーズ未経験者にとってUltimate Editionは特に相性がよい選択肢だった。一方で、本作単体でもマイルズの成長物語として理解しやすく、プレイ時間も比較的まとまっているため、長大なオープンワールドゲームに身構える人でも遊びやすい。PS4版からPS5版への移行にも配慮され、世代交代期のタイトルとして、PS4ユーザーとPS5ユーザーの双方が触れやすい形を取っていた点も評価できる。

販売実績と評価の面でも、PS5初期を代表する一本として存在感を示した

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、PS5のローンチ期に登場したタイトルとして、ハードの普及とともに長く売れ続けた作品である。世界的にも大きな販売実績を残し、単なるスピンオフにとどまらない商業的成功を収めた。発売当初は、前作より物語のボリュームが小さいことや、ヴィランの数が限られていることから「大型DLCに近い」と見る声もあったが、それでもウェブ・スイングの完成度、PS5らしい快適性、マイルズ固有の能力、ハーレムを軸にした物語の温かさは高く評価された。特に、マイルズが黒と赤を基調としたスーツをまとい、自分の力で街を救う終盤の流れは、若いスパイダーマンが本当の意味で独り立ちする瞬間として印象に残りやすい。前作のピーター編が「経験を積んだヒーローの責任」を描いた作品だとすれば、本作は「まだ未熟な若者が、自分の居場所と使命を見つける物語」である。規模の大きさでは前作に及ばない部分がある一方、焦点の絞り方、テンポ、キャラクターの感情表現、PS5の性能を活かした体験という面では明確な価値を持っており、シリーズの中でも独自の立ち位置を確立した。

総じて、PS5世代の始まりにふさわしい青春ヒーローアクション

本作の魅力を一言で表すなら、スパイダーマンらしい爽快な移動と、マイルズ・モラレスらしい未完成な輝きが重なった作品である。プレイヤーは最初から完全無欠のヒーローになるのではなく、戸惑いながら、失敗しながら、街の人々に支えられながら、自分だけの戦い方を見つけていく。その過程が、ゲームシステムと物語の両方に落とし込まれている点が優れている。ウェブ・スイングは相変わらず気持ちよく、戦闘はヴェノム・パワーとカモフラージュによって前作とは違う刺激を持ち、冬のニューヨークはPS5の映像表現によって美しく描かれる。ボリューム面では前作より短く、シリーズ全体の大きな伏線を大きく進める作品ではないが、マイルズというキャラクターを主役として成立させ、次のシリーズ展開へつなげる役割は十分に果たしている。ハーレムの人々、母リオ、親友との複雑な関係、ピーターから託された責任、ロクソンとアンダーグラウンドの衝突を通じて、マイルズは「誰かの代わり」ではなく「マイルズ・モラレスのスパイダーマン」として立ち上がる。PS5初期の一本として見ると、グラフィックやロード速度の進化を実感できる作品であり、シリーズ作品として見ると、ピーターとは違う視点からスパイダーマンの世界を広げた重要作である。派手な大作感と親しみやすい青春ドラマが両立しているため、スパイダーマンファンはもちろん、短めでも濃密なアクションアドベンチャーを求めるプレイヤーにも勧めやすい作品だと言える。

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■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター

マイルズならではの若さと勢いが、前作とは違う遊び心を生んでいる

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』の最大の魅力は、同じスパイダーマンでありながら、ピーター・パーカーとは明らかに異なる主人公を操作している感覚がしっかり伝わるところにある。前作のピーターは経験豊富で、戦闘でも移動でも熟練したヒーローとしての完成度が高かった。一方、本作のマイルズはまだ修行中の若者であり、動きには少し荒さが残り、スイング中の姿勢もピーターほど洗練されていない。しかし、その未完成さこそが本作の個性になっている。ビルの谷間を飛びながら足をばたつかせたり、空中で勢い余って回転したり、トリックに楽しさがにじんでいたりするため、移動しているだけでも「新しいスパイダーマンを育てている」感覚がある。ゲームとしての基本構造は前作を受け継いでいるが、マイルズの視点で街を見ることで、同じニューヨークでも少し違う温度を持って感じられる。彼はまだ街のすべてを知り尽くしているわけではなく、ハーレムの人々と関係を築きながら、自分の守るべき場所を探していく。そのため、プレイヤーも単なるヒーローとしてではなく、街に根を下ろしていく一人の少年として物語に入りやすい。スーパーパワーを得た若者が、憧れや不安、家族への思い、友人との衝突を抱えながら成長する構成は、アクションゲームでありながら青春映画のような味わいを持っている。

ウェブ・スイングは移動手段でありながら、ゲームそのものの快感になっている

本作を語るうえで欠かせないのが、ニューヨークを飛び回るウェブ・スイングの爽快感である。目的地へ向かうための単なる移動ではなく、ビルの高さ、道路の幅、ジャンプの角度、ウェブを放つタイミングによって速度や軌道が変わり、操作しているだけで気持ちよさが続く。高層ビルの側面すれすれを滑るように飛び、道路上の車の流れを越え、屋上から屋上へ跳び移り、空中でトリックを決めながら次のウェブにつなげる。この一連の動作がほとんど途切れず、慣れてくるほど自分の思い通りに街を走れるようになる。特にPS5版ではロード時間の短さや描画の安定感もあり、移動のテンポが損なわれにくい。マップ上にはメインミッション、サイドミッション、収集物、敵拠点などが配置されているが、そこへ向かう道中そのものが楽しいため、寄り道が苦にならない。むしろ、目的地に直行するよりも、遠回りしてビルの間を飛び続けたくなる魅力がある。マイルズのスイングモーションには若者らしい軽さがあり、ピーターと比べて動きに遊びが多い。空中トリックを組み合わせれば、移動はさらに個性的になる。単に速く移動するだけならファストトラベルも使えるが、本作では自分の手で街を飛ぶこと自体がご褒美のようなものになっている。

ヴェノム・パワーが戦闘の主役になり、逆転の気持ちよさを作り出す

マイルズ独自の能力であるヴェノム・パワーは、本作の戦闘を前作と大きく差別化する重要な要素である。これは生体電気を利用した攻撃で、敵に強烈な電撃を浴びせたり、空中へ打ち上げたり、周囲の敵を巻き込んだりできる。通常攻撃だけでは崩しにくい盾持ちや重装備の敵にも有効で、複数の敵に囲まれた場面で一気に流れを変える切り札になる。ゲーム序盤ではまだ使用できる技が限られているが、物語や成長に合わせてヴェノム・ジャンプ、ヴェノム・ダッシュ、広範囲攻撃などが増えていくため、マイルズ自身の成長が戦闘の手触りにも反映される。特に敵が密集している場所へ飛び込み、ヴェノム攻撃で一気に敵を吹き飛ばす瞬間は非常に爽快で、アクションゲームとしての派手さが強く出る。重要なのは、ヴェノム・パワーが単なる演出技ではなく、攻略上の判断材料になっていることだ。ゲージをいつ使うか、回復に温存するか、強敵の防御を崩すために使うか、囲まれたときの脱出に使うかによって戦いやすさが変わる。何も考えずに連発すると必要な場面で足りなくなり、逆に使い惜しみすると敵に押し込まれる。派手で強力だが管理も必要というバランスが、戦闘に緊張感と達成感を与えている。

カモフラージュによってステルス攻略の自由度が高まっている

もう一つのマイルズ固有能力であるカモフラージュは、一定時間透明になって敵の視線を切る能力である。これにより、本作のステルスは前作よりも柔軟になっている。敵に見つからないように天井や壁を移動し、一人ずつ吊り上げたり、物陰からウェブで拘束したり、ガジェットで注意をそらしたりする基本は前作と同じだが、カモフラージュがあることで、万が一見つかりそうになっても立て直しやすい。敵の近くを通り抜ける、危険な位置から安全な高所へ逃げる、孤立した敵に近づく、戦闘中に一度姿を消して状況を整理するなど、使い道は多い。ただし、透明になればすべてが解決するわけではない。ゲージには制限があり、攻撃すれば大きく消費されるため、使いどころを誤ると肝心な場面で能力を使えなくなる。終盤にはカモフラージュ対策を持つ敵も登場するため、ずっと隠れ続けて楽に進める作りにはなっていない。この制約があるからこそ、カモフラージュは便利すぎる抜け道ではなく、上手に使うと攻略が美しくなる技として機能している。敵拠点を最後まで見つからずに制圧できたときの達成感は高く、正面から戦うだけではないスパイダーマンらしい知恵と機動力を楽しめる。

攻略の基本は、地上に留まらず空中と壁を使って戦場を広く見ること

本作の戦闘で苦戦しやすい人は、地上で敵に囲まれたまま殴り合ってしまう傾向がある。スパイダーマンは地上の格闘家ではなく、空中、壁、天井、障害物を含めた立体空間を使って戦うヒーローである。そのため攻略の基本は、敵の集団に飲み込まれないことにある。まず危険な敵を見極め、銃を持った敵、ロケットランチャーを使う敵、遠距離攻撃を仕掛ける敵を優先的に処理すると安定しやすい。近接攻撃の敵は回避と打ち上げで対応しやすいが、遠距離攻撃は放置するとコンボを妨害されるため、先にウェブで拘束するか、一気に接近して無力化したほうがよい。敵が密集したらヴェノム攻撃で崩し、危険になったら空中へ逃げる。空中コンボ中は地上より攻撃を受けにくく、敵を一人ずつ処理しやすい。さらに、壁や床へウェブで貼りつけると素早く敵を減らせるため、単に体力を削るより、環境を利用して即座に無力化する意識が大切である。回復にもゲージを使うため、攻撃に全振りするのではなく、自分の体力や敵の数を見ながら判断することが求められる。難易度が高いほど、攻め続ける勇気と逃げる判断の両方が重要になる。

序盤攻略では、スキル解放とガジェット強化の優先順位が遊びやすさを左右する

序盤のマイルズは体力も技も少なく、強敵に囲まれると一気に削られやすい。そのため、攻略を楽にするには、まず戦闘中の生存力を高めるスキルや、ヴェノム・パワーを活かしやすくする能力を優先するとよい。ヴェノム攻撃は本作の中心なので、関連スキルを早めに強化すると敵の防御を崩しやすくなり、戦闘のテンポが良くなる。次に、ステルスを重視したい場合はカモフラージュ関連を伸ばすと、敵拠点の攻略がかなり楽になる。ガジェットは前作より種類が少ないため、どれを使うか迷いすぎる必要はないが、敵を足止めできるウェブ系の強化は安定感につながる。敵の数が多い場所では、一体ずつ殴り倒すより、ウェブや環境で拘束しながら数を減らすほうが安全である。サイドミッションや収集要素を進めると強化に必要な素材が集まるため、メインストーリーだけを急いで進めるより、途中で街の依頼をこなしておくと後半が遊びやすくなる。特にアクションに慣れていない人は、早い段階でスーツ改造やバイザー改造を見直し、自分の苦手な部分を補う構成にするとよい。ダメージを避けるのが苦手なら防御寄り、ステルスが苦手なら感知や隠密補助、攻撃重視ならヴェノム強化というように、プレイスタイルに合わせることで難易度の印象が大きく変わる。

サイドミッションは街とのつながりを深める要素として機能している

本作のサイド要素は、単なる作業的な寄り道ではなく、マイルズがハーレムやニューヨークの人々とつながっていく過程として意味づけられている。市民からの依頼をアプリで受け、盗難、行方不明、トラブル、地域の困りごとなどを解決していく流れは、マイルズが「近所の親切なスパイダーマン」として認められていく感覚を生む。大事件だけでなく、小さな困りごとにも駆けつける姿が描かれるため、マイルズのヒーロー像はより身近に見える。攻略面でも、サイドミッションを進めることで経験値や強化素材が得られ、スーツやガジェット、スキルの解放につながるため、プレイヤーにとって実用的な価値も高い。また、収集要素にはマイルズの過去や家族、友人との思い出に関わるものもあり、ただマップを埋めるだけでなく、キャラクター理解を深める役割を持っている。街の各地を巡りながら音を探したり、タイムカプセルを見つけたり、ピーターが用意したトレーニングを受けたりすることで、マイルズがどのような少年で、どのような関係の中で育ってきたのかが少しずつ見えてくる。短めの本編を補う意味でも、サイド要素は積極的に遊ぶ価値がある。

クリア条件とエンディングまでの流れは明快で、短く濃い物語としてまとまっている

本作のメインストーリーは、ロクソンとアンダーグラウンドの抗争を追いながら、マイルズがハーレムを守るために決断していく流れで進む。クリア条件としては、メインミッションを順番に進め、物語上のボス戦やイベントを突破し、最終局面で街を脅かす危機を止めることが中心になる。前作のように多数のヴィランが次々と現れる大規模な構成ではなく、マイルズに近い人物との関係が物語の核になるため、最後まで個人的な感情とヒーローとしての責任が絡み合う。プレイ時間はオープンワールド大作としては比較的短めで、メインだけならテンポよく進められる。一方、サイド要素や収集物、スーツ集め、チャレンジ達成まで含めれば、より長く遊ぶこともできる。エンディングに到達するだけなら難解な条件はなく、メインミッションを追っていけばよいが、戦闘に不安がある場合は途中で強化を進めておくと終盤が楽になる。特にボス戦では、敵の攻撃パターンを見て回避し、ヴェノム・パワーを確実に当てることが重要になる。焦って攻撃を連打するより、相手の隙を見て反撃するほうが安定する。物語の結末は、マイルズがピーターの代役ではなく、自分自身のスパイダーマンとして認められていく内容になっており、短いながらも後味のよい達成感がある。

必勝法は「回避・ヴェノム・空中戦・ステルス」を状況ごとに切り替えること

本作をうまく攻略するための考え方は、同じ戦い方にこだわらないことである。敵が少ないときは通常攻撃と空中コンボで素早く倒し、敵が増えたらヴェノム攻撃で集団を崩す。遠距離攻撃が多いときは銃持ちを最優先で処理し、シールドや大型の敵にはヴェノム・パワーを使って防御を崩す。危険になったらカモフラージュで姿を消し、体勢を立て直す。ステルス可能な場面では、正面から突撃する前に高所から敵の配置を確認し、孤立した敵を順番に排除する。これらを自然に切り替えられるようになると、難しい戦闘でも安定して勝てるようになる。特に重要なのは、回避を攻撃の中断ではなく、コンボの一部として考えることだ。敵の攻撃予告が出たらすぐに避け、避けた直後に反撃する。攻撃を欲張りすぎると連続でダメージを受けやすいため、常に画面全体を見て、どの敵が次に攻撃してくるかを意識する必要がある。また、ボス戦では相手の体力を一気に削ろうとするより、攻撃パターンを覚え、ヴェノムを当てるタイミングを見極めるほうが安全である。アクションが苦手な場合は難易度を下げても本作の魅力は十分味わえるため、無理に高難度へこだわらず、スイングや物語を楽しむ遊び方もおすすめできる。

好きなキャラクターとして特に印象深いのは、主人公マイルズ・モラレス

本作で最も魅力的なキャラクターを挙げるなら、やはりマイルズ・モラレスである。彼はスーパーヒーローでありながら、最初から完璧な存在ではない。責任感はあるが迷いもあり、力はあるが経験が足りず、周囲の期待に応えたい気持ちと、自分にできるのかという不安を同時に抱えている。その等身大の弱さが、彼を親しみやすい主人公にしている。マイルズはピーターのような先輩ヒーローに憧れながらも、同じ道をなぞるだけではなく、自分のルーツや家族、友人、ハーレムの人々との関係の中から自分なりのヒーロー像を作っていく。戦闘中の勢いある動き、ヴェノム・パワーの派手な演出、スイング中の楽しそうな姿も魅力的だが、それ以上に心を引くのは、彼が人を見捨てられない優しさを持っている点である。大きな危機の中でも、身近な人の気持ちに向き合おうとし、怒りや悲しみだけで相手を切り捨てない。若さゆえに判断を誤ることもあるが、そこから逃げずに責任を取ろうとする姿が、物語の終盤で大きな説得力を持つ。マイルズは「新しいスパイダーマン」という肩書きだけでなく、彼自身の魅力でプレイヤーを引っ張る主人公である。

フィン、アーロン、リオが物語に人間味と葛藤を与えている

マイルズの周囲にいるキャラクターも、本作の魅力を支えている。フィンは、マイルズの親友でありながら、物語の中心的な対立にも関わる重要人物である。彼女は単純な悪役ではなく、怒り、喪失、信念、復讐心が混ざり合った人物として描かれるため、プレイヤーは彼女を完全に否定しきれない。マイルズとの過去の関係があるからこそ、二人の衝突にはただのヒーロー対ヴィラン以上の重みがある。アーロン・デイヴィスも印象的で、マイルズにとって家族でありながら、ヒーローとしての道を揺さぶる存在である。彼は危うさを抱えた人物だが、マイルズへの情は本物であり、その複雑さがドラマを深めている。そして母リオ・モラレスは、マイルズにとって日常と良心を象徴する存在である。政治活動を通じて地域を守ろうとする彼女の姿は、スーツを着て戦うマイルズとは違う形のヒーロー像として映る。リオがいるからこそ、マイルズの戦いはただの犯罪退治ではなく、家族と街を守る行動として意味を持つ。これらの人物がいることで、本作の物語は派手なアクションだけに留まらず、人間関係の痛みや温かさを持った作品になっている。

ライノやプラウラーなどの敵キャラクターは数よりも存在感で勝負している

本作に登場する有名ヴィランの数は前作より少ないが、そのぶん主要な敵キャラクターの役割は比較的はっきりしている。ライノは序盤から強烈なインパクトを残す敵であり、マイルズがまだ一人前ではないことを示す壁として機能する。圧倒的な突進力と破壊力を持つライノとの戦いは、PS5版の派手な演出とも相性がよく、序盤の見せ場として記憶に残りやすい。プラウラーは戦闘面だけでなく物語面で重要な存在で、マイルズの家族関係や信頼の問題に深く関わる。敵でありながら完全に突き放せない人物として描かれるため、彼とのやり取りには緊張感と切なさがある。ティンカラーもまた、単に倒すべき悪人ではなく、マイルズと近い距離にいるからこそ衝突が痛く感じられる相手である。このように、本作の敵は数で豪華さを出すより、マイルズの成長に必要な試練として配置されている。前作のように大物ヴィランが次々と現れる展開を期待すると物足りなさを感じるかもしれないが、マイルズの物語として見れば、敵の少なさは焦点を絞る効果にもなっている。

本作の楽しみ方は、メインだけを追わず街の空気を味わうことにある

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』をより楽しむなら、メインストーリーだけを急いで進めるのではなく、街を飛び回りながら寄り道をする遊び方が向いている。雪のニューヨークを自由に移動し、気になった事件に駆けつけ、サイドミッションをこなし、スーツを集め、フォトモードで景色を撮影する。こうした小さな行動の積み重ねが、マイルズが街に溶け込んでいく感覚につながる。フォトモードは特に相性がよく、空中でポーズを取るマイルズ、夜景を背にしたスーツ、雪の舞うハーレム、戦闘中のヴェノム攻撃など、絵になる場面が非常に多い。スーツ変更も楽しみの一つで、映画風のスーツや手作り感のあるスーツなど、マイルズらしいバリエーションが用意されている。前作ほど数は多くないものの、それぞれに個性があり、プレイヤーの気分に合わせて見た目を変えられる。音楽も本作の雰囲気を強めており、ヒップホップや電子音の要素がマイルズの若さとハーレムの空気に合っている。戦闘、移動、物語、音楽、街並みが一体になったとき、本作は短いながらも濃い体験になる。

総合的に見ると、攻略の気持ちよさとキャラクターの魅力が両立した作品

本作のゲームとしての面白さは、完成された前作の土台に、マイルズ固有の能力と成長物語をうまく重ねたところにある。ウェブ・スイングは変わらず爽快で、戦闘はヴェノム・パワーによってより派手になり、カモフラージュによってステルスの自由度も増している。攻略面では、空中戦、回避、ゲージ管理、敵の優先順位、ガジェット活用を覚えるほど上達が実感できる。難しさはあるが、理不尽というより「スパイダーマンらしく動けるか」を問う作りになっており、上手く立ち回れたときの満足感が高い。キャラクター面では、マイルズを中心に、フィン、アーロン、リオ、ピーター、ハーレムの住民たちが物語を支え、プレイヤーにとって守りたい街の輪郭を作っている。クリアまでのボリュームは大作としては控えめだが、そのぶんテンポは良く、余計な要素で薄まらない。ピーターとは違うスパイダーマンを操作する新鮮さ、若いヒーローが自分の道を見つける感動、PS5ならではの快適なプレイ感が合わさり、シリーズの中でも独自の魅力を持つ一作に仕上がっている。アクションが好きな人には立体的な戦闘と移動の楽しさを、キャラクター重視の人にはマイルズの成長物語を、収集や探索が好きな人には街を巡る楽しみを提供してくれる、非常に遊びやすく印象に残るヒーローゲームである。

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■ 感想・評判・口コミ

発売当時の第一印象は「PS5らしさを感じられる華やかなスパイダーマン」だった

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』が発売された当時、多くのプレイヤーが最初に感じた魅力は、やはりPlayStation 5初期タイトルらしい映像の鮮やかさと動作の快適さだった。前作『Marvel’s Spider-Man』の時点で、ニューヨークを自由に飛び回る爽快感はすでに高く評価されていたが、本作では冬の街並み、雪、夜景、ビルの窓に映り込む光、ハーレムの温かな生活感が加わり、同じ都市を舞台にしていながら新鮮な印象を与えた。特にPS5版を遊んだ人からは、ロード時間の短さ、ファストトラベルの速さ、ゲーム開始から操作可能になるまでのテンポの良さに驚く声が多かった。前世代機では当たり前だった待ち時間がほとんど意識されず、ミッション失敗後の再開も早いため、アクションゲームとしての気持ちよさが損なわれにくい。グラフィック面についても、レイトレーシングによる反射表現や、雪の降るニューヨークの空気感が好意的に受け止められた。巨大な次世代専用大作というより、PS5の新機能をわかりやすく体験できる一本として評価され、ハードを買ったばかりの人が最初に触れるゲームとしてちょうどよいという反応も目立った。DualSenseの振動やトリガーの感触も、ウェブ・スイングやヴェノム攻撃と相性がよく、手元でスパイダーマンの動きを感じられる点が好評だった。

ウェブ・スイングの爽快感は前作から引き続き高く評価された

プレイヤーの感想で特に多かったのは、やはり「移動しているだけで楽しい」という声である。本作ではメインミッションやサイドミッションを進めることが目的になるが、実際には目的地へ向かうまでの道中そのものが遊びとして成立している。ビルの間を飛び、空中でトリックを決め、道路の上を低く滑るように移動し、勢いをつけて高く跳ね上がる。この一連の操作が直感的で、慣れるほど滑らかにつながっていくため、用事がなくても街を飛び回りたくなる。前作を遊んだ人からは「基本の気持ちよさがそのまま残っている」という安心感のある評価が多く、初めて触れた人からは「スパイダーマンを操作している感覚が想像以上に自然」という驚きが聞かれた。さらに、マイルズのスイングモーションはピーターと比べて若々しく、少し不安定で、楽しさが全身に出ているような動きになっているため、単なる主人公変更ではなく、キャラクター性が移動にも反映されていると受け止められた。空中トリックの見栄えもよく、フォトモードで撮影したくなる瞬間が多い点も評判が良かった。移動が苦痛になりがちなオープンワールドゲームが少なくない中、本作は移動そのものが最大の娯楽になっているため、プレイ後の感想でも「街を飛ぶだけで満足できる」という評価につながっている。

マイルズの主人公化は、おおむね好意的に受け止められた

本作はピーター・パーカーではなく、マイルズ・モラレスを主人公にした作品である。そのため発売前には、前作のピーターが好きだったプレイヤーから、主人公交代に対する不安もあった。しかし実際にプレイした人の多くは、マイルズの描き方に好意的な印象を持った。彼はピーターの代用品として置かれているのではなく、若さ、家族との関係、ハーレムという地域性、自分の能力への戸惑いを持つ独立した主人公として描かれている。ピーターのように熟練していないからこそ、失敗や迷いに共感しやすく、成長していく過程を応援したくなるという感想が多かった。特に、物語が進むにつれてマイルズが「二人目のスパイダーマン」ではなく「自分自身のスパイダーマン」になっていく構成は、プレイヤーの満足感につながりやすい。前作から続く師弟関係も自然で、ピーターが完全に物語から消えるのではなく、マイルズの独り立ちを支える存在として扱われている点も受け入れやすかった。もちろん、ピーターを主役としてもっと見たかったという声もあるが、本作の目的がマイルズの物語であることを理解したうえで遊ぶと、主人公交代はむしろ新鮮な魅力として機能している。特に終盤の展開では、マイルズを主役にした意味がはっきり伝わるため、クリア後には彼への愛着が強くなったという感想も多い。

ヴェノム・パワーとカモフラージュは、戦闘を派手で個性的にしたと評価された

戦闘面の評判では、マイルズ固有のヴェノム・パワーとカモフラージュが高く評価された。前作の戦闘も完成度は高かったが、ピーターの戦い方をそのまま繰り返すだけでは新鮮さに欠ける可能性があった。本作では、生体電気を使ったヴェノム攻撃によって、敵を一気に吹き飛ばす爽快感や、防御の硬い相手を崩す戦術性が加わっている。強敵に囲まれた場面でヴェノム攻撃を放ち、状況を一気にひっくり返す感覚は非常に気持ちよく、プレイヤーからは「マイルズらしい派手さがある」「戦闘のテンポが良くなった」といった反応が見られた。カモフラージュについても、ステルス時の自由度を高める要素として好評だった。見つかりそうになったときに姿を消して立て直したり、敵の背後へ回り込んだりできるため、前作よりも戦い方の幅が広がっている。さらに、これらの能力は物語上でもマイルズの個性として扱われるため、ゲームシステムとキャラクター設定がうまく噛み合っている。能力が強すぎて単調になるのではなく、ゲージ管理や使いどころが必要なため、上手く使えたときの達成感がある点も評価された。一方で、前作の豊富なガジェットやスーツパワーが好きだった人からは、装備の選択肢が少なくなったことを惜しむ声もあった。それでも全体としては、マイルズならではの戦闘スタイルは本作の大きな魅力として受け止められている。

ストーリーは短めながら、青春ヒーローものとしてまとまりが良いと評価された

物語に関する感想では、「短いがまとまっている」「感情の流れがわかりやすい」「マイルズの成長が気持ちよく描かれている」という評価が多い。本作は前作ほど大規模なストーリーではなく、複数の有名ヴィランが次々と登場するような派手な構成でもない。その代わり、ハーレム、家族、親友、地域の人々といったマイルズの身近な世界に焦点が絞られている。ロクソンとアンダーグラウンドの対立は、街全体を巻き込む危機でありながら、マイルズにとっては個人的な関係とも深く結びついているため、事件の規模以上に感情的な重みがある。特に、親しい人物との対立や、信じたい相手を止めなければならない苦しさは、単純な勧善懲悪とは違う印象を残す。プレイヤーからは、終盤の盛り上がりや、マイルズが街の人々に認められていく描写に感動したという声も多かった。大作RPGのように何十時間も続く物語ではないが、映画一本を見終えたような密度があり、テンポ良く最後まで進む点はむしろ長所として受け止められることもある。ただし、前作の続編として大きな伏線回収やシリーズ全体の進展を期待していた人からは、物語の範囲が狭いと感じられる場合もあった。評価が分かれるのは、これを本編続編として見るか、マイルズ独立編として見るかによる部分が大きい。

ボリューム不足は、もっとも多く挙げられた不満点の一つだった

好評の一方で、多くのプレイヤーが指摘したのがゲーム全体のボリュームである。前作『Marvel’s Spider-Man』と比べると、メインストーリーは短く、サイド要素やヴィランの数も控えめで、クリアまでの時間はかなりコンパクトにまとまっている。そのため、前作と同じ規模の続編を期待していた人にとっては、物足りなさを感じやすかった。特にフルプライス級の大作を想像して購入した場合、「面白いがもう少し遊びたかった」という感想になりやすい。本作は価格設定やエディション展開の面で前作とは異なる位置づけではあるが、PlayStation 5のローンチ期に大きく宣伝されたタイトルだったこともあり、期待値が高かったぶん、短さが目立った面は否定できない。ただし、短いことを必ずしも欠点と見ないプレイヤーもいた。だらだらと同じ作業を引き延ばさず、テンポよく物語が進み、サイド要素もほどよい量に収まっているため、忙しい人でも最後まで遊びやすいという評価もある。つまり、ボリュームに関する評判は「もっと長く遊びたかった」という不満と、「短く濃く楽しめた」という好意的な見方に分かれる。本作の性格をスピンオフ、あるいは大型独立エピソードとして受け止められるかどうかが、満足度を左右する大きなポイントになっている。

ヴィランの数が少ない点には賛否があったが、主要人物の存在感は強かった

前作では多くのヴィランが登場し、スパイダーマンらしい豪華な敵キャラクターの競演が楽しめた。それに比べると、本作に登場する主要ヴィランはかなり絞られている。この点については、物足りないと感じたプレイヤーも少なくない。特にマーベル作品として有名な敵キャラクターとの対決を期待していた人にとっては、敵の顔ぶれが地味に見えた可能性がある。ライノ、プラウラー、ティンカラーといった存在は物語上重要だが、前作のような大物ヴィランの連続登場を求めると、スケールダウンした印象を受けやすい。一方で、ヴィランの数を絞ったことで、マイルズとの関係性を深く描けたという評価もある。ティンカラーは単なる敵ではなく、マイルズの過去や感情に関わる存在として機能し、プラウラーも家族との関係を通じてヒーローとしての選択を揺さぶる。敵が多すぎないからこそ、一人ひとりの動機やマイルズとの距離感が伝わりやすくなっているとも言える。派手な敵の見本市ではなく、マイルズの成長に必要な相手を配置した作品として見るなら、ヴィランの少なさは必ずしも失敗ではない。ただ、前作の豪華さを知っているほど、もう少し意外な敵やサプライズが欲しかったという感想が出るのも自然である。

ハーレムの描写には、温かさと地域密着感を評価する声が多かった

本作の感想で印象的なのは、ハーレムという地域の描き方を評価する声が多いことである。前作のニューヨークは広く大きな都市として描かれていたが、本作ではその中の一つの地域に焦点を当て、住民の生活や小さなつながりを丁寧に見せている。マイルズの母リオの活動、近所の商店、住民からの依頼、フェスティバルの雰囲気などを通じて、ハーレムは単なるマップ上の地区ではなく、マイルズが守りたい場所として印象づけられる。プレイヤーからは、街の人々がマイルズを支えてくれる展開や、地域全体が彼を受け入れていく流れに温かさを感じたという感想が見られた。スパイダーマンは大都市を守るヒーローであると同時に、近所の人々に寄り添うヒーローでもある。本作はその「親愛なる隣人」という側面を、ハーレムという舞台を通して強く描いている。派手なビル群や戦闘だけでなく、街角の会話、住民の感謝、家族の食卓、地域イベントの空気が物語の印象を柔らかくしている。これにより、最終決戦でハーレムを守ることの意味がプレイヤーにも伝わりやすい。大規模な世界の危機ではなく、身近な街を守る物語だからこそ、かえって感情移入しやすかったという評価につながっている。

音楽と演出は、マイルズの個性を引き立てる要素として好評だった

本作の音楽や演出も、プレイヤーから良い反応を得た部分である。マイルズの物語には、ヒップホップや電子音楽の要素がよく合っており、ピーター編とは違うリズムと若さを感じさせる。戦闘中や移動中に流れる音楽は、スパイダーマンとしての高揚感を盛り上げるだけでなく、マイルズの文化的背景やハーレムの空気とも結びついている。特に重要な場面で音楽が強く入り、ヴェノム・パワーの派手な演出や高速スイングと重なると、プレイヤーは映画のクライマックスに参加しているような感覚を味わえる。演出面では、アクションシーンのカメラワーク、イベント中の表情、スローモーションを使った見せ場、ボス戦前後の会話などが高く評価された。Insomniac Gamesらしい映画的なテンポは本作でも健在で、短い物語の中に印象的な場面が多く詰め込まれている。特にPS5版では、映像の美しさやロードの短さによって演出の流れが途切れにくく、物語への没入感が高まりやすい。音楽、映像、操作が一体になった瞬間の気持ちよさは、本作を単なるキャラクターゲームではなく、完成度の高いアクションアドベンチャーとして印象づける大きな要因になっている。

日本語吹き替えやローカライズの評価も安定していた

日本のプレイヤーからは、日本語吹き替えや字幕の質についても比較的好意的な感想が多かった。前作に続き、キャラクターの会話は自然にローカライズされており、ストーリーを追いやすい。マイルズの若者らしい話し方、ピーターとの軽いやり取り、母リオとの家族らしい会話、緊迫した場面での感情表現などが、日本語でも伝わりやすく調整されている。吹き替え音声で遊ぶと、アクション中にも会話の内容を把握しやすく、戦闘や移動に集中しながら物語を理解できる点が便利である。一方、英語音声と日本語字幕の組み合わせで遊べることを歓迎する声もあった。原語の雰囲気を味わいたい人、日本語字幕で内容を確認しながら英語の演技を楽しみたい人にとって、選択肢が用意されているのは大きい。ローカライズが不自然だとキャラクターの魅力が損なわれやすいが、本作ではその心配が少なく、マイルズや周囲の人物に感情移入しやすい。特に本作は家族や友人との関係が重要な作品なので、会話の自然さは評価に直結する。アクションの完成度だけでなく、物語を日本語環境でしっかり楽しめる点も、国内での満足度を支える要素になった。

難易度については、爽快だが序盤から油断できないという声があった

本作の戦闘は爽快感が強い一方で、アクションに慣れていないプレイヤーからは「思ったより難しい」という感想も出やすかった。序盤のマイルズは体力やスキルが十分ではなく、敵に囲まれると一気にダメージを受ける。銃撃、近接攻撃、重装備の敵、空中攻撃などが重なると、画面が忙しくなり、回避のタイミングを逃しやすい。前作経験者なら操作の基礎を理解しているため慣れやすいが、シリーズ初プレイの場合は、最初のうちに苦戦することもある。ただし、難易度設定を下げれば物語や移動を中心に楽しめるため、幅広いプレイヤーに対応できる作りにはなっている。高難度では、回避、ヴェノム・パワー、カモフラージュ、ガジェット、空中戦をきちんと使い分ける必要があり、上達の手応えが強い。プレイヤーの感想としては、慣れるまでは敵の数に圧倒されるが、操作に慣れてからは自分が本当にスパイダーマンになったように立ち回れるという評価が多い。つまり、最初から楽に勝てるだけのゲームではなく、動き方を覚えることで面白さが増すタイプのアクションである。爽快感と緊張感の両方があるため、戦闘の評価は全体として高いが、苦手な人は難易度調整や強化を活用することが重要になる。

前作経験者ほど、進化と縮小の両方を感じやすい作品だった

前作を遊んだプレイヤーの感想には、「前作の良さはそのまま」「マイルズの能力で新鮮になった」という肯定的な意見と、「規模は小さくなった」「前作ほどの驚きはない」という冷静な意見が混在していた。これは、本作が前作のシステムを大きく変える続編ではなく、完成された土台を使ってマイルズの物語を描く作品だからである。ウェブ・スイング、戦闘、オープンワールド探索の基本は前作と近いため、前作をやり込んだ人ほど操作面での大きな新鮮さは限られる。一方で、ヴェノム・パワーやカモフラージュ、マイルズのモーション、冬のニューヨーク、ハーレム中心の物語によって、しっかり違いも感じられる。つまり、前作の正統進化を期待すると少し控えめに見えるが、マイルズ主人公の独立編として見れば十分に魅力があるという評価になりやすい。前作の伏線回収を期待していた人にとっては物足りないが、マイルズの成長を見たい人には満足度が高い。この評価の分かれ方は、本作の立ち位置をよく表している。完全な続編ではなく、しかし単なる追加コンテンツでもない。前作の世界観を引き継ぎながら、主人公を変えることで別の角度からスパイダーマンを描いた作品として受け止められた。

総合評価としては「短いが完成度の高い良作」という感想にまとまりやすい

全体的な評判をまとめると、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は「ボリューム面の物足りなさはあるが、遊びの完成度と物語のまとまりは高い作品」と評価されやすい。ウェブ・スイングの気持ちよさ、戦闘の爽快感、PS5版の快適さ、マイルズの成長物語、ハーレムの温かい描写は多くのプレイヤーから好意的に受け止められた。一方で、メインストーリーの短さ、ヴィランの少なさ、前作からの大きな変化の少なさについては不満も出た。特に、前作と同じ規模の続編を期待した人には「もっと遊びたかった」という印象が残りやすい。しかし、短いからこそテンポよく最後まで進められ、余計な引き延ばしが少ないという利点もある。マイルズという新しい主人公をプレイヤーに印象づけ、彼の能力と人間性をゲームの中でしっかり体験させるという目的において、本作は十分成功している。感想として最も多く当てはまりやすいのは、「前作ほど大きくはないが、確かに面白い」「スピンオフとして見ればかなり満足できる」「マイルズが好きになる一本」というものだろう。PlayStation 5初期のタイトルとして、映像面と操作感の進化をわかりやすく示しながら、キャラクターゲームとしてもアクションゲームとしても質の高い作品に仕上がっている。

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■ 当時の宣伝・現在の中古市場など

PS5本体の登場と同じタイミングで注目を集めた、ローンチ期の象徴的タイトル

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、2020年11月12日にPlayStation 5本体と同じ時期に発売されたことで、単なるシリーズ新作以上の意味を持った作品である。PS5は新世代機として高速SSD、DualSense、レイトレーシング、4K/HDR、3Dオーディオといった新機能を大きく打ち出していたため、本作はそれらをわかりやすく体験できる看板タイトルの一つとして紹介された。前作『Marvel’s Spider-Man』がすでに高い評価を得ていたこともあり、宣伝の中心には「スパイダーマンの爽快な移動がPS5でどう変わるのか」「新主人公マイルズ・モラレスの能力がどのようにゲームへ反映されるのか」という期待が置かれていた。特に、発売当時はPS5本体の入手自体が難しく、ローンチタイトルへの注目度も高かったため、本作は新ハードを手に入れたプレイヤーが最初に遊ぶ一本として存在感を放った。宣伝上では、ピーター・パーカーではなくマイルズを主役に据えた新鮮さ、冬のニューヨークを舞台にした映像美、ヴェノム・パワーとカモフラージュという固有能力、そしてPS5ならではの快適性が繰り返しアピールされた。つまり本作の宣伝は、作品単体の魅力を伝えるだけでなく、PS5という新世代機の性能をプレイヤーに体感させる役割も担っていたのである。

公式プロモーションでは、映像美・高速ロード・DualSense体験が強く押し出された

発売前後の公式紹介では、PS5版ならではの要素が大きな宣伝材料になった。美しい4K/HDR表現、レイトレーシングによるビルの反射、進化した影や光の表現、細かく描かれるキャラクターモデル、そしてパフォーマンスモードによる滑らかな動きが、次世代版の魅力として示された。前作の時点でもニューヨークの街並みは高く評価されていたが、本作では冬景色や夜景、ホリデーシーズンの光が加わり、PS5の映像表現と相性のよい舞台になっていた。さらに、高速SSDによる短いロードも重要な訴求点だった。オープンワールドゲームではファストトラベルや再開時の待ち時間が没入感を削ぐことがあるが、本作ではロードの短さによって、プレイヤーが街を飛び回るテンポを保ちやすい。DualSenseのアダプティブトリガーではウェブを発射する感触が指先に伝わり、ハプティックフィードバックではパンチ、ウェブ、ヴェノム・ブラストなどの衝撃が細かく表現されると案内された。3Dオーディオについても、街の音や戦闘中の効果音が立体的に聞こえる要素として紹介され、PS5の新機能をまとめて体験できる作品という印象が強められた。

ローンチトレーラーやゲームプレイ映像は、マイルズの個性を前面に出していた

宣伝映像では、マイルズ・モラレスがもう一人のスパイダーマンとして成長していく姿が中心に置かれた。ピーター・パーカーの熟練したヒーロー像とは異なり、マイルズは若く、少し不安定で、それでも自分の力で街を救おうとする主人公として描かれている。ローンチトレーラーやゲームプレイ映像では、雪の降るニューヨークをウェブ・スイングで移動する場面、紫やオレンジの電撃が走るヴェノム攻撃、敵の視線から逃れるカモフラージュ、ロクソンやアンダーグラウンドとの激しい戦闘、ハーレムを守るために立ち上がるマイルズの姿が印象的にまとめられていた。これにより、本作が単なる前作の追加版ではなく、マイルズ独自の能力と物語を持つ作品であることが伝えられた。映像宣伝の方向性としては、ストーリーの細かなネタバレを前面に出すというより、マイルズの勢い、街の美しさ、PS5の派手な演出、スパイダーマンとしての爽快なアクションを短時間で見せる作りだった。特に、ヴェノム・パワーによる電撃表現は映像映えしやすく、前作との差別化を直感的に伝えるうえで効果的だった。

商品展開は通常版とUltimate Editionの二本柱で、前作リマスターも販売戦略に組み込まれた

発売当時の商品展開では、通常版とUltimate Editionが用意された。通常版は『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』本編を収録した基本パッケージで、PS5版とPS4版の両方が展開された。Ultimate EditionはPS5向けの上位版として、本作に加えて『Marvel’s Spider-Man Remastered』を含む構成になっていた。これにより、前作を遊んでいない新規プレイヤーでも、ピーター・パーカーの物語とマイルズの独立編をまとめて体験しやすい販売形態になっていた。前作のPS5リマスター版には追加ストーリーも含まれていたため、シリーズ入門としての価値は高かった。宣伝上でも、通常版はマイルズの新作を手軽に楽しむ選択肢、Ultimate Editionは前作込みでシリーズをまとめて遊ぶ選択肢として位置づけられていた。また、PS4版購入者がPS5版へ移行しやすいよう、アップグレードに関する案内も用意されていた。2020年当時はPS4からPS5への世代交代期であり、PS5本体をすぐに入手できないユーザーも多かったため、PS4版から遊び始められることは販売面で大きな意味を持っていた。

早期購入特典は、スーツやガジェットを前面に出したファン向けの導線だった

発売当時の販売促進では、早期購入特典も重要な要素だった。パッケージ版の早期購入やダウンロード版の予約購入では、T.R.A.C.K.スーツ、スパイダースーツ第2弾、ガジェットのグラビティウェル、追加スキルポイントなどのデジタルボーナスが用意された。スパイダーマン作品においてスーツは非常に重要な収集要素であり、プレイヤーにとっては見た目を変える楽しみだけでなく、自分だけのスパイダーマンを演出する魅力にもつながる。特にマイルズはピーターと比べてゲーム内スーツの歴史的蓄積が少ないキャラクターであるため、発売前から特典スーツを見せることは、ファンの購買意欲を高める効果があった。グラビティウェルのようなガジェットや追加スキルポイントも、序盤のプレイを少し有利に進められる特典としてわかりやすい。こうした特典は、ゲーム内容を大きく変えるものではないが、発売直後に購入する理由を作り、予約や初期販売を後押しする宣伝材料として機能した。特にPS5ローンチ期は新作への関心が集中していたため、早期購入特典は本作を発売日に手に取る動機づけになった。

adidasとのコラボレーションは、マイルズのストリート感を活かした宣伝だった

本作の宣伝で特徴的だったものの一つが、adidasとのコラボレーションである。マイルズ・モラレスはピーター・パーカーとは異なる若い世代のヒーローであり、ファッション、音楽、ストリートカルチャーとの相性が強いキャラクターとして描かれている。そのため、スポーツブランドとの連携は、本作の世界観や主人公像を広げるうえで効果的だった。ゲーム内のスーツや現実のファッションが結びつくことで、マイルズが単なるコミック由来のキャラクターではなく、現代的な若者文化の中にいるヒーローとして感じられる。スパイダーマンはもともと都市を駆け抜けるヒーローであり、スニーカーやストリートファッションとの親和性も高い。こうしたコラボは、ゲームファンだけでなく、ファッションやマーベル映画をきっかけにマイルズを知った層にも訴求しやすかった。宣伝方法としては、ゲーム映像だけでなく、キャラクターのライフスタイルやビジュアルイメージを広げる取り組みであり、マイルズという主人公の個性を強く印象づける役割を果たした。

雑誌・Webメディア・公式ブログでは、PS5体験とスピンオフ性が主な紹介軸になった

発売当時のゲームメディアやWeb記事では、本作はPS5ローンチタイトルの一つとして大きく取り上げられた。紹介の切り口は大きく分けて二つあり、一つはPS5ならではの技術面、もう一つはマイルズを主人公にしたストーリー面である。技術面では、ロード時間の短さ、レイトレーシング、60fps動作、DualSenseの振動表現などが注目され、実際にPS5を購入したときにどのような進化を感じられるのかを説明する題材になった。ストーリー面では、前作から続く世界観の中でマイルズがどのように独り立ちするのか、ピーターとの関係がどう描かれるのか、ハーレムを舞台にした地域密着型の物語がどのような印象を残すのかが語られた。レビューでは、ゲーム全体の完成度は高く評価される一方で、前作よりボリュームが少ないこと、ナンバリング続編というより独立した短めのエピソードに近いことも指摘された。しかし、その短さを欠点と見るか、テンポの良いスピンオフとして受け止めるかで評価が分かれた。宣伝とメディア評価の両方を振り返ると、本作は「PS5の新しさ」と「マイルズの新しさ」を同時に売りにした作品だったと言える。

販売実績は非常に好調で、スピンオフ作品として大きな成功を収めた

本作は、発売後の販売実績においても大きな成果を残した。スピンオフ的な位置づけの作品としては非常に強い数字を記録し、PS5本体のローンチ期に発売されたこと、PS4版も同時に展開されたこと、前作の人気が高かったこと、マイルズ・モラレスというキャラクターが映画『スパイダーマン:スパイダーバース』などを通じて広く知られるようになっていたことが、販売を後押ししたと考えられる。また、Ultimate Editionによって前作リマスターを含めたシリーズ導線が用意されていたことも、新規プレイヤーの購入を促した要因だった。PS5本体の普及が進むにつれて、ローンチ期に発売された本作は長く売れ続けるタイトルとなり、後に『Marvel’s Spider-Man 2』へつながるシリーズの中間作としても重要な役割を果たした。販売実績だけで見ても、本作は単なる外伝ではなく、PlayStation Studios作品として十分な存在感を示した成功作である。

現在の中古市場では、通常版は比較的入手しやすい定番PS5ソフトになっている

現在の中古市場における『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』通常版は、プレミア化して高騰するタイプのソフトではなく、比較的手頃な価格で入手しやすい定番タイトルになっている。国内の中古ゲームショップや通販サイトでは、PS5通常版の中古が千円台で出回っている例が見られ、状態Aや一般中古品でも大きく値崩れしすぎるというより、安定した低価格帯に収まっている印象である。これは販売本数が多く、流通量も十分にあること、ダウンロード版やサブスクリプション系サービス、続編『Marvel’s Spider-Man 2』の存在によって、初期PS5ソフトとしての希少性がそれほど高くないことが理由と考えられる。通常版はパッケージコレクションとしての価値よりも、実際に遊ぶための中古需要が中心であり、購入者にとってはPS5初期の良作を安く遊べるメリットが大きい。ケースやディスクの状態、早期特典コードの有無、店舗保証の有無によって価格は変わるが、特典コードは中古では使用済みの可能性が高いため、コレクション目的でない限り大きな判断材料にはなりにくい。

Ultimate Editionは前作リマスター同梱という価値があるが、中古では注意点も多い

Ultimate Editionは発売当時、『Marvel’s Spider-Man Remastered』を含む上位版として魅力が高かった。しかし中古市場で見る場合は、通常版とは少し事情が異なる。Ultimate Editionの価値は、単にマイルズ本編を遊べることだけでなく、前作リマスターを入手できる点にあった。ところが、中古品ではダウンロードコードやプロダクトコードが使用済みである可能性があるため、パッケージにUltimate Editionと書かれていても、購入者が前作リマスターを利用できるとは限らない。そのため、中古でUltimate Editionを買う場合は、コードの有効性が保証されているか、未使用品か、店舗説明にどう記載されているかを確認する必要がある。現在の中古価格帯としては、通常版と同じく千円台から二千円台で見かけることがあり、発売当時の価格と比べるとかなり手に取りやすい。ただし、コード目的で購入する場合は慎重さが必要で、単にマイルズ本編を遊びたいだけなら通常版で十分な場合も多い。逆に、未開封品やコード未使用が明記されたものは通常中古より高くなる可能性がある。

新品・未開封・限定要素の有無によって価格差は出るが、通常版の大幅プレミア化は起きにくい

中古市場の価格推移を見るうえで重要なのは、本作が希少ソフトではなく、人気と流通量の両方が大きい作品だという点である。販売数が多いタイトルは、人気があっても中古在庫が豊富になりやすく、通常版は長期的に大きなプレミア価格になりにくい。新品未開封品や特典完備品、海外版、初回流通分にこだわるコレクター向け商品であれば価格が上がる可能性はあるが、一般的な中古通常版は遊ぶための実用品として扱われることが多い。新品在庫比較では、現在でも新品や新品扱いの商品が数千円台で見つかる場合があり、中古と新品の価格差も極端ではない。通常版は発売から時間が経過したことで安くなった一方、PS5を新たに購入した人が手頃なアクションゲームとして選ぶ需要も残っているため、完全に市場から消えるような状態ではない。過去最高価格については、一般流通の通常版が定価を大きく超えるようなプレミア商品になったとは言いにくく、高値がつくとすれば、未開封品、特典未使用保証、コレクター向け保存状態、あるいは海外版や特殊な出品条件に限られる傾向が強い。

オークションやフリマでは、状態説明とコード使用状況が価格を左右する

オークションやフリマアプリで本作を探す場合、ショップ通販より安く買えることもあるが、確認すべき点は多い。通常版であれば、ディスクの傷、ケースの破損、ジャケットの汚れ、動作確認の有無、送料込みかどうかが価格に影響する。Ultimate Editionの場合はさらに、前作リマスターのコードが使えるかどうかが大きなポイントになる。多くの中古出品ではコード使用済み、またはコード保証なしと考えるのが安全であり、出品説明に明確な記載がない場合は、マイルズ本編のみを買うつもりで判断したほうがよい。フリマでは相場より安い出品が短時間で売れることもあるが、逆に送料込み価格や手数料を考えるとショップ中古と大差がない場合もある。オークションではまとめ売りに含まれることもあり、PS5ソフト複数本セットの一部として出品される場合は単品相場より割安になることがある。過去の価格推移としては、PS5初期の品薄期には注目度が高く、発売直後の中古価格も比較的高めだったと考えられるが、時間の経過、続編発売、流通量増加により、現在は買いやすい価格帯に落ち着いている。

購入目的別に見ると、遊ぶだけなら通常版、シリーズ入門なら前作込みの環境を確認したい

現在購入する場合、目的によって選び方は変わる。とにかくマイルズの物語を遊びたいだけなら、PS5通常版の中古が最も手軽である。価格も安く、在庫も見つけやすく、PS5初期の良作アクションを短時間で楽しむには十分な選択肢だ。一方で、前作『Marvel’s Spider-Man』を未プレイの人がシリーズ全体を楽しみたい場合は、Ultimate Editionの中古を安易に選ぶ前に、前作リマスターの入手方法を確認したほうがよい。中古のUltimate Editionではコードが使用済みである可能性があるため、確実に前作も遊びたいなら、ストアでの購入やリマスター版の入手手段を別途確認する必要がある。コレクション目的なら、未開封品、初回特典の状態、パッケージの傷みの少なさが重要になる。反対に、プレイ目的であれば、多少ケースに使用感があってもディスクが正常なら問題は少ない。現在の相場では、通常版もUltimate Editionも大きく高騰していないため、急いで高値で買うより、複数のショップやフリマを比較して、送料込みの総額と状態説明を見て選ぶのが賢い。

市場価値としては、プレミアソフトではなく「安く遊べる名作枠」に近い

中古市場における本作の位置づけは、希少価値で価格が上がるコレクターズアイテムというより、評価の高い人気作が安く流通している「遊ぶための名作枠」に近い。PS5の初期タイトルとして知名度が高く、スパイダーマンという強力なIPを持ち、ゲーム内容も安定して評価されているため、需要そのものは今後も残りやすい。しかし販売本数が多く、パッケージ流通も十分で、デジタル販売や上位互換的なプレイ環境も整っているため、通常版が急激に希少化する可能性は低い。続編『Marvel’s Spider-Man 2』の存在により、シリーズを追う人が前作群を遊び直す需要はあるが、それが中古価格を大きく押し上げるほどではなく、むしろセット購入や買い替えによって中古在庫が維持されやすい。したがって、現在の中古市場では、価格の安さと内容の充実度を考えるとコストパフォーマンスが高い作品と言える。PS5を購入したばかりの人、短めで完成度の高いアクションを探している人、スパイダーマンシリーズを追いたい人にとって、今でも手に取りやすい一本である。

総合的に見た宣伝・販売・中古市場の評価

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、発売当時にはPS5の新機能を体験できるローンチ期の代表作として宣伝され、映像美、高速ロード、DualSenseの体感要素、マイルズ固有の能力、ハーレムを舞台にした新しい物語が大きく打ち出された。商品展開では通常版とUltimate Editionを用意し、早期購入特典や前作リマスター同梱によって、既存ファンと新規プレイヤーの両方に訴求した。adidasとのコラボレーションのように、ゲームの枠を超えてマイルズの若さやストリート感を伝える取り組みもあり、キャラクターの魅力を広げる宣伝が行われた。販売実績は非常に好調で、スピンオフ的な作品でありながら世界的に大きな成功を収め、Insomniac Gamesのスパイダーマンシリーズをさらに強固なブランドへ押し上げた。現在の中古市場では、通常版もUltimate Editionも比較的安価で入手しやすく、プレミア化した希少品というより、評価の高いPS5ソフトを手頃に遊べる状態にある。ただしUltimate Editionはコード使用状況に注意が必要で、前作リマスター目的の場合は未使用保証の有無を確認したい。総じて本作は、発売当時はPS5の未来を見せる華やかなタイトルであり、現在は中古で買いやすい良作アクションとして価値を保ち続けている作品である。

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■ 総合的なまとめ

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、若きヒーローの独り立ちを描いた濃密なスピンオフ作品

『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』を総合的に見ると、本作は単なる前作の縮小版でも、主人公を差し替えただけの派生作でもなく、マイルズ・モラレスという若いヒーローを一人前のスパイダーマンとして立たせるために作られた、密度の高い独立編である。2020年11月12日にソニー・インタラクティブエンタテインメントからPlayStation 5用タイトルとして発売され、PS5本体の登場期を彩る作品として大きな注目を集めたが、その価値は新ハードの性能紹介だけにとどまらない。前作『Marvel’s Spider-Man』で完成度の高かったウェブ・スイング、オープンワールド探索、近接アクション、映画的な演出を受け継ぎつつ、主人公をピーター・パーカーからマイルズへ移すことで、シリーズに新しい温度を加えている。ピーターの物語が「経験を積んだヒーローの責任と喪失」を描いていたのに対し、本作は「まだ自信のない若者が、自分の街と自分の力を信じられるようになるまで」を描く作品である。そのため、物語の規模は前作より小さいが、主人公の成長という一点においては非常にわかりやすく、感情移入しやすい。マイルズは最初から完成されたヒーローではない。失敗もするし、迷いもするし、誰かを傷つけたくない気持ちと街を守らなければならない責任の間で揺れる。しかし、その未完成さがあるからこそ、プレイヤーは彼の成長を自分の操作と重ねて感じることができる。

前作の良さを受け継ぎながら、マイルズ独自の能力でしっかり差別化している

本作の優れた点は、前作の基礎を壊さず、そこへマイルズ独自の能力を加えることで、遊び心地に明確な違いを作っているところである。ニューヨークを自由に飛び回るウェブ・スイングの爽快感はそのまま残っており、ビルの合間を高速で移動するだけでも十分に楽しい。目的地へ向かう行為そのものが娯楽として成立しているため、オープンワールドゲームにありがちな移動の面倒さが少ない。さらに本作では、マイルズのスイングモーションに若々しい不安定さや勢いが加えられており、ピーターとは違う体の使い方が見ていて楽しい。戦闘ではヴェノム・パワーとカモフラージュが大きな個性になっている。ヴェノム・パワーは生体電気を利用した強力な攻撃で、敵の防御を崩し、集団を吹き飛ばし、戦況を一気に変える爽快感を生む。カモフラージュは姿を消して敵の視線を切る能力で、ステルス攻略や戦闘中の立て直しに役立つ。これらの能力は、ピーターとの差別化のために付け足された飾りではなく、攻略の中心になる重要なシステムとして機能している。ガジェットの種類は前作より少ないが、そのぶんマイルズ自身の能力が戦闘の主役になり、彼ならではの戦い方が自然に生まれる。結果として、本作は前作を遊んだ人にも新鮮さを与え、初めて遊ぶ人にも直感的で派手なアクションを味わわせることに成功している。

PS5初期タイトルとして、映像・ロード・操作感の進化をわかりやすく示した

PlayStation 5版として見た場合、本作は新世代機の特徴を非常にわかりやすく体験できる作品である。高速SSDによるロード時間の短さは、ゲーム全体のテンポに大きく貢献している。オープンワールドの移動、ミッション開始、リトライ、ファストトラベルといった場面で待ち時間が短く、プレイヤーの集中が途切れにくい。前作やPS4世代のゲームでは、どうしてもロードを意識する場面があったが、本作のPS5版では、街を飛び回る流れが非常に滑らかに保たれている。映像面では、冬のニューヨークという舞台がPS5の表現力とよく噛み合っている。雪、夜景、ガラスに映る光、濡れた路面、ホリデーシーズンの装飾、ハーレムの街並みが美しく描かれ、ただ移動しているだけでも視覚的な満足感が高い。レイトレーシングを活かした反射表現は、ビルの窓や街の明かりにリアリティを与え、パフォーマンス重視の設定では滑らかなアクションを楽しめる。DualSenseのハプティックフィードバックやアダプティブトリガーも、ウェブを放つ感触、ヴェノム攻撃の衝撃、街を飛ぶ手応えを補強している。こうした技術的な要素は、単に「高性能になった」と説明するだけでなく、実際の遊びやすさや気持ちよさに直結している。本作がPS5初期の代表的タイトルとして記憶される理由は、映像が美しいだけでなく、次世代機の快適さをプレイヤーが手触りとして感じられたからである。

ハーレムを中心にした物語が、ヒーロー作品に地域の温かさを与えている

本作の物語で印象に残るのは、ハーレムという地域が単なる背景ではなく、マイルズにとって守るべき居場所として描かれている点である。スパイダーマンはニューヨーク全体を守るヒーローだが、本作ではその大都市の中でも、マイルズが暮らし、人と出会い、家族と過ごし、少しずつ受け入れられていく場所としてハーレムが大切に扱われている。母リオの活動、近所の人々との交流、商店街の雰囲気、地域イベント、住民からの依頼などが積み重なり、プレイヤーは「この街を守りたい」というマイルズの気持ちを自然に理解できる。大規模な世界滅亡の危機ではなく、自分の近所、自分の家族、自分を知っている人々を守る物語だからこそ、事件の重みが身近に感じられる。ロクソンとアンダーグラウンドの対立も、ただの企業対犯罪組織ではなく、地域の未来を脅かす問題として描かれるため、マイルズの戦いには個人的な意味がある。ヒーロー作品では派手な戦闘や巨大な敵に目が向きがちだが、本作は「親愛なる隣人」としてのスパイダーマンの魅力を強く押し出している。最終的にマイルズが街の人々に受け入れられていく流れは、彼の成長を象徴する場面であり、プレイヤーに温かい余韻を残す。

フィンやアーロンとの関係が、単純な善悪では割り切れないドラマを作っている

本作の人物関係は、マイルズの成長を支える重要な要素である。特にフィンとアーロンは、敵対する立場にありながら、単純な悪人として片づけられない存在として描かれている。フィンはマイルズの親友であり、過去の思い出を共有する人物である。そのため、彼女との対立は単なるヒーローとヴィランの戦いではなく、信頼していた相手を止めなければならない痛みを伴う。彼女の行動には危険があり、結果として多くの人を巻き込むが、その根底には怒りや喪失、許せないものへの抵抗がある。マイルズは彼女を倒せばよいだけではなく、理解したい気持ちと止めなければならない責任の間で揺れる。アーロンも同様に、家族でありながら危うい選択をしてきた人物で、マイルズにとっては憎みきれない存在である。彼の言動には保身や計算もあるが、マイルズを案じる気持ちも確かにある。このような関係性があることで、本作のドラマは単純な勧善懲悪ではなくなる。マイルズは力で敵を倒すだけではなく、相手の痛みや過去を知ったうえで、自分が何を選ぶのかを決めなければならない。そこに、若いヒーローが大人になっていく物語としての深みがある。

短めのボリュームは弱点でもあり、作品のテンポを支える長所でもある

本作を評価するうえで避けられないのが、ボリュームの問題である。前作『Marvel’s Spider-Man』と比べると、メインストーリーは短く、サイド要素やヴィランの数も控えめである。そのため、前作と同規模の続編を期待していた人にとっては、物足りなさを感じる可能性が高い。特に、有名ヴィランが次々に登場するような派手な展開や、前作から残された大きな伏線の回収を期待していた場合、本作はやや小さくまとまった印象になる。しかし一方で、この短さは必ずしも欠点だけではない。物語の焦点がマイルズに絞られているため、余計な寄り道で感情の流れが薄まりにくく、最後までテンポよく進められる。長大なオープンワールド作品にありがちな作業感も比較的少なく、短い時間で濃い体験を得やすい。サイドミッションや収集要素も、街とのつながりやマイルズの背景を補うものとして機能しており、無理に水増しされた印象は薄い。つまり本作は、何十時間も遊ぶ巨大な続編というより、映画的な密度で一気に駆け抜けるスパイダーマンの独立エピソードとして見ると評価しやすい。価格や期待値との兼ね合いで賛否はあるが、作品の完成度そのものは高い。

ピーターの影を乗り越え、マイルズ自身のスパイダーマン像を確立した点が大きい

本作のもっとも重要な成果は、マイルズ・モラレスを「ピーターの代わり」ではなく「もう一人のスパイダーマン」としてしっかり成立させた点にある。ピーター・パーカーは長い歴史を持つキャラクターであり、ゲーム版でも前作によって強い存在感を示していた。そのため、マイルズを主人公にすることには大きな難しさがあった。単にピーターを不在にしてマイルズを動かすだけでは、どうしても代役の印象が残ってしまう。しかし本作は、マイルズにしかない能力、家族関係、友人との過去、ハーレムとの結びつき、若者らしい不安と勢いを丁寧に描くことで、彼自身の物語を作っている。ピーターは師匠として重要な存在だが、最後に街を救うのはマイルズ自身であり、彼が自分の判断で責任を引き受ける。その過程をプレイヤーが操作を通して体験できるため、エンディングに到達したときには、マイルズが本当にスパイダーマンになったという実感がある。黒と赤を基調としたスーツ、電撃をまとった攻撃、音楽やストリート感を取り入れた演出も、ピーターとは異なるヒーロー像を形作っている。本作は、シリーズの主役を一時的に交代させただけではなく、スパイダーマンという存在の幅を広げた作品だと言える。

アクションゲームとしては、爽快感・緊張感・上達感のバランスが良い

ゲームとしての完成度を見ると、本作はアクションの手触りが非常に優れている。ウェブ・スイングは誰でも直感的に楽しめる一方で、速度を維持したり、空中トリックを決めたり、狙った場所へ正確に着地したりするには慣れが必要で、上達の余地がある。戦闘も同様に、ただ攻撃ボタンを押しているだけでは敵に囲まれて苦戦するが、回避、空中コンボ、ウェブ拘束、ヴェノム・パワー、カモフラージュを組み合わせられるようになると、一気にスパイダーマンらしい立ち回りができるようになる。敵の種類ごとに対処を変え、遠距離攻撃を優先して潰し、強敵にはヴェノムを当て、危険になったら姿を消して立て直す。この判断が自然にできるようになるほど、戦闘は派手で気持ちよくなる。難易度は決して低すぎず、序盤から油断すると倒される場面もあるが、理不尽さよりも操作の習熟を求める方向に寄っている。難易度設定も用意されているため、アクションが苦手な人でも物語を楽しみやすい。上手く動けたときには、自分が本当に街を飛び回るヒーローになったような感覚があり、これはスパイダーマンゲームとして非常に大きな強みである。

不満点はあるが、作品の狙いを理解すれば完成度の高さが見えてくる

本作には確かに不満点もある。前作よりボリュームが少ないこと、ヴィランの数が控えめなこと、前作からの大きな伏線がほとんど進まないこと、ガジェットやスーツの種類が少なめなことなどは、人によって気になる部分である。特にシリーズの次なる大作を期待していた場合、本作は「2」ではなく「1.5」に近い印象を受けるかもしれない。しかし、本作の目的を「マイルズを主人公として確立する独立編」と考えると、評価はかなり変わる。物語はマイルズの成長に集中しており、敵キャラクターも彼の人間関係や価値観を揺さぶる存在として配置されている。ハーレムを中心とした舞台設定も、スケールの小ささではなく、地域密着型のスパイダーマン像を描くための選択として機能している。ゲームシステムも、前作から大幅に作り替えるのではなく、完成された土台にマイルズ固有の力を加えることで、短期間でも満足感のある体験を作っている。つまり本作は、巨大な続編ではない代わりに、狙いが明確で、無駄の少ない作品である。不満点を理解したうえでも、遊び終えた後にマイルズの成長が印象に残るなら、本作は十分に成功していると言える。

現在遊んでも価値があり、シリーズを追ううえでも重要な一本

発売から時間が経過した現在でも、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は十分に遊ぶ価値のある作品である。PS5の性能を活かした快適なプレイ感は今でも魅力的であり、短めの構成はむしろ手に取りやすさにつながっている。長時間かかる大作を始める余裕がない人でも、数日でメインストーリーを楽しみ、余裕があればサイド要素を埋めるという遊び方ができる。中古市場でも比較的入手しやすく、価格面でも手を伸ばしやすいため、PS5を購入したばかりの人が最初に遊ぶアクションゲームとしても向いている。また、シリーズ全体を追ううえでも本作は重要である。前作のピーター編から続き、後の『Marvel’s Spider-Man 2』へつながるマイルズの成長を描いているため、彼がどのように自信をつけ、もう一人のスパイダーマンとして認められていったのかを知るには欠かせない。前作だけを遊んで続編へ進むこともできるが、本作を挟むことでマイルズへの理解と愛着は大きく深まる。特に、ピーターとマイルズが並び立つシリーズ展開を楽しむなら、本作で描かれた独り立ちは重要な意味を持つ。

総評として、PS5初期を代表する完成度の高い青春ヒーローアクション

総合的に評価すると、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』は、PS5初期を代表する完成度の高い青春ヒーローアクションである。前作の完成されたオープンワールドアクションを受け継ぎながら、マイルズ・モラレスの個性をゲームプレイと物語の両面に反映し、短いながらも印象に残る一本に仕上げている。ウェブ・スイングの爽快感、ヴェノム・パワーの派手さ、カモフラージュによる戦術性、冬のニューヨークの美しさ、ハーレムの温かい描写、家族や友人との葛藤が一体となり、プレイヤーに「若いスパイダーマンが自分の街を守る」体験を与えてくれる。前作より小規模であることは否定できないが、そのぶん物語の焦点は明確で、テンポは良く、マイルズの成長を最後まで素直に追いやすい。ピーター・パーカーの物語を期待しすぎると物足りない部分もあるが、マイルズの独立編として見れば、十分に良作と呼べる内容である。新世代機の性能を見せる役割、シリーズの橋渡しとしての役割、そしてマイルズを主役として確立する役割を、いずれも高い水準で果たした作品だと言える。スパイダーマンが好きな人、爽快な移動アクションを楽しみたい人、短めでも濃い物語を味わいたい人にとって、本作は今なおおすすめしやすい一本である。

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