【発売】:ポニカ
【対応パソコン】:PC-8801、X1、FM-7 など
【発売日】:1983年
【ジャンル】:レースゲーム
■ 概要・詳しい説明
映画の豪快な大陸横断レースを1980年代パソコンへ持ち込んだ異色のアクションゲーム
『キャノンボール2』は、1983年末から1984年頃にかけてポニカからPC-8801、PC-8001、FM-7、X1など当時の国産パソコン向けに展開されたカーアクションゲームです。その題材となったのは、1981年公開の映画『キャノンボール』の続編として日本で1983年12月17日に公開された同名映画『キャノンボール2』。映画版は、アメリカ大陸を舞台として常識外れの参加者たちが入り乱れる無法者同然の長距離自動車レースを描いた娯楽作品で、バート・レイノルズ、ドム・デルイーズ、ディーン・マーティン、シャーリー・マクレーン、ジャッキー・チェンなど国際色豊かな出演陣と、次々に登場する個性的な自動車が大きな見どころとなっていました。本作は、そんな映画の「何でもありの大陸横断レース」というイメージを、当時のパソコンで遊べる比較的シンプルなアクションゲームへ置き換えた作品です。現代のレースゲームのようにリアルな車両挙動や精密なサーキット走行を再現する方向ではなく、自動車を左右へ動かして危険を回避し、時にはライバル車と激しく競り合いながら、とにかく少しでも早く目的地へ到達することに重点が置かれています。映画そのものを忠実に追体験するアドベンチャーゲームというより、映画から「荒唐無稽な自動車レース」という最も分かりやすい魅力を抽出したゲームと考えると、その性格が理解しやすいでしょう。
ロサンゼルスからニューヨークへ――目的はただひとつ、誰よりも早いアメリカ横断
ゲームでプレイヤーが挑戦するのは、ロサンゼルスを出発し、アメリカ大陸を横断してニューヨークまで走り抜ける長距離レースです。プレイヤーが操る愛車はスタリオン・ターボ。スタート地点からゴール地点までひたすら東へ進み、可能な限り短い時間でニューヨークへたどり着くことが大きな目的になります。ただし、単純にアクセルを踏み続ければ終わるゲームではありません。コース上には他の参加車両が次々と姿を現し、こちらの進行を妨害するように接触してくることがあります。さらに地上だけに注意していればよいわけではなく、空にはジェット機まで出現し、プレイヤーの自動車を狙うかのように爆弾を投下してきます。通常のカーレースなら最大の敵となるのは急カーブやタイム、ライバルドライバーなどですが、『キャノンボール2』では自動車同士の衝突だけでなく空爆まで警戒しなければならず、この無茶苦茶な展開こそ映画版を思わせる特徴です。公道を舞台にしたレースという設定を現実的に再現するのではなく、「次に何が飛び出してくるか分からない危険なレース」という方向へ大胆にデフォルメしているため、ゲーム全体にはレースゲームと避けゲームを組み合わせたような独特の緊張感があります。
ハンドル、アクセル、ブレーキという単純操作だからこそ回避技術が重要
基本操作は非常に分かりやすく、テンキーの「4」と「6」で左右へハンドルを切り、「8」と「2」、あるいは対応するキーによってアクセルとブレーキを操作する方式が中心となっています。複雑なコマンド入力や多数のボタンを覚える必要はなく、ゲームを始めた直後から何をすればよいのか理解しやすい設計です。しかし、操作方法が簡単だからゲームまで簡単というわけではありません。高速で移動している最中にライバル車の位置を判断し、横方向へ逃げながら、さらに上空から投下される爆弾まで確認する必要があります。大きく避けすぎれば別の車両へ接触する可能性が生まれ、反対に慎重になりすぎれば速度が落ち、ゴール到達までの時間が増えてしまいます。この「危険を避けたいが、遅く走っていてはレースに勝てない」という矛盾した要求がプレイを面白くしています。特に当時のパソコンではキーボードによるゲーム操作が一般的であり、機種によっては複数キー入力に癖があるため、現代的なゲームパッドの感覚とは異なる操作感も難易度を高める要因になりました。そのため、本作は単純なルールでありながら、プレイヤー自身が操作環境に慣れるほど記録を縮めていけるタイプのゲームでもあります。
スタリオンは無敵ではない――5台のストックを守りながら進む緊張感
プレイヤー車は激しい衝突や爆弾の直撃に耐え続けられるわけではありません。危険な攻撃を受けると車が爆発し、用意されているストックを1台失ってしまいます。ゲーム開始時には複数の残機が設定されており、最終的に5台すべてを失えばゲームオーバーとなります。したがって、単に距離を稼ぐだけでなく、残された車両をできるだけ温存して後半へ進むことが重要になります。序盤だからと無理な走行を続けて残機を大量に消費すると、ゴールへ近づいた段階で余裕がなくなります。反対に、安全ばかり意識して速度を抑えればタイム面で不利になるため、状況に応じて攻めと回避を切り替える判断が必要です。現在の感覚では残機制はアーケードゲーム的な仕組みに見えますが、短時間のプレイを何度も繰り返して上達する1980年代前半のゲームらしい構成でもあります。一度失敗しても、次は「この位置なら早めに避けよう」「ここでは速度を落とした方が安全だ」と経験を蓄積でき、プレイヤー自身の慣れがそのまま走行距離や成績へ反映される仕組みになっています。
燃料というもう一つの敵――タンクローリーへ接触して補給する独特のシステム
さらに特徴的なのが燃料の概念です。スタリオン・ターボは永久に走り続けられるわけではなく、走行するにつれてガソリンが減っていきます。そこで重要になるのが、コース途中に登場する「GAS」の表示を持つタンクローリーです。本作では一般的なレースゲームのようにサービスエリアやピットへ停止して給油するのではなく、このタンクローリーへ自車を慎重に近づけて接触することで燃料を補給します。ここで面白いのは、「接触する」という行為が通常なら危険であるにもかかわらず、燃料補給時だけは必要になる点です。他の自動車との接触は避けたい一方、タンクローリーには自ら近づかなければならないため、同じ画面上の車両でも相手によって取るべき行動が正反対になります。しかも乱暴に突っ込めば事故につながりかねないため、相手と速度を合わせるような感覚で横へ寄せていくことが大切になります。残機管理に加えて燃料残量まで考えなければならないことから、見た目以上にプレイヤーへ複数の判断を要求するゲームです。
時間経過によって昼・夕方・夜・明け方へ変わっていく長距離レースの演出
『キャノンボール2』には、アメリカ大陸を長時間走り続けていることを感じさせるための時間経過表現も盛り込まれています。走行中はずっと同じ明るさの画面が続くのではなく、ゲーム内の時刻に応じて昼間から夕方、夜、そして明け方へと景色の印象が変化します。現在のゲームから見れば簡素な色彩変化ですが、限られたグラフィック機能の中で「何時間も走り続けて大陸を横断している」というスケール感を演出する工夫として効果的でした。特に夜間になると画面の印象が大きく変わり、昼間とは異なる緊張感が生まれます。走行時間そのものがゲーム世界の時間変化へ結び付けられているため、単なるステージクリア型アクションとは違い、「本当に遠くまで旅をしている」という感覚をプレイヤーへ与えてくれます。
フェラーリ、ポルシェ、コルベットなど映画版を彩った名車と個性的な参加チーム
映画版『キャノンボール2』の大きな魅力は、多彩な人物と自動車が一堂に集まり、それぞれが常識外れの方法でレースへ参加することでした。ドラゴン&ジョーズのスタリオン・ターボをはじめ、クライスラー・インペリアル、オールズモビル、ポンティアック・ファイヤーバード、フェラーリ308GT、ジャガーXJ-S、キャデラック、コルベット、ポルシェ、ダッジ・デイトナ・ターボZなど、当時の自動車ファンにとって名前を聞くだけでも華やかな車種が題材を盛り上げています。ゲーム版では映画に登場する人物一人一人を細かなドラマ付きで操作する作品ではありませんが、パッケージや作品設定を通して映画版の豪華な雰囲気を前面に押し出していました。ジャッキー・チェンが参加していたことも、日本国内での商品としては大きな注目点です。後にポニカはジャッキー・チェンを題材とするパソコンゲームを複数展開していくことになりますが、『キャノンボール2』は映画スターの知名度とパソコンゲームを結び付ける同社の展開を語る際にも興味深い一本となっています。
映画公開とパソコン市場の成長が重なった1980年代前半ならではの商品
本作が登場した1983年末から1984年頃は、PC-8001やPC-8801、FM-7、X1といった国産パソコンがゲームマシンとして急速に存在感を高めていた時期です。一方で、後年のように一つの統一規格へ市場が集約されていたわけではなく、メーカーごとに異なるハードウェアを所有するユーザーが存在していました。そのため人気作品を複数機種へ展開することには大きな意味があり、『キャノンボール2』も複数の主要パソコンへ提供されました。記録によって発売時期の表記に1983年末と1984年初頭の双方が見られるのは、機種や流通時期などの違いも考慮して見る必要があります。当時はカセットテープ媒体による販売も一般的で、プログラムを読み込んでから遊ぶという現在とはまったく異なるスタイルでした。ゲームを開始するまでにも独特の時間が必要だった時代だからこそ、映画と同じロゴや劇中写真を取り入れたパッケージは、ソフトを所有する満足感を高める重要な要素だったといえるでしょう。
リアルなレースではなく「何でも起こるキャノンボール」を遊ばせることを優先した作品
『キャノンボール2』を現在の基準だけで評価すると、コース表現や車両挙動は極めてシンプルで、映画の登場人物を操作して物語を追体験できるわけでもありません。しかし、本作で重要なのは精密なシミュレーションではなく、映画版が持っていた「普通の自動車レースでは絶対に起こらない騒動」をゲームとして分かりやすく再構成している点です。高速道路を走っている最中にライバル車から体当たりされ、空から爆弾まで落ちてきて、燃料が減れば走行中のタンクローリーへ近づいて給油する。この荒唐無稽さこそ『キャノンボール2』らしさであり、真面目なモータースポーツ作品とは正反対の魅力を持っています。プレイヤーに求められるのは、理想的なレーシングラインを描く能力というより、次々と発生するトラブルへ素早く対応しながら愛車をニューヨークまで運ぶサバイバル能力です。
販売数以上に「映画タイアップ型パソコンゲーム」の歴史を感じさせる一本
『キャノンボール2』については、当時何本販売されたのかを裏付けられるまとまった公的販売本数資料は広く知られておらず、後年の家庭用ゲームのように売上本数によってヒット規模を簡単に比較できる作品ではありません。その一方で、PC-8801、PC-8001、FM-7、X1といった複数の主要機種へ展開されたことからも、映画公開に合わせた商品として一定規模の販売を想定していたことがうかがえます。現在になって本作が興味深いのは、ゲーム単体の完成度だけでなく、映画、人気俳優、自動車、1980年代パソコン文化が一本のソフトの中で交差している点でしょう。映画を知っている人なら当時の娯楽作品らしい豪快さを感じられ、レトロパソコンを好む人なら国産PC黎明期のカーアクションとして楽しめます。巨大なアメリカ大陸を横断するという題材を、左右移動、加減速、残機、燃料、敵車、爆撃というシンプルな仕組みに落とし込み、「ニューヨークまで生き残って走り切れるか」という一本の分かりやすい目標へまとめたところに、本作ならではの個性があります。高度なリアリティよりも勢いと分かりやすさを重視した『キャノンボール2』は、映画タイアップゲームがまだ珍しく、パソコンそのものが新しい遊びの道具だった時代の空気を濃厚に残している作品といえるでしょう。
■■■■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター
単純な操作の中に「走る・避ける・補給する」を凝縮した分かりやすい面白さ
『キャノンボール2』のゲームとしての大きな魅力は、複雑なシステムを覚えなくても、画面を見れば直感的に「何をすればよいか」が理解できるところにあります。プレイヤーの最終目的はロサンゼルスからニューヨークまでスタリオン・ターボを走らせることですが、実際のプレイでは単にアクセルを押し続けるだけではありません。前方や周囲に出現する車両を避け、衝突の危険を察知して左右へ移動し、必要なら速度を調節しながら進みます。さらに上空から現れるジェット機が投下する爆弾にも注意しなければならず、その一方では減少していく燃料を補給するため、GAS表示のあるタンクローリーへ適切な角度から接近する必要があります。つまり、プレイヤーは「できるだけ速く前進したい」というレースゲーム的な欲求と、「残機を失いたくない」というアクションゲーム的な慎重さ、そして「燃料を切らしてはいけない」という管理要素を同時に考えることになります。この三つの要素がシンプルな画面の中で絡み合うため、一見すると簡単そうでありながら、実際に遊ぶと意外なほど忙しいゲームになっています。
速さだけでは勝てない――大陸横断レースを「生存競争」に変えたゲーム性
一般的なレースゲームでは、最高速度を維持してライバルより先にゴールすることが最大の目標となります。しかし『キャノンボール2』では、速度を出しすぎることが必ずしも正解ではありません。高速走行中ほど突然現れる障害へ対応する余裕が減り、車両同士の接触や爆弾への対応が難しくなるからです。そこで重要になるのが、状況に応じてアクセルとブレーキを使い分ける判断です。安全な区間では可能な限り速度を稼ぎ、画面内の危険が増えたときだけ一時的にスピードを落とす。この基本を身につけるだけでも生存率は大きく変わります。特に残機が減った後半では、一度の無理な追い越しがゲームオーバーへ直結するため、「どこまで攻めるか」という心理的な駆け引きが生まれます。
攻略の第一歩は画面中央へ固執せず「逃げられる空間」を常に残すこと
攻略で最も意識したいのは、自車を常に特定の位置へ固定しないことです。初心者は画面中央付近を走っていれば安全だと考えがちですが、障害車が正面へ現れた場合、左右どちらへ逃げるかを瞬間的に判断しなければなりません。その際、すでに左右のどちらかへ別の車両が存在していれば逃げ道がなくなります。したがって重要なのは、「今どこを走っているか」より、「次にどちらへ逃げられるか」です。敵が現れてから避けるのではなく、敵が現れたときに避けられる場所を先に作っておく。この考え方が身につくと、本作の難易度はかなり印象が変わります。
爆弾対策ではジェット機そのものより「投下後の位置」を見ることが重要
ゲーム中でも特に厄介な存在が、画面左側などを飛行して爆弾を投下するジェット機です。自動車だけを見ながら走っていると突然爆発へ巻き込まれるため、初めて遊んだプレイヤーほど理不尽に感じやすい攻撃でしょう。しかし慣れてくると、ジェット機が登場した瞬間から「近いうちに爆弾が来る」と警戒できるようになります。攻略上大切なのは航空機を凝視し続けることではなく、爆弾が画面上のどの位置へ向かっているのかを早い段階で確認することです。落下位置が自車の進行方向と重なりそうなら、小さく左右へ移動して危険区域から外れます。
他車との戦いでは抜くことより接触を避けて残機を守ることを優先
ライバル車が視界へ入ると、レースゲームである以上、どうしても強引に追い抜きたくなります。しかし『キャノンボール2』の場合、他車は単なる順位争いの相手ではなく、自車を破壊する可能性のある動く障害物でもあります。そのため、接近したからといって必ず横をすり抜けようとする必要はありません。余裕がないときには速度をわずかに調節して相手との位置関係を変え、安全な空間ができてから抜く方が結果的には速く進めます。
燃料補給は早めが基本――限界まで粘るほど失敗したときの代償が大きい
燃料システムも攻略上無視できません。走行を続ければ燃料は確実に減少していくため、タンクローリーを利用した補給が必要になります。初心者が失敗しやすいのは、「まだ少し残っているから大丈夫」と給油を後回しにしてしまうことです。次のタンクローリーがすぐ登場する保証はなく、その間にも燃料は消費され続けます。そのため、余裕のある段階で補給できるチャンスが訪れたなら、積極的に利用する方が安定します。
序盤は練習、後半は慎重――残機をゴールまで配分する考え方
5台のストックを持ってスタートする本作では、残機管理も立派な攻略要素です。理想はもちろん一度もミスせずにニューヨークへ到達することですが、ゲームに慣れていない段階では現実的ではありません。そこでおすすめなのが、ゲーム全体を一つの長距離戦と考え、「残機をどこまで残せているか」を進行状況の目安にする方法です。後半ほど必要以上に急がず、危険が重なった場面ではブレーキを使ってでも回避を優先することが完走への近道です。
最速クリアより最初は「完走」を目標にした方が上達しやすい
本作には「1時間でも早くニューヨークへ着く」という競争の考え方がありますが、最初からタイム短縮ばかりを狙うと失敗が増えやすくなります。初めて挑戦する場合は、まずタイムを気にせず一度ゴールまで到達することを第一目標にするとよいでしょう。どの程度の頻度で敵車が現れ、燃料がどれくらいのペースで減り、ジェット機の攻撃にどのような傾向があるのかを体で覚えることが重要です。
最大の敵は焦り――複数の危険が重なったときほど操作を小さくする
『キャノンボール2』では、敵車、爆弾、燃料不足など複数の問題が短時間に重なると一気に難しくなります。このような場面で最も危険なのは、焦って左右キーを何度も入力してしまうことです。操作量が増えれば増えるほど自車の位置を把握しにくくなり、避けたつもりが別の車へ接触する事故が起こります。そのため、危険が重なったときこそ一度状況を見て、「最も近い脅威だけを避ける」という考え方が有効です。
FM-7などで感じやすい操作の難しさも当時のパソコンゲームならでは
本作について語られる際、しばしば話題になるのがキーボード操作の難しさです。特に当時のパソコンは機種ごとにキー入力の仕様が異なり、現在のゲーム機のように複数ボタンの同時操作を当然のものとして設計されていたわけではありません。そのため、ハンドルを切りながら速度を調節するような場面では、プレイヤーが思い描いた操作と実際の反応が一致しにくいケースもありました。ジョイスティックを利用できる環境なら、方向入力が直感的になり、キーボードとは違ったプレイ感覚を楽しむことができます。
昼から夜へ変化する景色が単調になりやすい長距離走行へ変化を与える
ゲームの魅力として忘れてはいけないのが、走行を続けるにつれて時間帯が変化していく演出です。昼間の明るい画面から夕暮れ、夜、さらに明け方というように印象が変化することで、「本当に長時間アメリカ大陸を走っている」という気分を演出しています。今日のゲームのようなリアルタイムライティングとは比較できませんが、当時の限られた表示能力の中では非常に分かりやすい工夫でした。
映画を知っているほど楽しい「無茶苦茶なレース」をゲームで味わえること
本作最大のアピールポイントは、やはり映画『キャノンボール2』の世界観を背景として遊べることでしょう。映画では、さまざまな事情を抱えた人物たちが個性的な自動車を持ち込み、まともなモータースポーツでは考えられない方法まで利用しながらアメリカ大陸を横断します。ゲームでは映画の物語を一場面ずつ再現しているわけではありませんが、「何でもあり」という雰囲気は、敵車の妨害やジェット機による爆撃などによって強調されています。
好きなキャラクターとして挙げたいドラゴン&ジョーズ――ジャッキー・チェンの存在感
登場人物の中で個人的に特に印象深い存在を挙げるなら、ジャッキー・チェンが演じるドライバーを含むドラゴン&ジョーズのチームです。映画版でも、彼らが操る三菱スタリオンにはさまざまな特殊装置が組み込まれており、単に速い自動車というだけではなく「秘密兵器を積んだハイテクマシン」のような扱いになっています。1980年代前半の日本ではジャッキー・チェンの人気が非常に高く、日本製パソコンゲームの題材としても非常に分かりやすい魅力がありました。
フェラーリのレディキラーチームなど、個性の強い参加者が作品世界を華やかにする
もちろん魅力的なのはドラゴン&ジョーズだけではありません。フェラーリ308GTを使用するチーム、ジャガーXJ-Sを駆る参加者、コルベット・スティングレーを使うチーム、ポルシェでレースへ挑むチームなど、それぞれが異なる外見と作戦を持っています。映画版では僧侶や尼僧などレースとは到底結び付かない格好で走る参加者まで登場し、「何の大会なのか分からなくなるほど自由」というところが笑いを生みます。
スーパーカー好きにも楽しい、1980年代らしい車種ラインナップ
『キャノンボール2』という題材は、自動車好きにとっても非常に魅力的です。三菱スタリオン、フェラーリ308GT、ジャガーXJ-S、コルベット、ポルシェ、ポンティアック・ファイヤーバード、キャデラック、ダッジ・デイトナなど、1980年代の空気を感じさせる自動車が並んでいます。ゲーム画面では車種ごとの差異を現在の3Dゲームほど精密には描写できませんが、映画との組み合わせによって「あの車が走る」という想像力を刺激してくれます。
クリア条件はニューヨーク到達――最後まで走り切ること自体が最大の達成
ゲームにおける基本的なクリア目標は、ロサンゼルスから出発したスタリオン・ターボをニューヨークまで到達させることです。道中で5台のストックをすべて失えばゲームオーバーとなるため、どれだけ速く走っていても最後まで生き残れなければ成功とはなりません。また燃料切れを避けるための補給も必要です。したがって、エンディングへ到達するために必要なのは、単純な速度より総合的な安定性です。
初心者向け攻略法――まずは速度を落として各要素の動きを覚える
初めてプレイする場合、最も効果的なのは最初から最高速度だけを狙わないことです。序盤はあえて少し余裕のある速度で走り、敵車がどのように接近してくるのか、ジェット機が現れた後にどのような危険が発生するのか、給油車にどの程度まで寄れば補給できるのかを確認します。低速で基本動作を理解してから速度を上げれば、事故率を抑えながら自然にタイムを縮められます。
中級者向け攻略法――画面全体を見て次の安全地帯を先読みする
ある程度操作に慣れた後は、自車だけを見るのではなく画面全体を眺めることが重要になります。初心者のうちはどうしても自分のスタリオンばかりに視線が集中しますが、それでは遠方から接近する車両への対応が遅れます。自車の少し先を見るような感覚で、左右にどの程度の空間が残っているかを常に確認します。
上級者向け攻略法――安全区間では積極的にタイムを稼ぐ
完走が安定してきたら、次に狙いたいのがタイム短縮です。ここでは「いつでも慎重に走る」のではなく、「危険の少ない瞬間を見つけて一気に進む」ことが重要になります。画面上に障害車が少なく、ジェット機も見当たらず、燃料にも十分な余裕があるなら、積極的にアクセルを使って距離を稼ぎます。一方、複数の危険が見えた瞬間には速度を調整します。
裏技より基本技術がものをいう、古典的なアクションゲーム
『キャノンボール2』については、後年の家庭用ゲームでよく見られる無敵コマンドやステージ選択、隠しキャラクターといった有名な裏技が広く定着している作品ではありません。少なくとも本作を攻略するうえで中心となるのは特殊なコマンドではなく、車両の位置取り、速度調節、給油の成功率、爆弾への対応といった基本技術です。そのため「裏技を知れば簡単にクリアできる」というゲームではなく、何度も遊びながら操作に慣れることが最も確実な必勝法になります。
ミスを「運が悪かった」で終わらせず原因を一つずつ確認することが上達への近道
難しい場面が続くと、爆弾や敵車の出現を見て「運だけのゲーム」と感じてしまうことがあります。しかし実際には、失敗した原因を分析すると改善できる部分も少なくありません。正面衝突したのであれば逃げ道を確保できていたか、爆弾に巻き込まれたのであればジェット機を早く確認できていたか、給油中に失敗したのであれば接近速度が速すぎなかったか、といった具合です。
難易度は高めだが、理由が分かるほど面白くなるタイプ
総合的な難易度は、決して低いゲームではありません。特にキーボード操作へ慣れていない現代のプレイヤーが当時の環境で挑戦すると、左右移動と速度調節だけでも戸惑う可能性があります。さらに車両、爆弾、燃料という複数の要素を同時に処理しなければならないため、序盤から何度もミスすることも珍しくありません。しかし、その難しさの多くは「どうすればよいか分からない」という種類ではなく、「分かっているのに間に合わない」というアクションゲーム的な難しさです。
同じコースを走っても毎回緊張することが本作のリプレイ性につながる
本作は現在のオープンワールドゲームのように自由なルートを選択したり、多数のサブイベントを攻略したりする作品ではありません。それでも繰り返し遊べるのは、毎回の走行でプレイヤー自身の対応が変化するからです。同じような危険が現れても、前回は右へ避けて失敗した場所を次は左へ抜ける、給油のタイミングを早める、速度を抑えて残機を温存するなど、プレイするたびに改善できます。
豪華な映画とは正反対の簡潔さ、それでも題材の勢いはしっかり感じられる
映画『キャノンボール2』は多数のスター、自動車、派手なアクション、コメディを詰め込んだ非常に豪華な作品ですが、パソコン版ゲームはそれを極めて簡潔なルールへ落とし込んでいます。一見すると映画との差は大きいものの、「アメリカを横断する」「個性的な車が入り乱れる」「普通では考えられない妨害が起こる」「とにかくゴールまで突っ走る」という中心部分はゲームでも感じられます。
現在遊ぶと「レースゲームの進化」を実感できる歴史的な面白さもある
現在の視点から『キャノンボール2』を遊ぶ魅力は、単なる懐かしさだけではありません。1980年代前半のパソコンで、自動車レースという題材をどのようにゲーム化していたのかを知る資料としても興味深い作品です。今日ではステアリング操作、アクセル、ブレーキ、ギアチェンジ、タイヤグリップ、車体重量、天候、路面状態など無数の要素をシミュレーションできますが、本作ではそれらを大胆に省略し、「左右へ避けながら前進する」という核心だけでカーレースを表現しています。
『キャノンボール2』最大の魅力は、完璧さより「もう一度走りたい」と思わせる勢い
総合して考えると、『キャノンボール2』の魅力は高度なシミュレーションでも、美麗なグラフィックでも、複雑なストーリーでもありません。スタリオン・ターボを走らせ、敵車をかわし、爆弾から逃げ、燃料を補給しながらニューヨークを目指すという単純明快な目標を、何度でも挑戦したくなる形にまとめているところにあります。一度の衝突で残機を失い、あと少しというところでゲームオーバーになれば悔しい。しかし次のプレイでは「今度こそあそこで無理をしない」と考えて再挑戦したくなります。その繰り返しこそ、1980年代前半のアクションゲームが持っていた基本的な面白さです。
■■■■ 感想・評判・口コミ
映画の名前に惹かれて手に取ったプレイヤーには強烈な印象を残した一本
『キャノンボール2』に対する感想を考えるうえで大きいのは、ゲーム単体への期待だけでなく、同名映画の知名度を背負って発売された作品だったという点です。映画を知っていた人ほど「パソコンではどのようなゲームになるのだろう」と期待してソフトを手にしたと考えられます。実際のゲームは映画の物語を細かく追体験するタイプではなく、スタリオン・ターボを操作してロサンゼルスからニューヨークまで走るという、かなり割り切ったカーアクションでした。そのため映画の登場人物同士の掛け合いやストーリー展開まで期待した人には簡素に感じられた一方で、「映画の無茶なレースをパソコンで遊べる」というだけでも当時としては十分な魅力がありました。
「操作は簡単なのに思った以上に難しい」という感想が生まれやすいゲーム
実際に遊んだときに最も感じやすいのは、ルールそのものは簡単なのに、思うように先へ進めないという難しさです。左右へハンドルを切り、アクセルとブレーキを使うという操作は説明を読めばすぐに理解できます。しかしゲームを開始すると、ライバル車が接近し、さらにジェット機から爆弾が落ちてくるため、単純な直線走行では済みません。敵を避けようとして大きく動けば別の車両へぶつかり、速度を落としすぎるとタイムを失い、焦って加速すると回避が間に合わなくなるという場面が頻繁に起こります。
ジェット機から爆弾が落ちてくる無茶苦茶さは賛否を含めて記憶に残る
『キャノンボール2』を語る際に印象へ残りやすいのが、地上を走る自動車ゲームでありながら上空から爆弾が投下されるという大胆な展開です。リアルな自動車競技を期待するなら明らかに奇妙ですが、映画『キャノンボール2』そのものが現実的なモータースポーツを描く作品ではなく、「勝つためなら何でもあり」というコメディ色の強い世界観だったため、この突拍子もない攻撃は意外なほど題材に合っています。
燃料補給の方法が独特で、最初は戸惑うが慣れると面白い
プレイヤーの感想として語りやすいもう一つの特徴が、タンクローリーを利用した給油です。通常なら他車との接触は避けるべきなのに、「GAS」と表示された給油車だけには自分から近づかなければなりません。この仕組みは初めて遊んだときほど分かりにくく、勢いよく接触して失敗したり、逆に怖がって十分に近づけず燃料を補給できなかったりします。しかし補給方法を理解すると、単なる障害物回避ゲームとは違った駆け引きが見えてきます。
5台の残機制は厳しいが、何度も挑戦したくなる昔ながらのゲームらしさ
スタリオン・ターボにはストックが設定され、事故や爆弾で破壊されるたびに1台ずつ失っていきます。5台をすべて失えば終了という構成は、現代のレースゲームよりもアーケードゲームに近い感覚です。このシステムに対しては、途中まで長時間走ってきたのに一瞬のミスで残機を失う厳しさを感じる一方、「次こそもっと先へ行きたい」という再挑戦への動機も生まれます。
キーボード操作に関しては「思いどおりに動かない」という厳しい評価も出やすい
本作の評価で避けて通れないのが操作性です。特に当時の国産パソコンはゲーム専用機ではなく、キーボードの入力方式にも機種ごとの特徴がありました。そのため、左右移動と加減速を素早く組み合わせようとすると、プレイヤーが期待した反応を得にくい場合があります。一方、ジョイスティックを利用できる環境では方向操作が直感的になり、印象が変わる可能性があります。
グラフィックは素朴だが「自動車を走らせている」感覚はしっかり伝わる
現在の目で見れば、『キャノンボール2』の画面は極めて簡素です。自動車の描写は小さく、道路や背景も限られた色と形で表現され、実写映画のような迫力を期待できるものではありません。しかし1980年代前半のパソコンゲームとして考えると、重要なのはリアルな車体表現ではなく、画面上の情報から直感的に状況を理解できることでした。時間が経過するにつれて画面の色調が変化し、昼から夜へ移り変わる表現などは、大陸を長時間走り続ける雰囲気を感じさせます。
映画の豪華さを期待すると物足りないが、ゲームとして割り切れば分かりやすい
一方で、映画との比較では物足りなさを感じる部分もあります。映画『キャノンボール2』には多数の俳優が出演し、それぞれのチームが個性的な自動車や変装、作戦を使いながら競争します。それに対してゲーム版は、プレイヤーがスタリオンを走らせるカーアクションへ内容を絞っています。映画の各チームを自由に選んだり、登場人物ごとのストーリーを楽しんだり、劇中の場面を順番に再現したりする作品ではありません。
ジャッキー・チェンを意識して遊べることが日本のプレイヤーには大きな魅力
日本国内での印象を語るなら、ジャッキー・チェンの存在は非常に大きかったと考えられます。当時のジャッキーは映画スターとして高い知名度を持ち、アクション映画を好む層だけでなく幅広い観客に知られていました。ゲーム版でもスタリオンが中心となることで、映画を知る人にとってはジャッキーのチームをイメージしながら走る楽しさがありました。
自動車好きには登場車種の名前だけでも1980年代らしい魅力がある
映画を知らなくても、自動車が好きな人には別の楽しみがあります。スタリオン・ターボをはじめ、フェラーリ、ポルシェ、コルベット、ジャガー、ポンティアック、キャデラック、ダッジなど、作品周辺には当時を象徴するさまざまな車種が並びます。現在ではクラシックカーとして語られるモデルも多く、ゲームと映画を通じて1980年代の自動車文化を感じることができます。
レースというより「障害物回避アクション」と見ると評価しやすい
本作を現代のレーシングシミュレーターと同じ基準で評価すると、車種ごとの性能差、リアルな挙動、コース攻略、チューニングなどが存在しないため、非常に単純な作品に見えてしまいます。しかしプレイ感覚の本質は、むしろ障害物回避型アクションゲームに近いものです。自車を左右へ動かし、迫ってくる危険をかわしながら距離を伸ばし、補給対象を見つけたら接近する。この視点で遊ぶと、本作が目指している面白さが分かりやすくなります。
「理不尽さ」と「あと一回」が同居する1980年代ゲームらしいプレイ感
昔のゲームを振り返る際によく語られるのが、難易度の高さや説明不足です。『キャノンボール2』にもそうした時代性があり、敵車や爆弾によって突然ミスする場面では、現代のプレイヤーなら理不尽だと感じることもあります。ところが不思議なことに、ゲームオーバーになっても「もう一度だけやればもっと先へ進めそうだ」と思わせる魅力があります。
現代のレトロゲームファンから見ると、完成度だけでなく時代背景そのものが面白い
現在になって『キャノンボール2』を評価するときは、単純にゲームとして面白いかどうかだけではなく、「なぜこのような作品が作られたのか」という背景まで含めると興味が深まります。1980年代前半は家庭用ゲーム機とパソコンゲームがそれぞれ発展していた時期で、映画やテレビなど既存の人気コンテンツをゲームへ取り込む試みも増えていました。その中で洋画『キャノンボール2』を国産パソコンへ展開したという事実そのものが、現在では非常に時代を感じさせます。
口コミが大量に残る時代ではなかったことも評価を見る際の重要なポイント
現在のゲームなら、発売直後からSNS、動画配信、レビューサイト、オンラインストアなどに大量の感想が残ります。しかし『キャノンボール2』が発売された1980年代前半には、一般ユーザーがインターネットへ感想を書き込む環境は存在していませんでした。そのため現在確認できる評価は、当時の雑誌記事、後年の個人サイト、レトロゲーム回顧、実機プレイヤーの記録などに分散しています。この事情から、本作について「当時のユーザー全体が高く評価した」「非常に不評だった」と一括りに断定するのは適切ではありません。
当時の子どもや若者には「映画の世界を自宅のパソコンで動かす」こと自体が特別だった
現在は映画作品を題材にしたゲームが豊富ですが、1980年代前半の感覚では、映画館で見たタイトルが自宅のパソコンソフトとして発売されること自体に特別感がありました。たとえ映像表現が映画とは大きく異なっていても、「自分でスタリオンを操作できる」「キャノンボールへ参加できる」という体験には大きな意味があります。当時のゲームプレイヤーにとって、作品世界との距離が一気に縮まる感覚だったでしょう。
短所としては展開の単調さと、映画キャラクターを十分に生かし切れていない点
もちろん欠点もあります。ゲームの基本となる行動は、走る、避ける、給油するという繰り返しであり、長時間プレイすると展開が単調に感じられる可能性があります。また映画版の魅力だった多数のスターや個性的なチームも、ゲームシステム上では十分なキャラクター性を与えられていません。好きなチームを選んで性能差を楽しむ仕組みがあれば、映画との結び付きはさらに強くなったでしょう。
一方で余計な要素が少ないため、数分遊べば本作の魅力を理解できる
単純さは短所であると同時に長所でもあります。複雑な説明書を読み込む必要がなく、スタートすればすぐに道路を走り始められるため、ルールを理解するまでの時間が短いのです。現在レトロゲームとして触れる場合でも、「何をすればいいのか分からない」というタイプの古いゲームではありません。左右移動と加減速を覚えれば、すぐに敵車を避ける楽しさへ入れます。
クリアしたときの感想は「派手なエンディング」より長距離を耐え抜いた達成感
本作を最後まで攻略したときに得られる満足感は、豪華なムービーや長いエンディングストーリーを見ることよりも、厳しい道中を乗り越えたことそのものにあります。何度も車を破壊され、給油に失敗し、爆弾へ巻き込まれながら少しずつ走行技術を身につけたプレイヤーほど、ニューヨークへ到達した瞬間の達成感は大きくなります。
現在の評価は「名作か駄作か」より、1980年代初期PCゲームの個性的な一本として見るのが適切
総合的な感想として、『キャノンボール2』を現在の基準で絶対的な名作、あるいは単純な失敗作のどちらかへ分類するのは難しいでしょう。ゲームシステムは簡素で、操作環境によってはかなり遊びにくく、映画の豪華な内容を十分に再現しているとは言えません。その一方で、映画タイアップ、実在する名車、ジャッキー・チェンの存在、アメリカ大陸横断という題材、空から爆弾が降る大胆なゲーム内容など、他作品にはない強烈な個性を持っています。万人へ薦められる洗練されたレースゲームというより、映画タイアップゲームの黎明期や昔の国産パソコンゲーム独特の雰囲気を知りたい人ほど価値を見いだしやすい作品です。
■■■■ 当時の宣伝・現在の中古市場など
映画『キャノンボール2』の劇場公開と歩調を合わせたタイアップ商品として登場
『キャノンボール2』の販売戦略を考えるうえで最も重要なのは、単独のオリジナルゲームとして売り出されたのではなく、同名映画の日本公開時期とほぼ重なる形で商品化された点です。映画『キャノンボール2』は日本で1983年12月17日に公開され、パソコン版も1983年12月頃から市場へ投入されました。そのため宣伝では、ゲームシステムの細かな特徴を一から説明する以上に、「映画館で話題になっているキャノンボールを自分のパソコンでも体験できる」という分かりやすい魅力を提示できました。パッケージにも映画版と共通するタイトルロゴや劇中場面を意識した素材が用いられ、単なるカーゲームではなく映画関連商品であることが一目で分かるデザインとなっていました。
ジャッキー・チェンとスタリオンという分かりやすい題材が宣伝上の強み
日本市場で『キャノンボール2』を宣伝する際、非常に分かりやすい存在だったのがジャッキー・チェンです。映画版にはバート・レイノルズをはじめ数多くのスターが出演していましたが、日本ではジャッキーの人気が非常に高く、彼が参加するドラゴン&ジョーズのチームと三菱スタリオンは大きなアピール材料となりました。パソコンゲーム版でもプレイヤーがスタリオン・ターボを操る構成となっているため、映画を知っているユーザーであれば「ジャッキーたちの車を自分で走らせる」というイメージを持ちやすかったでしょう。ポニカが映画などの版権作品をパソコンゲームへ展開していた時代を象徴する一本としても興味深い存在です。
当時のパソコン雑誌広告はゲーム販売にとって極めて重要な宣伝手段
1980年代前半のパソコンゲームは、現在のように公式サイト、動画配信サイト、SNS、オンラインストアから情報を得ることができませんでした。そのためユーザーが新作情報を知る最大の入口となったのが、パソコン専門誌やマイコン雑誌です。書店に並ぶ雑誌の新作紹介記事、広告ページ、ソフトハウスの発売予定一覧などを見ながら、次に購入するゲームを決めるというスタイルが一般的でした。『キャノンボール2』のような映画タイアップ作品は、タイトルそのものに知名度があったため、誌面上で非常に目立ちやすい存在だったと考えられます。
店頭ではパッケージそのものが重要な広告媒体だった時代
当時のゲーム販売では、パソコンショップや家電店、マイコン専門店などの棚に並べられたパッケージが重要な宣伝媒体でした。インターネットで事前にゲーム画面を詳しく確認できない時代ですから、購入者にとって箱のデザイン、タイトル、裏面の説明文、掲載写真は現在以上に大きな意味を持っていました。映画版の名前を知っている人が『キャノンボール2』のパッケージを見つければ、それだけで足を止める可能性があります。
カセットテープ媒体で販売されたことも1983年という時代を象徴
『キャノンボール2』は、現在ではほとんど見られなくなったカセットテープ媒体でも流通したパソコンゲームです。当時はフロッピーディスクドライブがすべてのパソコンユーザーに普及していたわけではなく、比較的安価なデータレコーダーを利用してゲームプログラムを読み込む方式が一般的でした。そのため購入者はカセットをパソコンへセットし、ロード操作を行い、一定時間待ってからゲームを開始します。この「ゲームを遊ぶまでの時間」も1980年代パソコン文化の一部でした。
3,000円台後半という価格帯にも当時のパソコンソフト文化が見える
本作のカセットテープ版については3,850円程度の定価が記録されているものがあります。現在の価格感覚だけで見れば手頃に思えますが、1980年代前半に学生や子どもが何本も気軽に購入できる金額ではありません。そのため雑誌広告を読み、店頭でパッケージを眺め、どの一本を購入するか慎重に選ぶことになります。その点、映画のタイトル、ジャッキー・チェン、スーパーカー、大陸横断という分かりやすい要素を備えた『キャノンボール2』は、購入理由を作りやすい商品でした。
販売本数については具体的な公表数字を断定しない方が安全
『キャノンボール2』が発売当時に何本売れたのかについては、現代の家庭用ゲームのような信頼性の高い累計販売本数資料を容易に確認できる状況ではありません。そのため、「何万本売れた」「年間ランキングで何位だった」といった数字を根拠なしに記載するのは避けるべきでしょう。当時のパソコン市場はPC-8001、PC-8801、FM-7、X1など複数の規格へユーザーが分散し、それぞれにソフトが発売される形でした。本作が複数の主要パソコンへ展開されたことから一定規模の市場を狙った商品だったことは読み取れますが、それと具体的な販売本数は別問題です。
現在はゲーム内容以上に「現物が残っていること」自体へ価値が生まれている
発売から40年以上が経過した現在、『キャノンボール2』は一般的な中古ゲームショップでいつでも大量に購入できるタイトルではありません。特にカセットテープという媒体は、長期間の保管による磁性体の劣化、ケースの破損、説明書の紛失などが起こりやすく、完全な状態で残っている個体は時間とともに少なくなります。そのため現在の中古市場では「ゲームを遊ぶためのソフト」という実用品としての価値だけでなく、「1980年代の国産PCゲームを保存するコレクターズアイテム」としての価値が強くなっています。
中古市場では数千円台から1万円前後まで幅が出ることもある
現在の中古市場では、FM-7版やPC-8001版、X1版などが数千円台で扱われる例があり、PC-8801版などでは状態や付属品によって1万円前後の値付けが行われることもあります。ただし、これは固定された相場ではありません。中古価格は機種、商品の状態、説明書の有無、外箱、ショップの在庫量、動作確認の有無などによって大きく変化します。とりわけ40年以上前の磁気テープ媒体では、見た目がきれいでも正常にロードできるとは限らず、実用品としての価値と資料としての価値を分けて考える必要があります。
オークションでは付属品が揃った個体ほど評価されやすい
オークションやフリマ市場では、カセット単体よりも箱、説明書、ハガキ、プログラム関連資料などが残っている個体の方が評価されやすい傾向があります。PC-8001版などでも数千円規模で取引された例が見られ、完品に近い状態であればさらに高い価格が付けられる可能性があります。ただし出品価格と実際の落札価格は別物です。高額な値段で出品されているからといって、それがそのまま市場相場を表しているわけではありません。
「過去最高額」は確認可能な全取引データがないため断定できない
中古ゲームの記事では「過去最高で○万円」といった数字が注目を集めやすいものの、『キャノンボール2』について信頼できる全期間の最高落札額を特定することは困難です。古いオークション履歴は保存期間が限られ、1980年代以降のすべての中古取引を網羅した資料も存在しません。また複数本セット、未開封品、資料付き商品などが混在すれば単品価格として比較することも難しくなります。したがって「確認できる取引では数千円台から1万円前後の例がある」とする程度が現実的です。
中古価格を大きく左右するのは箱・説明書・カセット・付属資料の保存状態
『キャノンボール2』のような初期パソコンソフトでは、現物のコンディションが価格へ大きく影響します。最も基本となるのはカセットテープ本体ですが、コレクター市場では外箱やケース、説明書、アンケートハガキ、プログラム関係資料など、発売時に含まれていたものがどれだけ揃っているかが重要です。外箱は日焼け、角潰れ、破れ、値札跡が生じやすく、説明書には折れや書き込みが残る場合があります。さらにカセットテープは見た目がきれいでも正常にロードできるとは限りません。
映画関連グッズとは別に、ゲーム版はレトロPC収集品として独自の価値を持つ
『キャノンボール2』というタイトルには映画パンフレット、チラシ、映像ソフトなどさまざまな関連品がありますが、パソコンゲーム版はそれらとは異なる収集ジャンルに位置します。映画ファンだけでなく、PC-8001、PC-8801、FM-7、X1といった各機種を専門的に集めるレトロPCコレクターも対象とするためです。さらにジャッキー・チェン関連品、三菱スタリオン関連資料、ポニカ製ゲームという視点から探す人も考えられ、一つのタイトルが複数の収集分野と交差しています。
現在購入するなら「遊べるか」より「何を目的に買うか」を先に決めたい
現在に『キャノンボール2』の現物を購入する場合、最初に考えたいのは購入目的です。実機でプレイすることが目的なら、単にカセットが存在するだけでは不十分で、読み込み可能か、対応パソコンやデータレコーダーを準備できるかまで考える必要があります。一方、パッケージを含めた資料保存が目的なら、動作未確認でも箱や説明書の状態が良い個体に価値があります。映画やジャッキー・チェンの関連資料として収集するなら、ゲームそのものよりパッケージデザインを重視する選び方もあります。
発売時は映画の勢いで売り、現在は1980年代PC文化そのものが価値になった
発売当時の『キャノンボール2』は、公開されたばかりの映画、ジャッキー・チェン、三菱スタリオン、スーパーカー、大陸横断レースという華やかな要素によって興味を引く商品でした。それから40年以上が経過した現在は事情が逆転しています。もはや最新映画の関連商品として購入する人より、「1980年代前半のパソコンゲームが当時の箱とカセットのまま残っている」ことに魅力を感じる人の方が中心です。
資料性まで含めると『キャノンボール2』はポニカの映画タイアップ戦略を象徴する一本
最終的に本作の宣伝と中古市場を振り返ると、評価すべきなのは単に「昔のレースゲームが高値になった」ということではありません。映画会社や映像コンテンツとのつながりを生かせるポニカが、公開時期の話題性を利用しながら映画を国産パソコンゲームへ持ち込んだ点に歴史的な面白さがあります。当時は映画のタイトルロゴやスター、劇中の名車が購入動機となりましたが、現在ではそのパッケージや説明書自体が1980年代のメディアミックスを伝える資料となっています。
■■■■ 総合的なまとめ
『キャノンボール2』は映画の豪快さをシンプルなカーアクションへ凝縮した作品
1983年末から1984年頃にかけてポニカからPC-8801、PC-8001、FM-7、X1などへ展開された『キャノンボール2』を総合的に振り返ると、1980年代前半のパソコンゲームらしい割り切りと、映画タイアップ作品ならではの華やかさが同居した一本だったとまとめられます。原作となった映画『キャノンボール2』には、多数のスター俳優、世界各国の高性能車、奇抜な参加チーム、荒唐無稽な作戦、アメリカ大陸を横断する壮大なスケールなど、非常に多くの見どころが詰め込まれていました。しかし当時の家庭用パソコンには、そうした映画の内容を映像や音声を含めて丸ごと再現できるほどの性能や記憶容量はありません。そこでゲーム版は、映画の魅力の中から「スタリオン・ターボを操り、さまざまな妨害を避けながらロサンゼルスからニューヨークまで走り切る」という部分へ思い切って焦点を絞りました。
レースゲームという言葉だけでは説明しきれない「サバイバルカーアクション」
ゲームジャンルとしては自動車を操るレースゲームですが、実際の遊びは本格的なモータースポーツゲームとはかなり異なります。サーキットの最適な走行ラインを研究したり、車両を細かくセッティングしたりするのではなく、道路上に現れるさまざまな危険からスタリオンを守りながら前進することが中心です。他車の妨害を避けるだけでも忙しいところへ、ジェット機が飛来して爆弾まで投下してくるため、一般的な自動車ゲームとは異なる緊張感があります。さらに燃料という制約があり、残量が減ればGAS表示のあるタンクローリーへ接近して補給しなければなりません。
最大の特徴は「速く走りたいのに慎重さも必要」という矛盾した面白さ
『キャノンボール2』のゲーム性を一言で表すなら、アクセルを踏み続けたい気持ちをどこまで抑えられるかというゲームでもあります。ゴールへ少しでも早く着きたいなら当然高速で走るべきですが、速度を出せば出すほど障害車や爆弾を避ける時間は短くなります。反対に慎重すぎれば安全性は上がるものの、大陸横断レースとしてのタイムは悪化します。そのためプレイヤーは、安全な場面では積極的に速度を上げ、危険が増えれば一時的に減速するという判断を繰り返すことになります。
5台のストックと燃料管理が長距離レースへ緊張感を与えている
スタリオン・ターボには複数のストックが用意されていますが、合計5台をすべて失えばゲームオーバーです。つまり序盤で無理をして車を失えば、それだけ後半が苦しくなります。さらに燃料まで減少していくため、プレイヤーは残機とガソリンという二つの資源を意識します。この仕組みがあることで、単に敵をかわしていくだけのゲームよりも長距離レースらしい緊張感が生まれています。
ジェット機から爆弾が落ちてくる大胆さこそ『キャノンボール2』らしさ
普通のレースゲームであれば、事故、道路、ライバル車などが危険要素となります。しかし本作では、突然現れたジェット機がプレイヤーへ爆弾を落としてきます。現実の自動車競技として考えればあまりにも荒唐無稽ですが、映画『キャノンボール2』がもともと真面目なモータースポーツ映画ではなく、「何でもあり」のコメディアクションだったことを考えれば、この無茶な演出はむしろ作品世界に合っています。
ジャッキー・チェンと三菱スタリオンが映画タイアップとしての存在感を高めた
日本で本作を振り返る際には、ジャッキー・チェンの存在を外すことはできません。当時のジャッキーは日本でも非常に高い人気を誇る映画スターであり、『キャノンボール2』でも重要な参加者の一人でした。そしてゲームでプレイヤーが操る自動車としてスタリオン・ターボが選ばれていることによって、ジャッキーらのチームを思い浮かべながら遊ぶことができます。
映画に登場した数々の名車が作品全体へ1980年代らしい華を添える
スタリオンだけでなく、映画版にはフェラーリ308GT、ジャガーXJ-S、コルベット、ポルシェ、ポンティアック・ファイヤーバード、キャデラック、クライスラー、ダッジなど多種多様な自動車が登場し、『キャノンボール2』というタイトルそのものに自動車ショーのような華やかさを与えていました。ゲーム版では現代のレースゲームほど各車種を精密に再現しているわけではありませんが、パッケージや映画の設定と合わせて楽しむことで、ゲーム画面以上の世界を想像できます。
PC-8801版は当時の代表的な8ビットパソコン環境で遊ぶ意義が大きい
PC-8801シリーズは1980年代前半から中盤にかけて日本のパソコンゲーム市場で大きな存在感を持った機種であり、『キャノンボール2』もその市場へ向けて発売されました。PC-8801版だからゲームの根本的なルールが別物になるわけではありませんが、画面表示や色使い、キー入力、処理の感覚などはパソコンごとの仕様へ依存します。この差を比較することが、1980年代のマルチプラットフォーム作品を現在遊ぶ楽しみの一つです。
FM-7版はキーボード入力の特性が難易度へ影響しやすい
FM-7版については、本作の単純な操作体系とは裏腹に、当時のキーボード入力の仕様によって操作が難しく感じられる点が特徴として挙げられます。左右へのハンドル操作とアクセル、ブレーキを頻繁に組み合わせるゲームだけに、キー入力の癖はプレイ感覚へ直接影響します。これは単純に移植の出来だけで説明するのではなく、ゲーム専用機ではない1980年代のパソコンへアクションゲームを展開する際に生じた特徴として見ると興味深い部分です。
X1版にもシャープ製パソコンならではの画面と操作感が存在する
X1シリーズもまた、当時の国産パソコンゲーム市場を代表する存在でした。『キャノンボール2』がX1へも展開されたことは、一つの映画タイアップ作品をできるだけ多くの主要パソコンユーザーへ届けようとした販売戦略を示しています。基本ルールは共通していても、色の見え方、描画の雰囲気、入力レスポンスなどによって体感は完全には同じになりません。
PC-8001版からはより初期のパソコンゲーム文化を強く感じられる
PC-8001は日本のパーソナルコンピューター普及初期を象徴する機種の一つです。そのためPC-8001版『キャノンボール2』を現在振り返ることには、ゲーム内容だけでなく「この時代のパソコンで映画タイアップのカーゲームを実現していた」という歴史的な面白さがあります。限られた機能を用いて自車、他車、道路、危険物、燃料といったゲームに必要な情報を表現している点は、当時の開発者の工夫を感じさせます。
各機種版の「完成度」を単純な順位で決めにくい理由
PC-8801、FM-7、X1、PC-8001などの各版について、現代のゲーム移植のように一つの機種を完全版、別の機種を劣化版と単純に順位付けするのは慎重であるべきです。各機種はCPU構成、画面表示、色表現、メモリ、キーボード入力などの条件が違い、それぞれの環境に合わせてゲームを成立させています。特に『キャノンボール2』は車の左右移動と加減速がゲームの中心なので、画質以上に操作感が重要になります。グラフィックが多少鮮やかな版でも操作しにくければ難しく感じ、反対に表示が簡素でも入力が扱いやすければ快適に感じることがあります。
家庭用ゲーム機の完成されたレースゲームとは別の基準で評価したい
1980年代後半以降、家庭用ゲーム機やパソコンには多種多様な自動車ゲームが登場し、さらに16ビット、32ビット、3D時代へ進むにつれてレースゲームは劇的に進歩しました。その基準から『キャノンボール2』を振り返れば、車両の挙動もコース表現も非常に単純です。しかし1983年前後という発売時期を考えれば、限られた機能の中で「速度」「衝突」「燃料」「爆撃」「残機」「時間経過」といった複数の要素を組み合わせ、映画の大陸横断レースを遊べる形へまとめた点に意味があります。
現在遊ぶ価値はゲーム性だけでなくレトロPC文化を体験できるところにもある
現代のプレイヤーが『キャノンボール2』へ触れる場合、最新レースゲームの代わりとして遊ぶ作品ではありません。むしろ「1983年頃の人々はパソコンでどのようなカーゲームを楽しんでいたのか」「映画をゲーム化するとき、何を残して何を省略したのか」を体験する作品として大きな価値があります。カセットテープからロードし、キーボードやジョイスティックで自動車を操作し、簡素なグラフィックからアメリカ大陸横断を想像する。この一連の体験そのものが現在ではレトロゲーム文化です。
欠点は単調さと操作上の厳しさ、それでも個性の強さが記憶に残る
もちろん総合評価として短所も無視できません。基本的なプレイは障害を避けながら走行することの繰り返しなので、長時間遊べば単調に感じる人もいるでしょう。映画に登場する多数のキャラクターをゲームシステムへ十分に生かし切れていないことも惜しい点です。また操作環境によって難易度がかなり変わるため、キーボードで思いどおりに自車を動かせないことを不満に感じる可能性もあります。しかし、ライバル車に囲まれながらジェット機の爆撃を避け、走行中のタンクローリーへ接触して燃料を補給するという内容は強烈です。
販売本数では測れない、映画とパソコンゲームが接近し始めた時代の資料
『キャノンボール2』について正確な累計販売本数を示す広く共有された資料は乏しく、大ヒット作だったと数字だけで断定することはできません。しかし複数の主要国産パソコンへ展開されたことからも、当時のポニカが映画タイアップ作品として幅広く販売しようとしていたことはうかがえます。映画公開直後のタイトルを、カセットテープという当時の代表的な媒体で販売し、PC-8001、PC-8801、FM-7、X1といった異なるパソコンで遊べるようにしたという事実そのものが、日本のゲーム産業史を考えるうえで興味深いものです。
中古市場では「遊ぶゲーム」から「残しておきたい資料」へ役割が変化
発売当時、本作を購入した人の目的は当然ゲームを遊ぶことでした。しかし40年以上が経過した現在では、その役割も大きく変化しています。カセットテープ、パッケージ、説明書、当時の広告などが一式で残っていれば、それ自体が1980年代初期のパソコンソフト文化を伝える資料になります。特に磁気テープは経年劣化しやすく、外箱やマニュアルも紛失しやすいため、状態の良い個体は貴重です。
完成度だけでは語れない「時代の勢い」が本作最大の魅力
『キャノンボール2』を総合評価すると、現在のレースゲームと比べて高度な完成度を誇る作品という評価にはなりません。グラフィックは簡素で、操作には癖があり、ゲーム展開も比較的単純です。しかし1983年頃という時代に目を向ければ、話題の映画を題材にして、アメリカ大陸横断、名車、ジャッキー・チェン、スタリオン、敵車、ジェット機、爆弾、燃料補給といった要素を一つのゲームへ詰め込もうとした意欲は非常に強く感じられます。技術的な限界を承知したうえで、「映画を見た人がパソコンでもキャノンボールを体験できるものを作ろう」という勢いが作品全体から伝わってきます。
『キャノンボール2』は1980年代前半だからこそ成立した個性的なレトロゲーム
最終的に『キャノンボール2』とは、映画を忠実に再現したゲームでも、本格的な自動車シミュレーターでもありません。映画の中核である「無茶苦茶な大陸横断レース」を、当時のパソコンで実現可能なカーアクションへ大胆に変換した作品です。スタリオン・ターボを走らせ、他車をかわし、ジェット機の爆弾から逃れ、燃料が減ればタンクローリーへ寄り、5台のストックを守りながらニューヨークへ向かう。その遊びは非常に単純ですが、ゲームの目的は最初から最後まで明快です。そして単純だからこそ、一度事故を起こせば次はもう少し上手に走ろうと思えます。映画ファンなら1980年代洋画とのつながりを楽しみ、自動車ファンならスタリオンをはじめとする当時の名車に魅力を感じ、レトロPCファンならPC-8801、PC-8001、FM-7、X1という各機種で同一タイトルが展開された時代そのものに興味を持てるでしょう。華麗な映像や複雑なシステムを持つゲームではないものの、映画、スター、自動車、国産パソコン、カセットテープという1980年代初頭の娯楽文化が一つに集まったタイトルとして、『キャノンボール2』は今なお独特の存在感を持っています。現在の視点で遊べば粗さも難しさも目立ちますが、それ以上に「この時代だから作ることができたゲーム」という個性が際立ちます。ロサンゼルスからニューヨークまで、ルール無用の大陸横断を自分の手で走破する――その単純で豪快な夢を小さなパソコン画面の中へ収めたことこそ、『キャノンボール2』というゲームの最大の価値といえるでしょう。
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