【原作】:ジュール・ヴェルヌ
【アニメの放送期間】:1987年10月10日~1988年3月26日
【放送話数】:全22話
【放送局】:テレビ朝日系列
【関連会社】:日本アニメーション.、B.R.B. Internacional S.A
■ 概要・あらすじ
● ジュール・ヴェルヌの名作を動物キャラクターで再構成した世界旅行アニメ
『アニメ80日間世界一周』は、フランスの作家ジュール・ヴェルヌが発表した冒険小説『八十日間世界一周』を下敷きとして、世界各地を巡る大旅行を子どもから大人まで親しみやすい冒険アニメへと作り替えたテレビシリーズである。日本では1987年10月10日から1988年3月26日までテレビ朝日系列で放送された作品として知られているが、制作そのものは日本アニメーションとスペインのBRB Internacionalによる国際共同企画として進められ、日本国内でテレビ放送される以前から海外展開を意識した作品となっていた。原作小説に登場する人物をそのまま人間として描くのではなく、主要人物を個性豊かな動物キャラクターとして表現している点が大きな特徴で、英国紳士らしい品格を備えた主人公ウィリー・フォグを中心に、旅の仲間であるリゴドンやチコ、物語の途中から深く関わるロミー姫などが、鉄道や船などさまざまな交通手段を利用しながら世界を横断していく。19世紀を舞台としたクラシカルな冒険物語の雰囲気を残しつつ、動物ならではの親しみやすいデザイン、テンポの良い活劇、追跡劇、友情、恋愛、ユーモアなどを組み合わせたことで、単なる文学作品の映像化ではなく、一話ごとに次の目的地が楽しみになる連続冒険アニメとして成立している。
● 日本でテレビ放送される以前から映像商品として紹介されていた作品
本作には、日本における一般的なテレビアニメとは少し異なる展開の経緯がある。全26話で構成されたシリーズは、日本の地上波で本格的に放送される以前に『どうぶつ80日間世界一周』の名称で映像商品として紹介されており、1985年にはVHD規格によるソフトが複数巻に分けて発売された。その後、1987年秋になってテレビ朝日系列で『アニメ80日間世界一周』として放送され、多くの視聴者が週ごとのテレビ番組として作品に触れることになった。ただし日本でのテレビ放送では全26話すべてがオンエアされたわけではなく、第14話、第18話、第21話、第22話に相当する4話が放送されなかったため、テレビで視聴した場合は全22話という形になる。このため、作品をテレビ放送だけで記憶している世代と、後年に映像ソフトなどを通じてシリーズ全体を知った視聴者とでは、物語に対する印象がわずかに異なる場合がある。また、日本で先に発売された映像版と後のテレビ放送版では一部のキャスト構成にも違いがあり、ひとつの作品でありながら複数の形で国内へ紹介されたという点でも、1980年代アニメの中では独特の立ち位置を持っている。
● 2万ポンドを賭けて始まる、英国紳士ウィリー・フォグの壮大な挑戦
物語の中心人物となるウィリー・フォグは、冷静さと礼儀正しさを何よりも大切にする英国紳士である。彼の日常は几帳面で、予定された時刻を守り、感情に流されず物事を判断するという、いかにも紳士然とした生活を送っていた。しかし、ある日クラブで交わされた会話をきっかけに、その穏やかな日常は一変する。当時発達を続けていた鉄道や汽船などの交通網を組み合わせれば、地球をわずか80日間で一周することが可能なのではないかという議論が起こり、フォグは銀行頭取サリバンを相手に「80日以内に世界を一周してロンドンへ戻れるか」という大胆な賭けを受けることになる。賭けられた金額は2万ポンド。失敗すれば莫大な財産を失いかねないにもかかわらず、フォグは動揺することなく出発を決断する。この瞬間から作品は、単なる観光旅行ではなく、分単位、時間単位で予定を積み重ねながらゴールを目指すタイムリミット付きの冒険へと変化する。列車への乗り遅れ、船の遅延、予想外の事件など、旅先で起きる小さな問題の一つ一つが最終的な帰着時刻に影響するため、「果たして本当に間に合うのか」という緊張感が物語全体を支える重要な要素となっている。
● リゴドンとチコを伴い、次々と国境を越えていくロードムービー的な面白さ
ウィリー・フォグの世界一周は、彼一人だけの冒険ではない。旅には忠実で行動力のあるリゴドン、そして小柄ながら好奇心旺盛で場を明るくするチコが同行し、それぞれ異なる性格を持った仲間たちが一つの目的へ向かって進んでいく。冷静沈着なフォグがどのような危機にもなるべく理性的に対応しようとする一方、リゴドンやチコが驚いたり慌てたりすることで、重くなりすぎないユーモラスな空気が生まれている。旅の途中では土地ごとに風景や生活様式が変化し、列車による大陸横断、船による海上移動など、当時の交通手段そのものが冒険の舞台装置として活用される。現代のように航空機で短時間に世界各地へ移動できる時代ではないため、移動そのものが大きなイベントとなり、山岳地帯、港町、海、荒野、都市と景色が移り変わるたびに物語の雰囲気も変化する。視聴者はフォグたちと一緒に地図の上を進んでいるような感覚を味わうことができ、次回はどの土地へ行き、そこでどのような事件に巻き込まれるのかという期待がシリーズを見続ける原動力となっている。
● ロミー姫との出会いが「賭けの旅」を仲間の物語へ変えていく
旅の途中でフォグたちが出会う重要人物の一人がロミー姫である。当初のフォグにとって世界一周は、自らの考えが正しいことを証明し、約束された期限内にロンドンへ戻るための挑戦という性格が強い。しかしロミー姫をはじめ、各地で助けを必要としている人物や事件と関わるにつれて、彼の旅には次第に人間味が加わっていく。時間だけを考えれば先を急いだ方が良い場面であっても、困っている相手を見捨てず、危険を承知で救出へ向かう。こうした行動によって、フォグは単に計算高く冷静な人物なのではなく、約束と誇り、そして他者への思いやりを大切にする紳士であることが示されていく。とりわけロミー姫との関係は、旅の終盤へ向かうほどフォグ自身の感情面を浮かび上がらせる役割を持ち、世界一周という壮大な舞台に温かなドラマを加えている。最初は「80日で世界を回れるか」という賭けから始まった旅が、仲間との信頼や大切な人物との出会いによって、単なる勝敗では測れない経験へ変化していくことが、本作のストーリーを豊かなものにしている。
● トランスファーの妨害によって単純な世界旅行では終わらない
フォグの旅をより波乱に富んだものにしているのが、サリバン頭取側から送り込まれるトランスファーの存在である。フォグが約束通り80日以内に世界一周を成功させてしまえば、賭けに敗れたサリバンは大きな損失を負う。その結果、フォグの進行を少しでも遅らせようと、トランスファーは旅の各地に姿を現してはさまざまな妨害を仕掛ける。交通手段に問題を起こしたり、一行を危険な状況へ誘導したりと、その手口は物語が進むにつれて大胆になっていく。フォグたちは自然条件や交通事情だけでなく、人為的な妨害まで乗り越えなければならず、「予定通り移動すれば80日で帰れる」という単純な計算はたちまち崩されてしまう。もっとも、トランスファーの登場場面には悪役らしい緊張感だけでなく、作戦が思惑通りに進まなかったことで生まれるコミカルな味わいもあり、子ども向け冒険アニメとして重くなりすぎない工夫が施されている。毎回のように危機を突破するフォグ一行と、その裏で次の手を考える妨害者という構図は、シリーズを連続して見たくなる分かりやすい対立軸になっている。
● 銀行強盗と疑われたまま追跡される、もう一つのタイムリミット
さらにフォグの世界一周には、賭けとは別の大きな問題が付きまとう。同じ時期に発生した銀行強盗事件の犯人と誤認されたことで、フォグは警察から疑いを掛けられ、ディスク刑事とブーリー助手らに追跡されることになる。フォグ本人には犯罪を犯した自覚など当然なく、あくまで世界一周の旅を続けているだけなのだが、捜査側から見れば、事件後に多額の資金を持った人物が国外へ向かい、次々に国境を越えているようにも映る。このすれ違いが物語に独特の面白さを加えている。視聴者はフォグが無実であることを知っているため、刑事たちがあと一歩のところまで迫ったり、誤解によって旅が止められそうになったりするたびに歯がゆさと緊張を感じることになる。一方で刑事側も単純な悪役ではなく、自分たちの職務として容疑者を追っているため、妨害者トランスファーとは異なる立場にいる。この「賭けに勝つための時間との競争」「トランスファーによる意図的な妨害」「警察からの追跡」という三重の障害が同時進行することで、本作は最後まで先の読めない冒険活劇として展開していく。
● 世界を巡る楽しさと、最後まで時計を意識させる構成が最大の特徴
『アニメ80日間世界一周』の魅力は、世界各地の景色を次々に見せる旅行物としての楽しさと、80日という期限によって生まれるサスペンスを両立させているところにある。通常の冒険作品であれば、一つの事件を解決した時点でひと息つくことができるが、本作では事件を解決しても時計は止まらない。誰かを救うために半日を使えば、その半日は確実に残り時間から失われる。予定していた交通機関が利用できなければ代替手段を探さなければならず、その選択が次の目的地への到着時刻を左右する。こうした積み重ねによって、旅が終盤へ近づくにつれて「残された日数で本当にロンドンへ帰れるのか」という緊張が強くなっていく。一方で、フォグが旅を通じて築いた人間関係や仲間との絆は、単純に速さだけを競う物語とは異なる余韻を生み出している。世界一周を成功させることが最初の目的ではあっても、旅を続けたからこそ出会えた仲間、守るべき人、経験した出来事そのものが、フォグにとってかけがえのない財産になっていくのである。
● 古典文学への入口としても楽しめる1980年代らしい冒険アニメ
原作の基本的なアイデアを活用しながら、動物キャラクター、明快な対立構造、追跡劇、ユーモア、仲間との友情などを加えた本作は、ジュール・ヴェルヌの物語を知らない子どもでも気軽に楽しめるように工夫された作品である。それでいて、産業や交通の発達によって世界が急速に近くなっていった時代を背景に、「地球一周に必要な時間を計算する」という原作ならではのロマンも残されている。現在の感覚では世界一周旅行そのものが珍しい題材ではないが、鉄道と蒸気船を乗り継ぎながら何週間もかけて大陸と海を越える物語には、現代とは異なる旅のスケール感がある。毎回異なる土地へ進むロードムービー的構成、フォグ一行を追う刑事たち、裏から妨害するトランスファー、そして刻一刻と減っていく残り時間。それらが重なり合うことで、『アニメ80日間世界一周』は文学原作アニメであると同時に、友情と冒険、旅への憧れを前面に押し出した娯楽作品として楽しめる一作となっている。
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■ 登場キャラクターについて
● ウィリー・フォグ 声優:銀河万丈 ― 冷静さと優しさを兼ね備えた英国紳士
物語の主人公であるウィリー・フォグは、80日間で地球を一周できるという自らの考えを証明するため、莫大な金額を賭けて世界旅行へ出発する英国紳士である。普段から感情を表面へ出すことが少なく、どれほど大きな危機が迫っても取り乱さず、まず状況を確認してから解決方法を考える冷静沈着な人物として描かれている。時間に対する意識も極めて強く、鉄道や船の出発時刻、目的地までの日数などを計算しながら行動する姿は、本作の「80日」という制限時間を象徴する存在でもある。一見すると何事にも動じない堅物に見えるが、本当の魅力はその内側にある強い正義感と優しさにある。旅の成功だけを優先するのであれば、途中で遭遇した事件を無視して先へ進んだ方が合理的な場合も少なくない。それでもフォグは、困っている人がいれば自分の予定を犠牲にしてでも手を差し伸べる。こうした行動が積み重なることで、単なる「賭けに挑戦する資産家」ではなく、約束、友情、名誉、人命を何より重視する理想的な紳士像が形成されている。銀河万丈による落ち着いた声の演技もフォグの人物像とよく調和しており、低く堂々とした声が、一行の精神的支柱としての頼もしさを強く感じさせる。
● リゴドン 声優:富山敬 ― 主人を支えながら物語に温かさを加える相棒
リゴドンは、ウィリー・フォグとともに世界一周へ旅立つ重要な仲間であり、本作の物語を親しみやすくしている中心人物の一人である。フォグがどんな状況でも冷静さを崩さないのに対し、リゴドンは驚くべきところでは大きく驚き、危険が迫れば慌て、うれしい出来事には素直に喜ぶ。視聴者に近い感覚を持ったキャラクターであるため、物語の中で起こる出来事の大きさを分かりやすく伝える役割も果たしている。フォグの判断に振り回されることもあるが、主人への忠誠心は非常に強く、いざという時には危険を恐れず行動する勇気を見せる。富山敬の軽妙で表情豊かな演技によって、リゴドンは単なる付き人ではなく、一人の魅力的な冒険者として印象に残る存在となっている。
● チコ 声優:野沢雅子 ― 小さな体で大きな存在感を放つムードメーカー
チコはリゴドンとともに旅をする小柄な仲間であり、作品に可愛らしさと活気をもたらしているキャラクターである。世界一周という壮大な挑戦は、ともすれば時間との戦いや危険な事件が続く緊張感の強い物語になりやすい。しかしチコが加わることで会話に軽快さが生まれ、視聴者が気持ちを和らげられる場面が増えている。好奇心旺盛で行動的なため、思いがけない出来事のきっかけになることもある一方、小さな体を生かして仲間を助けるなど、単なるマスコットにとどまらない活躍を見せる。野沢雅子の生き生きとした声も、チコの存在感を大きく高めている。
● ロミー姫 声優:高橋美紀 ― 世界一周の旅に感情的な深みを与えるヒロイン
ロミー姫は、世界一周の途中でフォグたちと出会い、その後の物語に大きく関係していくヒロインである。登場するまでの物語は、基本的に「80日以内にロンドンへ戻れるか」という時間との競争が中心となっているが、ロミー姫が加わることで作品には友情や愛情といった、より個人的な感情のドラマが強く表れるようになる。危険な状況に置かれている彼女を救うため、フォグたちが自分たちの時間を犠牲にして行動する展開は、フォグという人物の本質を理解するうえでも重要である。フォグとの関係も、派手な恋愛表現を前面へ押し出すというより、互いへの信頼や気遣いが少しずつ積み重なっていく形で描かれる。
● ディスク刑事 声優:永井一郎 ― フォグを銀行強盗犯と信じて追い続ける執念の刑事
世界一周の旅にもう一つの緊張を与える人物がディスク刑事である。彼は銀行強盗事件の容疑者としてウィリー・フォグを疑い、世界各地を移動する一行の後を追跡していく。視聴者側はフォグが無実であることを知っているため、ディスク刑事が真剣になればなるほど「違う、犯人ではない」と言いたくなるようなもどかしさが生まれる。しかしディスク刑事本人は職務を遂行しているだけであり、トランスファーのように悪意からフォグを妨害しているわけではない。この立場の違いがキャラクターを面白くしている。永井一郎による重厚さとユーモアを兼ね備えた演技も特徴で、犯人を追う刑事らしい鋭さを見せながら、あと一歩のところでフォグを取り逃がす場面などでは喜劇的な面も強くなる。
● ブーリー助手 声優:緒方賢一 ― ディスク刑事との掛け合いを盛り上げる名脇役
ブーリー助手はディスク刑事と行動をともにする人物で、捜査を補佐すると同時に、追跡側の場面へユーモアを持ち込む重要なキャラクターである。真剣にフォグを捕まえようとするディスク刑事に対し、ブーリーが少し異なる反応を見せることで、二人の会話には漫才のようなテンポが生まれることがある。緒方賢一の個性的で親しみのある声は、このコミカルな役割と相性がよく、深刻になりすぎそうな追跡劇を柔らかくしている。
● トランスファー 声優:千葉繁 ― 次々と妨害を仕掛ける最大のトラブルメーカー
トランスファーは、フォグの世界一周成功を阻止するために暗躍する妨害役であり、本作でも特に強烈な印象を残すキャラクターの一人である。サリバン頭取の意向を受け、フォグ一行が予定通り進めないよう各地でさまざまな策略を巡らせる。一方で、トランスファーは徹底した恐怖の悪役というより、作戦の失敗や予想外の展開によってコミカルな姿を見せることも多い。その特徴を最大限に引き出しているのが千葉繁の非常にエネルギッシュな演技である。大げさなリアクションや勢いのある台詞回しによって、登場しただけで画面の空気が一変するような存在感を持っている。
● サリバン頭取 声優:玄田哲章 ― 世界一周の賭けを物語の争いへ変える人物
サリバン頭取は、フォグと80日間で世界一周できるかどうかを巡って2万ポンドの賭けを行う人物であり、物語が始まる直接的なきっかけを作った存在である。本来であれば賭けの結果を待つだけでもよい立場だが、フォグの成功を阻止したい思惑からトランスファーを動かすことで、物語の対立はより激しいものへ発展していく。玄田哲章の力強い声によって、サリバンには威圧感と権力者らしい重みが加えられている。
● ローアン警視 声優:西村知道 ― 捜査側を支える警察組織の人物
ローアン警視は、銀行強盗事件をめぐる捜査に関係する警察側の人物であり、ディスク刑事たちの追跡劇を支える役割を持っている。ローアン警視の存在によって、ディスク刑事が単独で勝手に追跡しているのではなく、事件捜査という背景が存在することが分かりやすくなっている。西村知道の落ち着いた演技も警察組織の上位者らしい雰囲気を支えている。
● 鉄道会社社長、新聞社社長、ラルフ記者などが広げる世界一周の社会的な盛り上がり
本作ではフォグ一行や追跡者だけでなく、鉄道会社社長、新聞社社長、ラルフ記者といった周辺人物も登場する。鉄道会社社長を塩屋浩三、新聞社社長を青森伸、ラルフ記者を龍田直樹が担当しており、それぞれが世界一周という出来事を社会がどのように受け止めているかを示す役割を担う。フォグの挑戦は彼個人とサリバンの賭けから始まったものの、旅が進むにつれて多くの人々が成否を見守る一大イベントのような様相を帯びていく。
● 個性的な声優陣の掛け合いがキャラクターを記憶に残る存在へ
『アニメ80日間世界一周』のキャラクター群を振り返った時、とりわけ印象深いのが声の組み合わせである。銀河万丈の堂々としたフォグを中心に、富山敬の親しみやすいリゴドン、野沢雅子の元気なチコ、高橋美紀の優雅なロミー姫が一行を構成し、追跡側では永井一郎と緒方賢一が独特の掛け合いを展開する。さらに千葉繁が演じるトランスファーが騒々しく登場し、玄田哲章のサリバンがその背後で存在感を放つという、非常にメリハリのある配役になっている。それぞれの声質が明確に異なるため、キャラクター同士の役割が理解しやすく、作品のにぎやかな魅力を支えている。
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■ 主題歌・挿入歌・キャラソン・イメージソング
● オープニングテーマ「スカイ ウェイ」 ― 世界を駆け抜ける冒険の始まりを告げる爽快な一曲
『アニメ80日間世界一周』のオープニングテーマとして使用されたのが「スカイ ウェイ」である。歌唱は潘恵子、作詞は伊藤アキラ、作曲は小林泉美、編曲は安西史孝が担当しており、世界一周という作品の大きなスケールと、次々に新しい土地へ向かって進んでいくウィリー・フォグ一行の前向きな姿勢を音楽によって表現した楽曲となっている。全体には広い空や遠くへ続く道を連想させる開放感があり、これからどんな冒険が始まるのだろうという期待を視聴者へ抱かせる役割を果たしている。本作は80日以内に世界を一周しなければならないという明確な時間制限があるため、物語だけを見ると常に時計に追われている作品でもある。しかし「スカイ ウェイ」には、そうした焦燥感よりも「未知の世界へ飛び出していく楽しさ」が強く表れている。明るさを持ちながらも単純な子ども向けソングだけにはならず、どこか都会的で洗練された1980年代らしい音作りが感じられるところも特徴である。
● 潘恵子の澄んだ歌声が生み出す、軽やかさと品のある冒険感
「スカイ ウェイ」の印象を決定付けている要素の一つが、潘恵子による歌唱である。透明感のある伸びやかな声は、世界各地へ向かって進んでいくアニメの雰囲気によく合っており、聴いているだけで視界が大きく開けるような感覚を与える。冒険アニメの主題歌には力強さや勇ましさを前面へ押し出したタイプも多いが、本曲は勢いだけで押し切るのではなく、軽やかさと優雅さを併せ持っているところが特徴である。それは主人公ウィリー・フォグのキャラクターとも相性が良く、スマートで落ち着いた冒険の雰囲気を形作っている。
● 小林泉美のメロディーと安西史孝の編曲が作る1980年代らしい音の広がり
作曲を担当した小林泉美、編曲を担当した安西史孝という組み合わせも、「スカイ ウェイ」を語るうえで重要である。曲全体にはメロディーの流れを大切にした構成があり、映像と組み合わせることで世界旅行のスケール感がより強く感じられるようになっている。1980年代は、アニメ主題歌にもシンセサイザーなどを取り入れた華やかなサウンドが広く使われるようになった時期であり、本作にもそうした時代の空気が感じられる。世界一周という広大な題材にふさわしい音の広がりがあり、列車、船、遠方の都市などを想像させる楽曲となっている。
● エンディングテーマ「ふたりの時計」 ― 冒険の余韻を静かに包み込む楽曲
エンディングテーマには「ふたりの時計」が使用されている。歌唱はオープニングと同じ潘恵子、作詞は伊藤アキラ、作曲は小林泉美、編曲は安西史孝が担当しており、「スカイ ウェイ」と同じ制作陣によって作品全体の音楽的統一感が作られている。ただし楽曲の役割は大きく異なり、オープニングが「これから始まる冒険」を象徴する曲であるのに対し、「ふたりの時計」は一日の旅を終えた後の静かな余韻を感じさせる曲となっている。タイトルに含まれている「時計」という言葉も、80日という期限が常に物語へ関わる本作との親和性が高い。
● 「時間」を競争だけでなく人とのつながりとして描くエンディング
『アニメ80日間世界一周』では、時間という概念が常に重要である。列車の発車時間、船の出航時間、残された日数、ロンドンへ戻る期限など、登場人物たちは常に時計を意識して行動している。しかし「ふたりの時計」という題名には、単なる制限時間とは異なる温かさも感じられる。旅を始める前のフォグにとって時間は正確に管理する対象だったが、世界一周へ出発すると、思わぬ事故や人助け、仲間との出会いによって予定は次々に変化していく。旅を通じて共有した時間そのものが大切な思い出へ変わっていくという作品の感情面を象徴する曲として楽しむことができる。
● オープニングとエンディングが「出発」と「余韻」を美しく分担
本作の主題歌構成を評価するうえで特徴的なのは、「スカイ ウェイ」と「ふたりの時計」が明確に異なる役割を持ちながら、一つの作品世界を形成していることである。オープニングでは広い世界へ飛び出していく躍動感を前面に出し、エンディングでは仲間との時間や旅の余韻を感じさせる。この対照的な構成によって、一話の始まりと終わりが非常に分かりやすく演出されている。
● 劇中BGMが世界各地を巡るストーリーに変化を与える
主題歌だけでなく、『アニメ80日間世界一周』では劇中のBGMも物語の印象を形作る重要な役割を果たしている。作品の舞台が一つの都市や国に固定されず、次々に移動するため、冒険、危機、追跡、コミカルな場面、感動的な場面など、それぞれの状況に応じた音楽が使用され、物語のテンポを支えている。トランスファーが妨害工作を企てる場面では不穏な雰囲気を強調し、ディスク刑事たちの追跡では緊張感を高め、リゴドンやチコを中心とした場面では軽快さを加えるなど、音楽が場面の性格を分かりやすく伝えている。
● キャラクターソングよりも作品全体を包むテーマ音楽が中心
近年のテレビアニメでは、主要キャラクターそれぞれにキャラクターソングが用意される場合も多いが、『アニメ80日間世界一周』は、そうした展開を前面に出した作品ではない。オープニング、エンディング、劇中音楽によって作品全体の世界観を支える構成が中心となっている。そのため、本作の音楽を楽しむ場合には個別キャラクターの楽曲より、「世界一周という作品全体をどのような音で表現しているか」に注目すると魅力が分かりやすい。
● 「旅」と「時間」という本作の二大テーマを音楽で表現した主題歌
『アニメ80日間世界一周』の音楽を全体として見ると、オープニング「スカイ ウェイ」が「世界へ向かって旅立つこと」、エンディング「ふたりの時計」が「誰かとともに過ごす時間」を象徴しているように感じられる。この二つは、まさに作品の物語そのものでもある。最初は数字としてしか見えなかった「80日」が、物語が進むにつれて思い出と出会いが詰まった時間へ変化していく。潘恵子の澄んだ歌声、伊藤アキラの作詞、小林泉美のメロディー、安西史孝のアレンジが組み合わさり、本作独自の音楽世界を形成している。
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■ 魅力・好きなところ
● 世界各地を次々と巡る「旅そのもの」が最大の見どころ
『アニメ80日間世界一周』の大きな魅力としてまず挙げられるのが、物語の舞台が一か所にとどまらず、ウィリー・フォグ一行が世界各地を移動し続ける構成である。鉄道や船などを利用して絶えず次の土地へ進むため、一話ごとに景色や空気が変わり、視聴者はフォグたちと一緒に世界旅行をしているような感覚を楽しむことができる。広大な自然、都市、港、鉄道、海上など、舞台が切り替わるたびに冒険の雰囲気も変化し、「次はどこへ向かうのだろう」という期待が途切れない。海外旅行が現在ほど身近ではなかった時代には、外国へ対する憧れを膨らませる魅力も大きかったと考えられる。
● 「80日」という明確な期限が最後まで緊張感を維持する
タイトルそのものにもなっている「80日」という時間制限は、本作を単なる世界旅行アニメではなく、毎回ハラハラしながら見られる冒険作品へ変えている重要な仕掛けである。フォグたちは決められた期限までにロンドンへ戻らなければ賭けに敗れてしまう。そのため、一時間の遅れや一本の列車への乗り遅れさえ大きな問題となる。視聴者も自然に残された日数を意識するようになり、「この寄り道をして大丈夫なのか」「ここで足止めされたら間に合わないのではないか」と登場人物と同じように焦りを感じながら物語を見ることになる。
● ウィリー・フォグの「絶対に慌てない」姿勢が格好いい
主人公ウィリー・フォグの魅力は、派手な必殺技や圧倒的な戦闘能力ではなく、どれほど困難な状況でも冷静さを失わないところにある。予定していた交通手段が使えなくなったり、妨害を受けたり、警察から疑われたりしても、感情的になって周囲へ当たり散らすことはない。まず現状を受け止め、次に何をすれば最も合理的なのかを考える。さらに、時間が足りなくなる危険があっても困っている人を見捨てない。そのため、単に賭けへ勝つ主人公ではなく「勝ち方まで含めて紳士であること」を大切にする人物として魅力を放っている。
● リゴドンとチコがいることで旅が明るく親しみやすくなる
フォグが常に落ち着いているため、彼だけで物語が進めば作品全体がかなり硬い雰囲気になっていた可能性がある。そこで重要になるのがリゴドンとチコである。リゴドンは驚いたり慌てたりしながらも最後にはフォグを信じ、チコは好奇心旺盛な行動によって旅の空気を明るくする。二人が視聴者に近い感情を示してくれることで、フォグの冷静さもより際立っている。長い世界一周の旅を最後まで楽しく見られるのは、この三人の性格がそれぞれ違うからでもある。
● ロミー姫との出会いで旅に温かい感情の物語が加わる
ロミー姫が登場することで、本作は「賭けに勝つための世界旅行」から、登場人物同士の感情をより深く描く作品へ変化していく。フォグは普段、感情を大きく表に出すタイプではないが、ロミー姫を気遣う場面では彼の内面にある優しさが自然に見えてくる。二人の関係が派手な恋愛描写だけに頼らず、信頼や尊敬を少しずつ積み重ねる形になっていることも、本作の落ち着いた雰囲気によく合っている。
● トランスファーの妨害が毎回の冒険を予測不能にする
トランスファーによる妨害工作も、本作の分かりやすい面白さの一つである。フォグたちが普通に交通機関を乗り継いで世界を一周するだけなら、物語は比較的順調に進んでしまう。しかしトランスファーが行く先々で問題を起こすことで、予定は何度も狂わされる。さらに作戦が失敗した際にはコミカルなリアクションも見せるため、悪役としての緊張感だけでなく笑いも生み出している。
● ディスク刑事たちとの追跡劇は「悪者ではない敵」という面白さがある
フォグたちを追い続けるディスク刑事とブーリー助手の存在も作品の魅力を高めている。彼らは銀行強盗事件の容疑者としてフォグを追っているため、フォグ一行から見れば厄介な追跡者だが、悪意を持って旅を邪魔しているわけではない。あくまで刑事としての職務を果たしているだけであり、ここがトランスファーとの大きな違いである。あと少しで捕まえられそうなのにすれ違ったり、思わぬ事情で逃してしまったりする展開は、古典的な追いかけっこのような楽しさがある。
● 世界旅行の途中で見せる「人助け」がフォグの本当の格好よさを示す
本作を振り返った際に印象へ残りやすいのは、フォグが時間との勝負をしているにもかかわらず、必要であれば予定を変更して人を助ける場面である。普通に考えれば80日以内という期限がある以上、一分でも早く前へ進みたいはずである。しかしフォグは、自分の成功のために他人の危機を無視するような選択をしない。賭けに負けて財産を失う可能性があっても、人命や仲間を犠牲にしてまで成功を求めない。ここに彼の紳士としての誇りが表れている。
● 動物キャラクターだからこそ子どもにも入りやすい古典文学の世界
ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』は世界的に有名な文学作品だが、子どもにとって原作をそのまま読むとなると難しく感じられることもある。その点、本作では主要人物を親しみやすい動物キャラクターへ置き換え、冒険、笑い、友情、追跡劇を分かりやすく強調することで、原作の基本的な面白さへ入りやすい構成にしている。子ども向けの親しみやすさと古典冒険小説のロマンを両立させていることが、本作の大きな強みである。
● 終盤になるほど「本当に間に合うのか」という緊張が強くなる
長い旅が終盤へ入ると、本作の面白さはさらに増していく。序盤では80日という期限にまだ余裕があるように感じられるが、さまざまなトラブルによって時間を失い続けるうちに、残された時間が徐々に少なくなっていく。ここまで長い距離を旅してきたのだから成功してほしいという気持ちが強くなっている分、終盤で発生する遅れは序盤以上に大きな緊張を生む。
● 最終局面で光る「時間」を題材にした物語ならではの仕掛け
『八十日間世界一周』を原作とする物語の最大の醍醐味は、単純に距離を移動するだけではなく、「時間」という概念そのものが最後まで物語へ深く関わっているところにある。世界を一周するという行為そのものが終盤の重要な仕掛けへ結び付き、それまで何度も意識してきた「80日」という数字に最後の驚きと爽快感を与える。唐突な奇跡ではなく、作品の題材そのものを利用した結末だからこそ強い印象を残す。
● 最終回では「賭けの勝敗」以上に旅で得たものが心に残る
最終回付近で注目したいのは、世界一周が成功するかどうかだけではない。フォグは旅の開始時点と比べ、さまざまな人と出会い、危険を乗り越え、仲間との絆を深めている。リゴドンやチコとの信頼、ロミー姫との関係、各地で関わった人々との出来事など、旅の途中で積み重ねられた経験そのものが大きな財産になっている。だからこそ終盤には、勝敗が決まる爽快感だけではなく、「この旅が終わってしまう」という少し寂しい気持ちも生まれる。
● 冒険・笑い・友情・ロマンスが一つの旅へ自然にまとまっている
本作が長く楽しめる理由は、世界旅行という一本の軸の中にさまざまなジャンルの面白さが詰め込まれていることである。時間との競争にはサスペンスがあり、トランスファーとの攻防には冒険活劇としての面白さがあり、ディスク刑事とブーリー助手の追跡にはコメディー要素がある。リゴドンやチコとの関係には友情があり、ロミー姫との交流には穏やかなロマンスがある。それらすべてが「80日以内に世界を一周する」という最終目的へ自然に結び付いている。
● 見終わった後に「自分も旅をしてみたい」と思わせることが最大の魅力
『アニメ80日間世界一周』の魅力を一言でまとめるなら、「旅への憧れを強くしてくれるアニメ」といえる。知らない土地へ行き、新しい人と出会い、予想していなかった事件を経験しながら前へ進む様子には、旅にしかない魅力が詰まっている。最初は2万ポンドを賭けた一つの挑戦にすぎなかった世界一周が、物語を見続けるうちに友情、信頼、勇気、恋、思いやりを含んだ大きな人生の旅へと変わっていく。その変化を最後まで見届けられることこそ、本作の大きな魅力なのである。
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■ 感想・評判・口コミ
● 「世界を旅している気分になれる」という冒険感への評価
『アニメ80日間世界一周』を語る際に、まず好意的な感想として挙げやすいのが、毎回のように舞台が移り変わることによる旅行気分である。ウィリー・フォグ一行は一つの町に腰を据えて事件を解決していくのではなく、鉄道や船などを利用して絶えず次の土地へ移動する。そのため視聴者側も、エピソードを追うたびに世界地図の上を少しずつ進んでいるような感覚を味わえる。世界一周という題材そのものの強さが、年月が経過しても作品の魅力を保っている理由の一つである。
● 動物キャラクターによって古典文学が親しみやすくなっているという感想
ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』という名前を聞くと、古典文学ということで少し難しそうな印象を持つ人もいる。しかし本作では、主要人物を動物キャラクターへ置き換えることで、物語への入口を非常に分かりやすくしている。ウィリー・フォグ、リゴドン、チコ、ロミー姫、トランスファーなどは外見だけでも個性を理解しやすく、子どもが物語へ入り込みやすい。この親しみやすさをきっかけに、後から原作小説の存在を知るという楽しみ方にもつながる。
● ウィリー・フォグの落ち着いた主人公像が大人になってから魅力的に見える
ウィリー・フォグは、元気で感情表現の大きい典型的な児童アニメ主人公とはかなり異なる。問題が深刻になるほど静かになり、状況を判断して解決策を選ぼうとする。この姿は子どもの頃には少し地味に感じられる可能性もあるが、大人になって作品を見直すと非常に魅力的に映る。計画が崩れても怒り散らさず、自分の責任として次の方法を考えることや、時間が不足していても困っている人物を見捨てない態度には、単なる冒険主人公とは違った格好よさがある。
● 銀河万丈・富山敬・野沢雅子ら声優陣の存在感が印象に残る
日本語版を振り返るうえで、声優陣の充実ぶりは大きな評価ポイントとなる。銀河万丈のウィリー・フォグ、富山敬のリゴドン、野沢雅子のチコ、高橋美紀のロミー姫、永井一郎のディスク刑事、緒方賢一のブーリー助手、千葉繁のトランスファー、玄田哲章のサリバン頭取など、声質と演技方向の異なる声優が集まっている。現在改めてキャスト一覧を見ると、後年まで数多くの作品で活躍した声優が揃っていることにも驚かされる。
● トランスファーが「憎らしいのにどこか面白い悪役」として記憶に残る
トランスファーは、フォグの成功を邪魔する厄介な人物でありながら、同時に作品のコメディーを支える存在でもある。作戦が失敗した時の慌てぶりや大げさな反応には笑える部分があり、完全に嫌いにはなりにくい。むしろ物語が進むと、「今回はどんな邪魔をするのか」と登場を待つ楽しささえ生まれてくる。千葉繁の勢いに満ちた演技もキャラクター性を大きく強めている。
● ディスク刑事とブーリー助手のすれ違いが楽しいという評価
ディスク刑事たちは、トランスファーとは異なる種類の障害となっている。フォグを銀行強盗事件の犯人と考えて追い続けるが、彼らは悪人ではない。あくまで警察官として犯人だと思っている人物を追っているだけである。この設定が視聴者に独特の感情を与え、緊張感とコメディーの両方を生み出している。
● 「一話だけを見る」より連続して見ることで面白さが増していく
本作は各話ごとに事件が用意されている一方、全体としては最初から最後まで一続きの世界一周旅行である。そのため、単発のエピソードだけを見るより、フォグ一行がどのような経路で移動し、どれだけ時間を消費し、どのような仲間を増やしていったのかを順番に追う方が楽しさが大きい。次の目的地が気になり、続けて見たくなるロードムービー的な魅力を持っている。
● 現代のアニメと比較するとゆったりしているが、それが旅情にもつながっている
現在のテンポの速いアニメに慣れてから本作を見ると、物語の進行や会話が比較的ゆったりしていると感じる場面もある。しかし、移動の過程、仲間同士の会話、その土地で起こる出来事を一つずつ描いていくからこそ、「遠くまで旅をしている」という実感が生まれる。すべてを短時間で処理しないテンポそのものが、本作の旅情へつながっている。
● 1980年代らしい柔らかな作画と動物デザインに懐かしさがある
映像面では、現在のデジタル作画とは異なるセルアニメならではの色彩や線が作品全体に柔らかな雰囲気を与えている。キャラクターが動物としてデザインされていることもあり、画面には絵本のような親しみやすさがある。19世紀を思わせる街並みや交通機関とセルアニメの温かな色彩が組み合わさり、児童文学の挿絵を動かしているような独特の雰囲気が生まれている。
● 原作を知っている人は大胆なアレンジを比較する楽しみもある
ジュール・ヴェルヌの原作を読んだ経験がある場合、本作独自の変更点を見比べる楽しみも生まれる。最も目立つ違いは登場人物の動物化だが、それだけではなく、テレビアニメとして毎週楽しめるよう冒険要素や敵役の存在が強調されている。一方で、80日以内に世界を一周できるかという根本的なアイデアや、時計と日付が重要になる構造など、原作の核となる面白さは残されている。
● テレビ放送では全26話が揃わなかったことを惜しむ見方
日本でのテレビ放送では、本来全26話で構成されるシリーズのうち4話が放送されなかった。そのため、当時テレビだけで視聴した人と、後年に完全な構成へ触れた人とでは作品への印象が少し異なる可能性がある。連続した世界旅行物語だけに、途中のエピソードがテレビでは見られなかった点を惜しむ見方もできる一方、後から未見の話へ触れる楽しみにもつながっている。
● 子どもの頃は冒険、大人になるとフォグの生き方に目が向く
幼い頃に見ると、印象に残りやすいのは世界を巡るワクワク感、トランスファーの妨害、刑事との追いかけっこ、チコの可愛らしさなどである。それが大人になってから見ると、ウィリー・フォグがどのように問題へ対処するかに目が向く。予定通りに進まない状況で冷静さを維持し、金銭的な損失より仲間や人命を大切にし、自分から引き受けた約束には最後まで責任を持つ。その姿に新たな魅力を見いだしやすい作品である。
● 最終局面の仕掛けを知った時の驚きと爽快感は今でも強い
本作を最後まで見た際に強く印象へ残るのが、世界一周というテーマを生かした時間の仕掛けである。それまで時計や日数を細かく意識させてきたからこそ、終盤で時間の捉え方そのものが重要な意味を持つ展開には大きな驚きがある。しかもその仕掛けは、唐突に便利な奇跡が起こるというものではなく、「世界を一周した」という行為そのものに結び付いている。この論理的な結末は、合理的な主人公フォグにもよく似合っている。
● 総合的には「古典冒険小説の楽しさを優しく伝えた良質なファミリーアニメ」
感想や評判を総合すると、『アニメ80日間世界一周』は、世界旅行の楽しさ、80日というタイムリミットの緊張感、個性的な動物キャラクター、実力派声優による日本語版、友情やロマンスといった要素をバランスよくまとめた作品として評価できる。現代アニメと比較すれば映像表現やテンポには時代を感じる部分もあるが、それは同時に1980年代作品ならではの温もりでもある。子どもには世界への好奇心を与え、大人には約束や信頼を守りながら行動するフォグの格好よさを感じさせる。懐かしい作品としてだけでなく、古典的な冒険物語を家族向けアニメとして再構成した一作として見直す価値のある作品なのである。
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■ 関連商品のまとめ
● 関連商品の出発点となった『どうぶつ80日間世界一周』のVHDソフト
『アニメ80日間世界一周』の関連商品を振り返る際、特に重要な存在となるのが、日本でテレビ放送される以前に発売された映像ソフト『どうぶつ80日間世界一周』である。本作は1987年にテレビ朝日系列で放送されるより前の1985年にVHD規格の映像作品として商品化されており、複数巻に分けて展開された。VHDは1980年代に家庭用映像市場で展開されていたビデオディスク規格の一つであり、現在では媒体そのものが希少になっている。テレビ版とは一部の声優構成も異なるため、単純にテレビ放送を収録した商品ではなく、日本における本作の展開史を物語るコレクターズアイテムとして見ることができる。現在の中古市場ではVHD自体の流通量が少なく、全巻をケースやジャケット付きで良好な状態で揃えるとなると、かなり根気のいる収集対象となる。
● VHSなど旧映像媒体はタイトル表記や版の違いを確認して探したい
1980年代アニメの中古映像ソフトを探す際には、作品名の表記が一定でない点に注意したい。本作についても『アニメ80日間世界一周』『どうぶつ80日間世界一周』『80日間世界一周』など複数の名称で扱われる可能性があり、さらにジュール・ヴェルヌ原作の映画や児童向け作品など同名・類似名の商品も非常に多い。そのため、ウィリー・フォグ、リゴドン、チコなど本作独自のキャラクターがジャケットへ描かれているか、発売年代や収録内容が一致しているかを確認することが重要である。古い映像媒体の場合には外箱の日焼け、カビ、ディスクやテープの劣化、再生確認の有無なども商品の価値を左右する。
● DVD・Blu-rayだけに限定せず再視聴手段を幅広く考えたい作品
旧作アニメを現在見直そうとするとDVDやBlu-rayを最初に探しがちだが、『アニメ80日間世界一周』のような作品では、当時の物理媒体を集めることと、作品そのものを視聴することを分けて考えた方が分かりやすい。物として所有したいコレクターにとってはVHDなど旧商品そのものに価値があり、単純に物語を見直したい場合には、その時点で利用可能な公式配信や合法的な映像サービスを確認する方が現実的である。古い映像商品が単なる再生媒体ではなく、作品史を示す資料へ変化している点も1980年代アニメ収集の面白さである。
● 主題歌映像を収録した日本アニメーション系オムニバス商品にも注目
本編単独商品だけでなく、日本アニメーション作品の主題歌映像をまとめたDVDや音楽企画商品から『アニメ80日間世界一周』へ触れる方法もある。この種のオムニバス商品では同時代の複数作品が収録されるため、本作だけでなく1980年代の日本アニメーション作品に共通する映像表現や主題歌文化を比較しながら楽しめる。単独作品の映像ソフトとは異なるが、放送当時のオープニングやエンディングを保存した資料として魅力があり、昭和・1980年代アニメを横断して集めているファンにも向いている。
● 主題歌「スカイ ウェイ」「ふたりの時計」は音楽コレクションの中心
音楽関連で特に注目したいのが、潘恵子が歌うオープニングテーマ「スカイ ウェイ」とエンディングテーマ「ふたりの時計」である。1980年代のアニメソングは7インチEPなどのアナログ盤として展開されることが多く、当時のレコード商品は現在では音源だけでなくジャケットアートまで含めたコレクション対象になっている。アニメのロゴやキャラクターが描かれたジャケットは、当時のデザインをそのまま保存した資料としても魅力的である。中古レコードの場合は盤面の傷、反り、ジャケットの色あせ、シミ、歌詞カードなど付属品の有無によって評価が変わるため、購入時には状態を細かく確認したい。
● アニメソングのコンピレーションCDから主題歌へ触れる楽しみもある
レコードプレーヤーを所有していない場合には、1980年代テレビアニメの主題歌をまとめたコンピレーションCDなどを通じて楽曲へ触れる方法も考えられる。こうした企画盤の魅力は、『アニメ80日間世界一周』だけでなく、同じ時期に放送されたアニメの主題歌と並べて聴ける点にある。1987年前後のアニメ音楽がどのようなメロディーやアレンジを特徴としていたのかを比較でき、本作を単独で楽しむだけでは見えにくい時代背景も感じられる。
● 書籍関連は原作『八十日間世界一周』まで広げると楽しみが増える
書籍関連では、本作だけのアニメ資料だけでなく、ジュール・ヴェルヌの原作『八十日間世界一周』まで含めて楽しむ方法がある。原作小説は現在までさまざまな翻訳や版型で出版されており、文庫、児童向け版、電子書籍など選択肢も多い。アニメを見た後で原作を読むと、原作の人物や展開がアニメ版でどのように再構成されたのかを比較でき、反対に原作からアニメを見ると、人物を動物へ置き換え、テレビシリーズ向けに妨害役やコメディーを加えた工夫を楽しめる。
● 玩具・フィギュア・食玩は大量展開型作品とは事情が異なる
ロボットアニメや変身ヒーロー作品のように、玩具販売そのものが作品展開の大きな柱となっていたタイトルと比べると、『アニメ80日間世界一周』は大量の模型やフィギュアを収集するタイプの作品ではない。そのため、現在の中古市場でも立体物が常時大量に出回っているわけではなく、映像ソフト、レコード、番組資料、雑誌掲載ページ、販促物といった商品を中心に探す方が作品独自のアイテムへたどり着きやすい。日本とスペインの共同制作という特徴から、日本語タイトルだけでなく海外版のWilly Fog関連商品まで視野を広げると、国内とは異なる商品へ出会える可能性もある。
● ゲームやボードゲームは「原作題材」と「アニメ版」を区別することが重要
『八十日間世界一周』という物語自体は世界的に知られているため、同じ題材を利用したボードゲーム、カードゲーム、コンピューターゲームなどが存在する。しかし、それらすべてが『アニメ80日間世界一周』の公式関連商品とは限らない。本作の関連商品として判断する場合には、ウィリー・フォグ、リゴドン、チコ、ロミー姫などアニメ独自のキャラクターやデザインが使われているかを確認する必要がある。単に「Around the World in 80 Days」などの題名が付いているだけでは、ジュール・ヴェルヌ原作を直接題材にした別作品である可能性が高い。
● 文房具・紙もの・販促物は残存数が少ないほど面白い収集対象
1980年代テレビアニメの関連品には、ノート、下敷き、シール、カード、ポスター、カレンダー、雑誌付録など、日常的に使われる品が存在する場合がある。しかしこうした商品は実際に使用されて消耗することが多く、映像ソフトやレコードより現存しにくい。そのため、本作に関係する未使用文具や宣伝チラシ、ポスター、雑誌切り抜きなどが中古市場へ出てきた場合、資料的な価値を感じられる可能性がある。商品名だけで判断せず、アニメ版の絵柄やロゴが使われているかを確認することが大切である。
● 現在の中古市場では「タイトル違い」と「状態」が価格を大きく左右する
本作の中古品を探す際には、商品名の表記が統一されていないことが難しさの一つとなる。『アニメ80日間世界一周』『どうぶつ80日間世界一周』のほか、海外ではWilly Fogの名称が用いられるため、一つの検索語だけでは関連商品を見落とす可能性がある。反対に「80日間世界一周」だけでは原作本、映画、別アニメ、児童書、ゲームなどが大量に混在する。さらにVHDやレコードのように発売から長期間が経過した商品では、美品、未開封、付属品完備といった状態の差が価値へ強く反映される。
● オークションでは高額な出品価格と実際の市場価値を分けて考えたい
古いアニメ商品のオークションやフリマ市場では、希少性を理由に高額な希望価格が付けられることがある。しかし出品価格は実際に取引が成立した金額とは異なる。相場を把握する場合には一件だけの出品価格を見るのではなく、複数の中古店や過去の取引例などを比較する方がよい。特にVHDのように流通量が少ない商品は、その時点で出品されている個体数によって価格が大きく変わりやすい。
● コレクター向けではVHD・主題歌音源・当時の紙資料が特に面白い
本作を本格的に収集したい場合、中心になりやすいのは1985年の『どうぶつ80日間世界一周』VHD各巻、潘恵子による主題歌関連商品、日本アニメーション系の主題歌映像商品、当時の番組宣伝資料などである。特にVHDをジャケット込みで揃えることは、本作が日本でテレビ放送される以前から映像商品として展開されていた歴史をそのまま保存するような意味を持つ。さらにテレビ情報誌、アニメ雑誌、新聞番組欄、宣伝チラシなどまで対象を広げれば、作品そのものだけでなく1987年前後のテレビアニメ文化を収集する楽しみへもつながっていく。
● 「見る楽しみ」と「当時物を集める楽しみ」を分けられる関連商品
『アニメ80日間世界一周』の関連商品を総合すると、現在まで大量のフィギュアやゲーム、アパレル、食品などが継続的に販売される大型キャラクタービジネス作品とは異なる。その一方で、日本でテレビ放送される以前のVHD展開、潘恵子による印象的な主題歌、1980年代のアニメ関連映像・音楽商品など、古い作品ならではの収集ポイントを持っている。作品を視聴したい場合にはその時点で利用できる正規の配信や映像媒体を確認し、放送当時の雰囲気まで手元に残したい場合にはVHD、レコード、紙資料などを中古市場で探すという二つの楽しみ方ができる。
つまり本作の関連商品は、単純に商品数の多さを楽しむというより、「日本でどのような形で紹介され、1980年代の視聴者へ届けられたのか」を一品ずつたどっていくタイプのコレクションといえる。ウィリー・フォグたちが鉄道や船を乗り継いで世界中を巡ったように、現在のファンも映像ソフト、音楽商品、古書、紙資料、海外商品など異なるジャンルを巡りながら関連品を探していくことになる。大量の商品展開に頼らず、残された一つ一つの品から作品の歴史を感じられることが、『アニメ80日間世界一周』関連商品の大きな魅力なのである。
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