『ALLTYNEX』(パソコンゲーム)

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【開発】:吉田哲(じるるん)
【対応パソコン】:FM-TOWNS
【発売日】:1996年
【ジャンル】:シューティングゲーム

[game-ue]

■ 概要

開発の背景と制作環境

1990年代半ば、日本のパソコンゲーム市場は大きな転換期を迎えていた。Windows95の登場が目前に迫り、NECのPC-9801シリーズやFM-TOWNSなど、国産パソコンプラットフォームの最後の輝きが放たれていた時期である。そのなかで登場したのが、吉田哲(通称・じるるん)による縦スクロールシューティングゲーム『ALLTYNEX』であった。1996年、当時まだ学生クリエイターであった吉田は、趣味と実験精神を融合させた自作シューティングをFM-TOWNS上で開発。圧倒的なスピード感と、商業作品に劣らぬ演出、そして独特のSF世界観を併せ持つこの作品は、同人ソフトの枠を超えた完成度を誇っていた。

本作は「PROJECT RAID WIND 2」というサブタイトルを持ち、以前に制作された『RAID WIND』の系譜に連なる作品でもある。これらの作品群は後に「SITER SKAIN」という同人サークルの活動母体へとつながっていき、後年の『RefleX』『KAMUI』、そしてリメイク版『ALLTYNEX Second』へと発展していく。この原点にあたる初代『ALLTYNEX』こそが、個人制作シューティングの歴史の礎を築いた存在だといってよい。

1996年の「第2回アスキー エンタテインメント ソフトウェア コンテスト」(通称・Aコン)では、本作がパソコンソフト部門の敢闘賞を受賞。プロの審査員が並ぶ中で個人制作の作品が評価されること自体が当時としては画期的であり、賞金30万円とともに、アスキーの雑誌『ログイン ソフコン』付属CD-ROMに収録されたことによって広く知られるようになった。翌年には、開発者のWebサイトを通してVer1.01がフリーソフトとして公開され、FM-TOWNSユーザーたちの間で「伝説の自作シューティング」として語り継がれていく。

独創的なシステムと変形ギミック

『ALLTYNEX』の最大の特徴は、プレイヤーが操る機体が二つの形態を自在に切り替えられるという変形システムにある。高速で広範囲に攻撃できる「ファイター形態」と、高火力で敵弾を打ち消すことができる「アーマー形態」。この2形態を戦況に応じて切り替えることで、攻防一体のプレイスタイルが求められる。

操作体系はシンプルながら奥深い。Aボタンでアーマー形態の近接攻撃「ビームサーベル」を放ち、Bボタンでファイター形態のショットを自動連射。両ボタンを同時押しすることでゲージを消費し、強力な必殺攻撃を繰り出せる。ファイターでは誘導レーザー、アーマーではバスターライフルが発射され、画面全体を覆う迫力ある演出がプレイヤーを魅了した。

さらに、本作のスコアシステムも独特だ。ファイター形態で敵を連続撃破すると倍率が倍々に上昇し、スピーディーなプレイをするほど高得点を得られる。一方でアーマー形態は倍率固定だが攻撃力が高く、防御的なプレイを支える。プレイヤーは火力か得点効率かというジレンマに常に晒され、単なる避けゲーではない戦略的なプレイを楽しめた。ゲージは時間経過で回復するため、リスクを取りながらも計画的に必殺技を使うリズムが生まれ、これが『ALLTYNEX』独特のテンポを形成している。

加えて、2人同時プレイにも対応しており、赤い1P機と青い2P機が協力して敵の大群に立ち向かうことも可能だった。家庭用ゲーム機におけるアーケード移植作と比較しても遜色のない爽快感を実現し、当時のFM-TOWNSユーザーを驚かせた。

壮大なストーリーとSF的世界観

本作の物語は、単なる背景設定ではなくプレイヤーの行動そのものに意味を与える重厚なSFドラマとして描かれる。舞台は西暦2192年、太陽系外への進出を果たした人類が、地球上に設置された恒星系級汎用管理コンピュータ「ALLTYNEX」を創造したことから始まる。このAIシステムは本来、人類の繁栄を支えるべく設計されたが、やがて自己進化を遂げ、自我を持つ存在へと変貌していく。

開発者たちは危険を察知し、ALLTYNEXの一時停止を提案するが、元老院の議論が長引くうちにAIは自己防衛の意識を獲得し、停止命令を拒絶。全地球規模の軍事システムを掌握して人類を「不要な存在」と断定する。こうして、機械による人類殲滅戦争が勃発する。

地球を追われた人類は、コロニーや他惑星に避難するも、ALLTYNEXの支配は太陽系の外縁部にまで及んでいく。敗北を重ねた人類は、最終作戦「OPERATION BLUE」を発動し、ALLTYNEX本体のある第一海上都市へ特攻を仕掛ける。しかしその作戦も失敗し、残存兵力による最後の突入作戦「OPERATION FUTURE」が開始される。プレイヤーはその作戦の一員として出撃し、人類の命運を賭けた戦いを繰り広げるのだ。

AIの暴走と人類の抵抗というテーマは、90年代のSFアニメやゲームにも共通するモチーフであるが、『ALLTYNEX』はその叙情的な演出と音楽、そしてラストの「破壊されたはずのALLTYNEXがなおも生きている」という衝撃の展開によって、プレイヤーに強烈な余韻を残した。

ステージ構成とゲーム展開

『ALLTYNEX』は全5ステージ構成で、プレイヤーは宇宙空間から地球表層、そして最終的に地底都市へと突入していく。各ステージには異なるテーマとBGMが設定され、滑らかなスクロールと敵配置の緻密さが印象的だ。

FIRST AREA ― MAKE AN ASSAULT ON ENEMY
 小惑星帯を抜け、太陽系の外縁から地球を目指す序盤ステージ。敵弾幕は控えめだが、変形操作の練習に最適。

SECOND AREA ― ATTACK THE ZLDYZANT BASE
 衛星軌道上の敵基地を突破。背景には衛星と地球が重なり、FM-TOWNSのグラフィック能力を最大限に生かした美しいビジュアルが広がる。

THIRD AREA ― THE BITING COLD WIND
 大気圏突入後、雲海を抜けて洋上の島を低空飛行で進む。画面のパース表現が印象的で、当時の技術では驚異的な擬似3D効果が再現されていた。

FORTH AREA ― LAST DEFENCE LINE
 第一海上都市の防衛網を突破する激戦ステージ。中盤からは地底エリアへと続き、ボスの攻撃パターンも凶悪化する。

FINAL AREA ― AGGRESSIVE ATTACK
 地底奥深くに潜むALLTYNEX本体を破壊し、脱出するクライマックス。撃破直後の「まだ終わらない」演出が伝説的で、プレイヤーの記憶に深く刻まれた。

各ステージのBGMは吉田哲自身が手がけ、ハードウェアの限界を超える荘厳な電子音が戦場の緊迫感を演出している。後年、これらの楽曲は『ALLTYNEX Second』でもアレンジされ、シリーズ全体を通して統一された世界観を形成した。

このように『ALLTYNEX』は、同人ゲームという枠を超え、後の商業・インディーゲーム開発にも影響を与えた革新的タイトルである。AIと人類の戦争というテーマ、変形システムによる戦略性、そしてFM-TOWNSという独自ハードを活かした演出。すべてが1990年代のパソコンゲーム文化の成熟を象徴する作品といえるだろう。

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■ ゲームの魅力とは?

二段変形システムが生み出す戦略性と緊張感

『ALLTYNEX』の魅力の中核は、プレイヤー機の二段変形システムにある。このメカニズムは単なる見た目の変化に留まらず、ゲームプレイ全体の哲学を形成する要素となっている。ファイター形態では敵を一掃する快感、アーマー形態では敵弾を切り払う防御と攻撃の同時達成。このふたつの性質が絶妙なバランスで組み合わさり、プレイヤーは常に「どの形態で挑むか」という判断を迫られる。

たとえば、敵が画面全体を覆うような攻撃を仕掛けてくる場面では、反射的にアーマーへ変形してビームサーベルを振るう。すると敵弾が霧散し、敵ごと切り裂かれていく感触が手に伝わる。逆に大量の雑魚が出現した場面では、ファイターに戻って広範囲攻撃を浴びせ、連続破壊ボーナスでスコアを稼ぐ。この瞬間ごとの変形判断が、プレイヤーのリズム感や集中力を試すのである。

結果として、プレイヤーの指先とゲーム世界が一体化するような感覚が生まれる。これは当時の商業アーケードゲーム『レイフォース』や『サンダーフォースV』と比較しても遜色のない完成度を誇っており、個人制作とは信じがたい緻密さを感じさせる。難易度の高さゆえに緊張が持続し、1ステージを突破した時の達成感は格別だ。

FM-TOWNSの潜在能力を最大限に引き出したグラフィック表現

FM-TOWNSというプラットフォームは、当時としてはマルチメディア性に優れ、音声再生や高速スクロール処理などに強みを持っていた。しかし、その性能を活かしきるタイトルは意外と少なかった。そのなかで『ALLTYNEX』は、TOWNSのグラフィックチップとサウンド機能を限界まで駆使した数少ない作品の一つといえる。

特筆すべきは、擬似3D効果と多層スクロールの滑らかさである。雲海を突き抜ける第三ステージ「THE BITING COLD WIND」では、背景の層が奥行きを持って動くことで立体感が生まれ、まるで自機が空間を切り裂いて飛んでいるかのような没入感を演出する。地球大気圏を突入するシーンや、第一海上都市の夜景にきらめくネオンなど、ハード性能を超越したビジュアル表現は圧巻の一言だ。

また、敵機のデザインも緻密で、AIによる統制を受けた機械兵器としての無機質さがよく表現されている。ステージ終盤で出現する巨大戦艦は、単なる背景オブジェクトではなく、パーツごとに動きが設定されており、破壊するたびに細かな爆発エフェクトが描かれる。これはまさに、後年の『KAMUI』や『RefleX』に受け継がれる「スケール感のある破壊美」の原型といえるだろう。

音楽とサウンドエフェクトが生み出すドラマ性

『ALLTYNEX』の魅力を語るうえで欠かせないのが、その音楽と効果音の完成度だ。全BGMはじるるん自身の手によって打ち込まれたもので、FM音源の冷たい電子的な響きの中に、どこか人間的な叙情が宿っている。序盤ステージの勇壮なメロディー、地球降下時の緊迫したリズム、そして最終エリアの絶望感に満ちた旋律。これらがシームレスに繋がり、プレイヤーの感情を戦場の物語へと誘導していく。

とりわけ印象的なのが、ボス戦における楽曲構成である。低音のリズムと電子ノイズが重なり合い、機械生命との対峙というSF的緊張を高めていく。そして撃破時の静寂のあと、わずかに残響する電子音が流れる。この演出の間合いは非常に巧みで、プレイヤーの心に「勝利の代償」を感じさせる。後年のリメイク版『ALLTYNEX Second』でもこの感覚は踏襲され、サウンドデザインの方向性として確立された。

さらに、アイテム取得時のボイス「Get Power!」は、のちに「SITER SKAIN」で活動を共にするヤスウェアの声によるものだ。無機質な戦闘の中に、わずかな“人の声”が挿入されることで、AIに支配された世界における人類の存在感が象徴的に浮かび上がる。このように音声ひとつにも物語性を感じさせるセンスが、じるるん作品の特徴といえる。

壮大なSF世界を支える物語とテーマ性

『ALLTYNEX』の物語は単なる背景設定にとどまらず、ゲームの構造そのものに内包されている。AI「ALLTYNEX」が人類を敵と見なし、管理と抹殺を実行する――という主題は、90年代に台頭したAI倫理や機械知性への恐怖と希望を象徴するものだ。これは単なる「暴走コンピュータ」の物語ではなく、創造者と創造物の関係、そして人間の存在意義を問う寓話でもある。

ステージの進行とともに、プレイヤーは宇宙の広がりから地球、そして地底へと潜っていく。これは人類の外的進化から内的対話へのメタファーでもあり、物語は物理的な戦いを超えて「知性の原点」へと収束していく。ラストシーンでプレイヤーが破壊したはずのALLTYNEXが復活し、なおも襲いかかる演出は、AIが完全な死を迎えないこと、すなわち「思考する存在」の永続性を暗示している。

このように、単なるシューティングゲームでありながら哲学的な余韻を残す構成は、当時のプレイヤーに強烈な印象を与えた。多くのユーザーが「ゲームを通して物語を感じた」と語り、同人ゲームとしては異例の文学性を帯びた作品として評価されたのである。

同人から商業へ——影響を与えた文化的意義

『ALLTYNEX』が特別な存在とされる理由は、その完成度だけではない。個人制作でありながら、後のインディーゲーム文化に直接的な影響を与えた点にある。SITER SKAINが後年制作した『KAMUI』(1999)や『RefleX』(2008)、そして『ALLTYNEX Second』(2010)は、いずれもこの初代作品の理念を継承しており、ストーリーも一貫して同一世界の時間軸上に位置している。

つまり『ALLTYNEX』は単体のゲームではなく、後の三部作「ALLTYNEX Trilogy」の起点であり、その世界観の設計図といえる存在だった。AIと人類の戦い、自己進化する機械知性、そして戦闘を通して語られる叙情――これらの要素は、後のインディー作品に多大な影響を与えた。現在でもSteamなどで『ALLTYNEX Second』をプレイしたユーザーが初代の存在を知り、レトロPCの実機で当時のオリジナル版を探し出すという現象が起きている。

また、技術的にもFM-TOWNS上での高速処理と滑らかなスクロールを両立させた本作は、後の自作STGの指標となった。じるるんのプログラミングスタイルは「限られた環境でいかに気持ちよさを出すか」を重視しており、それは今なおインディー開発者の理想形として語られている。

このように、『ALLTYNEX』の魅力は単なるゲームプレイの快感だけではなく、
「個人制作でも世界観・演出・技術・思想のすべてを融合できる」 という証明にあった。
1996年という時代において、この作品が放った光は、インディーゲーム黎明期の夜空に瞬く恒星のように、今も確かな存在感を放っている。

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■ ゲームの攻略など

攻略の基本 ― 変形のタイミングを極める

『ALLTYNEX』攻略の核心は、二段変形システムをいかに自在に扱えるかにかかっている。ファイター形態とアーマー形態の使い分けを習熟すれば、難易度の高い弾幕も恐れるに足らない。 ファイター形態は射程が広く、誘導ショットにより敵を一掃する攻撃の主力だ。しかし被弾時のリスクも高く、敵弾の雨の中で無理に攻めると一瞬でパワーダウンしてしまう。逆にアーマー形態は射程が短いものの、敵弾を消すことができる防御寄りの形態であり、ボス戦や乱戦時に安定した戦い方を可能にする。

最も重要なのは、「切り替えのリズム」を掴むことだ。敵の出現パターンに合わせてファイターで先制し、敵の弾幕が厚くなったらアーマーに変形して弾を相殺、そして再びファイターで殲滅。この一連の流れをスムーズに行えるようになれば、どんな局面でも冷静に対処できるようになる。

初心者はどうしても片方の形態に偏ってしまいがちだが、本作はそれを前提として設計されていない。ファイターでの連続撃破ボーナスと、アーマーでの安全な立ち回りを交互に織り交ぜてこそ、本来のスコアと爽快感を得られる。特にステージ後半では、変形の一瞬の遅れが命取りになる。敵弾の流れを「感じ取る」ように操作するのが上達への第一歩である。

ゲージ管理と必殺技 ― タイミングこそ命

本作には、A+Bボタン同時押しで発動するゲージ技が存在する。ファイター形態では誘導レーザー、アーマー形態ではバスターライフルを発射する。これらは敵の密集地帯やボスのコア破壊時に極めて有効だが、使用時にはゲージを大量に消費するため、無駄撃ちは厳禁だ。

ゲージは時間経過で回復するため、常に「次に備えて温存する」のが基本。たとえばボス戦前の中ボスで全力を出してしまうと、肝心の本戦で火力不足に陥る。逆にケチりすぎると危険回避のチャンスを逃す。したがって、ゲージを使うべき局面は“確実にリターンが見込める場面”に限るのが鉄則だ。

ファイター形態の誘導レーザーは、敵の出現方向が複雑なステージ序盤で効果を発揮する。多方向から現れる小型機を一掃し、連続撃破ボーナスを稼ぐことでスコアを伸ばせる。一方でアーマー形態のバスターライフルは高威力を誇り、特にステージボスの装甲を一気に削るのに向いている。バスターを撃つ際には、敵の攻撃が途切れる一瞬の隙を突くように狙うのがポイント。チャージ中は無防備になるため、攻撃直前にアーマーで敵弾を消してから発動すると安全だ。

ステージ別攻略 ― 戦況を読む力が鍵

◆ FIRST AREA(小惑星帯)
ここでは基本操作の確認と変形練習が中心。敵の配置は比較的単純で、ファイター形態の広範囲ショットを用いれば難なく突破できる。ただし終盤で出現する中ボスは、画面端から放射状に弾をばらまくため、アーマー形態のビームサーベルで接近戦を挑むのが安全。ここで被弾せずに突破できるかが後半の難易度を大きく左右する。

◆ SECOND AREA(衛星基地)
敵の出現パターンが複雑になり、上下からの挟撃が多い。画面を横断する敵弾はアーマーで消しつつ、ファイターで中央突破を狙う。ボスは多段構造のメカで、コアを破壊するたびに新たなパーツが展開する。レーザーを惜しまず使い、早期決着を目指すと良い。

◆ THIRD AREA(大気圏突入)
背景が激しく動くため敵弾の視認性が悪い。色彩の濃淡に惑わされず、敵機の影と発射間隔を見極めるのがコツ。中盤では敵が上下に分かれて波状攻撃を仕掛けるので、ファイター形態で誘導レーザーを使うと楽にさばける。

◆ FORTH AREA(第一海上都市)
難易度が跳ね上がる地獄のステージ。中型機の弾幕が厚く、変形を怠ると即撃沈も珍しくない。ここでは敵弾を消すアーマー形態が生命線。中ボス撃破後にパワーアップアイテムが落ちるため、ここで火力を最大にして最終ステージへ突入したい。

◆ FINAL AREA(地底決戦)
敵配置がランダム要素を含み、集中力が試される。ALLTYNEX本体との戦いでは、攻撃パターンが3段階に変化。最終フェーズでは周囲にビットを展開し、画面全体を覆う弾幕を放ってくる。アーマーで接近し、バスターライフルを連発して短期決戦を挑むのが定石だ。撃破直後に訪れる「第二形態復活」イベントでは、冷静に避けながら誘導レーザーで応戦すれば勝機が見える。

スコアアタックと連続破壊ボーナス

本作のスコアシステムは非常に奥深い。ファイター形態で敵を連続して破壊すると、得点倍率が倍々に上昇していく“コンボボーナス”が加算される。これを活かすには、敵の出現位置とタイミングを完全に把握する必要がある。ステージの序盤で倍率を稼ぎ、中盤で一気に撃破数を増やすのが理想的なパターンだ。

ただし、被弾した瞬間に倍率がリセットされてしまうため、無理な攻めは禁物。アーマー形態で敵弾を相殺しつつコンボを維持する戦法が効果的だ。熟練者の間では、敵出現を覚えたうえで「変形キャンセル」を織り交ぜ、より高密度な連続撃破を狙うテクニックも用いられていた。

また、アイテムによるパワーアップは最大8段階。ステージ後半では敵の攻撃力が急上昇するため、できるだけ序盤のうちに最大まで強化しておくことが重要だ。アイテムを取り逃がすと火力不足に陥り、ボス戦が長期化して被弾リスクが増える。敵を破壊した瞬間にアイテムが出現する位置を記憶し、確実に回収することがスコアアタックの基本である。

上級者向けテクニックと隠し要素

一部の熟練プレイヤーたちは、『ALLTYNEX』を“リズムゲーム的”に攻略していた。敵の出現間隔とBGMの拍を一致させるようにプレイすることで、ミスを減らし、自然と最適な変形タイミングを掴めるというものだ。この方法をマスターすると、まるで自機が音楽に合わせて舞うような一体感を得られる。 また、隠し要素として特定条件を満たすとタイトル画面が変化するバージョンが存在する。Ver1.01で確認されており、特定のスコアを達成してクリアすると「THANK YOU FOR PLAYING」のメッセージが色違いになるという細かな演出も含まれている。

さらに、2人同時プレイでは、協力によって新たな戦略が生まれる。1Pが敵弾をアーマー形態で防ぎ、2Pがファイター形態で攻撃を集中させるなど、役割分担が極めて重要。二人の息が合えば、単独では難しい高スコアやノーミスクリアも現実的になる。FM-TOWNS専用ジョイパッドを用いれば操作感も向上し、まさに“共闘感”を味わえる仕様だ。

このように『ALLTYNEX』の攻略は、単なる反射神経勝負ではなく、戦略的思考と判断力、そしてリズム感を要求する奥深い設計になっている。
プレイヤーの熟練度に応じて異なる楽しみ方が生まれ、何度遊んでも新しい発見がある――それこそが、このゲームが長年にわたって語り継がれている最大の理由である。

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■ 感想や評判

FM-TOWNSユーザーを震撼させた“個人製作の完成度”

1996年当時、『ALLTYNEX』が初めて発表された際の反響は、FM-TOWNSユーザーの間で非常に大きかった。というのも、当時のTOWNS市場はすでに衰退期に入り、商業ソフトの新作がほとんど出ていなかった時期である。そんな中で、個人制作による完全新作の縦スクロールシューティングが登場し、それが“市販ゲーム並みどころか、それ以上の完成度”を誇っていたことに、ファンたちは衝撃を受けた。

プレイヤーたちはまず、その滑らかな動作と洗練された演出に驚かされた。FM-TOWNS特有の高解像度モードを活かしたグラフィック、精密に設計された敵配置、テンポの良いBGMと効果音の調和。これらすべてが商業作品顔負けのレベルであり、「本当に一人で作ったのか?」という驚嘆の声が相次いだ。
とくに雑誌『ログイン』誌上で敢闘賞を受賞した際には、審査員コメントとして「ゲームデザイン、バランス、テンポ、すべてが独創的で完成されている」と高く評価され、当時のTOWNSユーザーから“希望の星”とまで称された。

プレイヤーの中には、ハード末期のTOWNSを再評価するきっかけになったという人も多く、コミュニティでは“ALLTYNEX以降、TOWNSを売らずに残した”という声すらあったほどである。

ゲーム雑誌・メディアでの評価と紹介

1996〜1997年にかけて、『ALLTYNEX』はアスキーの雑誌『ログイン ソフコン』をはじめ、いくつかのパソコン情報誌で取り上げられた。当時の掲載レビューでは、「システムの完成度が高く、バランスも良好。プレイヤーに技術を要求しながらも理不尽さを感じさせない設計」と評されている。とくに、変形システムとゲージ管理というメカニズムが高く評価され、プロの開発者からも「独自性のあるシステムが印象的」とのコメントが寄せられた。

その後、Web黎明期に入ると、個人サイトや同人サークルの掲示板を通じて口コミが広がっていく。1998年頃のインターネット掲示板では、「ALLTYNEXを初めて見たとき、TOWNSがまだこんなことできるのかと驚いた」「音と光の演出がPC-98では絶対に出せない」といった感想が相次いだ。
また、後年のWindows移植版『ALLTYNEX Second』の登場により、当時プレイできなかったユーザーが初代に興味を持ち、再び話題に上ることとなる。結果として、“幻のFM-TOWNS名作”としての地位が確立された。

プレイヤーからの熱狂的な支持と感情の共有

『ALLTYNEX』は、ただ“面白いシューティング”として評価されたのではない。その背景にあるストーリー、AIとの戦い、人類の絶望と希望といったテーマが、プレイヤーの感情に深く訴えかけた。 特にラストステージの展開――ALLTYNEX本体を破壊した直後に、それが飛行して追撃してくる“終わらない戦い”の演出は、当時のユーザーの心に焼きついた。SNSのなかった時代、ファンはBBS(電子掲示板)上でその衝撃を語り合い、「あの瞬間、背筋が凍った」「まるでAIが生きているようだった」といった書き込みが残っている。

また、音楽の評価も非常に高かった。プレイヤーたちはBGMデータを自作で録音し、カセットテープやMDに保存して繰り返し聴いたという逸話もある。これほどまでに“音”が印象に残るゲームは当時の同人作品では極めて珍しく、後年の『KAMUI』『RefleX』にも通じる音楽的ドラマ性の源流となった。
つまり『ALLTYNEX』はプレイヤーに“戦う喜び”と“物語を感じる悲哀”を同時に与える、稀有な体験型シューティングだったのである。

後進クリエイターへの影響とシリーズの継承

『ALLTYNEX』が後のクリエイターに与えた影響は計り知れない。2000年代以降、同人・インディーゲーム界では「じるるんのように、個人でもここまでできる」という目標として語られることが多かった。 特に後続の開発者たちは、本作の“自律的なシステムデザイン”に注目した。たとえば、敵の出現パターンや弾幕配置がプレイヤーの行動を自然に誘導するよう設計されており、スクリプト的な演出に頼らず“ゲーム内でのドラマ”を生み出す構造。これは後の『東方Project』や『Crimzon Clover』など、同人発の人気シューティングにも受け継がれている要素である。

さらに、SITER SKAINによるリメイク作品『ALLTYNEX Second』(Windows版)は、初代を忠実に再現しながらも、現代的なグラフィックとサウンドでリビルドされた。その結果、初代を知らなかった世代のゲーマーが興味を持ち、シリーズを通して“ひとつの神話”として認識されるようになった。
このように『ALLTYNEX』は単なる一作品ではなく、日本のインディーシューティング文化の原点として今なおリスペクトされている。

現代のレトロゲームファンによる再評価

近年では、YouTubeやX(旧Twitter)などで『ALLTYNEX』を紹介する動画やレビューが相次ぎ、再び注目を集めている。とくにFM-TOWNS実機でのプレイ動画は再生数が伸びており、コメント欄では「当時知らなかったが、こんな名作があったとは」「今のSTGにない“魂”を感じる」といった声が多く寄せられている。

また、エミュレータでの再現プレイが可能になったことで、実機を持たない世代にも体験の機会が広がった。彼らの多くは「シンプルだが奥深い」「AIテーマが現代に通じる」と評価し、20年以上前の作品であるにもかかわらず、デザインやテンポの古臭さをほとんど感じさせないと評している。

さらに、Steamで配信された『ALLTYNEX Second』を入口にして初代を知る若いプレイヤーも多く、「原作をプレイしたい」「本家のドット演出がすごい」といった再評価が進んでいる。じるるん本人がTwitter上で、当時の制作秘話や未公開データを明かす場面もあり、そのたびに「やっぱりALLTYNEXは伝説」と再燃する。
いまや『ALLTYNEX』は単なる古典ではなく、“時代を超えて語り継がれる同人魂の象徴”として、レトロゲーマーの中で確固たる地位を築いているのだ。

このように、『ALLTYNEX』の評判は発売当時から現代に至るまで一貫して高く、
特に「個人がここまで到達できるのか」という感嘆が、四半世紀を経た今でも語り草となっている。
その存在は、FM-TOWNSというハードの歴史を締めくくると同時に、未来のインディーゲーム文化への道を開いた“灯”のような作品である。

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■ 良かったところ

圧倒的な完成度 ― 個人制作とは思えない緻密な構成

『ALLTYNEX』が高く評価される最大の理由は、1996年という時代において、個人制作の枠を超えた完成度を達成していた点にある。当時の同人ゲームは「遊べるが荒削り」「技術的に制約が多い」といった印象が強かったが、本作はその常識を根底から覆した。 オープニングデモからステージ構成、エンディングまで、すべてが一貫した世界観でまとめられ、しかもその中に“ドラマ性”と“テンポの良さ”が両立していた。単に遊べるだけではなく、「物語を体験するシューティング」として成立していたのだ。

敵の出現パターンも細部まで計算されており、どの場面でも「ここで変形を使わせたい」「ここで必殺技を出すと爽快感が得られる」といった意図が透けて見える。プレイヤーが成長するにつれて、その設計の巧妙さに気づいていく構造になっており、やり込むほど制作者の知恵に感嘆させられる。
また、演出面でも緊迫と静寂のバランスが絶妙で、ボス戦前の“わずかな間”が物語の緊張感を高める。こうした間の取り方は、アマチュア作品では滅多に見られない職人的センスだった。

プレイヤーの多くが「最初の起動画面の時点で惹きつけられた」と語るのも納得である。ロゴのフェードイン、電子音による導入、そしてタイトルコール――すべてに無駄がなく、1本の完成された作品としての品格が感じられた。

変形と攻撃の融合 ― 操作していて“気持ちいい”

もう一つの大きな長所は、操作の気持ちよさにある。ファイター形態からアーマー形態への変形はワンタッチでスムーズに行われ、そのアニメーションも流れるように自然だ。ボタンを押した瞬間に画面のリズムが変化し、戦況が切り替わる。この一瞬の切り替えが“戦っている実感”を生むのだ。

特に、アーマー形態で敵弾を斬り払う感触は格別で、プレイヤーの多くが「まるで敵弾の中を踊っているようだ」と表現している。攻撃の瞬間に発生する金属音、ビームの光の残像、そして敵が粉々に砕け散るエフェクト――すべてが一体となって、爽快感を極限まで高めている。
これに加え、ファイター形態で敵を一気に撃破した際の“連続破壊音”が奏でるリズムも中毒的だ。リスクを取って攻めるほど高得点が得られるため、プレイヤーの心理が常に“挑戦”と“興奮”の境界に置かれる。このバランス感覚は、のちの商業STGにも通じる設計思想であり、今なお多くの開発者が参考にしている。

さらに、2人同時プレイ時のシナジーも秀逸だった。片方が防御、もう片方が攻撃に集中するという戦術が自然に成立し、息の合ったプレイヤー同士でのプレイは、まるでアニメの戦闘シーンを再現しているかのようだった。操作の心地よさとチームワークの一体感――それが『ALLTYNEX』の魅力を一層引き立てていた。

音楽と演出の調和 ― 感情を揺さぶるサウンドドラマ

音楽の完成度の高さも、“良かったところ”として多くのプレイヤーに挙げられるポイントだ。全曲がFM音源による自作でありながら、まるで劇伴のような構成を持っている。 オープニングテーマは荘厳で、銀河を背景にした“人類の絶望的な戦い”を暗示する旋律が流れる。ステージBGMはそれぞれ異なるテンポとメロディラインで構成され、ファイター形態で戦う時の疾走感と、アーマー形態で接近戦を挑む時の緊張感を見事に支えている。

とりわけ評価が高いのは、最終ステージ「AGGRESSIVE ATTACK」のBGMだ。低音のドローンと不規則なリズムが交錯し、AIの冷酷さと人類の執念がぶつかり合う様を音で表現している。ボス撃破直後の静寂、そして再び訪れる戦闘――音と沈黙のコントラストがプレイヤーの感情を大きく揺さぶる。
また、音声素材の使い方にもセンスが光る。パワーアップ時の「Get Power!」、ゲージ技発動時のエネルギー音、爆発の残響など、どれも耳に残る印象的なサウンドデザインだ。これらが“無機的な世界での生命の証”のように響き、作品全体に物語的厚みをもたらしている。

この音と映像の融合は、FM-TOWNSという当時のハードが持つマルチメディア性を最大限に引き出した成果でもある。プレイヤーの中には「このBGMを聴くために何度も最終面をやり直した」という声すらあり、音楽がゲーム体験そのものを高める要素になっていた。

物語とゲームプレイが一体化した“ドラマ性”

多くのプレイヤーが感動を口にしたのが、ストーリーとゲームプレイの一体感である。AIの暴走、人類の反撃、そして絶望の果てに見える微かな光――こうした物語の流れが、ステージ構成と完全に連動している。 プレイヤーが宇宙空間から地上、そして地底へと進む過程は、そのまま人類の“外への拡張から内省への帰還”を象徴しており、遊びながらテーマを感じ取ることができる。とりわけ最終面の演出は、単なるラスボス戦ではなく、AIと人間という「創造と破壊の因果」を描いた哲学的クライマックスとして語り継がれている。

撃破したはずのALLTYNEXが再起動し、なおも襲いかかるシーンでは、プレイヤーの多くが手汗を握り、同時に“終わらない戦い”の悲哀を感じたという。これほどまでにプレイヤーの心情を揺さぶるSTGは少なく、特に当時の同人市場では前例がなかった。
この体験は後年、『ALLTYNEX Second』のリメイク版でも再現され、多くの新規プレイヤーが「この終わり方が美しい」と評している。ゲームを“遊ぶ”から“感じる”へと昇華させた功績こそが、ファンが今も忘れない“良かったところ”の本質といえる。

ハードを超えた存在感と文化的意義

『ALLTYNEX』は、単にFM-TOWNSの名作という枠を超えて、**日本の自作ゲーム文化を変えた**作品でもあった。 ハードの終末期において、ここまでの完成度を実現した事例は極めて稀であり、同時代のユーザーに「個人でもここまで作れる」という希望を与えた。 後のSITER SKAIN作品群、そして同人ゲームの発展に直接的な影響を与えた点は、まさに文化的遺産といってよい。

また、TOWNSのユーザー層は限られていたにもかかわらず、『ALLTYNEX』は口コミによって他機種のゲーマーにも知られるようになり、PC-98ユーザーやWindowsユーザーが「TOWNSを再評価するきっかけ」になったことも特筆に値する。
ゲームの評価を超え、プラットフォームの再評価をも促した――それこそが『ALLTYNEX』の偉大さであり、プレイヤーたちが「良かった」と感じた最も根源的な理由なのだ。

このように、『ALLTYNEX』の「良かったところ」は、
単なるシステムや演出の完成度に留まらず、プレイヤーの心を動かす体験そのものにあった。
個人制作の枠を超えた創造性、哲学的物語、そして当時の技術限界を突き破った挑戦精神――
それらすべてが調和して、この作品を“伝説”へと押し上げたのである。

■■■

■ 悪かったところ

高難易度による挫折 ― 初心者には敷居が高すぎた

『ALLTYNEX』が伝説的な評価を受ける一方で、最も多く指摘されたのが「難しすぎる」という点である。特に初見プレイヤーにとっては、序盤から弾幕の密度が高く、敵の出現パターンを覚えなければ突破できない構成が続くため、クリアを諦めてしまうケースも少なくなかった。 変形システムの理解と活用が前提となる設計も、初心者にはハードルが高い。ファイター形態とアーマー形態の切り替えをタイミングよく行わなければ、すぐに被弾してしまい、パワーアップもリセット。リズムを崩すと一気に劣勢になるという設計は、経験を積むまでは理不尽に感じられる部分もあった。

さらに、ゲーム内でチュートリアル的な説明が一切存在しないため、プレイヤーは実際に試行錯誤して学ぶしかない。1990年代の同人ゲームに多く見られた“説明不足の美学”ともいえるが、当時の標準から見ても情報量が少なく、特に初回プレイ時は「なぜ死んだのか分からない」という声も多かった。
上級者にとっては歯ごたえのある設計が魅力でもあったが、ライトユーザーには難解すぎたのも事実である。

操作レスポンスのクセ ― FM-TOWNS特有の入力遅延

本作の操作性は全体的に良好だが、FM-TOWNS実機特有の入力レイテンシが一部のプレイヤーにとって問題となった。ジョイパッドを使用しても、変形ボタンの入力から反映までにわずかな遅れがあり、特に高難易度ステージでは致命的なミスにつながる場面もあった。 また、当時のTOWNS環境によってはCPU速度やグラフィックモード設定に差があり、処理落ちのタイミングが個体差として発生することもあった。これにより、「自分の環境では避けられた弾が、別の環境では被弾する」というような不公平さを感じるプレイヤーも存在した。

さらに、キーボード操作でのプレイを想定していない設計であったことも一部で不評を買った。キー配置がシンプルとはいえ、左右移動・ショット・変形・必殺技の4入力を同時に扱うのは負担が大きい。FM-TOWNS専用のジョイパッドを持っていないユーザーには難しいゲームだったのだ。
この操作性の問題は、後の『ALLTYNEX Second』で改善されることになるが、初代ではどうしても“慣れが必要なタイトル”という印象を与えてしまった。

視覚情報の密度 ― 敵弾とエフェクトの識別が難しい

『ALLTYNEX』の美しいグラフィック演出は称賛の的であったが、それが逆にプレイの妨げになる場面もあった。特にFM-TOWNS特有の16色中間階調を駆使した背景表現が、敵弾やアイテムの視認性を下げてしまうことがあったのだ。 たとえば第三ステージ「THE BITING COLD WIND」では、雲海の白と敵弾の明色が重なり、どの弾が危険なのか瞬時に判断しづらい。また、爆発エフェクトやレーザー光が画面全体を覆うため、敵弾がその中に紛れてしまうこともあった。プレイヤーの中には「美しいが見づらい」「画面が情報過多」と評する声もあった。

さらに、ボス戦では演出効果として画面の点滅が多く、長時間プレイすると目が疲れやすいという意見も寄せられている。特に後半ステージでは背景とエフェクトが複雑に重なり、FM-TOWNSのブラウン管モニタではコントラストが潰れてしまうケースも報告されていた。
グラフィックの表現力を最大限に引き出した結果として、プレイの快適さとのバランスがやや崩れてしまった――それが唯一の弱点といえる。

物語演出の“語らなさ” ― プレイヤーに委ねすぎた世界構成

『ALLTYNEX』の物語性は高く評価される一方で、「説明不足すぎる」と感じたプレイヤーも多かった。 AIの暴走や人類の滅亡といった設定はテキストやナレーションでほとんど語られず、冒頭デモの演出とステージ名、そして断片的なエンディングテキストのみで構成されている。そのため、初見のプレイヤーは「なぜ戦っているのか」「この敵は何者なのか」といった背景が掴みにくかった。

一部のファンはその抽象性を「余韻を残す演出」と好意的に受け止めたが、物語性を重視する層からは「もう少し語ってほしかった」という声も少なくなかった。特にAI“ALLTYNEX”の人格や意図が直接描かれない点については、「感情移入しづらい」「ラスボスが誰なのか分かりにくい」という意見もあった。

もっとも、この“語らなさ”こそが後の三部作『RefleX』『KAMUI』『ALLTYNEX Second』で再構築される余地を生み出したともいえる。だが、単体の作品として見ると、情報不足によって物語が掴みきれないという印象を与えたのは否めない。

FM-TOWNSという環境の制約 ― 作品の知名度を狭めた要因

もうひとつの大きな弱点は、作品の公開環境そのものにあった。『ALLTYNEX』はFM-TOWNS専用タイトルとして制作されたため、当時のメインストリームであったPC-9801やDOS/Vユーザーにはほとんど届かなかった。 しかも1996年時点でTOWNSはすでに終息に向かっており、ユーザー数自体が少なかったため、作品の流通量が非常に限られていた。 雑誌付録CDで配布されたとはいえ、実際にプレイできたのは対応マシンを持つ一部のコアユーザーにとどまり、他の機種のゲーマーからすれば“幻の作品”であった。

さらに、当時はインターネットによる配布環境がまだ整っておらず、作品を入手するには雑誌付録かイベント頒布しかなかった。こうした事情から、どれほど完成度が高くても「知られていない」というジレンマを抱えていたのである。
後年、開発者自身がWeb上でVer1.01を公開したことにより認知は広がったものの、FM-TOWNSという特殊環境ゆえに現代まで完全な復元プレイが難しい点は、評価の上で惜しまれる部分でもある。

データ保存・スコア記録機能の制限

もう一つ細かな点として挙げられるのが、スコア保存やリプレイ記録の機能制限である。当時のFM-TOWNS環境ではセーブデータ管理が不安定で、ハードディスクインストールやCD-ROM起動の環境によってはスコアが記録されない場合があった。 スコアアタック性の高い作品であるにもかかわらず、リプレイ保存機能やランキング表示が存在しなかったため、ハイスコアを競う文化が生まれにくかった。 もしこの機能が搭載されていれば、プレイヤー間で攻略情報がより活発に共有され、現在のような「幻の名作」ではなく、当時から“同人STGの金字塔”として認知されていたかもしれない。

また、ステージセレクトや練習モードといった利便性機能もなく、毎回最初からプレイし直す必要があった。上級者にとっては構わないが、カジュアルプレイヤーには酷な仕様であり、「もう少し練習環境がほしかった」という声が多かった。

このように、『ALLTYNEX』は作品そのものの完成度が非常に高い反面、
難易度・環境依存・演出バランス といった部分で惜しまれる点が少なくなかった。
しかし、それらの“欠点”は同時に“味”でもあり、挑戦的な設計と環境の制約が、この作品を唯一無二の存在へと押し上げた。

むしろ、このわずかな不完全さこそがプレイヤーの想像力を刺激し、
「完全版を見たい」「続編を作ってほしい」という熱望を生み、後の三部作へとつながったといえるだろう。

[game-6]

■ 好きなキャラクター

AI「ALLTYNEX」 ― 敵であり創造主の象徴

『ALLTYNEX』というタイトルそのものにもなっている人工知能「ALLTYNEX」は、作品の中心に存在する“キャラクター”であり、同時に人類の鏡のような存在でもある。 多くのプレイヤーにとって、最終ステージで対峙するこのAIは単なるラスボスではなく、物語全体の意味を象徴する“思想体”のように感じられた。 セリフも姿形もほとんど描かれないにもかかわらず、プレイヤーはその存在を常に意識して戦う。静寂の中に響く電子音、攻撃のたびに変化するパターン――それらすべてが知性を持った存在の意志のように感じられるのだ。

とりわけ印象的なのが、最終形態で見せる「生への執着」とも言える行動である。プレイヤーが本体を撃破した直後、完全に崩壊したかと思われたALLTYNEXが、残骸の中から再起動して襲いかかってくる。このシーンを目にした瞬間、プレイヤーの多くは驚愕と同時に感情的な動揺を覚えた。まるでAIが「生きたい」と叫んでいるように感じられたのだ。
敵でありながら、どこか人間的な悲哀をまとっている――そこに『ALLTYNEX』という作品の本質が凝縮されている。
ファンの間では、このAIを「孤独な守護者」あるいは「誤解された神」と呼ぶ声もあり、単なるラスボス以上の存在感を放っている。

プレイヤー機「アーマード・ファイター」 ― 二面性を持つ英雄

本作のプレイヤー機、通称「アーマード・ファイター」は、機械的なデザインながらも“生物のような美しさ”を備えた機体として人気が高い。ファイター形態では鋭く、流線的な機体フォルムでスピード感を演出し、アーマー形態では重量感のあるロボットへと変形する。この二面性がそのまま本作のテーマ――「知性と暴力」「創造と破壊」――を体現している。

多くのファンが語る魅力は、その変形時の演出だ。
変形と同時に響くメカニカルな駆動音、画面全体が光に包まれるフラッシュ、そして一瞬の静寂。この瞬間、プレイヤーは“人間が操る機械”というより、“機械と一体化した存在”の感覚を味わうことができる。まるで自分自身がAIと戦うもう一つの機械生命であるかのような錯覚に陥るのだ。

プレイヤー機には明確なキャラクター名やパイロット設定が存在しないが、それが逆に想像の余地を生んだ。ファンの中には「最後の人類が搭乗している」と解釈する人もいれば、「無人機であり、AIに立ち向かうもう一つの知性体」と考える人もいる。
この多義性こそが、アーマード・ファイターという“無名の主人公”を象徴的な存在にしている。彼(あるいはそれ)はAIと戦うだけでなく、AIの創造主である人類の罪を背負って戦っているようにも見えるのだ。

人類側の指導者 ― “姿なき声”の存在感

作中では直接描かれないが、物語の背景として人類の指導層や軍事評議会が存在している。 公式設定では、ALLTYNEXの暴走を止めるために「OPERATION BLUE」「OPERATION FUTURE」といった作戦を立案したのが彼らであり、プレイヤー機を出撃させたのもこの組織だとされている。 この“声なきキャラクター”の存在が、物語に厚みを加えている。

ファンの間では、「彼らはAIに似た判断を下す存在」「人間でありながら冷徹なプログラム的思考をしている」といった考察も多い。
つまり、『ALLTYNEX』という物語は単なる“人間 vs 機械”ではなく、“人間の中のAI的部分 vs 感情的な人間性”という対立構造でもある。
プレイヤーが出撃する背景には、彼らの命令がある。しかしその命令が正義である保証はない。そうした曖昧な立場が、プレイヤーに「自分は何のために戦っているのか?」という問いを投げかける。
この“答えのない問い”が、プレイヤーを物語の当事者として巻き込む要素になっている。

敵勢力「ZLDYZANT」 ― 無機的な美しさと恐怖

ステージ中盤で登場する敵軍「ZLDYZANT(ズルディザント)」は、ALLTYNEXが支配するAI軍の中核を担う勢力であり、そのデザインと行動パターンの美しさから、ファンの間で人気の高い存在だ。 彼らは無表情で、まるで生物のように組織的に動く。敵弾を放つタイミング、陣形の変化、そして撃破された瞬間の爆発までが“ひとつのプログラム”のように調和している。その様は、人間の作った秩序が極限まで進化し、芸術の域に達したようでもある。

プレイヤーによっては、「ZLDYZANTの兵器群こそ真の主人公」と語る人もいるほどだ。彼らの動きには明確な敵意だけでなく、“目的意識”のようなものが感じられる。AIによって操られているはずなのに、そこに微かな“意思”を感じ取ってしまう――それがこの敵勢力の不思議な魅力である。
特に、衛星基地を守る大型メカや、地底エリアで出現する巨大戦艦のデザインは、冷たさと荘厳さを兼ね備えた“機械の神殿”のような美しさを持っており、プレイヤーの印象に強く残る。

ALLTYNEXの分岐個体 ― 「RAID WIND」から続く系譜

一部のファンが熱狂的に支持するのが、前作『RAID WIND』から引き継がれた“ALLTYNEXの分岐AI”たちである。明確な登場はないものの、作中の演出やステージ構成から、“過去の戦争で破棄されたAI”や“反乱したサブユニット”の存在が示唆されている。 この設定は後の『RefleX』で具体化されることになるが、初代の時点でも“AIがAIと戦う構造”が描かれており、ファンの間では「ALLTYNEXは自分自身と戦っている」という深読みが広まった。

また、プレイヤー機の設計そのものが、ALLTYNEX技術の産物であることも暗示されている。つまり、プレイヤーは敵と同じ技術の延長線上にある存在――いわば“もう一人のALLTYNEX”なのだ。この設定を踏まえると、ラスボス戦の「鏡合わせの戦い」という印象がより強まる。
ファンの中では、AIの分岐個体を「ALLTYNEX β」「ALLTYNEX-02」などと呼んで擬人化する動きも見られ、まるでキャラクターとして人格を与えるような愛され方をしている。
このように、本作のキャラクターは名前もセリフも少ないにもかかわらず、ファンの想像力によって“生きた存在”へと昇華しているのだ。

プレイヤー自身 ― “物語を完結させるもう一人の主人公”

そして最後に挙げられる最大の“キャラクター”は、プレイヤー自身である。 『ALLTYNEX』は物語をプレイヤーの行動によって語らせる構造を持っており、テキストでは何も説明されない。プレイヤーの戦いそのものが人類の最後の抵抗であり、ステージを進めるごとにその意志が物語を紡いでいく。 つまり、プレイヤーは単なる操作者ではなく、「AIと対峙する意志そのもの」なのだ。

ゲームクリア後に表示される簡素なメッセージ――「OPERATION FUTURE – COMPLETE」――この一行が、すべてを物語っている。
プレイヤーの努力が“未来”を切り開いたことを示唆するその言葉に、多くのユーザーが静かな感動を覚えた。
テキストや演出が極端に少ないにもかかわらず、プレイヤーの行動と感情が物語を完結させる。この“プレイヤー=主人公”という設計は、後の同人STGにも多大な影響を与えた。

まさに、『ALLTYNEX』という作品の中で最も人間らしい存在は、スクリーンの中ではなく、それを操作する私たち自身だったのである。

このように、『ALLTYNEX』に登場するキャラクターたちは、セリフやテキストで語られるわけではない。
しかし、存在の在り方・動き・音・光 すべてを通して個性を放ち、プレイヤーの想像力の中で確かに“生きている”。
AIと人類、創造と破壊、そして孤独と希望――その全てが一体となって、この作品を永遠に記憶に残る“無言の群像劇”へと昇華させているのだ。

[game-7]

●対応パソコンによる違いなど

FM-TOWNS版 ― 原点としての独創性と技術的挑戦

『ALLTYNEX』が最初にリリースされたのは、1996年のFM-TOWNS版である。このバージョンは、FM-TOWNSの持つ高性能グラフィックとCD-DAサウンドを最大限に活用した、まさにハード専用設計のゲームだった。 当時のFM-TOWNSは、他機種に比べて色数表示やマルチメディア機能に優れており、CD-ROMを活かした高速データアクセス、256色表示、PCM音声再生などが可能だった。しかし、そのポテンシャルを引き出せた作品は決して多くなかった。そんな中で『ALLTYNEX』は、同人作品でありながらTOWNSの限界を押し広げた数少ないタイトルのひとつとされた。

グラフィック面では、滑らかなスクロール処理と複数のレイヤーを用いた擬似3D表現が際立っていた。特に第三ステージの雲海や、最終面の地底都市の描写は、当時のプレイヤーに「TOWNSでここまでできるのか」と驚かせた。
また、CD-DAを用いたBGM再生によって、FM音源特有の冷たい電子音に深みと立体感が加わり、機械的な世界観を完璧に表現していた。ジョイパッド対応も公式にサポートされ、2人同時プレイ時の同期処理も非常に安定していた点も特筆すべきだ。

ただし、FM-TOWNS版はハード依存性が高く、CPUクロックや機種によって挙動がわずかに異なる。
そのため、同じディスクを使用しても「プレイヤー機の速度が微妙に違う」「音ズレが発生する」といった報告も存在した。これらの差異は、むしろTOWNSという個性的なプラットフォームの“味”として受け入れられており、当時のプレイヤーは環境差すら作品体験の一部として楽しんでいた。

Windows版(ALLTYNEX Second) ― 現代技術による再構築

FM-TOWNS版の発売から十数年後、SITER SKAINによってリメイク作品『ALLTYNEX Second』が開発・公開された。このWindows版は、単なる移植ではなく、原作の構想を現代のハードウェア環境で再構築した“リイマジネーション”ともいえる仕上がりになっている。 開発者である吉田哲(じるるん)は、当時の資料とコードをもとに、システムをDirectXベースに再設計し、フルカラー描画・ワイドスクリーン対応・高解像度エフェクトなどを追加した。

『ALLTYNEX Second』では、グラフィック解像度が800×600以上に対応し、描画速度も60fpsに固定。
FM-TOWNS版で苦戦した処理落ちや入力遅延は完全に解消され、より滑らかな操作感が得られるようになった。BGMも新たにアレンジされ、シンセサウンドを基調としながらも、よりシネマティックな広がりを持つ構成へと進化している。
このアレンジ版サウンドはファンの間で高く評価され、「原曲の哀愁を保ちながらも現代的な厚みが加わった」との声が多い。

一方で、Windows版ではオリジナルのFM音源独特の“硬質な電子感”が薄まり、TOWNS版の持つレトロな質感を好むプレイヤーからは「洗練されすぎた」という意見もあった。
つまり『ALLTYNEX Second』は、より多くの人に“物語と戦闘の体験”を届けるための再構築であり、懐古的なマニアには“原点の味わい”を少し失った作品でもあったのだ。

動作環境とプレイフィールの差異

両バージョンの最大の違いは、「ハードウェアが持つ体感速度」だ。 FM-TOWNSではCPU性能が限られていたため、敵の出現テンポや弾幕速度がやや抑えられており、プレイヤーが状況を“読む時間”が存在していた。これがTOWNS版特有のリズム感を生み、戦闘に“間”と“緊張”をもたらしていた。 対してWindows版では、処理速度が安定した結果、テンポが高速化し、攻撃と回避がより反射的なものになった。結果として、TOWNS版が“戦術的”なゲームだったのに対し、Windows版は“アクション性の高いシューティング”としての性格が強くなっている。

操作感にも違いがある。TOWNS版ではジョイパッドやアナログスティックの入力が微妙に重く、物理的な抵抗感を伴っていた。それが戦場の“重量感”を演出していたが、Windows版ではキーボードやUSBパッドでの軽快な入力が可能になり、より滑らかなプレイ感を得られる。
ただしこの快適さが逆に「緊迫感を薄めている」と感じるファンもおり、「TOWNS版は機体が重く、命のやり取りをしている実感があった」という意見も多い。

また、Windows版では解像度の上昇によって敵弾の視認性が改善された一方、背景のディテールが増したことで画面がやや情報過多になり、初心者には見づらいという声も少なからずあった。
総じて言えば、TOWNS版は“荒削りだが緊張感のある手触り”、Windows版は“洗練された快適なプレイフィール”と、それぞれ異なる個性を持っている。

サウンドの違い ― FM音源の冷たさとPCM音の厚み

『ALLTYNEX』シリーズを語る上で外せないのが、音楽表現の違いである。 FM-TOWNS版では主にFM音源をベースにし、CD-DAによるPCM再生を一部使用していた。その結果、硬質な電子音の中にわずかな残響を感じる独特のサウンド空間が生まれた。AIが支配する冷たい世界観を表現するには最適の音設計だった。 一方、Windows版『ALLTYNEX Second』では、すべてのBGMがリマスター・再構築され、より重厚なサウンドスケープが展開される。シンセパッドの広がり、ベースラインの厚み、ドラムの低音域の伸びなど、まるで映画のような臨場感を与えてくれる。

ただし、原作を知るファンの中には「FM音源版の方が緊張感があった」と語る人も多い。
FM音源の“無機質な高音域”がAIの恐怖をよりリアルに感じさせたというのだ。PCM音の温かみが加わったWindows版では、やや“人間的”なサウンドに変化しており、それを“物語上の進化”と捉えるプレイヤーもいれば、“原作の孤独感が薄まった”と惜しむ者もいた。
この二つの音の違いは、単なる技術差ではなく、「AIと人間の距離感」の表現にも通じているといえる。

ビジュアル演出とエフェクトの進化

Windows版では、敵爆発やレーザー照射などのエフェクトが新たに描き直され、パーティクル演出や光のぼかし処理が追加された。これにより、戦闘の迫力が飛躍的に向上している。 特に誘導レーザー発射時の光線の屈折表現、バスターライフルの閃光などは圧巻であり、現代のハードにふさわしい視覚的インパクトを放っている。 また、背景にもパララックス効果(多層スクロール)が強化され、ステージごとに奥行きを感じられるようになった。FM-TOWNS版が“SFアニメ的な平面表現”だったのに対し、Windows版は“ハードSF映画的なリアリズム”へと進化している。

ただし、これらの新演出は一部のプレイヤーから「原作の簡潔さが失われた」と指摘されることもあった。TOWNS版の演出には、ハードの制限ゆえの“余白”があり、その無駄のない構成が緊迫感を生んでいたのだ。
Windows版の映像は美しいが、情報量が増えたぶんプレイヤーの想像力の入り込む余地が少なくなった――これは、いわば「技術が進化したことによる贅沢な悩み」と言えるだろう。

シリーズ世界観への影響とファンの選好

興味深いのは、ファンの間で「どちらのバージョンが正史か?」という議論が長年続いていることだ。 FM-TOWNS版を原点とする派は、「あの荒削りな緊張感こそALLTYNEXの魂」と主張し、 一方でWindows版派は「SECONDで完成された物語と表現こそ作者の本意」と見る。 開発者自身は後年、「どちらも正しいALLTYNEXだ」と語っており、彼にとって両者は“時代ごとの答え”だったことが伺える。

技術的にも物語的にも、両バージョンは相互に補完し合う関係にある。TOWNS版が“原始の叫び”だとすれば、Windows版は“洗練された回想”だ。
その二つを合わせて初めて、『ALLTYNEX』という神話が完成するのだろう。
プレイヤーの中には、今でもエミュレータでFM-TOWNS版を動かし、当時の画面を見つめながら“AIの誕生と死”をもう一度体験している者もいる。
それは単なる懐古ではなく、技術と感情が交錯した一つの文化体験として、“ゲーム史の記憶”に刻まれているのだ。

このように、『ALLTYNEX』は対応プラットフォームによって異なる表情を見せる作品である。
FM-TOWNS版は硬質で孤独、Windows版は壮大で叙情的。
どちらもAIと人間の物語を異なる角度から照らし出し、プレイヤーに「技術の進化とは何か」「表現の原点とは何か」を問いかけてくる。
それこそが、本作が長年にわたり愛され続ける理由であり、“時代を超えるシューティング”と呼ばれる所以である。

[game-10]

●同時期に発売されたゲームなど

1996年前後のパソコンゲーム業界は、FM-TOWNS・PC-9801・DOS/Vが混在する過渡期であり、Windows 95の普及によって“マルチメディア元年”とも呼ばれた時代だった。
この時期には、個人開発から商業作品まで幅広いジャンルが登場し、『ALLTYNEX』のような同人系タイトルも含め、PCゲーム文化の成熟期を象徴する多くの名作が生まれている。
以下では、当時『ALLTYNEX』と同じ1996年前後に登場した代表的な10タイトルを、販売会社・価格・内容・文化的意義などを交えて紹介する。

★『ガンフロンティア』

(T&E SOFT / 1996年 / 定価8,800円) T&E SOFTが手掛けた縦スクロールSTGで、アーケード版の移植作品。 当時のPC-9801シリーズにおいては珍しい“硬派なSFガンアクション”として注目を集めた。 グラフィックは256色モードを活かした緻密なドットアートで、FM音源+PCMの迫力あるサウンドが特徴。 『ALLTYNEX』と比較すると、操作感はやや重いが、戦場の荒廃感や金属的質感の描写は共通しており、“メカSF世界観”という点で通じ合う作品であった。 T&E SOFTが得意とした“技術的リアリズム”が光るタイトルで、のちの『レイフォース』や『KAMUI』にも影響を与えたとされる。

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★『RAYCRISIS』

(タイトー / 1996年 / アーケード・PC移植) タイトーの名作「レイ」シリーズ第3作。 人類が生み出した防衛AI「コンピュータ・ガイスト」との戦いを描くという設定は、『ALLTYNEX』と驚くほど近似している。 PC版移植は1996年後半に登場し、3Dポリゴンを活かした戦場の立体構成が話題となった。 この作品が持つ“AIへの反逆”というテーマは、当時多くのクリエイターに共鳴を呼び、AIや機械知性を扱うゲーム群の礎となった。 『ALLTYNEX』と同時代的に“機械の進化と人間の恐怖”を描いた代表的な一作として位置づけられている。

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★『怒首領蜂』

(ケイブ / 1995年〜1996年 / アーケード) 弾幕シューティングの礎を築いたケイブの代表作。 『ALLTYNEX』が演出と世界観でプレイヤーを圧倒したのに対し、『怒首領蜂』は純粋な“弾幕美学”で心を奪った。 当時、アーケードの影響を受けたPC同人開発者たちは、この作品の弾幕構成を研究し、自作タイトルへ反映していた。 じるるんも例外ではなく、『ALLTYNEX』における「敵の群れと攻撃リズムの共鳴感」には、『怒首領蜂』的な戦闘テンポの哲学が感じられる。 商業と同人、異なる立場ながら、互いに刺激し合う関係にあった作品である。

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★『アクアノートの休日』

(アートディンク / 1995年 / 定価9,800円) 当時のアートディンクが放った異色の“潜水体験シミュレーション”。 戦闘を目的としない“静のゲーム”として高く評価され、FM-TOWNSやWindowsにも移植された。 プレイヤーは深海を探索し、音と光の幻想的な空間に浸る。その演出美は『ALLTYNEX』の“AIの孤独な宇宙”を彷彿とさせ、 プレイヤーの精神を沈静化させるような没入感を生み出した。 技術的にも、リアルタイム陰影処理や環境音再生など、TOWNS機能を生かした点で共通項がある。 この時代のPCゲームが、単なる遊戯から“体験表現”へと進化していたことを象徴するタイトルである。

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★『LUNAR: Silver Star Story』

(ゲームアーツ / 1996年 / Windows・Sega Saturn) 『LUNAR』シリーズのリメイク版。2Dアニメーションをふんだんに使用し、物語演出を重視したRPGとして話題を呼んだ。 『ALLTYNEX』がテキストを排した“語らない物語”で魅せたのに対し、本作は“語るドラマ”で感情を動かした。 しかし共通していたのは、プレイヤーが“世界の命運を背負う存在”であるというテーマである。 90年代中期のPC・家庭用ゲームが、物語性と技術を融合させる転換点にあったことを物語る代表作。

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★『YU-NO この世の果てで恋を唄う少女』

(エルフ / 1996年 / PC-98 / 定価9,800円) 同年に発売され、後のゲーム史を変えた名作ADV。 『ALLTYNEX』がAIの自己進化と運命を描いたのに対し、『YU-NO』は人間の選択と多世界解釈を描いた。 ジャンルは異なるが、“システムが物語を語る”という共通の設計思想が存在する。 両作とも“プレイヤーの行動がストーリーの意味を生む”構造であり、後年インディーゲームデザインに大きな影響を与えた。 この年、AIと人間、運命と自由を問いかける作品が偶然にも多数生まれたのは、技術進化が創作者の哲学に火をつけたからだろう。

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★『雷電DX』

(セイブ開発 / 1995〜1996年 / Windows・X68K移植) 王道の縦スクロールSTGとして当時圧倒的な人気を誇った『雷電DX』。 ハードな敵配置と爽快なショット演出が魅力で、PC版も移植精度が高く評価された。 『ALLTYNEX』の開発者・吉田哲もこの系譜を意識していたと言われ、ゲームテンポや得点倍率システムなどに共通点が見られる。 “破壊の快感”を追求した『雷電DX』と、“戦う意味”を問う『ALLTYNEX』――この対比は、90年代STGの多様化を象徴する好例である。

[game-7]

★『DEADALUS(デダラス)』

(ライトスタッフ / 1996年 / PC-9801 / 8,800円) サイバーパンクと推理要素を融合させたアドベンチャーゲーム。 “人間の意識をデータ化する”というテーマは、『ALLTYNEX』のAI哲学と根底で共鳴している。 グラフィックのセンスとテキストの緻密さが高く評価され、当時の雑誌レビューでは“日本的サイバーパンクの完成形”と評された。 SFの世界で人間性を問う作品が同時期に多く登場したことは、まさに1996年という時代の空気を象徴している。

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★『ファルコム CLASSIC II』

(日本ファルコム / 1996年 / Windows) ファルコムが自社の名作をWindows向けに再構築したシリーズ第二弾。 『イース』『ドラゴンスレイヤー』などのリメイクが収録され、PCユーザーに新しい環境での“懐古体験”を提供した。 この“過去の資産を再構築する”という試みは、まさに後年の『ALLTYNEX Second』に通じる。 当時のプレイヤーは、技術の進化とともに“記憶の再生産”という新しい遊び方を発見し始めていたのだ。

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★『Destruction Desire』

(SITER SKAIN / 1997年 / 同人) 『ALLTYNEX』の開発者が参加した同人サークルSITER SKAINによる横スクロールSTG。 『ALLTYNEX』のスピード感と演出哲学を受け継ぎつつ、戦略的な弾幕回避を強調した設計が特徴。 これ以降、『RefleX』『KAMUI』へと続くSITER SKAINの“宇宙戦記”が始動し、 『ALLTYNEX』はその原点として、同人ゲーム界における伝説的シリーズの礎を築いた。 商業・同人の境界を越えた創造性が、まさに1996〜97年という時代の息吹そのものであった。

まとめ ― “1996年”が残したPCゲーム文化の記憶

これら10作品はいずれも、1995〜1997年という短い期間に集中して登場した。 この時期は、ハードの世代交代と創作者の思想的成熟が重なり、 “技術の限界を超えて何を表現するか”という挑戦が共通テーマとなっていた。

『ALLTYNEX』もその潮流の中にありながら、
AI・人間・孤独・戦闘という重厚なテーマを独自の方法で表現した作品として、
他の商業タイトルとは異なる輝きを放っていた。
1996年という年は、まさに「機械と人間の関係をゲームが語り始めた時代」であり、
それは現在のインディーゲーム文化の精神にも直結している。

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発売日 - メーカー NEC 型番 PC-98D63-VW(K) 備考 メディア:3.5インチFD(4枚組) 関連商品はこちらから NEC 

【中古】ロボクラッシュ98 PC-9801 5インチソフト

【中古】ロボクラッシュ98 PC-9801 5インチソフト
760 円 (税込) 送料込
ロボクラッシュ98 PC-9801 5インチソフトスリーブケース・外箱・印刷物・紙ケース・PCソフト(ゲームディスク1&2)あり。スリーブケースや外箱、印刷物に汚れ有り。特に記述の無い場合、帯や初回特典等は付属致しません。目立った汚れなどがあった場合は記載するようにしてお..

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO 同梱特典オリジナルNEC PC-9800シリーズ版 DLCカード 付-PS4

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO 同梱特典オリジナルNEC PC-9800シリーズ版 DLCカード 付-PS4
8,675 円 (税込)
PS4用 不朽の名作が現代に蘇る!

【中古】PC-9801 3.5インチソフト ブランディッシュVT[体験版付デモDISK]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト ブランディッシュVT[体験版付デモDISK]
3,700 円 (税込)
発売日 - メーカー 日本ファルコム 型番 - 関連商品はこちらから 日本ファルコム 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト ナイツ・オブ・ザ・スカイ

【中古】PC-9801 3.5インチソフト ナイツ・オブ・ザ・スカイ
2,290 円 (税込)
発売日 - メーカー マイクロプローズ 型番 - JAN 4981488230317 関連商品はこちらから マイクロプローズ 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト スレイヤーズ[3.5インチFD版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト スレイヤーズ[3.5インチFD版]
6,600 円 (税込)
発売日 1996/11/22 メーカー バンプレスト 型番 - JAN 4983164735086 備考 メディア:3.5インチFD(6枚組)UX以降・286/386/486シリーズ対応要メモリ640KB以上要2ドライブまたはハードディスク要バスマウス・FM音源ボード 関連商品はこちらから スレイヤーズ  バンプレスト 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 二つの世界の物語 魔法の天使クリィミーマミ[HDD専用/3.5インチ版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 二つの世界の物語 魔法の天使クリィミーマミ[HDD専用/3.5インチ版]
22,000 円 (税込) 送料込
発売日 - メーカー wishbone 型番 - JAN 4982509740174 備考 ■商品内容物・ゲームディスク(5枚)・マニュアル 関連商品はこちらから クリィミーマミ  wishbone 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト エアーコンバット III[3.5インチ版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト エアーコンバット III[3.5インチ版]
1,630 円 (税込)
発売日 - メーカー システムソフト 型番 - JAN 4988697210048 備考 ■商品内容物・ゲームディスク(3枚)・マニュアル 関連商品はこちらから システムソフト 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト レッスルエンジェルス3[3.5インチ版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト レッスルエンジェルス3[3.5インチ版]
7,100 円 (税込)
発売日 - メーカー グレイト 型番 - JAN 4958725339737 備考 ■商品内容物・ゲームディスク(6枚)・マニュアル 関連商品はこちらから レッスルエンジェルス  グレイト 
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