『艶談・源平争乱記いろはにほへと』(パソコンゲーム)

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【発売】:全流通
【対応パソコン】:PC-8801、MSX、X1、FM-7、X68000
【発売日】:1988年3月
【ジャンル】:アドベンチャーゲーム

[game-ue]

■ 概要

平安末期と現代をつなぐタイムスリップ型歴史アドベンチャー

1980年代後半、アダルトゲーム市場がまだ黎明期にあった時代に、STUDIO ANGELが開発し、全流通から発売されたのが『艶談・源平争乱記いろはにほへと』である。本作は、PC-8801やFM-7、MSX、X1、X68000といった当時の主要パソコンに向けてリリースされたマルチプラットフォームタイトルであり、いずれの機種でもテキスト主体のアドベンチャー形式を採用していた。その根幹には、単なる官能要素に留まらず、歴史とSFを巧みに融合させた“歴史絵巻アドベンチャー”としての重厚な構成がある。

このシリーズは三部作構想で企画され、第1作にあたる本作では、平安末期の源平合戦を舞台に、現代の高校生がタイムスリップして義経を天下人へ導こうとするという大胆な設定が展開される。続編へとつながるテーマ性──「歴史を知る者が、歴史を操る」──の基礎がすでにこの初作で完成しており、以降のシリーズにも通じる哲学的モチーフが詰め込まれている。

物語の始まり──歴史の試験と“誤答”から生まれた運命の悪戯

主人公・東国武士(とうごくたけし)は、歴史が大の苦手な高校生。ある日の歴史の試験中、居眠りをしてしまい、「鎌倉幕府を開いたのは源義経」と書いてしまった。この一言がすべての始まりである。クラスメイトの山本静香から嘲笑を浴び、悔しさのあまり答案を書き換えようと深夜の学校に忍び込むが、そこに設置されていた職員室のパソコンが突如として光を放つ。気がつくと、彼は時空を超えて1169年、平安の都・京都に立っていた。

この展開が示すように、プレイヤーは「歴史の修正」をテーマにしたアドベンチャーを体験することになる。武士は“誤った歴史”を書き直すため、つまり源義経を本当に鎌倉幕府の支配者にするために行動を開始するのだ。だが、義経を天下人に導くことが果たして正しい歴史なのか、それとも彼自身の自己満足なのか──その問いが、物語の根底を貫くテーマとして描かれている。

選択によって運命が変化する──マルチシナリオ構造

本作では、プレイヤーの選択肢によって物語が大きく分岐する。戦場での判断、義経や頼朝、北条政子との会話内容、そして静御前との関係の取り方など、どれを選ぶかによって歴史が変化する。義経が勝利を収める展開もあれば、史実通り悲劇的な最期を迎えるルートも存在する。
特筆すべきは、エンディングを迎えられなかった際の“夢落ち”演出である。これは単なるゲームオーバーではなく、「武士が見ていた夢」として再び現代に戻るという巧みな構成をとっており、その後の静香との会話の中で、プレイヤーがどの選択を誤ったかを示唆するセリフが変化する。つまり、ゲームそのものが“歴史の授業”になっているのだ。

このメタ的構造は、当時のアドベンチャーゲームの中でも珍しく、教育的要素と物語性を融合させた先駆的な試みといえる。プレイヤーは楽しみながら自然と源平時代の背景を学ぶことができる構成になっている。

歴史と官能の融合──シリーズコンセプトの確立

「艶談」と銘打たれている通り、作品には艶やかで官能的な描写も多数登場する。ただし、それらは決して無意味な刺激描写ではなく、時代背景と女性キャラクターの心情を描く手段として用いられている。たとえば、北条政子の嫉妬や静御前の悲恋などは、政治と恋愛の交錯を通して“女の強さ”や“歴史の裏にある情念”を浮き彫りにしており、単なるアダルト要素以上の文学的深みを持っている。

STUDIO ANGELはこの作品を通じて、「歴史的事件×性愛」という新しい物語手法を確立した。後に続く『艶談・戦国絵巻』や『艶談・幕末恋慕譚』といったシリーズ作にもその手法は継承され、アダルトゲームというジャンルの中で“物語の品格”を追求した先駆的存在として評価されている。

グラフィックと音声表現──機種ごとの特色

当時のパソコンは機種によって性能が大きく異なっており、本作もそれに応じて表現力が変化する。PC-8801版は8色表示ながら細やかな線画が特徴で、雅な平安絵巻の雰囲気を線の美しさで表現していた。X1版やFM-7版ではパレット数が増え、女性キャラクターの着物や装飾に深みが加わる。特にX68000版は高解像度グラフィックを活かし、屏風絵のような背景とキャラクター立ち絵の融合が際立っていた。また、一部バージョンではFM音源によるBGMが用意され、笛や琴をモチーフにした旋律が流れることで、より“時代感”を演出している。

登場人物たち

東国武士(主人公):現代から平安末期へと飛ばされた高校生。歴史を変えることを決意し、義経を支援する。

山本静香:現代のクラスメイト。物語序盤と夢のエピローグで重要な役割を担う。

源義経:カリスマ的な武将。武士の導きによって歴史が変わる可能性を秘める。

源頼朝:冷静で権謀術数に長けた兄。義経の運命を握る存在。

北条政子:頼朝の妻であり、政治的野心を隠さない。

静御前:義経を愛し、運命に翻弄される女性。彼女との出会いが、物語における“艶”の本質を象徴している。

弁慶:義経の忠臣。武士にとって歴史の要を担う“助言者”でもある。

歴史の中に迷い込むプレイヤーの知的快楽

本作は、単なるアダルトアドベンチャーの枠を越え、プレイヤー自身が“歴史を再構築する存在”になる体験を提供している。学びと欲望、歴史と現代、現実と夢──それらの境界が曖昧に交錯する独特の構成は、80年代PCゲーム文化の中でも異彩を放っていた。
発売当時、このようなコンセプトを持つ作品はまだ少なく、後のシナリオ重視型アダルトゲームの礎を築いたと言っても過言ではない。

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■ ゲームの魅力とは?

歴史を“変える”という知的な快感

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の最大の魅力は、プレイヤーに「もし自分が過去の歴史に介入できたら?」という禁断の問いを投げかける点にある。単にタイムスリップするだけでなく、“歴史試験で間違えた答えを現実にしてしまおう”という発想が物語の出発点となっているのは極めてユニークだ。
この設定により、プレイヤーは「正しい歴史」ではなく「もしもの歴史」を探求することになる。つまり、源義経が頼朝に勝ち、鎌倉幕府の初代将軍になる――そんな“仮想の日本史”を自らの選択で築いていく過程に、知的なスリルと背徳的な快楽が共存しているのだ。

選択肢によって義経が勝利したり、逆に平家が復権する展開まで見られるため、まるで“分岐する歴史”を自分の手で紡いでいる感覚が味わえる。この体験こそ、プレイヤーが他のどんな作品でも得難い「学問としてのゲーム体験」であり、歴史という題材にエンターテインメント性を持ち込んだ先駆的試みである。

緻密に描かれた平安末期の世界観

本作は、アドベンチャーゲームとしてのテキスト表現に特化しており、その文章量と語彙の豊かさは同時期のアダルトゲームの中でも群を抜いている。平安の街並み、武家の屋敷、戦場のざわめき、貴族の衣装の質感までもが細やかに描写されており、あたかも時代小説を読んでいるかのような臨場感がある。
特に戦のシーンでは、刀の金属音や馬の蹄の響きをテキストと音楽で表現しており、プレイヤーの想像力を強く刺激する。

また、登場人物たちの会話文も非常に巧妙だ。現代人である主人公の口調と、平安期の人物たちの言葉遣いが微妙に対比され、文化や価値観の違いが自然と浮かび上がるようになっている。たとえば、静御前の「言葉よりも舞で心を伝える」という台詞や、弁慶の「忠義とは己の命を棄てて成すもの」という一言など、登場人物それぞれの思想が時代背景と密接に結びついており、単なる登場キャラ以上の深みを与えている。

“艶談”の名にふさわしい濃密な人間ドラマ

タイトルに「艶談」とあるように、本作は大人向けアドベンチャーとしての官能的要素も随所に散りばめられている。しかしそれらは決して物語の装飾ではなく、むしろ人物描写の核心に関わる演出である。
北条政子の嫉妬、静御前の悲恋、義経と弁慶の主従愛、そして時折挿入される男女の交わりの場面──それらすべてが、歴史の裏でうごめく“情”の象徴として描かれている。

特に静御前のシナリオは、本作屈指の名場面として知られる。彼女は義経への一途な愛と運命に抗えぬ悲哀を抱えながら、主人公と出会うことで心が揺れ動く。その心理描写の繊細さは、同時代のアダルトゲームでは珍しいほどの文芸的完成度を持っている。彼女の舞の場面で流れる琴の音色は、画面の向こうから時代の哀しみを伝えるようだ。

プレイヤーを導く“夢”という枠組み

本作のユニークな構造に「夢」という要素がある。物語の冒頭とエンディングで現代に戻る際、すべてが夢であったかのように描かれる。だが、夢だからといってプレイヤーの行動が無意味になるわけではない。むしろ、夢の中で経験したことが次のプレイへの知恵となり、歴史試験で静香に再び見下される場面で「間違いを指摘される」ことが次のヒントになるという、非常にメタ的な構造を持っている。

これは単にリトライシステムとして優れているだけでなく、“歴史は繰り返す”“人は過ちを通して学ぶ”という哲学的なメッセージをプレイヤーに投げかけている。こうした発想は、後のサウンドノベルやメタ構造を取り入れた作品(例:『EVE burst error』など)に通じる先見性を持っていた。

視覚と聴覚を刺激する時代演出

グラフィック表現の面でも、本作は当時の水準を超えていた。PC-8801やFM-7などの機種では色数に制限があったが、それを逆手に取り、明暗のコントラストで雅な雰囲気を描き出す。金襴の衣装や桜の花びらが流れる背景、源平の旗がはためく戦場──どのシーンも記憶に残るほど印象的だ。

BGMは和楽器を模したFM音源で構成され、琴・笛・鼓を用いた旋律が幻想的な空気を醸し出す。特に静御前のテーマ曲は、プレイヤーの間で「切なさの極み」として語り継がれた。音楽とテキストの調和により、物語世界がより深く胸に響くのである。

女性キャラクターたちの個性と物語性

本作に登場する女性たちは、単なるヒロインではなく、それぞれが歴史を象徴する存在として描かれている。北条政子は権力の象徴であり、静御前は愛と悲哀の象徴。その他にも、京の貴族社会に生きる女房たちや、地方の豪族の娘など、多彩な女性像が登場する。彼女たちとの交流を通じて、主人公は“歴史を知る”ことの重さを学んでいく。

特に印象的なのは、政子との対話シーン。彼女は冷徹に見えても、心の奥に義経への複雑な感情を抱えており、プレイヤーの選択によっては彼女の弱さや孤独が垣間見える。このような多層的な人物造形が、作品に文学的深みを与えている。

シナリオライティングの妙──選択肢が物語を生む

当時のアドベンチャーゲームは、一本道の物語が多かったが、『艶談・源平争乱記いろはにほへと』はプレイヤーの選択によって分岐する“マルチシナリオ”構造を採用した。どの人物を信じ、どの歴史的事件に関わるかが結果を左右し、すべての選択肢が後の展開に影響を及ぼす。

たとえば、義経を救うために平家の姫を犠牲にするか否か、静御前を守るか政治のために見捨てるか──その判断がエンディングの内容を根底から変える。プレイヤーは常に“どの選択が本当に正しいのか”を自問しながら物語を進めることになる。この心理的葛藤が、本作の最大の没入要素であり、単なるエロティックゲームの域を超えたドラマ性を実現している。

知的エンターテインメントとしての完成度

結果として、『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、官能・教育・歴史という三要素を絶妙に融合させた異色の名作となった。歴史を「勉強する」ではなく「体験する」形で楽しめるこの作品は、STUDIO ANGELの創作力の高さを証明するものだ。

また、プレイヤー層の中には「この作品で源平合戦を初めて学んだ」という人も多く、アダルトゲームという枠を超えた文化的意義を持っていた。つまり、“学び”と“快楽”が共存することを証明した作品──それこそが、このゲームの真の魅力なのである。

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■ ゲームの攻略など

歴史の分岐を読み解く――選択肢の積み重ねが未来を変える

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の攻略において最も重要なのは、「一つひとつの選択肢がどのように歴史へ影響するのか」を理解することである。
この作品では、単なる「正解」を選ぶゲームではない。むしろ、プレイヤーの選択が積み重なって“異なる日本史”を創り出していく。初見のプレイでは思わぬ選択が重大な結果を生み、義経や政子、静御前たちの運命を大きく左右することも少なくない。

選択肢は多くの場合、

「誰を信じるか」

「どの陣営につくか」

「恋か忠義か」
といったテーマに分類されている。それぞれの分岐には伏線が仕込まれており、どの選択が最終的に正史ルート、あるいは“義経天下ルート”に繋がるのかを見極めることが鍵となる。

プレイヤーが不用意に軽率な行動を取れば、義経が早々に討たれて“夢落ち”となり、再び現代に戻されてしまう。だがその過程こそがこのゲームの醍醐味であり、繰り返し挑戦することで「歴史のパズル」が少しずつ解けていく仕組みなのだ。

基本システムの理解――文章を読み、選択肢を吟味する

本作はコマンド選択式アドベンチャーの形式を取っているが、単に「見る」「話す」「行く」を選ぶだけの単調な作業ではない。文章中の微妙な言い回し、相手の表情描写、BGMの変化などから次に起こる展開を推測しなければならない。
特に政子や静御前との会話では、ひとつの選択が人間関係の“信頼度”に影響を与え、特定のイベントを発生させる条件にもなる。信頼度が低いまま進行すると、後の戦闘パートで味方が減ったり、義経が孤立してしまうルートに入ってしまうこともある。

攻略のポイントは、テキストの「裏の意味」を読むことだ。たとえば弁慶が「この戦、負け戦になるぞ」と言った時、それはただの台詞ではなく“別の行動を取るべき”という暗示である。プレイヤーがそうした微妙な文脈を読み解くことで、物語の奥行きを感じながら攻略していくことになる。

夢落ちを恐れずに繰り返す――“失敗”が次へのヒントになる

本作における「ゲームオーバー」は、実質的には“授業の一部”である。夢から覚めた主人公が再び教室に戻るたび、山本静香の一言が次のプレイのヒントとなる。「○○が違うんじゃないの?」という彼女の冷ややかな言葉が、プレイヤーに再挑戦の道を示してくれる。

したがって、攻略の基本姿勢は“何度も歴史を繰り返すこと”にある。1回のプレイで完全クリアを目指すのではなく、何度かの失敗を通して正史と異史の分岐を体験する。その過程で、登場人物たちの裏の関係や伏線が少しずつ明らかになり、最終的に「義経天下ルート」への道が開けるようになっている。

プレイヤーの中には、すべてのエンディングを解放するまでに十数時間を費やす者も少なくなかった。それでも飽きない理由は、各ルートが独自の物語を持ち、異なる視点から同じ事件を再構築しているからである。

戦局イベントの攻略法――義経の進退を左右する決断

源平の戦いを再現したイベントでは、戦場での行動選択が重要になる。
例えば「一ノ谷の戦い」では、義経を鼓舞するか、退却を進言するかによってその後の展開が変化する。鼓舞すれば義経の士気は上がるが、無謀な突撃によって味方が損害を受けることもある。逆に退却を進めれば命は守れるが、義経の信頼を失う可能性がある。
このように、“正解”が固定されていないのが本作の面白さだ。史実では敗北しても、プレイヤーの采配によっては勝利を収めることもできる。

また、戦闘前後の人間関係によっても展開が変化する。政子と親しい状態で出陣すると彼女が情報を提供してくれる一方、関係が悪化していると裏切りイベントが発生し、戦局が不利になる場合もある。攻略の基本は、「戦う前に心を掴む」ことだ。

恋愛ルートの選択と影響

艶談シリーズならではの特徴として、恋愛ルートがエンディング条件に関わってくる点も見逃せない。
静御前と結ばれるルートでは、義経との関係が悲劇的に終わり、歴史の流れが修正されてしまう。逆に政子と深い関係を築いた場合、頼朝を動かすことができ、義経の天下が実現する。つまり“愛の選択”が“歴史の帰結”に直結するのだ。

この設計は、単に恋愛シーンを描くためではなく、“愛と権力の関係”をテーマにしている点が秀逸である。
恋愛ルートを極めることが、歴史そのものを変える手段となっているため、感情の選択が戦略の一部となる。プレイヤーは、愛を取るか、使命を取るかの葛藤を常に迫られることになる。

隠し要素とマルチエンディングの構造

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』には、プレイヤーの選択によって出現する複数のエンディングが存在する。主なものとして、

義経天下ルート(最高評価エンディング)

史実準拠ルート(頼朝政権成立)

平家復興ルート(if展開)

現代帰還ルート(夢オチ)

静御前悲恋ルート(感動的なバッドエンド)
がある。

中でも「義経天下ルート」は非常に条件が厳しく、弁慶・政子・義経・静御前全員との関係値を最大に保った上で、すべての主要戦を勝利しなければならない。この条件を満たすには、少なくとも3周以上のプレイが必要になるだろう。

また、隠し要素として“源平秘話ファイル”と呼ばれるイベントがあり、特定の行動を取ると各キャラクターの過去や心情を知る特別なシーンが開放される。これをすべて集めると、最終章で歴史を俯瞰する“語り部エンディング”が追加されるという仕掛けだ。

セーブ活用と分岐管理

当時のPCアドベンチャーとしては珍しく、本作は複数のセーブスロットを備えている。重要な選択前にセーブしておくことで、後から異なる分岐を試すことができる。この機能を駆使すれば、すべてのルートを効率よく回収できるだろう。
ただし、セーブデータの上書きに注意が必要で、特に戦闘前のフラグを逃すと後戻りができなくなる場合がある。攻略を進める際は、**「分岐ごとに1スロット」**を確保するのが賢明だ。

総合攻略の心得――“歴史を学び、情を知る”

このゲームを完全攻略するうえでの最終的なコツは、「勝ち負けよりも人の心を読む」ことにある。義経のように熱くなりすぎても失敗し、頼朝のように冷徹すぎても孤立する。最良の結末へ導くには、両者の間でバランスを取る判断力が求められる。
歴史を変えることは簡単ではない。しかし、登場人物たちと真摯に向き合い、彼らの想いを理解した時、プレイヤーは初めて“歴史の共犯者”となるのだ。

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■ 感想や評判

発売当時の反響――「アダルトでありながら知的」と評された衝撃作

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』が発売された当時、PCゲーム市場ではアダルトアドベンチャーが急速に増えつつあった。しかし多くの作品は刺激的な内容に頼る傾向が強く、物語性やテーマ性の面で高く評価されるタイトルはまだ少なかった。
そんな中で本作が登場したのは、まさに“転換点”であった。プレイヤーの間では「官能と文学を融合させた異色作」「歴史を題材にした初めての知的アダルトゲーム」として話題を呼び、ゲーム誌のレビュー欄では“新しい方向性を示した作品”と評されている。

特にPC-8801版の発売時には、グラフィックの美しさとシナリオの緻密さが評価され、アダルトユーザーだけでなく、歴史ファンやシナリオライター志望の若者にも注目された。中には「この作品で源平時代に興味を持ち、史学を学び始めた」という感想すら寄せられており、単なる娯楽を超えた文化的影響力を持っていたといえる。

プレイヤーの評価――感情を揺さぶる物語体験

プレイヤーの多くが口を揃えて語るのは、「このゲームはただのエロではなく、心に残る物語だった」という点である。特に印象的だったのが静御前ルートでの終盤。義経を愛しながらも運命に翻弄され、主人公との短い出会いに希望を見出す彼女の姿に、多くのプレイヤーが胸を打たれた。

また、“夢オチ”という構造を通してプレイヤーに自己反省を促す演出も、当時としては極めて斬新だった。敗北=夢からの覚醒という構造が、単なるリセットではなく「学び」として成立している点に、感心する声が多数上がった。
「静香の一言が心に刺さった」「もう一度やり直したくなる」といったレビューは、現在でもネット上の回顧記事などに見られるほどだ。

ゲーム雑誌での評価と専門家の分析

PC情報誌『TECHNOPOLIS』『ログイン』『マイコンBASICマガジン』などのレビューでは、グラフィックの繊細さとシナリオの完成度に高い点数が与えられている。
特に『ログイン』1988年5月号の特集では、“時代物アドベンチャーの新境地”というタイトルで紹介され、ライターの一人が次のように評している。

「源平合戦という重い題材を、アダルトゲームという枠で軽妙に扱う手腕は見事。STUDIO ANGELのシナリオ構築力は、単なる官能作品を超えている」

また、当時の評論家の中には、この作品を「日本産アドベンチャーの文芸的発展を象徴する一作」と評価する者もいた。たとえば、後にゲームシナリオライターとして著名になる人物が「本作がなければ、自分の創作観は変わっていなかった」と語っている。
こうした評価は、アダルトゲームが“物語として成立しうる”という新たな認識を業界にもたらしたといえる。

ファンの熱意――考察と二次創作の広がり

本作が特にユニークなのは、発売から数十年を経た現在でも熱心なファンが存在する点だ。
インターネット黎明期の掲示板や同人誌即売会では、登場人物たちの行動を歴史的に考察する記事や、オリジナルルートを創作したファン作品が登場していた。
あるファンは「もし武士が平安時代から帰らなかったら」という設定で二次創作小説を執筆し、義経の側近として彼が歴史を塗り替えていく物語を描いている。このような派生的な創作活動が生まれたのは、原作のキャラクターや世界観がそれほどまでに魅力的だった証拠だ。

さらに、静御前や政子といった歴史上の女性像を再評価する動きも、本作によって一部の層で高まった。特に政子を「嫉妬深い悪女」ではなく「政治を知る女性」として描いたことが、後年の女性キャラクター表現に少なからず影響を与えたと指摘する研究者もいる。

マニア層の支持――X68000版の“究極版”としての地位

ハードウェアごとに表現力が異なる本作だが、特にX68000版は現在でも“究極版”と称される。高解像度グラフィックとFM音源によるBGMの完成度が極めて高く、他機種版では表現しきれなかった平安絵巻の美が再現されていた。
このバージョンを所有していたユーザーの多くは「まるで美術作品のようなゲーム」と賞賛し、コレクターズアイテムとして今なお高値で取引されている。

一方、MSX版やFM-7版などのユーザーも、限られた環境の中で工夫された演出を評価していた。「性能差を感じさせない脚本の巧みさ」「どの機種でも泣ける」といった声が多く、機種にかかわらず本作が愛された理由がよく分かる。

アダルトゲーム史における位置づけ

1980年代後半は、アダルトゲームが“エロティックな娯楽”から“ストーリーを楽しむ文学的メディア”へと進化し始めた時代だった。その中で『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、シナリオ主導型作品の礎を築いた一本として記憶されている。
後に人気を博した『同級生』や『YU-NO』などの“物語重視のアドベンチャー”が登場する以前に、本作はすでにその萌芽を見せていたのだ。

また、「官能=堕落ではなく、人間理解の手段である」という視点を提示した点も革新的だった。静御前の悲恋、政子の野心、義経の孤独──それらを通して“情”という人間の根源的感情を描いたことで、アダルト要素が単なる装飾ではなく物語の一部として機能していた。
そのため、現在でもアダルトゲーム史を語る上で“文学的価値を持つ最初期の作品”として挙げられることが多い。

再評価の動きとレトロPC文化の中での存在感

近年、レトロPCゲームの復刻や配信(たとえばプロジェクトEGGなど)によって、若い世代の間でも本作が再び注目されている。プレイした現代のユーザーからは「今見てもシナリオがよくできている」「当時のゲームとは思えない心理描写」と高い評価が寄せられている。
特に、現代のアドベンチャーゲームを遊び慣れたプレイヤーが「この作品の構成はまるでノベルゲームの原型だ」と語るケースも多く、その脚本構造の完成度が改めて再発見されている。

SNSやレビューサイトでは、こうした再評価が盛り上がりを見せており、古い作品を知らない層にも“名作としての認知”が広がりつつある。
レトロゲーム配信イベントなどでは、義経と静御前の関係を分析するトークセッションが組まれるなど、単なる懐古ではない“研究的関心”も芽生えている点が興味深い。

総評――「艶談」は単なるシリーズ名ではなく、理念だった

総じて、『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、アダルトゲームというジャンルの限界を超えた知的・感情的体験を提供した作品である。
その魅力は、派手な演出ではなく、人間の心の葛藤を真摯に描いた誠実さにある。
「艶談」という言葉には、単に官能的な物語という意味ではなく、“人と人の関わりを艶やかに語る”という創作理念が込められていたのだ。

発売から年月を経てもなお、この作品が語り継がれているのは、そこに人間の真実が描かれているからだろう。義経を救うのは、力でも知識でもなく、心。――そのテーマこそが、今なおプレイヤーの胸に響き続けている。

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■ 良かったところ

深く練り込まれたストーリー構成と時間軸の演出

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の最大の長所は、物語構成の完成度にある。
一見すると単なる“タイムスリップもの”のアダルトゲームに見えるが、その脚本は驚くほど精密に練られており、歴史の流れと主人公の行動が緊密にリンクしている。
特に秀逸なのが、「夢」という要素を通して現代と平安を繰り返すループ構造である。これによってプレイヤーは失敗を“物語の一部”として受け入れることができ、単なるやり直しではなく、成長の過程として再挑戦を楽しめる。

この時間構造の妙が、後年の“マルチエンディングノベルゲーム”に先駆ける設計思想として評価されている。STUDIO ANGELの脚本家たちは、ただ歴史を題材にしただけではなく、「歴史を自分の手で修正していく」という体験を物語的に自然に落とし込んだ。プレイヤーの行動すべてに物語的意味が付与されており、それが本作をただのADV以上の“知的体験”へと押し上げている。

キャラクターの心理描写の繊細さ

多くのプレイヤーが称賛したのは、登場人物たちの“人間らしさ”である。
義経や政子といった歴史上の人物が、教科書で読むような英雄や悪女としてではなく、迷い、嫉妬し、愛に苦しむ等身大の人間として描かれている点が感動的だ。

静御前の「心は義経に、身体は時に逆らえぬ」という台詞や、北条政子の「愛ゆえに権力を手放せぬ」という告白など、言葉一つひとつに重みがある。
この“情念の厚み”が、プレイヤーに強い共感を呼び、どのキャラクターにも一概に善悪をつけられない深い人間ドラマを生んでいる。

また、主人公である東国武士の描き方も巧妙だ。彼は現代人でありながら、次第に平安の価値観に染まっていく。その変化がプレイヤー自身の心理変化と重なり、物語への没入感を高めている。

美しく象徴的なグラフィック表現

技術的な制約が多かった1980年代後半のPC環境において、本作のビジュアル表現は群を抜いていた。
とりわけX68000版では、平安の都の夕焼け、戦場を染める炎、桜舞う夜宴のシーンなどが、まるで屏風絵をそのまま動かしたかのような美しさで描かれている。
キャラクター立ち絵も、写実的な線画ではなく、あえて“雅な美”を重視したタッチで統一されており、見る者に「時代の気配」を感じさせる。

また、シーンごとに使われる色彩の意味付けも細やかだ。
赤は血と情熱を、青は静御前の悲しみを、金は権力を、白は義経の清廉を象徴している。
当時のゲームにここまで意図的な色彩演出を盛り込んだ作品は珍しく、単なる視覚的装飾ではなく、“物語を語る絵”として成立していた。

音楽と静寂のコントラスト

サウンド面でも本作は傑出している。
FM音源を最大限に活かし、笛・琴・太鼓を模した和楽器風BGMが場面ごとに巧みに挿入されているが、注目すべきは“音の使い方”そのものにある。
たとえば、静御前が舞う場面では音楽が極限まで抑えられ、わずかな琴の余韻が流れるだけ。
逆に戦場では、鼓動のような低音が繰り返され、緊張感を演出する。

この「音を鳴らさない勇気」「沈黙の演出」は、後年のビジュアルノベルにも多大な影響を与えたとされる。プレイヤーは音楽が消えた瞬間、文字と映像に集中し、キャラクターの感情に寄り添う。
まさに“聴く物語”という新しいアプローチを実現した作品といえる。

学びながら楽しめる“歴史的ゲームデザイン”

本作の優れた点の一つに、「プレイヤーが歴史を自然に学ぶ仕組み」がある。
選択肢や会話の中に、実際の史実や当時の文化的背景が巧みに織り込まれており、楽しみながら知識が身に付く。
たとえば、戦の準備に必要な“兵糧米”のやり取りや、政子が放つ政治的言葉などには、史実に基づいたリアリティがある。
これらを理解していく過程で、プレイヤーはいつの間にか“歴史を読める人間”になっている。

実際、プレイ後に「源平合戦をもっと知りたくなった」という感想が多く寄せられており、アダルトゲームでありながら教育的要素を備えていたことは特筆すべき点だ。
このように“学び”と“遊び”が融合している構成は、今日のシリアスゲームにも通じる先駆的発想といえる。

女性キャラクターの描写に宿る品格

当時のアダルトゲームでは、女性キャラクターが単なる性的対象として扱われることが多かったが、本作はその常識を覆した。
静御前、北条政子、京の女房たち──彼女たちは皆、自立した意思と背景を持ち、単に“救われる存在”ではなく“選択する存在”として描かれている。
特に静御前は、恋に殉じる女性でありながら、その内面には強靭な精神が宿っている。彼女が義経の死を受け入れた時、そこには悲しみだけでなく、誇りがある。

政子もまた、嫉妬に溺れる悪女ではなく、時代の権力構造を知る“政治家”として描かれており、女性の強さと哀しさが見事に両立している。
こうした女性像の成熟した描き方が、後のシナリオ重視型アドベンチャーにおける“ヒロイン像の多様化”を促したとも言われている。

プレイヤーとの対話的構造

もう一つの大きな魅力は、“プレイヤーが物語の中で問われる”構造だ。
ゲーム中、選択肢を迫られるたびに、「あなたならどうする?」という問いが常に暗示されている。
それは単に義経を助けるかどうかという問題ではなく、「歴史を変えることは本当に正しいのか」という倫理的テーマにまで踏み込んでいる。

この問いに対する明確な答えは提示されない。エンディングによって結末は異なるが、どのルートを選んでも“正解”も“誤答”もない。
だからこそ、プレイヤーは何度も繰り返しプレイし、自分なりの答えを探すようになる。
この“自己省察型の物語構造”が本作を長く記憶に残る作品にしている。

シリーズ全体への布石としての完成度

本作は“歴史絵巻アドベンチャー三部作”の第1弾として制作されたが、その完成度は初作とは思えないほど高い。
後に続く『艶談・戦国絵巻』や『艶談・幕末恋慕譚』はそれぞれ別時代を舞台にしているものの、根幹となるテーマ――“歴史と情念の交錯”――はすでに本作で確立されていた。
シリーズの出発点としてこれほど完成された導入部を持つ作品は稀であり、ファンの中では「初代が一番心に残る」と語る声も多い。

また、本作のラストシーンで静香が語る「歴史とは夢の連なり」という言葉は、続編全体に共通する哲学的モチーフとなっており、単なる完結ではなく“シリーズの原点”としての意味を持っている。

まとめ――品格あるアダルトゲームの原点

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の良さを一言で表すなら、それは“品格あるアダルトゲーム”という点に尽きる。
官能的でありながら下品ではなく、知的でありながら難解すぎない。
登場人物の心の揺れ、人間の欲望、そして歴史の不可逆性を描いたその物語は、今見ても色あせない。

本作は、アダルトゲームというジャンルに“語る力”と“聴く感性”を与えた作品であり、
それゆえに30年以上経った今でも、多くのプレイヤーが「もう一度やりたい」「あの静御前に会いたい」と語り続けている。

■■■

■ 悪かったところ

操作性の古さとテンポの遅さ

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、ストーリーの完成度が高い一方で、システム面では時代的制約が色濃く残っている。特に不満の声が多かったのが「操作テンポの遅さ」である。
当時のパソコンは処理速度が限られており、画面切り替えやテキストの表示が非常にゆっくりだった。文章を1行ずつ描画するタイプのシステムだったため、緊迫した戦闘シーンや感情の高ぶる場面でも、文字の表示が追いつかず、プレイヤーの集中を削いでしまうことがあった。

また、選択肢を選ぶたびに画面全体がリロードされる仕様も煩雑で、後半になるほどストレスが増す。これにより、「せっかくの名シナリオがテンポの悪さに埋もれてしまう」との意見も当時のプレイヤーから寄せられている。

現代の基準で言えば、セーブやスキップ機能が限定的であることも難点だろう。何度も夢落ちでやり直す構造上、もう少し快適なリトライ設計が欲しかったと感じる人は少なくない。

選択肢の不親切さと分岐の複雑さ

本作の醍醐味である“歴史の分岐”は、同時にプレイヤーを悩ませる要素でもあった。
特定の選択肢を間違えると突然夢落ちになるなど、結果が唐突に訪れる場面が多く、プレイヤーに「なぜこうなったのか」が分かりにくい。文章中のヒントが曖昧で、フラグ管理も可視化されていないため、試行錯誤を繰り返すしかなかった。

例えば政子との会話で「助言を求める」「沈黙する」という二択があるが、どちらを選んでも即座に結果が出ず、何章も進んでから影響が現れる。この“遅延型の分岐”はリアリティを高める一方で、当時のプレイヤーには理解しづらかった。
結果として、雑誌やファン誌では「分岐が多すぎて正解が見えない」「エンディングにたどり着けない」といった苦言が少なからず見られた。

攻略本やヒント集が存在しなかった時代背景を考えると、この設計は挑戦的でありすぎたと言えるかもしれない。

エロティックシーンの演出制約

タイトルに「艶談」とあるものの、当時のマシン性能や表現規制の制約により、アダルト描写は現在の基準ではかなり控えめだ。
テキストの巧みさで情感を伝える構成になっているが、視覚的な演出は淡白で、当時のプレイヤーの中には「もっと艶やかさが欲しかった」との声もあった。

また、同社の後年作品と比べると、キャラクターごとの“関係描写”が短く、心理的余韻に対して画面上の演出が追いついていない。
特にFM-7やMSX版では色数制限のため、肌の質感や表情が十分に表現できず、せっかくの情緒的シナリオに対して画面が簡素すぎる印象を与えてしまった。

もっとも、これは技術的制約ゆえの問題であり、演出面の構想自体は極めて優れていた。後年、X68000版で追加彩色が施されたことで、ようやくシナリオの意図する“艶の美学”が完全な形で表現されたと評価されている。

夢落ちシステムの賛否両論

本作の代名詞ともいえる“夢落ちリセット”は、プレイヤーによって評価が大きく分かれた。
賛成派は「失敗も学びとして成立する」「物語的必然がある」と絶賛する一方で、否定派は「毎回同じ冒頭を見せられるのが煩わしい」と不満を漏らした。

特に複数ルートを追うプレイヤーにとって、同じ導入部を何度も読み返すのは苦痛であり、スキップ機能がないことが致命的だった。
中盤以降のフラグがシビアなため、少しの選択ミスで夢に戻され、再び序盤からプレイする羽目になる。この点については、当時の雑誌でも「リプレイ性を高める工夫がほしい」と指摘されている。

一方で、この夢システムこそが本作の哲学的なメッセージ(歴史の繰り返し、学びとしての過ち)を体現していることを考えれば、単なる欠点とは言い切れない。
プレイヤーにとっては“忍耐と洞察を試される構造”でもあったのだ。

説明不足な歴史的背景

歴史を舞台にしているがゆえに、史実の理解が浅いプレイヤーには一部の展開が分かりづらいという問題もあった。
源平合戦の流れや登場人物の関係が十分に説明されないまま物語が進行するため、初見では「誰が敵で、誰が味方なのか」が曖昧に感じられる部分がある。
また、戦の位置関係や時代の流れが省略されており、史実を知らないプレイヤーは混乱しやすい。

これはシナリオのテンポを重視した結果とも言えるが、せめて簡易な年表や人物紹介をメニューから参照できる機能があれば、より幅広い層に親しまれたはずだ。
ただ、この“情報の欠落”が逆に神秘性を生んでおり、「断片的な歴史の中に身を置く感覚がリアル」と感じたプレイヤーも存在するのは興味深い。

ロード・セーブの制約とフラグ管理の不明瞭さ

当時のパソコンゲーム全般に言えることだが、セーブデータの管理は煩雑だった。
『艶談・源平争乱記いろはにほへと』では、セーブスロット数が限られており、しかもセーブ時にフロッピーディスクの入れ替えが必要な機種もあった。
さらに、どの場面でセーブすべきか明示されないため、「誤ってバッドルート直前で上書きしてしまった」というケースも多かった。

また、分岐フラグが内部的に複雑で、会話の選択内容がどのように影響するのかが不透明だった。
このため、「政子の好感度を上げたつもりが逆効果だった」「義経の信頼度が下がる条件がわからない」といった声も多く、プレイヤーにとってはやや不親切な設計に感じられた。

演出面での冗長さとテキストの偏り

物語のボリュームが多いことは長所でもあるが、一部では“冗長すぎる”という評価もあった。
特に政子や弁慶の会話パートでは、同じ主張を何度も繰り返すような長文が多く、テンポが停滞する場面も見られる。
また、静御前ルートの終盤では情緒描写が非常に細やかである反面、戦闘描写が淡泊になっており、プレイヤーによってはバランスの悪さを感じた。

文章全体としては優れた文体を持っているが、シナリオライターの文学的志向が強すぎたために、ゲームとしての“リズム”を損なってしまった箇所もある。
このあたりは、後にSTUDIO ANGELが次作『戦国絵巻』でテンポ改善を図るなど、開発側も課題として意識していたようだ。

ハードウェア依存による差

マルチプラットフォーム展開ゆえに、機種ごとの品質差も批判の対象となった。
PC-8801版では色数の少なさが致命的で、夜のシーンが暗すぎてキャラクターの表情が見えづらい。
FM-7版ではBGMの再生が不安定で、音が途切れることがあり、プレイヤーの没入感を削いだ。
一方でX68000版だけが圧倒的な完成度を誇ったため、他機種のユーザーが不公平感を覚えたのも事実だ。

このように、当時の技術的格差が作品体験に直接影響してしまうのは、パソコン時代特有の宿命であった。

総評――構想の壮大さゆえの“手の届かない完成”

総じて、『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の欠点は、“挑戦しすぎた”がゆえの未完成さにある。
物語の深さ、構成の複雑さ、テーマの哲学性――どれも当時としては革新的だったが、それを支える技術とユーザー環境が追いついていなかった。
それでもこの作品が“欠点さえ魅力的”と評されたのは、開発陣の真摯な姿勢と創造への情熱が感じられるからだ。

時代の壁に阻まれながらも、彼らはアダルトゲームを“思想を語る舞台”へと押し上げようとした。
その理想の高さこそが、本作の最大の弱点であり、同時に最も美しい部分でもあった。

[game-6]

■ 好きなキャラクター

静御前 ―― 儚くも強い「愛と誇りの象徴」

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の登場人物の中でも、圧倒的な人気を誇るのが静御前である。
彼女は義経の愛妾として歴史上にも名を残す人物だが、本作では単なる悲劇のヒロインではなく、時代と運命に立ち向かう女性として描かれている。
その凛とした姿勢と心の奥に秘めた情熱が、多くのプレイヤーの心を掴んだ。

静御前ルートでは、彼女が義経を想いながらも主人公・東国武士に心を寄せるという複雑な心理が繊細に描かれている。
彼女の愛は決して奔放なものではなく、義経への忠義と恋慕のはざまで苦しみながらも、最期まで“義を選ぶ”という誇りを失わない。
プレイヤーがどのルートを進んでも、彼女の選択には一貫した強さがあり、それが“悲劇を超えた美しさ”として深く印象に残る。

とくに名場面として語り継がれるのが、義経が都落ちする夜、静御前が主人公の前で舞を披露するシーンだ。
BGMがほとんど消え、彼女の言葉が淡々と流れる――
「私はこの舞で、愛を伝え、別れを告げるのです」
その瞬間、画面の向こうにいるプレイヤーも、時代の風を感じるような静けさに包まれる。
この演出こそが、彼女が“艶談”の象徴である所以である。

北条政子 ―― 愛と野心の狭間で揺れる女政治家

静御前と対照的な立ち位置で描かれているのが北条政子である。
史実では冷徹な政治家として知られるが、本作では「女としての感情」と「権力者としての理性」が拮抗する人間味あふれるキャラクターとなっている。

政子は頼朝の妻でありながら、義経の才能に強く惹かれている。
しかし同時に、義経の存在が頼朝の立場を脅かすことを理解しており、その板挟みの中で心を蝕まれていく。
プレイヤーが政子と親しい関係を築くと、彼女の内面の脆さと孤独が露わになり、官能的でありながら痛切なドラマが展開される。

多くのプレイヤーが政子を“最も人間らしいキャラクター”と評するのは、彼女が誰よりも「自分の感情に正直」だからだ。
政治の冷酷さを知りながら、それでも愛にすがりたい――そんな彼女の姿は、権力者という仮面を脱ぎ捨てた一人の女性の叫びとして胸を打つ。
政子ルートの最後に見られる「私はあなたを愛してはいけなかった」という独白は、シリーズ全体でも屈指の名台詞として知られている。

源義経 ―― 理想と孤独を背負った悲劇の天才

義経はこの作品における“理想”の象徴であり、同時に“破滅”の象徴でもある。
彼の登場シーンは常に光に包まれ、カリスマ性に満ちているが、その輝きが強すぎるがゆえに、周囲を焼き尽くしてしまうような危うさを持っている。

彼が主人公に心を許し、「お前の時代では我が名はどう伝わっておる?」と問う場面は、歴史を知るプレイヤーにとって極めて印象的だ。
その問いには、「自分が敗者として語られていることを悟っているような哀しみ」が滲む。
彼は勝利を求めるが、それ以上に「理解されたい」と願っているのだ。

プレイヤーが義経を天下人へ導くルートを選ぶと、彼は短命ではなく栄光の中で生涯を閉じる。
だが、そのエンディングで静御前が流す涙は、彼の勝利が“本当に幸福だったのか”を問いかける。
義経というキャラクターは、勝者にも敗者にもなりうる存在として描かれ、プレイヤーの選択によって“歴史の意味”が変わる構造を象徴している。

弁慶 ―― 武力と忠義を体現する「人間的な賢者」

多くの歴史作品で“豪快な力自慢”として描かれる弁慶だが、本作ではその人物像に深い洞察が加えられている。
彼は義経の忠臣であると同時に、主人公にとっても「歴史を導く指南役」として重要な役割を果たす。
弁慶はときに厳しく、ときに温かく、プレイヤーに「選択の重み」を教えてくれる存在だ。

印象的なのは、義経が危険な戦に出陣する際、弁慶が主人公に語る一言である。
「忠義とは、己を失ってでも果たすものだ。だが、それを果たす価値がある主君を見極めねばならぬ」
この言葉は、プレイヤーに“義”とは何かを問いかける哲学的メッセージとして深く残る。

また、弁慶は戦闘イベントでも実際にプレイヤーの判断を支援する役割を担っており、彼の助言次第で戦局が変わることもある。
彼は単なる脇役ではなく、「歴史を理解するための声」として機能しているのだ。

東国武士(主人公) ―― 歴史の傍観者から“操り手”へ

主人公・東国武士は、現代の高校生でありながら、歴史の渦中に放り込まれた存在である。
最初はただの無知な若者として描かれるが、物語が進むにつれ、義経や政子との出会いを通じて“歴史を動かす者”へと成長していく。

彼の魅力は、決して英雄的ではない点にある。
弱さを抱え、迷いながらも行動する姿にプレイヤー自身の姿を重ねられるため、自然と感情移入できるのだ。
そして彼が最終的に現代に戻るラストでは、静香との何気ない会話の中に、プレイヤーが歩んできた“歴史の記憶”がさりげなく反映される。
「夢だったかもしれないけれど、あの時の風は確かに吹いていた」というモノローグは、長い旅の終わりを静かに締めくくる名シーンである。

彼は単なる物語の“語り手”ではなく、プレイヤーそのものの投影だ。
彼の決断、迷い、そして想いは、すべてプレイヤーの行動によって変化する。
この双方向的な構造が、ゲーム全体を“体験する物語”へと昇華させている。

山本静香 ―― 現代と過去をつなぐ知的ヒロイン

主人公のクラスメイトである山本静香は、物語の冒頭とエンディングで登場する一見脇役のような存在だが、実は作品全体の鍵を握っている。
彼女は現代パートで主人公を冷静に批判する役割を担い、「歴史を知らない者は夢を見る」と言い放つ。
この言葉が、全編を貫くテーマ“学びと成長”の伏線になっているのだ。

プレイヤーが夢の世界から戻ってきたとき、静香が投げかける一言は毎回異なる。
そのセリフの微妙な変化によって、プレイヤーは「自分の選択が何を意味したのか」を反省させられる。
彼女はゲーム全体を俯瞰する“現実の語り部”として存在し、ある意味では“プレイヤーの良心”を象徴していると言える。

静香を好きなプレイヤーは少なくない。
彼女の冷たさの裏に見える知性と優しさ、そして物語を通して少しずつ柔らかくなっていく人間味が、隠れた人気を支えている。

サブキャラクターたち ―― 歴史を彩る名脇役

弁慶や政子以外にも、多くの魅力的な脇役たちが物語を支えている。
たとえば、平家方の女性「常磐御前」は義経の母として登場し、息子の運命を予感しながらも黙して見守る。
また、平清盛の残党たちや、都の陰で情報を売買する女間者など、すべての登場人物に背景が与えられており、彼らの存在が“時代の重み”を形づくっている。

こうしたサブキャラクターの厚みが、世界観を豊かにし、プレイヤーを“ひとつの時代に生きている”感覚へと導いている。

総評 ―― 登場人物が“生きていた”作品

本作が長年にわたりファンに愛される理由は、登場人物たちが単なるゲーム上のデータではなく、“血の通った人間”として描かれているからだ。
誰もが欲望と信念を持ち、誰もが後悔を抱える。
それぞれのキャラクターが生きた時間の重さを感じさせることで、物語全体が現実のように息づいている。

静御前の舞、政子の涙、義経の孤独、弁慶の叫び、静香の微笑――
それらのすべてが、プレイヤーの心に“時代の記憶”として刻まれる。
この作品に登場するキャラクターたちは、ただの登場人物ではなく、物語の中で共に生き、共に歴史を創る“仲間”なのだ。

[game-7]

●対応パソコンによる違いなど

時代を象徴するマルチプラットフォーム展開

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、1980年代後半のパソコン市場において珍しい“同時多機種展開”を行ったタイトルだった。
PC-8801、MSX、X1、FM-7、そしてハイエンド機であるX68000。
それぞれのマシンに合わせて、グラフィックの描画方式・音源形式・操作感などが丁寧に最適化されており、単なる移植に留まらない「機種ごとの完成版」と呼べる作りになっていた。

当時の開発現場では、プログラム言語や解像度、カラーパレット数が機種ごとに大きく異なり、完全な移植は容易ではなかった。
しかし本作では、STUDIO ANGELが各プラットフォームの特性を理解し、脚本・演出・音楽のバランスを個別にチューニングしている。
その結果、ユーザーは自分の所有機種でありながら、それぞれ異なる“平安絵巻”を体験することができたのだ。

PC-8801版 ―― 原点にして“物語性重視”の基礎

PC-8801版は、本作の開発ベースとなったオリジナル仕様である。
8色パレットという制限の中で、陰影や筆線の繊細さを活かしたグラフィックが特徴的だった。
背景はほとんどが一枚絵で構成され、人物立ち絵はやや小ぶりながらも表情差分が豊富で、物語の進行に応じて微妙に変化する。

また、このバージョンではテキスト速度が最も安定しており、当時としては珍しく“漢字かな混じり文”を多用していた。
これにより、文学的な台詞回しと歴史的な語彙の雰囲気がうまく融合し、プレイヤーが物語に没入しやすかった。
BGMはFM音源対応機では簡易的な三和音構成だったが、場面転換時の静寂とのコントラストが強調されており、脚本を味わうには最も落ち着いた環境だったといえる。

ユーザーの間では「地味だが完成度が高い」「最も“物語”を感じられる版」と評されており、今でもファンの間で支持が厚い。

MSX版 ―― コンパクトながら健闘した“庶民派の源平絵巻”

MSX版は、当時家庭向けとして広く普及していたマシンに向けて移植されたもので、解像度・色数ともに制約が多い中でよく再現された佳作である。
特筆すべきは、テキスト量を大幅に削らず、ほぼPC-8801版と同等のシナリオを保持していた点だ。
それゆえにディスク容量が限界に近く、読み込み時間が長くなったのは難点だったが、家庭用環境でも“本格的なアドベンチャー体験”を楽しめたことは画期的だった。

一部イベントではカットシーンが簡略化され、静御前の舞のシーンなどが静止画中心になっていたが、演出のタイミングは巧みに再構成されており、物語の流れを損なっていない。
また、音源チップを駆使した電子琴のような効果音が意外に雰囲気を高め、限られたリソースで最大の演出を引き出していた。

プレイヤーの中には「MSXでここまでやるとは思わなかった」と驚いた人も多く、当時の家庭用パソコン層に歴史アドベンチャーという新たなジャンルを広めた功績は大きい。

X1版 ―― 彩色と描線の美しさを両立させたアート的完成度

X1版はグラフィック表現に特化してチューニングされたバージョンで、他機種よりも色彩の幅が広く、特に衣装や背景のグラデーション表現が際立っていた。
背景の陰影はより柔らかく、夜の都や桜の散るシーンなどで光の粒子を感じさせる美しい発色が実現されている。

サウンドもX1のFM音源を最大限に活かし、笛の高音や鼓の響きが立体的に再現されている。
その結果、プレイヤーの間では「最も和風情緒が感じられる版」「音楽と絵が一体化している」と評された。

ただし、メモリ容量の関係で一部台詞が削られており、PC-8801版に比べると若干テンポが速い。
このテンポの良さを好むプレイヤーも多く、「物語をサクサク読めてドラマ性が引き立つ」とポジティブに受け止められていた。
アート的完成度と操作感のバランスが取れた、非常に完成度の高い移植である。

FM-7版 ―― 劇伴の臨場感が魅力の“音重視版”

FM-7版は、他機種に比べてグラフィック表現ではやや劣るが、BGMと効果音の調整が素晴らしく、“聴かせる源平絵巻”としての個性を発揮していた。
開発陣は音響演出にこだわり、戦場では太鼓の低音が響き、恋愛シーンでは琴の残響が余韻として残るよう設計されていた。

また、このバージョンのみで確認できる独自仕様として、“BGMモード”が存在した。
タイトル画面で特定のキーを押すと全楽曲を試聴できるという隠し機能があり、ファンの間で“サウンドテストの走り”として知られている。

一方、テキスト表示が若干もっさりしており、読み込み中に画面が暗転する仕様が煩わしいとの意見もあった。
しかし音楽と物語を同時に堪能できるという点で、FM-7版を“最も情緒的”と推すユーザーも少なくなかった。

X68000版 ―― 決定版とも呼ばれる“完全再構築バージョン”

すべてのバージョンの中で、最も高く評価されたのがX68000版である。
高解像度・高速処理・FM音源+PCMの混在によって、他機種とは別次元の完成度を誇った。

背景の細部描写はまさに芸術的で、屏風絵風の構図の中に桜の花びらや行灯の灯りがアニメーションする。
キャラクター立ち絵の彩色は柔らかく、髪や衣装のグラデーションが滑らかに変化するため、まるで一枚の絵画が呼吸しているかのようだった。

加えて、このバージョンでは新規の挿入カットが追加されており、静御前の舞、政子の独白、義経の最期などに専用の1枚絵が挿入される。
これらは他機種には存在しない“X68K専用イベント”であり、ファンからは“完全版”“真の艶談”と称された。

BGMもPCMサンプリングによる生音風アレンジが施され、笛や琴の音がよりリアルに響く。
特にオープニングテーマの荘厳な旋律は、プレイヤーの間で「まるで映画のよう」と語り継がれている。

機種ごとに異なる魅力の共存

こうして比較すると、各バージョンにはそれぞれ異なる個性が存在する。

PC-8801版:原典的で“文章と物語”を堪能できる。

MSX版:家庭向けで手軽に楽しめる“温かみのある簡潔版”。

X1版:色彩と音の調和が美しい“情緒派”。

FM-7版:音響の余韻に酔う“聴覚重視派”。

X68000版:映像・音・演出すべてが揃った“決定版”。

プレイヤーの求める体験によって「どれが最高か」は変わるが、いずれも単なるダウングレードではなく“別の味わい”を持っていた。
この丁寧な機種対応こそが、STUDIO ANGELの職人気質と、全流通の販売戦略の的確さを物語っている。

現代における再評価 ―― ハードの差を超えた“物語の普遍性”

今日、エミュレーション環境や動画配信で各バージョンを見比べることが可能になったが、ファンの間では「どの機種で遊んでも物語の感動は変わらない」と語られている。
グラフィックや音の差は確かに存在するものの、脚本の質と登場人物の魅力がすべてを超えているのだ。
それこそが、この作品が“メディアの限界を越えた物語”として語り継がれている理由だろう。

[game-10]

●同時期に発売されたゲームなど

★『ドラゴンスレイヤー 英雄伝説』

・日本ファルコム・1989年・定価8,800円

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』とほぼ同時期に登場したファルコムの代表作。
RPGとしての骨格を持ちながらも、ストーリー性を重視した構成で、プレイヤーを物語の主人公に“なりきらせる”ことを重視していた。
この作品の成功によって、パソコンゲームが単なる難解なパズルや戦闘シミュレーションから「叙事詩的な体験」へと進化していく流れが加速した。

本作もまた“時代と人間の運命”を描いたという点で、源平争乱記シリーズと通じるものがあり、ユーザーの中には両方を遊んで“物語の質”を比較するプレイヤーも多かった。

★『Ys II – ANCIENT Ys VANISHED THE FINAL CHAPTER -』

・日本ファルコム・1988年・定価8,800円

当時のパソコンRPG黄金期を象徴する一作で、アクション性とドラマティックな演出を融合させた傑作。
神話的な世界観と恋愛要素が見事に組み合わさっており、『艶談・源平争乱記』の“恋と運命”のテーマに共鳴している。

特にPC-8801・FM-7・X68000など複数機種で展開された点も共通しており、グラフィックや音源の差がゲーム体験に与える影響をユーザーが意識し始めた時期でもあった。
この潮流の中で“同時多機種リリース”という試みが一般化し、本作のようなマルチ展開タイトルが増加した。

★『天使たちの午後III〜リボン〜』

・ジャスト・1988年・定価7,800円

アダルトアドベンチャーとして高い人気を博した「天使たちの午後」シリーズの第三弾。
現代的な恋愛を題材にしている点で『艶談・源平争乱記』とは異なるが、情緒的な文章表現や人物心理の描写は同じ“STUDIO ANGEL系”の文体文化を共有していた。

この作品が示したのは、“アダルト=過激”ではなく、“アダルト=成熟した感情”という方向性であり、艶談シリーズのような知的官能路線の礎となった。

★『戦国絵巻・花の章』

・STUDIO ANGEL・1989年・定価8,800円

『艶談・源平争乱記いろはにほへと』の後続として制作されたシリーズ第二弾。
舞台を戦国時代に移し、織田信長とその周囲の女性たちの愛憎劇を描く。
シナリオ面ではより文学的要素が増し、会話の余韻や心理描写が緻密になっている。

また、前作で批判の多かったテンポ面を改善し、スキップ機能を導入。
ゲームオーバー時の“夢落ち”演出も簡略化され、より多くのプレイヤーがマルチエンディングを体験できるようになった。
艶談シリーズを通して見ると、この作品が“物語アドベンチャー”の完成形に近い位置にある。

★『レリクス』

・ボーステック・1987年・定価7,800円

超古代文明をテーマにしたSFアクションアドベンチャー。
プレイヤーが幽体となり、さまざまな肉体に“憑依”して進行する独自システムが話題を呼んだ。
この“憑依”という概念は、のちの艶談シリーズにも影響を与えたとされ、時代を超える視点で過去の人物に関わる構造の先駆けと言える。

特にX68000版ではアニメーションの滑らかさが際立ち、当時のパソコンユーザーの間で「技術の到達点」とまで称された。

★『サイレントメビウス』

・ウルフチーム・1989年・定価9,800円

人気漫画をもとにしたビジュアルアドベンチャーで、女性主人公が活躍する近未来伝奇作品。
物語とビジュアルを中心に構成された点で、『艶談・源平争乱記』と並び称される“シナリオ主導型”タイトルである。

本作ではアニメ調のグラフィックが採用され、同時期のアダルト・歴史系アドベンチャーに対して“スタイリッシュ路線”を提示した。
パソコンゲームが“読む物語”から“魅せる物語”へと変化していく過渡期の象徴的存在であった。

★『デザイア』

・キララソフト・1989年・定価8,800円

人間の欲望と倫理を主題に据えた問題作。
官能と哲学を融合させた作風で、“知的アダルトゲーム”という新しい領域を切り開いた。
“性”をテーマとしながらも、そこに宿る「善と悪」「愛と支配」の対立を深く掘り下げることで、単なる官能作品に終わらせなかった。

『艶談・源平争乱記』と同様、プレイヤーに“考えさせる”要素が多く、プレイ後に余韻が残る作品として語り継がれている。

★『リグラス』・フェアリーテール・1988年・定価8,800円

壮大なファンタジー世界を舞台にした恋愛アドベンチャーで、登場する女性キャラの心理描写が秀逸だった。
プレイヤーの行動選択によって物語の方向性が細かく分岐し、感情の流れがダイレクトに変化する構造は、のちの“分岐型ノベル”の原点ともいえる。

本作が示した「物語体験=感情体験」という考え方は、『艶談・源平争乱記』の“選択が歴史を変える”設計思想と根を同じくしている。

★『エルフを狩るモノたち(初期試作版)』

・アリスソフト・1989年・非売品

アリスソフトが後年の代表的ブランドになる以前に発表した初期のギャグ+冒険系試作タイトル。
当時のアダルトゲーム市場では珍しい“笑いと冒険”の融合を試みており、官能一辺倒ではない多様な方向性を提示した。
この動きにより、アドベンチャーゲームの表現領域が一気に広がった。

『艶談・源平争乱記』のように歴史や文学的モチーフを扱う作品と対照的に、“娯楽の中の自由さ”を象徴するタイトルである。

★『カオスエンジェルズ』

・Kogado Studio・1988年・定価9,800円

美少女RPGの原型ともいえる作品で、ターン制バトルとストーリードリブンの融合が特徴。
神話的世界観と道徳的葛藤を描く点では、『艶談・源平争乱記』と同様の“運命を問う物語構造”を持っていた。

グラフィックの描き込みは非常に高く、キャラクターデザインの美しさがプレイヤーの没入感を高めた。
また、マルチエンディングを採用した点でも革新的で、歴史や哲学をテーマにしたゲーム群の中で重要な位置を占めている。

★『ポートピア連続殺人事件(PC移植版)』

・エニックス・1987年・定価7,800円

すでにファミコン版で有名だったが、パソコン版のリメイクは1987~88年にかけて再注目された。
この作品が築いた「コマンド選択型アドベンチャー」の形式が、多くの後発作品――とくに『艶談・源平争乱記』のような選択肢中心構成――に大きな影響を与えている。

事件を追う過程で“プレイヤー自身の論理”が問われる仕組みは、歴史改変をテーマにした艶談シリーズの“思考型プレイ”にも通じるものであった。

同時代の流れと『艶談・源平争乱記』の位置づけ

こうした1987〜1989年前後のパソコンゲームは、いずれも“物語を読むゲーム”から“物語を体験するゲーム”へと移り変わる時期を象徴している。
『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、その潮流の中で“歴史と官能を融合した知的アドベンチャー”という独自の路線を築き上げた。

ほかの同時期作品が未来やファンタジーを舞台にしたのに対し、本作は日本史を題材にしながら“過去を変える快感”と“人間の情の深さ”を融合させたことで際立った個性を放っている。
その挑戦は後続のアダルトADV、ノベルゲーム、さらには近年の“タイムリープ系作品”にまで影響を与え続けている。

総評 ―― 一時代を彩った群像の中の異彩

1980年代後半という、パソコンゲーム文化が文学と映像の狭間に揺れていた時代。
その中で『艶談・源平争乱記いろはにほへと』は、知性と情熱を併せ持つ作品として異彩を放った。
当時の他タイトルが「技術的進化」を競っていたのに対し、本作は「表現の深さ」で勝負していたのだ。

だからこそ今振り返ると、当時の市場の中で最も“異質でありながら美しい”存在として記憶されている。
それはまさに、歴史と愛、夢と現実の狭間で生きるすべての人への静かな賛歌だった。

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発売日 - メーカー NEC 型番 PC-98D63-VW(K) 備考 メディア:3.5インチFD(4枚組) 関連商品はこちらから NEC 

【中古】ロボクラッシュ98 PC-9801 5インチソフト

【中古】ロボクラッシュ98 PC-9801 5インチソフト
730 円 (税込) 送料込
ロボクラッシュ98 PC-9801 5インチソフトスリーブケース・外箱・印刷物・紙ケース・PCソフト(ゲームディスク1&2)あり。スリーブケースや外箱、印刷物に汚れ有り。特に記述の無い場合、帯や初回特典等は付属致しません。目立った汚れなどがあった場合は記載するようにしてお..

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO 同梱特典オリジナルNEC PC-9800シリーズ版 DLCカード 付-PS4

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO 同梱特典オリジナルNEC PC-9800シリーズ版 DLCカード 付-PS4
14,925 円 (税込)
PS4用 不朽の名作が現代に蘇る!

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 龍王三國志[HDD専用/3.5インチ版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 龍王三國志[HDD専用/3.5インチ版]
1,270 円 (税込)
発売日 - メーカー RON 型番 - JAN 4948355004020 備考 ■商品内容物・ゲームディスク(5枚)・マニュアル・クイックリファレンス・インストールマニュアル 関連商品はこちらから 龍王三國志  RON 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 超時空要塞マクロス スカルリーダー

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 超時空要塞マクロス スカルリーダー
4,630 円 (税込)
発売日 - メーカー - 型番 - JAN 4988709980365 関連商品はこちらから マクロス  マクロス 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト リューヌ伝説〜時空の彼方〜

【中古】PC-9801 3.5インチソフト リューヌ伝説〜時空の彼方〜
14,200 円 (税込) 送料込
発売日 1992/04/24 メーカー ブラザー工業 型番 - JAN 4977766090254 備考 UV以降 関連商品はこちらから ブラザー工業 

【中古】PC-9801 3.5インチソフト きまぐれオレンジロード夏のミラージュ[3.5インチ版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト きまぐれオレンジロード夏のミラージュ[3.5インチ版]
51,000 円 (税込) 送料込
発売日 1988/09/14 メーカー マイクロキャビン 型番 - JAN 4988608841446 中古注意事項 ※中古商品につきましては、ステッカーは保証の対象外とさせていただきます。 備考 ■商品内容物・ゲームディスク(2枚)・マニュアル・カセットレーベル 関連商品はこちらから きまぐれオ..

【中古】PC-9801 3.5インチソフト DokiDokiぷりてぃリーグ 第4話[3.5インチ版](TAKERU用ソフト)

【中古】PC-9801 3.5インチソフト DokiDokiぷりてぃリーグ 第4話[3.5インチ版](TAKERU用ソフト)
3,940 円 (税込)
発売日 - メーカー グレイト 型番 - 備考 ※こちらの商品は、PCソフト自動販売機「ソフトベンダーTAKERU(武尊)」で販売されたソフトになります。TAKERUシリーズのパッケージは自動販売機用に簡略化されており、販売時期により仕様が異なるため、中古商品につきましてはディス..

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 復刻版 三國志II[3.5インチ版]

【中古】PC-9801 3.5インチソフト 復刻版 三國志II[3.5インチ版]
12,380 円 (税込) 送料込
発売日 - メーカー コーエー 型番 - JAN 4988615006524 関連商品はこちらから 三国志  コーエー 
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