【発売】:コナミ
【対応パソコン】:MSX など
【発売日】:1986年
【ジャンル】:アクションゲーム
■ 概要・詳しい説明
■ 世界的なアーケード作品を、コナミがMSX向けに大胆に再構築した異色の『Qバート』
『Qバート(Q*bert)』は、1980年代前半のアーケードゲーム黄金期を代表する作品のひとつとして知られている。原点となったアーケード版は、アメリカのゴットリーブによって1982年に登場したアクションゲームで、立方体を積み重ねたピラミッド状のフィールドを主人公が飛び跳ねるという、当時としては非常に個性的な画面構成を採用していた。立方体を斜め上方から見下ろしたような疑似立体表現は、一見すると単純なドット絵でありながら奥行きを強く感じさせ、平面的な迷路や固定画面シューティングが多数を占めていた時代に強烈な印象を残した。主人公がキューブへ着地すると色が変化し、決められた状態まで全体を塗り替えることでステージを突破するという考え方も特徴的で、反射神経だけではなく、次にどこへ移動するのかを考えるパズル的な判断力が求められるゲームだった。原作は北米を中心に人気を獲得し、その後Atari系ハードやColecoVision、Commodore 64など数多くの家庭用ゲーム機・コンピューターへ展開される大きなシリーズへ成長していく。
そうした流れの中で登場したのが、コナミによるMSX版『Qバート』である。一般には1986年頃のコナミ作品として扱われることが多い一方、日本での商品発売について1987年初頭として整理される資料もあり、発売時期には資料上の表記差が見られる。国内ではROMカートリッジ方式の商品として販売され、MSX本体へ挿すだけですぐに遊べる、当時のコナミらしい扱いやすいパッケージソフトだった。
さらに重要なのは、このMSX版を「1982年のアーケード版Qバートをそのまま家庭用コンピューターへ移植したゲーム」と考えると実態を正しく捉えられないことである。タイトルは確かに『Qバート』だが、ゲームシステムは原作そのものよりも、その後に作られた『Q*bert’s Qubes』系のアイデアを強く発展させた構成になっている。アーケード版ではキューブを踏むことで主に色を変えることが目的だったのに対し、MSX版ではキャラクターが着地するたびに立方体そのものが回転し、各面の配色や向きを変化させる。画面に示された完成見本を確認しながら、フィールド上のキューブを同じ状態へ整えていくことが基本目的となっており、原作よりもパズルゲームとしての比重が高められているのである。
この変更によって、ゲームの感触も大きく変化した。単に未踏のキューブを探して順番に踏んでいけばいいわけではなく、「このキューブをこちら側から踏めば、どの面が表へ出るのか」「目的地へ行く途中で既に揃えたキューブを再び動かしてしまわないか」といった先読みが必要になる。立方体の配置そのものも毎ステージ同一ではなく、先へ進むほど形状が変化していくため、プレイヤーは盤面全体をひとつの立体パズルとして捉えなければならない。『Qバート』という題名から想像される軽快なジャンプアクションを残しながら、思考型ゲームへ大きく踏み込んだ点こそ、コナミ版ならではの最大の個性といえる。
■ キューブを「踏む」のではなく「回す」――アクションと立体パズルが融合した基本システム
MSX版の基本的な遊び方は、一画面に配置された多数の立方体の上を主人公がジャンプで移動し、それぞれのキューブの向きを調節して指定された模様を完成させるというものになっている。画面は斜め上からフィールドを眺めるクォータービュー風の構成であり、上下左右という一般的なゲーム画面の感覚より、「斜め方向へ飛び移る」という独特の空間認識が重要となる。見た目だけならカラフルでかわいらしい固定画面ゲームだが、実際には一手ごとの影響を考えなければならない論理性の高い作品である。
移動に使用するのはカーソルキーで、主人公は隣接したキューブへジャンプする。さらに特殊な操作や能力によって通常より長い距離を飛ぶ場面も存在し、ステージが複雑になってくるとキューブ同士の間に空白が設けられ、普通に隣接する足場だけでは進めない場所が現れる。そのため、単純にキャラクターを動かすのではなく、どの位置へ着地するかを正確に判断しながら操作するところに、本作特有の緊張感が生まれる。
キューブには複数の色面が用意されており、主人公が乗る方向に応じて回転する。完成させるべき状態の見本を確認しながら盤面を修正していくことになり、序盤では比較的単純な条件が提示されるため、まずは「ジャンプするとキューブがどのように回るのか」という規則を身体で覚えることが中心となる。しかしゲームが進むと、同じキューブへ何度も乗る必要が生じたり、一度完成させた場所を移動経路として踏まざるを得なくなったりするため、急激に頭を使う場面が増えていく。
この仕組みが面白いのは、「目的のキューブへ最短距離で移動すること」と「盤面を正しい状態へ完成させること」が必ずしも一致しない点である。例えば、目的地へ向かうために完成済みの立方体へ再度着地すると、そのキューブが回転して不正解の状態へ戻ってしまう場合がある。そのため、プレイヤーは単純な移動効率ではなく、「完成状態を崩さずにどの経路を通るか」という視点を持つ必要がある。アクションゲームなら安全な近道となるルートが、パズルとして考えると逆に遠回りの原因になることも珍しくない。
さらに敵キャラクターが盤面へ侵入することで、落ち着いて解答手順だけを考えていられないのもポイントである。あと一手で完成するという場面でも敵が接近すれば予定していたルートを変更しなければならず、その結果として完成済みのキューブを動かしてしまうこともある。つまり本作では「正しい解法を知っていること」だけでは十分ではない。盤面の状態、主人公の現在位置、敵の移動方向、特殊アイテムの効果など複数の要素を同時に処理する必要があり、純粋なパズルとは異なるリアルタイム性が攻略へ大きく影響する。
■ 原作のQバートではなく「アップ君」が主役――コナミMSX文化を象徴するキャラクター変更
MSX版を語るうえで非常に興味深いのが、タイトルが『Qバート』でありながら、プレイヤーが操作するキャラクターが原作でおなじみのオレンジ色のQバートではないことである。コナミ版では、MSX開発部のマスコットとして使われていた「アップ君」が主人公として登場する。小型のドラゴンを思わせる姿を持ち、原作Qバートとはかなり違った外見である。
この変更は単なるキャラクター差し替え以上の意味を持っている。アーケード版『Qバート』では、長い鼻のような口を持つオレンジ色のQバート自身が作品の象徴であり、敵にやられた際のコミカルな演出などによって人気キャラクターとなった。一方MSX版では、その世界的に知られた主人公を前面に出すのではなく、コナミ自身のMSX文化と結びついたキャラクターを主役に据えた。ゲームシステムについても原作を大幅にアレンジしているため、結果としてMSX版は「Qバートのブランドを使ったコナミ独自のアクションパズル」と表現した方が実態に近い。
ゲーム中ではアップ君がキューブからキューブへ軽快に飛び移り、着地するたびに立方体が回転していく。かわいらしいキャラクターとカラフルなブロックが絶えず動くため、パズルゲームとしては画面上の変化が多く、眺めているだけでも賑やかである。単色の盤面へ色を塗っていく原作とは異なり、立方体の複数面が切り替わることで見た目そのものが頻繁に変わり、完成へ近づいているのか逆に崩してしまったのかを視覚的に判断できる。
ゲームを妨害する存在も登場し、フィールドを自由に歩き回る主人公に対してさまざまな圧力をかけてくる。ただし、原作で有名なコイリー、アグ、ロングウェイ、スリック、サムなどをそのまま並べた単純な再現作品ではない。原作『Qバート』では、蛇のコイリーが主人公を追跡し、アグやロングウェイがキューブの側面を奇妙な方向へ進み、スリックやサムが完成したキューブを元へ戻してしまうという役割分担が設定されていた。それに対しMSX版は別系統のデザインを採用し、ステージ攻略を妨害する敵と各種特殊効果を組み合わせる方向へ発展している。
■ 多彩な盤面と二人対戦――同じキューブ遊びを繰り返させないステージ設計
コナミ版『Qバート』の大きな特徴として挙げられるのが、ステージごとに盤面そのものの形が変化していくことである。原作アーケード版ではピラミッド型フィールドが中心だったのに対して、MSX版ではさまざまな形に配置されたキューブ群が登場し、多数のステージが用意されている。
この構成によって、プレイヤーは前のステージで覚えた移動経路をそのまま流用することができない。序盤では規則的に並んだキューブが中心だが、先へ進むにつれて通路のように細く連結された部分、途中に隙間が存在する場所、複数の区域が離れて配置されたような構造などが現れ、「どのキューブをどの順序で回すか」だけでなく、「そもそもどうやって目的地まで到達するか」という問題まで発生する。
さらに本作には二人で遊べる要素もあり、一人プレイとは異なる駆け引きが生まれる。対戦相手の位置や次の行動を意識しながら自分の目的を達成する必要があるため、固定画面型パズルでありながら対人戦らしい心理戦が生まれる。自分の完成条件だけを追いかければいいとは限らず、相手の進路を読んで有利な位置を確保したり、相手が完成へ近づいている場所へ先回りしたりすることで、二人プレイならではの緊張感が加わる。
■ 1980年代MSXにおけるコナミ作品としての位置づけ
1980年代半ばのMSX市場でコナミは非常に積極的なソフト展開を行っており、アクション、シューティング、スポーツ、迷路ゲームなど幅広いジャンルを供給していた。『Qバート』もその流れの中に置かれる一本であり、日本だけでなく海外のMSX市場にも関係する商品として展開された。
一方で、このMSX版単体について『グラディウス』や『メタルギア』のような具体的な累計販売本数が広く知られているわけではない。そのため、販売本数について根拠のない数字を当てはめるより、「Qバートという世界的ブランドをコナミがMSX向けに独自再設計した作品」として評価する方が適切である。
また、本作はゲームそのものとは別の意味でもMSXファンに知られることになった。コナミ製MSXカートリッジには、機種の複数スロット構成を活用し、別のコナミソフトと同時に挿すことで特殊な効果が発生する組み合わせが存在した。本作『Qバート』もそうしたカートリッジ連動に関係するソフトとして扱われ、他のコナミ作品を遊ぶ際の追加機能目的で利用された例が知られている。このため、純粋な『Qバート』として遊び込む以外にも、「コナミMSXカートリッジの組み合わせ遊び」という独特の文化の一部として記憶されることになった。
作品単体を見れば、タイトルこそ海外アーケードゲームの『Qバート』を受け継いでいるものの、内容は極めてコナミらしい。主人公をアップ君へ変更し、キューブ回転型のルールを中心へ据え、多数の異なる盤面を用意し、特殊能力や長距離ジャンプ、二人プレイまで組み込むことで、原作の単純移植から大きく離れた独立性の高い作品へ仕上げている。
■■■■ ゲームの魅力・攻略・好きなキャラクター
■ 簡単な操作から高度な読み合いへ――遊ぶほど印象が変わるアクションパズル
MSX版『Qバート』の面白さは、最初に画面を見たときの分かりやすさと、実際に遊び込んだときに感じる奥深さの差にある。基本的には主人公をキューブからキューブへジャンプさせ、決められた状態へ盤面を整えていくゲームなので、複雑なコマンド入力や大量のルールを覚える必要はない。移動そのものはシンプルで、キャラクターが着地したキューブが回転して状態が変化するという仕組みさえ理解すれば、初心者でもすぐゲームへ参加できる。しかし、ステージを確実に突破しようとすると、「どの順番でキューブへ乗るのか」「完成したキューブを再び崩さないためにはどこを通るのか」「敵をどちらへ誘導するのか」といった複数の問題を同時に処理する必要が生じる。見た目以上に思考力を要求されるゲームなのである。
一般的なパズルゲームでは、一度正しい位置へ置いたパネルやブロックはそのまま完成状態として残ることが多い。しかし本作では、主人公自身が移動するたびに盤面へ干渉してしまう。目的の場所へ向かうために完成済みのキューブへ再び乗れば、その状態が変わり、せっかく揃えた模様を崩してしまう可能性がある。このため、「一つずつ正解にすれば終わり」という考え方では後半になるほど通用しなくなる。むしろ最後に全体が同時に正しい状態になるよう、途中ではあえて不完全な配置を残しながら進む柔軟な考え方が重要になる。
■ キューブの変化を理解することが攻略の第一歩
『Qバート』を安定して攻略するためには、まず主人公をむやみに動かさないことが大切である。初心者のうちは敵が近づくと焦って連続入力しやすいが、本作では一回のジャンプが盤面そのものを変化させる。そのため、不要な一歩が後になって大きな遠回りを生むことがある。
序盤で意識したいのは、「どの方向からキューブへ着地したとき、どの面がどの位置へ移動するのか」を感覚的に覚えることである。キューブは単純な二色切り替えではなく、立方体として回転するという考え方で扱われるため、プレイヤーはキューブそのものを平面的なマスではなく、「複数の面を持った立体」として理解する必要がある。
攻略に慣れてくると、キューブを一つずつ見るのではなく、盤面全体をいくつかの区画に分けて考えると分かりやすくなる。例えば左側のまとまりを先にある程度整え、その後中央部を経由して右側へ移動し、最後に中央部を完成させるといった考え方である。盤面全体を一度に完全計算する必要はなく、「この区画へはもう戻らなくて済む状態を作る」という小さな目標を順番に達成する方が安定しやすい。
■ 最短距離よりも「壊さないルート」を選ぶのが攻略の基本
普通のアクションゲームでは、目的地まで短いルートを通ることが効率的である。しかし『Qバート』では最短距離が必ずしも最適とは限らない。完成済みのキューブを踏み直すことで状態が変化するため、距離が短くても盤面を大きく崩す経路は避けた方がいい。
上級者になるほど、「移動するためのジャンプ」と「キューブを調整するためのジャンプ」を別々に考えなくなる。移動そのものが盤面操作なので、「このキューブを回しながら次の目的地へ向かう」という二つの目的を同時に達成するルートを探すようになる。無駄なジャンプを減らすほど敵に接触する危険も少なくなり、時間的な余裕も生まれる。
■ 敵は単なる障害物ではなく、ルート設計を狂わせる存在
本作の難易度を大きく上げているのが、盤面上へ現れる敵である。パズルだけなら盤面をじっくり観察して最適な順番を考えればよいが、敵が存在することで悠長に立ち止まってはいられない。敵が近づけば安全な場所へ逃げる必要があり、それまで計画していた手順が崩される。
初心者がやりがちな失敗は、敵が近づくたびにひたすら反対方向へ逃げることである。逃げること自体は正しいが、無計画に移動すると完成したキューブを何度も踏み直し、ステージがいつまでも終わらなくなる。そこで重要になるのが、敵の位置を見ながら「逃げる方向をあらかじめ決めておく」ことである。
敵をただ避け続けるのではなく、自分から遠い区域へ誘導した後、反対側のキューブを一気に処理する。敵の行動を完全に制御できなくても、「今どこに集まっているか」を観察するだけで攻略難易度は大きく変わる。
■ 特殊能力は危険回避だけでなく、攻略手順そのものを変える
ステージ内で得られる各種効果も、本作を単調にさせない重要な要素である。敵の動きを止めたり、一時的に危険を無視できる状態になったり、主人公の移動性能を変化させたりする特殊効果をうまく利用すれば、通常なら難しい場面を一気に突破できる。
特に重要なのがジャンプ能力に関係する強化である。後半のステージではキューブ同士が常に隣接しているとは限らず、離れた場所へ移動する必要が出てくる。そのような場面では長距離ジャンプが攻略上大きな意味を持つ。
この能力は単なる便利機能ではない。通常なら完成済みのキューブを何個も経由しなければならない場所へ直接飛べるなら、それだけでパズルの手順を大幅に短縮できる。つまり「遠くへ行くため」だけでなく、「途中のキューブを変化させずに移動するため」の能力として考えることが重要になる。
■ ミスを減らす最大のコツは連続入力を控えること
本作では操作自体は簡単だが、方向感覚を誤ると即座に危険な状況へ陥る。疑似立体的な画面なので、慣れないうちは「自分が押した方向」と「アップ君が飛んだ方向」が直感的に一致しないことがある。
攻略を安定させるには、一回ジャンプするたびに着地点を確認することが基本となる。特にステージ外周付近では、方向を一つ間違えるだけで足場のない場所へ飛び出してしまう危険がある。慣れてくれば連続入力によってテンポよく進められるが、難しい場面ほど一手ずつ確認した方が結果的には速い。
■ 外周と行き止まりを先に処理すると後半が楽になる
ステージ攻略で有効な考え方の一つに、再訪しにくい場所を早めに処理する方法がある。盤面の中央部は複数方向から進入できるため、後から何度でも調整しやすい。しかし端のキューブや一本の通路の先にあるキューブは、一度離れると再び戻るために多くのキューブを踏まなければならない。
そこで、序盤では外周や行き止まり部分を優先的に処理し、中央部を最後の調整区域として残すと攻略しやすくなる。「後から戻りやすい場所を最後へ残す」という考え方は多くのステージで役立つ基本戦略である。
■ 完成目前ほど慎重に――終盤で起きやすい典型的な失敗
本作で最も精神的に痛い失敗は、ほぼすべてのキューブを揃えた直後に一つを崩してしまい、その修正に向かう途中でさらに別の場所まで崩してしまうことである。あと一歩でクリアという状態になるほど、プレイヤーは焦ってしまう。
この段階では「残り一個だけ」と考えるより、「その一個を直した後、自分がどこへ着地するのか」まで考える必要がある。最後の調整場所へどの方向から接近するかによって必要手数が変わるため、終盤では残りキューブだけを注視するのではなく、その周囲の配置も含めて見ることが重要である。
■ 難易度は「覚えるゲーム」ではなく「考え続けるゲーム」
『Qバート』は、攻略パターンを完全に暗記すれば誰でも簡単に突破できるタイプとは少し異なる。盤面自体には一定の解法や効率的なルートが存在するものの、敵の位置によって予定を変更しなければならないため、毎回まったく同じ操作だけで進めるとは限らない。
後半で重要になるのは、「失敗した理由を理解すること」である。単にゲームオーバーになったからやり直すのではなく、「敵から逃げるために外周へ行きすぎた」「完成済みの中央部を何度も踏んだ」「奥のキューブを最後まで残したため戻れなくなった」と原因を分析すると、次のプレイで大きく改善できる。
■ クリア条件と最終的な目標――多数のステージ踏破を目指す長期戦
基本的なステージクリア条件は、盤面上に存在するキューブを指定された完成状態へ揃えることである。単純にすべての場所を一回ずつ踏めば終了するわけではなく、最終的に画面内のキューブが要求された向き・色の組み合わせになっている必要がある。
ゲーム全体では多数のステージが用意され、先へ進むにつれて盤面形状と要求される操作が複雑になっていく。現代のゲームのように長大な物語を追いかけ、最後に映画的なエンディングを見るタイプではなく、本作における最大の達成感は、難しい盤面を自分の判断で完成させ、さらに次の難題へ挑戦していくことそのものにある。
■ 対戦ではパズルゲームから一転して心理戦へ変わる
二人で遊ぶ場合、本作の印象は大きく変化する。一人プレイでは盤面をいかに効率よく完成させるかが中心になるが、対戦では相手の行動を読みながら自分の目的を達成する必要がある。
相手が次にどこへ移動するのかを予測し、先回りして有利な場所を確保する。相手が盤面の端へ追い込まれているなら、直接得点を狙うよりその状況を利用してプレッシャーをかける。このような駆け引きが加わることで、同じキューブ操作でもまったく違ったゲームになる。
■ 好きなキャラクターとして挙げたい「アップ君」の親しみやすさ
MSX版で最も印象深いキャラクターを挙げるなら、やはり主人公のアップ君である。『Qバート』という有名タイトルでありながら、本来のQバートではなくコナミ側のマスコットを主人公に採用した判断そのものが非常に大胆であり、このMSX版を特別な作品にしている。
アップ君の魅力は、シリアスな英雄ではなく、カラフルな立体ブロックの世界によく似合う愛嬌のあるデザインにある。小さな体でキューブからキューブへ飛び回る姿はゲームシステムと相性が良く、難しいパズルを扱っていても画面全体が堅苦しくならない。
■ 原作のQバートやコイリーたちにも感じるシリーズの魅力
一方、『Qバート』シリーズ全体という視点で見れば、本来の主人公Qバートも非常に魅力的なキャラクターである。丸みを帯びたオレンジ色の体と長い鼻のような口、二本足という奇妙ながら一度見れば忘れにくいデザインは、1980年代のゲームキャラクターの中でも際立っている。
さらにシリーズを代表する敵として、蛇のような姿をしたコイリーの存在も欠かせない。スリックやサムのように、主人公を直接倒すことより盤面状態を悪化させるタイプの敵もQバートシリーズのゲーム性と非常に相性が良い。こうしたキャラクター設計を見ると、Qバートシリーズはキャラクターの見た目だけでなく、その行動そのものがゲームルールと強く結びついていたことが分かる。
■ 裏技より「システムを理解すること」が最大の必勝法
本作を攻略する際、派手な裏技だけを頼りにするより、基本システムを理解する方がはるかに重要である。最も有効な必勝法をまとめるなら、第一にキューブの回転規則を覚えること、第二に外周や行き止まりを早めに処理すること、第三に完成済みキューブを移動経路として使いすぎないこと、第四に敵を広い場所へ誘導すること、第五に長距離ジャンプを移動短縮ではなく「完成状態を守る手段」として考えること、そして最後に終盤ほど連続入力を控えることである。
さらに重要なのが、ゲームオーバーを単なる失敗と考えないことである。本作では一度見た盤面の構造が次回の大きな情報となる。初見ではどこへ行けばよいか分からなかったステージでも、一回遊べば「奥から処理した方がよい」「この場所は最後に残すべきだ」と分かる。その意味で、本作における最強の攻略手段は経験そのものである。
■■■■ 感想・評判・口コミ
■ 第一印象は「かわいいのに難しい」――見た目と実際の手応えに大きな差がある作品
MSX版『Qバート』を実際に遊んだ人が抱きやすい第一印象として挙げられるのが、画面の親しみやすさに対してゲーム内容が予想以上に本格的だというギャップである。カラフルな立方体が並び、その上を小さなアップ君が軽快に飛び回る画面は非常に明るく、当時のMSXゲームの中でも比較的とっつきやすい雰囲気を持っている。タイトル画面やゲーム画面だけを見れば、小さな子どもでも簡単に楽しめる軽快なキャラクターゲームのように感じられるが、実際には一回のジャンプによってキューブの向きが変わるため、何も考えず動き続けているだけではなかなかステージを完成させられない。
そのため遊び始めた直後には「操作は簡単なのに、思ったように揃わない」という戸惑いを感じやすい。特に疑似立体的な盤面を斜め方向へ移動する操作は、一般的な上下左右型ゲームとは感覚が異なる。画面上では右上へ進みたいつもりでも、慣れていないうちは別方向へジャンプしてしまい、その一手によって完成寸前だったキューブを崩してしまうこともある。
しかし、この分かりにくさは慣れてくると逆に大きな面白さへ変わる。キューブがどの方向へ回転するのかを理解し、アップ君を狙った場所へ正確に動かせるようになると、無秩序に見えていた盤面が次第に論理的なパズルとして見えてくる。「この位置を先に揃えれば後から戻らなくて済む」「ここは最後に踏めば一気に完成する」といった攻略の筋道が見えるようになり、それまで難しかったステージを短い手順で解けたときの爽快感は大きい。
■ 「QバートなのにQバートではない?」という驚きもMSX版特有の反応
原作のアーケード版『Qバート』を知っているプレイヤーにとって、MSX版はかなり意外性の強い内容である。通常『Qバート』と聞けば、オレンジ色のQバートがピラミッド状に積まれたキューブを跳び回り、踏んだブロックの色を変えていくゲームを思い浮かべる。しかしコナミ版では主人公の姿からステージの構造、キューブの扱い方まで大きく手が加えられている。
この違いは、プレイヤーによって評価が分かれやすい部分でもある。原作の忠実な移植を期待した人からすれば、「知っているQバートとはかなり違う」という戸惑いが生まれる。一方で、一つの独立したMSX用アクションパズルとして遊んだ場合には、その大胆なアレンジを面白いと感じやすい。
■ パズル好きからは「一手の重さ」が面白いと感じられやすい
本作を好意的に評価する人が注目しやすいのが、一回のジャンプに複数の意味があることである。一般的なアクションゲームでは移動はあくまで移動であり、目的地へ到達すること自体が重要になる。しかし『Qバート』では着地点のキューブまで変化するため、「どこへ行くか」と「盤面をどうするか」が常に結びついている。
そのため適当に動くことができず、プレイヤーは自然に次の一手を考えるようになる。この適度な緊張感をパズル好きの立場から見ると非常に魅力的である。正しい場所へ移動したつもりでも、あとから見るとその一手が遠回りの原因だったと分かることがあり、逆に何気なく選んだルートが効率的な解法につながる場合もある。
■ アクション好きには、敵を避けながら考える忙しさが刺激になる
純粋なパズルゲームであれば、プレイヤーは時間をかけて盤面を分析できる。しかし『Qバート』では敵が活動しているため、正解を考えている間にも状況が変化する。このリアルタイム性については、アクション性を好む人から評価されやすい。
「考えれば必ず解ける」という静的なパズルではなく、「考えている最中に敵が近づき、予定していたルートを変更しなければならない」という緊張が存在する。そのため完璧な計画を立てても、それをそのまま実行できるとは限らない。臨機応変に逃げながら、崩れた盤面を再び整える必要がある。
■ 評価される大きな長所は、少ないルールで遊び方が広がるところ
MSX版『Qバート』には現代のゲームのような大量のボタン操作や複雑な成長システムは存在しない。それでもゲームが単調になりにくいのは、ステージ形状とキューブ配置によって同じ基本ルールからさまざまな問題が作られているためである。
ジャンプする、キューブが回転する、指定された状態へ揃える、敵を避ける。この程度の要素だけでゲームの基本部分は説明できる。それにもかかわらず、ステージが変われば必要な手順も大きく変化する。「簡単に覚えられて、簡単には極められない」というゲームデザインは時代を越えて評価される要素であり、本作にもその特徴がしっかり備わっている。
■ 苦手という感想につながりやすいのは、独特の斜め操作
一方で、プレイヤーによっては最初の操作感そのものが大きな壁になる。疑似立体的に描かれたキューブ上を斜め方向へ移動するため、通常の2Dゲームに慣れていると入力方向を直感的に理解しづらい。
特に盤面の端では一回の方向間違いが致命的になりやすい。中央付近なら誤って違うキューブへ飛んでも修正できることが多いが、外側へ向かって誤入力するとそのまま足場のない空間へ飛び出す危険がある。そのため初心者ほど操作ミスによる失敗が多く、「パズルを解く以前に思った方向へ動かせない」と感じることがある。
■ 「後半になると難しい」という評価は、本作の代表的な印象の一つ
序盤ではキューブ回転の仕組みを覚えながら比較的気軽に遊べるが、ステージが進むにつれて要求される判断が増える。フィールド形状が複雑になり、敵への対応も必要となり、さらに通常ジャンプだけでは簡単に移動できない場所まで現れるため、ゲーム後半では明確に難度が上昇する。
この難易度曲線については、やり応えと感じる人と厳しいと感じる人に分かれる。ゲームを少しずつ攻略すること自体が好きなプレイヤーであれば、難しいステージほど燃える。しかし短時間で気軽に遊びたい人の場合、同じステージで何度も失敗するとストレスを感じやすい。
■ グラフィックについては「MSXらしい分かりやすさ」が強み
ビジュアル面では、豪華な背景や大型キャラクターを見せるゲームではない。しかし立体キューブとキャラクターを中心に構成した画面は非常に機能的であり、何をするゲームなのかが一目で伝わりやすい。
キューブの面が色分けされているため、現在どの状態なのかを画面から確認できる。またキャラクターも盤面に埋もれないデザインとなっており、敵と自分の位置関係を判断しやすい。さらに画面全体が色鮮やかで、無機質なパズル盤だけを見続ける印象になりにくい。
■ 音や演出は豪華さよりゲームテンポを優先した印象
サウンド面についても、後年のCD-ROMゲームのような長時間の音楽や音声演出が中心ではなく、プレイを邪魔せずテンポ良く進行させる1980年代らしい構成である。
このタイプの作品では、派手なBGM以上にジャンプや状態変化などに伴う効果音が重要となる。自分の操作に対して即座に反応が返ってくることで、「キューブを一つ動かした」という手応えが生まれる。何度も同じステージへ挑戦するゲームだけに、演出が長すぎないことも利点である。
■ レトロゲーム好きから見れば「コナミMSXの変わり種」という面白さがある
現在になって本作へ触れる場合、ゲーム内容だけでなく、1980年代のコナミMSX作品群の一つとして眺める楽しみも大きい。当時のコナミといえば『グラディウス』『魔城伝説』『夢大陸アドベンチャー』などMSXを代表する作品を数多く送り出しており、アクションやシューティングの印象が強い。
その中で『Qバート』は海外生まれのゲームブランドを用いながら、パズル色の強い独自アレンジを行ったかなり変わった作品に位置している。主人公がアップ君になっていることも含めて、コナミのMSX開発陣が自由な発想で商品を作っていた時代の空気を感じさせる。
■ 総合評価――万人向けではないが、仕組みにハマると何度でも挑戦したくなる
MSX版『Qバート』への総合的な感想をまとめると、「最初は癖が強いが、ルールが理解できた瞬間から面白さが急激に増すゲーム」と表現できる。
原作Qバートをそのまま期待するとキャラクターやルールの違いに驚かされ、一般的なアクションゲームとして遊ぶとパズル要素の強さに戸惑う。そして純粋なパズルゲームとして考えると、敵によるリアルタイムの妨害が忙しく感じられる。このように、どれか一つのジャンルだけを期待すると少しずつ予想を外される作品である。
ところが、その三つの要素――キャラクターアクション、立体パズル、敵回避――が組み合わさることで、他のゲームでは味わいにくい独特の遊びが成立している。失敗した瞬間には悔しいのに、画面を見直すとすぐ別の攻略法を試したくなる。その繰り返しが本作の中毒性を作っている。
■■■■ 当時の宣伝・現在の中古市場など
■ 1980年代後半のMSX市場で登場した、少し異色のコナミ作品
MSX版『Qバート』が市場へ投入された時期は、MSXという規格そのものが大きく変化していた時代と重なる。ソフト上の著作権表記などから1986年作品として紹介されることが多い一方、日本での商品発売について1987年初頭として整理している資料も存在する。そのため、本作を紹介する場合には「1986年頃に制作・展開された作品で、日本では1987年初頭の商品として扱われる資料もある」と整理しておくのが分かりやすい。
この時期のコナミはMSX市場において非常に存在感の強いメーカーであり、『グーニーズ』『グラディウス』『ツインビー』など知名度の高いタイトルを継続的に送り出していた。そのラインアップの中で『Qバート』を見ると、日本国内で圧倒的に知名度を持つ漫画や映画を題材にしたゲームでもなければ、コナミ自身が生み出した人気シリーズの正統続編でもない。アメリカ生まれのアーケードゲームを基礎としながら、MSX向けに大胆なアレンジを施した、かなり異色の位置づけだった。
■ 店頭パッケージとゲーム雑誌が重要だった時代の販売・紹介方法
1980年代のパソコンゲーム販売では、現在のように公式サイトで動画を視聴し、そのままダウンロード購入するという方法は存在しなかった。ユーザーが新作を知る主要な入口は、パソコン専門店や家電店のソフト売り場、メーカーの商品カタログ、専門雑誌の記事や広告、そして口コミだった。
『Qバート』もROMカートリッジ商品として店頭販売され、購入後はMSX本体のカートリッジスロットへ挿してすぐ遊べる形式だった。フロッピーディスクやカセットテープのような読み込み待ちがなく、家庭用ゲーム機のカートリッジと近い感覚で扱えることは、MSX用ROMソフトの大きな利点だった。
パッケージ販売において重要だったのは、ゲーム画面だけでは伝わりにくい独特な遊び方を、箱や説明書によって理解してもらうことだった。本作は通常の横スクロールアクションとは異なり、立方体へ飛び乗って向きを変えるアクションパズルである。そのため、静止画だけを見た人には「キューブが並んでいるゲーム」という印象しか伝わりにくく、雑誌記事や説明書によるルール紹介との相性が非常に良い作品だった。
■ 大量のテレビCMより、専門誌・店頭・ブランド力が効きやすかった商品
『Qバート』単体について、大規模なテレビCMキャンペーンや全国規模の派手な広告展開を裏付ける資料は多く残されていない。そのため、後年の家庭用人気ソフトと同じように大規模CMが行われたと断定するのは適切ではない。
むしろ本作の場合、コナミというメーカー名そのものが大きな販売上の武器になっていたと見る方が自然である。当時のMSXユーザーにとってコナミは、質の高いアクションやシューティングを多数提供していたメーカーだった。新しいカートリッジのパッケージに「KONAMI」の名称があるだけでも一定の注目を集めやすい土壌があった。
■ 他のコナミ作品と組み合わせることで生まれた、もう一つの商品価値
『Qバート』の市場価値を語る際、ゲーム本編だけを見てはいけない。MSXには複数のカートリッジスロットを持つ機種が多く存在し、コナミはこの構造を利用して、別々のゲームカートリッジを同時に挿すことで特殊な効果を発生させる遊びを用意していた。
『Qバート』も、この「別のコナミ作品と組み合わせる」という文化の中で独特な存在感を持つことになった。特定のコナミ作品では、『Qバート』を別スロットへ挿した状態で起動することでゲーム中に特殊な効果が得られる組み合わせが存在した。
この仕組みは非常に巧妙だった。一つのゲームをクリアして遊ばなくなったとしても、そのカートリッジを別作品の強化用として再利用できるからである。ユーザー側から見れば、所有しているコナミカートリッジが増えるほど新しい遊びを発見でき、メーカー側から見れば自社製品を複数購入してもらう動機になる。
■ 販売本数については、確定的な数字を無理に作らないことが重要
『Qバート』のMSX版について、国内で何本販売されたかを示す信頼性の高い累計販売本数は、現在一般公開されている主要資料からは確認しにくい。したがって「○万本売れた」「当時大ヒットした」といった具体的数字を、根拠なしに付け加えるべきではない。
1980年代のパソコンゲームは、現在の家庭用ゲーム市場ほどタイトル別販売本数が継続的かつ詳細に公開されていなかった。特に中規模以下のMSX用ソフトでは、発売元の内部資料などが残っていない限り、後世になって正確な実売数を再現することは難しい。
そのため本作の実績は「販売本数ランキング上位の大ヒット作」と評価するより、海外のQバートを日本のMSX向けへ大きく作り替え、さらにコナミカートリッジ連動文化の一部として長期間記憶された作品と見る方が妥当である。
■ 発売から約40年――現在は一般中古ソフトではなくコレクター商品へ
現在、MSX版『Qバート』は発売当時のように通常のゲームショップで新品を購入する商品ではない。主な流通場所はインターネットオークション、フリマアプリ、レトロゲーム専門店などであり、完全にコレクター市場へ移行している。
価格を大きく左右するのは、カートリッジだけなのか、説明書やケース、ジャケットなどが揃っているのかという保存状態である。さらにROMカートリッジは約40年前の電子製品であるため、正常に動作確認されているかどうかも重要になる。
近年の国内中古市場では、カートリッジ単品でも数千円程度で取引される例があり、状態や付属品、出品時期によって価格は大きく変動する。箱や説明書を含む状態の良い個体は、カートリッジ単品より高値になりやすい。
■ 箱・説明書付きの「完品」は、カートリッジのみとは別物として評価される
レトロゲーム収集では、本体カートリッジが遊べるかどうかだけでなく、発売当時の状態をどこまで残しているかが価値へ大きく影響する。『Qバート』についてもカートリッジのみ、カートリッジ+ジャケット、箱・説明書を含む完品では市場評価が異なる。
特に紙製の外装や説明書はカートリッジ以上に紛失・破損しやすい。子どもの頃に購入したゲームの場合、ソフト本体だけ保管され、箱や説明書は捨てられているケースも珍しくない。そのため数十年後になると、ゲーム自体より説明書やパッケージの方が見つけにくいことすらある。
完全な状態を目指す収集家が増えるほど、箱、ケース、説明書、ジャケットなどの付属品が独立した商品として取引されるようになる。これはMSX版『Qバート』に限らず、1980年代のROMカートリッジ全般で見られるレトロゲーム市場特有の現象である。
■ 現在の購入価格を見るときは「最高価格」だけで判断しない
中古市場について調べる際に注意したいのは、ネット上で見つかった最も高い出品価格を、そのゲームの市場価値だと考えないことである。出品者は自由に希望価格を設定できるため、高額で売りに出されていたとしても、それが実際にその値段で購入されたとは限らない。
市場を見る場合には「出品価格」より「実際の落札・売却価格」の方が参考になる。ただしレトロゲームは出品数が少なく、たまたま美品やセット商品が含まれただけで平均価格が大きく変動する場合がある。したがって、一時的な最高額をもって「このゲームの価値は○万円」と固定的に考えるべきではない。
■ 購入時には価格以上に「動作確認」「端子」「外装」の確認が重要
これから実物を購入する場合、価格だけで商品を選ぶのは危険である。ROMカートリッジ自体は比較的丈夫ではあるものの、発売から約40年が経過しているため、端子部分の酸化や汚れ、ケースの割れ、ラベルの剥がれ、内部基板の劣化などが起こっている可能性がある。
特に「動作未確認」という表記には注意したい。これは必ずしも故障しているという意味ではないが、販売者がMSX本体を所有しておらず確認できない場合と、何らかの問題を抱えている場合を購入者側では区別できない。コレクション目的なら外観を優先する選択もあるが、実際に遊びたい場合は動作確認済みの個体を優先した方が安心できる。
■ なぜ現在も需要があるのか――QバートとコナミMSXという二重の収集価値
本作の中古需要を支えている理由は一つではない。まずQバートという1980年代アーケードゲーム史を代表するブランドの一作品であることが挙げられる。原作とは大きく異なる内容だからこそ、Qバートシリーズを機種別に集めている人にとってMSX版は興味深い存在となる。
もう一つはコナミMSX作品としての価値である。コナミはMSX市場へ多数の作品を供給しており、『グラディウス』『魔城伝説』『メタルギア』など現在も人気の高い作品が多い。そのため「コナミのMSXカートリッジを集める」という収集ジャンルそのものが成立する。
さらに本作には、アップ君が主人公になっている、原作よりキューブ回転型のゲームシステムを採用している、他のコナミ作品とのカートリッジ連動に使えるといった、MSX版だけの特殊な特徴が多い。単なる多数ある移植版の一つではなく、「なぜこのような内容になったのか」を含めてゲーム史的に面白いのである。
■■■■ 総合的なまとめ
■ 『Qバート』という名前から想像する内容を良い意味で裏切る、MSX独自色の強い作品
1986年頃にコナミがMSX向けに展開した『Qバート』を総合的に評価すると、単なる海外アーケードゲームの家庭用移植という言葉だけでは説明し切れない、非常に個性的なアクションパズルであることが分かる。原点となった『Q*bert』は、立体的に積み上げられたキューブの上を主人公が斜め方向へ飛び回り、踏んだブロックの色を変えながら盤面全体を完成させるという、1980年代初頭としては際立って独創的なゲームだった。それに対してMSX版は、基本となる「立方体の上をジャンプして状態を変化させる」という考え方こそ受け継いでいるものの、主人公、キューブの扱い、ステージ構成、特殊能力、対戦要素などを大幅に変更しており、実際の遊び心地は原作とはかなり違う。
特に大きな特徴が、キューブを単純に塗り替えるのではなく、着地によって立方体そのものを回転させ、見本通りの面を揃えていく仕組みである。このルールによって、本作は一般的な固定画面アクションよりもパズル性が大幅に強化された。目的地へ移動すること自体が盤面を変化させるため、プレイヤーは「どこへ行けばいいか」だけでなく、「そこへ行く途中で何を変えてしまうか」まで考えなければならない。移動とパズル操作が一体化した設計は非常に合理的であり、ボタン数の少ないMSX環境でも豊かなゲーム性を生み出している。
■ アクションゲームとパズルゲームの境界にあることが最大の魅力
MSX版『Qバート』の魅力を最も端的に表すなら、アクションとパズルのどちらにも完全には分類できないところにある。じっくり考えれば解けるだけのパズルではなく、盤面を考えている最中にも敵が迫ってくる。一方で、素早い操作だけで突破できるアクションでもなく、キューブの回転を理解せず飛び回っていれば盤面はかえって複雑になってしまう。
この二つの要素が同時に存在することで、同じステージでも毎回多少異なる展開が生まれる。頭の中では完璧な順序を考えていても、敵が予想外の場所へ移動すればルートを変える必要がある。敵から逃げるために一歩横へ動いたことで完成状態が崩れ、そこから新しい手順を考え直すこともある。その反対に、危険回避のため偶然選んだ経路が理想的な解法につながることもある。
純粋なパズルなら攻略手順を一度覚えれば作業化しやすく、純粋なアクションなら反射神経だけに偏りやすい。本作は両方を組み合わせることによって、プレイヤーへ「考える」「動く」「立て直す」という三つの行動を継続的に要求している。
■ アップ君への主人公交代が、MSX版を単なる移植ではなくした
MSX版をシリーズの中で特に異色な作品にしている要素として、主人公が本来のQバートではなく、コナミMSX開発部のマスコットとして知られるアップ君へ変更されている点も外せない。Qバートといえば、オレンジ色の丸い体と長い鼻のような口を持つ独特なキャラクターそのものが世界的な知名度を獲得していたため、その主人公をあえて置き換えるという判断はかなり大胆である。
しかし結果的には、この変更によってMSX版だけの強い個性が生まれた。アップ君の明るく親しみやすいデザインはカラフルなキューブの世界と相性が良く、パズルとしては難しい内容であっても画面全体の雰囲気を柔らかくしている。原作をそのまま再現するのではなく、コナミのMSXユーザーに向けた独自の商品として作り直した姿勢が、キャラクター選択にも表れている。
■ 原作アーケード版との完成度の違い――忠実度ではなく方向性そのものが異なる
オリジナルのアーケード版『Q*bert』とMSX版を比較するとき、「どちらの完成度が高いか」を単純な優劣で決めることは適切ではない。なぜなら両者は、同じ基本モチーフを使いながら目指している遊びが異なるからである。
アーケード版の強みは、一目で理解できる単純なルールとスピード感にある。ピラミッド状に並ぶキューブを順番に踏み、色を揃えながら敵を避けるという目的は非常に分かりやすく、短い時間で緊張感の高いプレイを楽しめる。ゲームセンターという環境を前提として、一回のプレイで即座に面白さが伝わるように設計されている。
それに対してMSX版は、一度で理解できる爽快感よりも、何度も挑戦しながらパズルの仕組みを理解することへ重点を置いている。キューブ回転や複雑なステージ形状、長距離ジャンプ、特殊効果などが組み込まれているため、ルールを完全に理解するまで多少時間が必要だが、その分家庭で繰り返し遊べる奥行きが増している。
■ Atari系や家庭用ゲーム機版は、原作再現を重視したものが多い
『Qバート』は人気作品となったため、Atari 2600、Atari 5200、ColecoVisionをはじめ、数多くの家庭用ゲーム機やコンピューターへ移植された。こうした初期移植作品の多くは、限られたハード性能の中で原作のピラミッド型フィールド、主人公Qバート、敵キャラクター、キューブの色変更といった基本構造を再現することを大きな目的としていた。
当然、機種によってグラフィック、キャラクターの動き、サウンド、敵の種類、操作感などには差があった。それでも基本的には「家庭でアーケード版Qバートを楽しむ」という方向性が分かりやすかった。これと比較すると、MSX版コナミ『Qバート』の特殊性はさらに鮮明になる。MSX版はアーケード版をどれだけ忠実に再現できたかで勝負しているのではなく、Qバートシリーズのアイデアを材料に新しいゲームを作っているのである。
■ 『Q*bert’s Qubes』との関係を知ると、MSX版の方向性が理解しやすい
MSX版におけるキューブ回転システムは、初代『Q*bert』よりも続編的作品『Q*bert’s Qubes』を連想させる要素が強い。キューブの上を跳び回るだけでなく、立方体そのものの面を変化させて特定の組み合わせを作るという発想を取り込み、そこへコナミ独自のアレンジを加えている。
この点を知らずにMSX版だけを見ると、「なぜ初代Qバートとここまで違うのか」と疑問に感じるかもしれない。しかしシリーズの発展過程を踏まえると、初代の単純な色替えから、キューブ自体を操作するパズルへ進化させようとした流れをMSX向けに発展させたものとして理解できる。
ただしMSX版は単なる『Q*bert’s Qubes』の完全移植でもない。主人公をアップ君へ変更し、多彩な形状のステージや特殊能力などを追加しているため、最終的にはコナミ独自作品と呼べるほど大きく手が加えられている。
■ MSXというハードとの相性――派手さではなくルールの強さで勝負できた
MSX版『Qバート』は、ハードの性能を最大限に誇示するタイプの作品ではない。巨大キャラクターが激しく動き回るわけでも、長大なスクロール背景が存在するわけでもなく、基本的には固定された一画面の中でゲームが進行する。
しかし、この構成はMSXというハードと相性が良かった。一画面内の立体キューブ、主人公、敵、特殊物体という限られた要素だけでゲームが成立するため、ハード性能の差が面白さへ直接影響しにくいからである。
ゲームの中心は画像の豪華さではなく、キューブをどの順序で動かすかという判断である。画面が十分に見やすく、キャラクターの位置とキューブの状態さえ判別できれば成立する。そのため比較的小規模なROMでも、多数のステージと繰り返し遊べるゲーム性を実現できた。
■ グラフィックやサウンドを比較すると、アーケード版には及ばなくても遊びの核は失われていない
純粋な映像・音響表現だけを比較すれば、専用基板を使用したアーケード版の方が豊かな表現を実現している。キャラクターのアニメーション、独特な効果音、Qバートのコミカルな演出など、ゲームセンターでプレイヤーの目を引く工夫は原作の大きな魅力だった。
MSX版はハード性能も目的も違うため、同じ方向で競う作品ではない。キャラクター表示やサウンドはより簡潔であり、豪華さよりも盤面の視認性と操作への反応を重視している。
しかし、Qバート系列にとって本当に重要な「斜め方向へジャンプする独特の移動」「一歩ごとに盤面が変化する緊張感」「敵に追われながら完成を目指す」という核は残されている。それどころかMSX版では、その核を利用してさらに強いパズル性を加えている。
■ 難易度の高さは欠点にも長所にもなる
本作の評価で避けて通れないのが難易度である。序盤は比較的理解しやすいが、ステージが進むにつれてフィールド形状が複雑になり、敵の妨害や移動制約が加わることで急激に考えることが増える。
一度完成させたキューブを踏み直してしまうと再調整が必要になるため、初心者は「いつまでたっても終わらない」と感じる場合がある。また斜め方向の独特な操作に慣れていなければ、考えたルートそのものは正しいのに誤操作で失敗することもある。
これは気軽に最後まで進みたいプレイヤーには厳しい部分であり、現代的な親切設計と比べれば不便に感じるところも多い。しかし、ゲーム攻略そのものを楽しむ人にとっては、この高い壁が長所になる。最初は突破できなかったステージを何度も挑戦し、最後には迷わず攻略できるようになる。キャラクターのレベルや装備が強くなるのではなく、プレイヤー自身が上達することで難易度が下がっていく。この感覚はレトロゲーム特有の魅力である。
■ 現在ではゲームとしてだけでなく、1980年代コナミMSX文化を知る資料でもある
発売から長い年月が経過した現在、本作の価値はゲーム内容だけに留まらなくなっている。MSX市場でコナミがどれほど多彩な作品を展開していたのかを知る資料としても重要である。
特に興味深いのが、他のコナミ製カートリッジとの組み合わせによって特殊な効果を発生させる仕掛けである。複数スロットを持つMSXというハードの特性を利用し、一本のソフトを別のゲームでも活用するという発想は、現在のゲーム連動機能に通じる面白さを持っている。
『Qバート』は単体で遊べるゲームでありながら、別作品との組み合わせ用カートリッジとしても知られた。この少し変わった使われ方を含めて、当時のコナミMSX文化を象徴する一本となっている。
■ 他機種版と比べたとき、MSX版の価値は「最高の再現度」ではなく「最も変わった解釈」にある
さまざまな対応機種で発売された『Qバート』を比較すると、それぞれの評価軸は異なる。アーケード版に近い操作感やキャラクター表現を求めるなら、原作再現を優先した移植版に魅力がある。家庭用ゲーム機では、限られた性能の中でいかにピラミッド型フィールドと敵の動きを再現したかが重要になる。後年の移植や復刻では、オリジナルの再現精度そのものが大きな価値になる。
それに対してMSX版は、再現度競争からかなり離れた場所にいる。主人公を変更し、キューブのルールを変更し、盤面の形まで変え、特殊能力や二人プレイを取り込んでいる。原作と同じゲームを求める人には遠い存在だが、「一つのゲームアイデアが別のメーカーによってどう解釈されたのか」を知りたい人には極めて面白い。
言い換えれば、MSX版は「最も忠実なQバート」を目指した作品ではなく、「Qバートという題材からどこまで別の遊びを作れるか」を実践した作品といえる。この方向性こそ、他機種版と比較したときの最大のアピールポイントである。
■ 最終評価――小粒ながら発想が濃く、遊び込むほど評価が上がるMSX時代の佳作
総合すると、MSX版『Qバート』は発売当時のコナミを代表する最大級の大作とは言えないものの、独創性という点では非常に印象深い作品である。画面構成はシンプルで、物語も長大ではなく、操作方法も複雑ではない。しかし立方体の回転とジャンプ移動を組み合わせるだけで、ステージごとに異なる思考を要求するゲームを成立させている。
第一印象だけでは、かわいらしいキャラクターがキューブの上を飛ぶ小規模なゲームに見える。しかし少し遊ぶと、移動ルート、キューブの向き、敵の位置、特殊能力、最終的な着地点まで考えなければならないことが分かる。さらに遊び込めば、今度は無駄な一手を減らし、より美しく盤面を完成させることそのものが楽しみになる。
そこには、少ない要素を徹底的に組み合わせる1980年代ゲームデザインの強さがある。また、原作の主人公をアップ君へ置き換える大胆さ、キューブ回転システムを取り込む発想、ステージ形状を大幅に変える自由さ、二人プレイや特殊能力を追加するサービス精神など、コナミMSX作品らしい遊び心も随所に感じられる。
原作再現度だけを求めるなら、MSX版は最適な『Qバート』とは言えない。しかし「Qバートというゲームを別の方向へ発展させた作品」と考えれば評価は大きく変わる。シリーズの中でも異端であり、だからこそ現在でも語る価値がある。
発売当時にMSXで遊んだ人にとっては懐かしい一本であり、現在初めて触れる人にとっては「1980年代にはここまで大胆なアレンジ移植が存在したのか」と驚かされる作品でもある。アーケード版、他機種への忠実移植、そしてコナミMSX版を遊び比べれば、同じ『Qバート』という名前の中に複数のゲームデザイン思想が存在することがよく分かる。
最終的には、派手な映像や物語ではなく、「ジャンプする場所を一つ決めるだけで悩める」という極めてゲームらしい面白さが本作の核心である。アップ君を一歩動かした瞬間に盤面が変わり、その変化が次の判断を生み、失敗すればもう一度挑戦したくなる。この小さな循環を丁寧に積み重ねたMSX版『Qバート』は、シンプルでありながら奥深く、コナミのMSX時代を知るうえでも忘れがたい個性派アクションパズルなのである。
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